Ⅰ.台湾経済と物価
1.台湾の GDP
台湾経済の特徴は、中小企業主体の生産構造や旺盛な起業家精神、企業の負債比率の低さ などが評価されてきた。それらは経済に活力と柔軟性を与えているともいわれている。
国民総生産(GDP)をみると、対前年比で 2003 年は 3.43%、2004 年は 6.07%、2005 年は 4.09%の成長を果たし、2005 年の総額は 11,315 億元に達している(図5−1)。世界 GDP ランキ ングでは 21 位である。2005 年の1人あたり GDP は 15,120 ドルで、日本の約 3 分の 1 であるも のの、富裕層や中間層が台頭してきている。また、女性の社会進出と共稼ぎ世帯の増加などに よるライフスタイルの変化は日本と同様に生じてきており、これに伴って外食することが多くなり、
消費構造は変化しつつある。
同じアジア地域の香港、シンガポールは、1人当たりの GDP は高いものの、人口が少ない(そ れぞれ 680 万人、419 万人、2003 年時点)ことからマーケット自体は大きくない。一方、台湾の人 口は 2,261 万人であり、マーケットとして相当な規模を有している。
また、今、台湾では大きな構造変化が生じている。台湾企業の中国進出は一段と進んでおり、
投資額は 2002 年の 3 万ドルから 2004 年の 6940.4 万ドルとなり、台湾と中国との間で分業・調達 ネットワークが形成されている。この観点から、台湾の経済も中国の経済と大きく連動していくこ とが予測される(図5−2)。
(図5−1)台湾の経済概況
出所:日本貿易振興機構ホームページ、その他資料
(図5−2)台湾企業の中国投資額の推移
出所:日本貿易振興機構、台湾経済部投資審議委員会
2.物価状況
よく台湾の物価は安いと旅行に行ってきた人から話しを聞く。しかしながら台湾人からすると台 湾の物価は「高い」と感じる人が多く、特に台北の物価は「高い」と感じている台湾人が多い。
台湾の物価について、食料品、生活インフラ、消費財のカテゴリで日本の価格と比較してみる 3.43%
6.07%
4.09%
111315.83
103186.1
107704.34
0.00%
1.00%
2.00%
3.00%
4.00%
5.00%
6.00%
7.00%
2003年 2004年 2005年
98000 100000 102000 104000 106000 108000 110000 112000 億元
実質GDP成長率 名目GDP総額(億元)
3
4,595.00
6,940.70
-2,000 4,000 6,000 8,000
2002年 2003年 2004年
万ドル
の半値以下であることがわかる。確かに日本から見れば安いのである。
(表5−1)日台物価水準比較
品目 単位 現地価格
(元)
円換算価格
(円)
日本との価格比
(%)
卵 1コ 4 14 71.6
牛乳 1リットル 65 221 101.9
牛肉 1kg 700 2,382 23.8
豚肉 1kg 230 783 26.1
鶏肉 1kg 220 749 49.9
ジャガイモ 1kg 75 255 127.6
トマト 1kg 200 681 126
オレンジ 1kg 73 248 52.9
米 1kg 42.0 143 27.2
ビール 350cc 28 95 45.4
コーラ 350cc 17 58 48.2
ビッグマック※3 1 コ 75 255 72.9
バス 初乗り 15 51 25.5
タクシー 初乗り 70 238 36.1
電話 1分 0.3 1 11.0
カラーテレビ 1 台 6,990 23,783 52.9 ガソリン
(レギュラー) 1リットル 24.6 84 74.1
※1台湾のデータは 2005 年 11 月時点のもの、日本のデータは 2006 年 3 月のもの
※2日本との価格比は東京都内の価格を 100 として台湾の価格を指数で表したもの
※3ビッグマックはマグドナルド
※4物価は、米ドルを換算した後、日本円に換算したもの
出所:財団法人国際金融情報センター(JCIF)『各国の物価水準(日本の物価との比較)
物価の高低さを判断する際に、その国の所得を把握する必要がある。実際に台湾の行政院 労工委員会の統計データによると、台湾労働者の 2005 年の平均給与は台湾元 43,615 元(日本 円で約 15 万円)である。さらに行政院主計処の統計によると、富裕層と貧困層の収入格差は大 きく開いており 6.1 倍となる。物価と所得のバランスからすると、台湾の物価は決して安くないとい えよう。
ただし、台湾人は日本人より個人で株や不動産の売買、家賃収入、その他の副収入の度合い が大きいため、給与所得だけではその人の実際の収入をさぐるのは非常に難しいことに留意す る必要がある。
物価は基本的には安定している。消費者物価上昇率は、2003 年は前年度 0.3%減で、2005 年
は同 2.3%上昇したが、台湾当局は、中央銀行による利上げを行ったほか、石油、水道、電気料 金を引き上げないという物価安定措置をとっている(表5−2)。
(表5−2)消費者物価上昇率 2003 年 2004 年 2005 年
-0.30% 1.60% 2.30%
出所:日本貿易振興機構ホームページ
(図5−3)台湾労働者1人当たり給与水準
出所:『労働情勢要覧』行政院労工委員会
3.観光客市場
台湾当局は観光事業を強化し、「観光客倍増計画」を打ち出している。日本からの観光客は 2000 年〜2002 年は年間 90 万人台であったが、2003 年は 60 万人台となり、2005 年は中国大陸 の反日運動で 110 万台に急増した。
最近、対中国大陸の台湾への観光規制緩和への期待及び 2008 年の北京オリンピックの開催 をにらみ、同じ中華圏、中華文化としての台湾を来訪する観光客が増加するとの期待が高まり、
35,421 36,735 38,530 39,726 40,908 41,938 42,042 41,667 42,287 43,021 43,615
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000
95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年
元
ヒアリングによれば、2005 年台湾飲食店の売り上げは、2004 年より 10%伸び、台湾外食業 界が今後の飲食店の売上の伸び率は年 10%以上に達すると楽観的な予測がでている。
観光市場の面からも、台湾における日本料理を含めた外食の多様化へのニーズは、ますま す高まると思われる。
(図5−4)台湾向け日本人出国者の推移
出所:台湾観光協会、ツーリズム・マーケティング研究所
Ⅱ.台湾の食文化
台湾の飲食は、中国の福建料理をベースとしている。中国明代の軍人、政治家である鄭成功
(Zheng Chenggong、1624-1662 年)は、台湾に駐守する際に、福建料理を台湾に導入した。福建 料理の特徴は、山海の珍味を料理することで名高いが、色、香り、味、形のよさを前提とした上で、
淡白な旨み、柔らかさ、飽きが来ない風味があり、スープを重視し、スープの種類は多様である。
その後、国民党が、共産党との内戦に敗れ、1949 年台湾に撤退した時に、中国各地の料理を 台湾に持ち込んだ。これらの料理は台湾料理との調整により、台湾の飲食を大きく変化させた。
現在では、四川料理、広東飲茶、江浙料理、湖南料理、上海料理、モンゴル料理等も台湾で味 わうことができる。
日本が台湾を統制した時期、台湾の飲食生活にも大きな影響を与えた。現在でも「おでん」
(「黒輪」「和田」の表記)や「天婦羅」(「甜不辣」の表記)、「寿司」などがよく食べられている。
人数
成長率
0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000
00年 01年 02年 03年 04年 05年 人
-40.0%
-30.0%
-20.0%
-10.0%
+0.0%
+10.0%
+20.0%
+30.0%
+40.0%
%
人数 成長率
00年 922,865
01年 977,705 +5.9%
02年 991,224 +1.4%
03年 659,972 -33.4%
04年 890,444 +34.9%
05年 1,127,184 +26.6%
同時期には西洋料理も台湾に導入されてきた。
近年、台湾の経済は飛躍的に発展し、国民所得の向上、就業人口の増加、女性の社会進出、
経済のグローバル化、週休2日、娯楽場所の増加などによって、飲食産業も大きく発展してき た。
台湾では朝食や昼食を外食する人が多く、街中にコンビニ、屋台、食堂、ファーストフード、レ ストランがある。その形態もテイクアウト兼食堂、レストラン、高級レストランと様々である。価格 は北京ダックが 1 羽で 3000 円ぐらい、屋台で食べる水餃子であれば 1 個 15 円くらいである。日 本に比べ食べ物の値段は破格的に安いといえる。
自炊派の人は、市場やスーパーマーケットで食材を調達する。料理のスタイルで見ると、見た 目に洗練された豪華な一皿よりも、むしろ庶民的な家庭料理を基本としており、家庭的で素朴な 料理が主体であることが特徴として挙げられる。
Ⅲ.外食供給市場の特徴
1.売上と店舗数と営業面積
台湾の外食市場を、①売上と②店舗数で概観する。
① 外食市場の売上は 2001 年の 263 億 7,680 万元から 2004 年の 274 億万元へと 3.9%の 伸び率が示された(図5−5)。
(図5−5)飲食業の売上推移
2,637,680 2,633,220
2,663,070
2,740,000
2,560,000 2,600,000 2,640,000 2,680,000 2,720,000 2,760,000
01年 02年 03年 04年
万元
② すべての外食店舗数の統計データはないが、チェーン展開の企業に限ってみると、2004 年は 21,167 店舗で、2003 年の 18,365 店舗より 15.3%増であった。このうち、喫茶店の伸 び率が最も高く 59.8%であり、台湾人に喫茶店を利用する習慣が浸透しつつあるといえ よう。一方、2003 年より店舗数が最も増えているのはファーストフード(洋風、中華中式、
和式、朝食専門店を含む)であり、ファーストフードは依然として外食時の主要外食店舗 であることがわかる(図5−6)。
(図5−6)外食店舗数の状況
21,167 15,368
2,948 1,499 1,352
18,365 13,374
3,061 938 992
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 総店舗数
ファーストフード 休閑飲茶 喫茶店 各種レストラン
2003年 2004年
店舗数
出所:『連鎖店年鑑』2004 年
2.チェーン経営の台頭
台湾では外食店舗の多くは零細店舗であり、これは中華思想に基づいた家族経営という根源 にある。日本のようなチェーン店舗は少なかったが、最近になって外資系外食企業の参入により 市場競争が激しくなり、直営形態またはフランチャイズ形態でチェーン展開している外食企業も 急激している。
チェーン形態で展開している企業数は 2005 年時点で 279 社、総店舗数は 22,827 店である。こ のうちフランチャイズは 8 割以上を占めている。台湾外食企業は、①外部資本の利用で、短期間 に低いコストでの事業拡大が可能である、②リスクが少なく安定的なロイヤルティーの収入が見 込めるといったメリットなどから、フランチャイズ形態を取っている企業が近年急増している。
(表5−3)台湾チェーン外食企業の現状
出所:『台湾連鎖店年鑑』2006 年
3.朝食
正式的な統計がないが、日本外食産業の売上高は昼食→夕食→朝食の順となるが、台湾の 場合は昼食→朝食→夕食の順となる。
朝食専門店は店舗面積(店舗の広さは平均 10〜20 坪程度)は小さく、開店資金が少なくて開 業できるという点から、若者や失業者が簡単に参入でき、店舗数は急増している。また、朝食店 はフランチャイズ方式で経営されることが多い。台湾全域で広くチェーン展開をしている会社は約 16 社ある。
一般的に朝食店1軒につき、およそ 150 戸を対象に営業できると採算が合うと言われている。
住宅地の店舗は家賃が比較的安いため、朝食店舗が集中している。また、一人当たりの消費額 は一食あたり約 50 元(約 170 円)から 30 元(約 100 円)である。
台湾の朝食市場には外資企業の参入は少ない。ただしコンビニなどで販売されるおにぎりは 人気があり、競合している。
合計
2004年 231 21,167 2,883 14% 18,284 86.4% 91.6 2005年 279 22,827 3,036 13% 19,791 86.7% 81.8 伸び率 20.8% 7.8% 5.3% - 8.2% - -10.7%
店舗数 /チェーン 直営 フランチャイズ
企業数 店舗数