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第2章 タイにおける流通環境

3. 食品の輸出入に係る現状と課題

1979 年輸出入管理法では、国内産業の保護、外貨流出の防止等の目的で、輸入規制 の対象品目も定めている。規制内容には、禁止、許可取得の義務付け、証明書の提出 義務等がある。

輸入禁止品目(12 品目)には、「他人の商標権を侵害する製品」等が含まれ、農水 産物は指定されていない。輸入許可の取得が必要な品目(19 品目)には、「魚粉」、

「エシャロット」、「オレンジ」等、複数の農水畜産物が指定されている。

輸入証明書が必要な品目(22 品目)には、全て農水産物か加工食品が指定されてお り、「ジャガイモ」や「たまねぎ」等の野菜、「茶」や「コーヒー」、「粉ミルク」

や「ココナッツ油」等の加工食品が含まれている。

図表 2-9:タイにおける輸入規制品目

注: 農水産品、加工食品はハイライト 出所:JETRO より大和総研作成

これらの他に、植物検疫条件によって輸入が禁止されている品目もある。原則とし て、ビワは輸入が禁止されている。また、籾と玄米は植物検疫法に基づく禁止品目に 関する農業協同組合省告示(2007 年 4 月 26 日付)によって輸入禁止品目に指定されて いるため、基本的には輸出ができない(事前に日本側の国家植物防疫機関からタイ側 の農業局長宛てに書面による輸入許可申請を行い、病害虫のリスク評価を受けなけれ ばならない)。ウンシュウミカンについては、日タイ間の二国間合意による条件(登 録地域での栽培、園地の登録、ミカンバエのモニタリング調査、梱包施設の登録、日 タイ植物検疫当局の合同輸出検査)を満たす場合のみ輸出が可能となっている。

■ 輸入許可取得必要品目(19品目) ■ 輸入証明書が必要な産品(22品目)

1 薬品、製薬製品 1 粉ミルク

2 クレンブテロール化合物 2 生乳

3 アルブテロール、サルブタモール 3 ジャガイモ 4 石碑用または建築用の石の一部 4 たまねぎ

5 中古車 5 にんにく

6 中古二輪車 6 ココナッツ

7 中古の輸送用自動車(30人以上の乗客用) 7 乾燥竜眼

8 中古ディーゼルエンジン 8 コーヒー

9 金 9 茶

10 コイン 10 胡椒

11 骨董品 11 トウモロコシ

12 違法コピー品製造用機械 12 米(調理済みのものおよび米製品を除く)

13 凹版印刷機、カラーコピー機 13 大豆

14 プラスチックのくず 14 ココナッツの果実

15 チェーンソー 15 たまねぎの種

16 魚粉(60%未満のタンパク室含有量の魚肉) 16 大豆油

17 カフェイン 17 パーム油

18 過マンガン酸カリウム 18 ココナッツ油

19 揮発性亜硝酸アルキル 19 砂糖

20 豚の贓物 20 コーヒー製品

21 エシャロット 21 大豆油かす

22 オレンジ 22 生糸

23 扇風機、炊飯器、電球

24 新品のタイヤ ■ 輸入課徴金が課せられる品目(3品目)

25 給湯器 1 魚粉(60%を超えるタンパク質含有量の魚肉)

2 トウモロコシ 3 大豆油かす

輸入規制品目にも農 産品・加工食品を多く 指定

検疫条件や告示によ って輸入禁止とされ る品目

また、水産物については保健省告示第 264 号(2002 年)により、フグの全種類とフ グの身を成分に含む食品の輸入が禁止となっている。

②食品にかかる規制

タイでは、保健省(MOH)が管轄する 1975 年食品法により、国内における食品の製 造、販売、販売を目的とした輸入の規制について定めている。MOH またはその傘下の食 品医薬品局(FDA)は同法に基づき告示を通達し、タイで事業を行う食品関連事業者は すべてそれらの告示に従う必要がある。規則の追加や変更はたびたび発生するため、

自社が取り扱う品目にかかる規制について、常に動向を確認しておくことが求められ る。

食品法では、食品を「一般食品」、「特定管理食品」、「表示管理食品」、「品質 規格管理食品」の 4 つに分類している。輸入に係る手続きや各種規制は、分類によっ て異なる。一般に、青果物や水産物、畜産物は「一般食品」に分類されることが多く、

それらの加工品、加工食品は「一般食品」以外の 3 つのどれかに該当するようだ。し かし、食品の形状や加工の度合いによって同じ食品でも分類が別になる場合もあるた め、事前に FDA に問い合わせることが望ましい。

③一次産品(青果物、畜産物、水産物)

輸入者は品目に応じ、貨物到着前までに各管轄機関に輸入許可申請書を提出し、輸 入承認通知書を取得しておく必要がある。

また、事前に検疫申告書または原産国で作成された検査証明書、必要に応じて非遺 伝子組換え証明書の提出も求められる。基本的な手続きの流れは同じだが、検疫内容 によって管轄する局(Department)が異なるため、書類のフォームは各局によって異 なる。

植物検疫は農業・協同組合省農業局(DOA)が管轄し、2008 年改正植物防疫法(Plant Quarantine Act (No.3) 2008)に基づいて実施されている。また、動物検疫は 1956 年 動物伝染病予防法(Animal Epidemics Act)と 1999 年同改正法に基づき、農業・協同 組合省畜産振興局(DLD)の家畜疾病管理部(DDC)下の動物検疫所で実施されている。

尚、魚介類の検疫は DLD から水産局(DOF)に権限を委譲された形を取っている。

進出している日系食品メーカーへのヒアリングによると、同社は原料として野菜を 日本から輸入する際、東京商工会議所の承認を受けた「産地証明書」を提出している という。通常、農林産品の場合は農家か農協(JA)が発行するものである必要がある が、同社は JA から購入しておらず、農家との直接取引でもないため、購入元が取引先 農家の名称と住所を取りまとめたリストを作成することで特別に認められているよう である。書類が揃っていれば特に問題なく輸入できているとのことだ。

また、日系流通企業へのヒアリングからも、一次産品は「素通りに近い」とのこと で、魚、肉、野菜類は必要書類が揃っていれば書面の検査のみで問題なく輸入・販売 ができているようである。尚、輸入実績も考慮されているのではないかとのことであ る。

食品規制は度々変更、

常にウォッチする必 要

食品法の分類によっ て細かな手続きや規 制が異なる

一次産品は輸入許可、

産地証明、検疫等の手 続きが必要

実態として、一次産品 の輸入にはあまり大 きな障壁がない

④加工食品

加工食品は多くの場合、一般食品以外に分類される。輸入に際しては、FDA での手 続きのみであるが、輸入許可の取得、食品登録番号(通称オーヨーマーク)の取得は 必須となる。特定管理食品の場合のみ、食品製造法登録が追加的に必要となる。

また、重金属と汚染物質、化学物質、食品成分、食品添加物、食品容器に関する規 制や、表示規制もある。尚、加工食品は検疫対象には該当しない。

図表 2-10:加工食品の輸入手続き

出所:JETRO より大和総研作成

進出日系小売企業へのヒアリングによると、加工食品の検査は特に厳しく、同社の 場合は品目によって、FDA への申請から認可まで 4 ヵ月~2 年を要している。同社の所 感としては、担当官の属人的な知識や経験によって対応のレベルが異なっているせい ではないかとの意見が聞かれた。尚、一次産品と同様、輸入実績も考慮されているの ではないかとのことである。

特に問題点として挙げられたのは、大量のサンプル要求であった。同社の場合、過 去に「食品」を 2 ケース、「日用品」を 4 ケース求められたことがあるという。現地 の日系検査機関へのヒアリングによれば、農産物の残留農薬やカビ毒の検査では、数 百グラムのサンプルで 200 項目程度が検査可能とのことであり、品目や検査内容が異 なるとしても、不当に過剰な量を要求されている可能性が高いといえよう。

また、2016 年 12 月に強化された食品添加物の表示規制(ラベルの表示ベースで食 品添加物の検査が全て CODEX 準拠となった)に対しては、タイでの輸入・販売用に仕 様変更をメーカーに求めている。尚、タイでは全成分表示を行っている訳ではなく、

ラベルに表示された項目の検査を行っているとのことである。

当該の規制強化により対象となったのはトレハロース(カップ麺のコシを出す成分 として多く用いられる)、多くの着色料(クチナシ、ベニコウジ、シソ、ハスカップ 等)である。

(2) 通関手続き

タイ全土には、バンコクの税関本部以外に 48 ヵ所の税関事務所(Customs House)

① 輸入許可申請(様式Orr.6) ※申請料:1万5,000バーツ

② カテゴリーによる商品登録

食品登録番号(オーヨーマーク)の取得

※必要に応じて追加

食品製造法登録

GMP証明書の提出(営業許可証でも代替可能)

2~35日 食品輸入許可書(Orr.7)の取得

手続き 所要日数

約7日

税関は本部以外に、全 国に48ヵ所

加工食品の輸入・販売 には多くの規制をク リアする必要

加工食品の検査は厳 格。手続きに時間を要 する覚悟

がある。4 つの地域ごとに管轄が異なり、地方税関部(Regional Customs Bureau)1

~4 が分担している。

地方税関部 1 が管轄するのはバンコクを中心としたタイ中部の広範な地域で、税関 本部をはじめ、バンコク港、スワンナプーム空港、レムチャバン港が含まれる。また、

東側にはアランヤプラテート等、カンボジアとの国境税関がある。地方税関部 2 の管 轄はタイの東北部で、ムクダハン等、ラオスとの国境税関を含む。

地方税関部 3 はタイの北西部で、メーソット、メーサイ等ミャンマーとの国境税関 を有する。地方税関部 4 はタイ南部を管轄しており、マレーシアとの国境であるサダ オ等が含まれる。

図表 2-11:タイの税関事務所

出所:タイ税関より大和総研作成

タイの通関手続きは、効率化とペーパーレス化を目的として、2007 年 1 月に導入さ れた“e-Customs”により、全ての手続きが電子化されている。

e-Customs は、“e-Import”、“e-Export”、“e-Manifest”、“e-Payment”、そ して“e-Warehouse”の 5 つのシステムから構成され、それぞれを連動して使用できる ため、事業者にとって輸出入手続きの効率的な実施が期待できる。e-Customs は、空港、

1 Sangkhla Buri 1 Thai Li

2 Mae Klong 2 Chiang Khan

3 Prachuap Khiri Khan 3 Nong Khai

4 Ranong 4 Bueng Kan

5 Ban Don 5 Nakhon Phanom

6 Ko Samui 6 Mukdahan

7 Chumphon 7 Khemarat

8 Mab Ta Put 8 Chong Mek

9 Khlong Yai 9 Chong Sa-Ngam

10 Chantaburi 10 Chon Chom

11 Aranyaprathet

1 Chiang Saen 1 Krabi

2 Chiang Khong 2 Phuket

3 Thung Chang 3 Phuket International Airport

4 Maesai 4 Kantang

5 Chianf Dao 5 Satun

6 Mae Hon Son 6 Wang Prachan

7 Chaing Mai International Airport 7 Padang Besar

8 Mae Sariang 8 Sadao

9 Maesot 9 Ban Prakob

10 Betong 11 Buketa 12 Su-ngai Kolok 13 Tak Bai 14 Pattani

15 Hat Yai International Airport 16 Songkhla

17 Nakhon Si Thammarat 18 Sichon

Regional Customes Bureau 1 Regional Customs Bureau 2

Regional Customs Bureau 3 Regional Customes Bureau 4

電子通関システムは 全ての税関で利用可 能