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第5章 カンボジアにおける流通環境

4 投資上の現状と課題

(1) 投資規制

外国企業・外国人による土地所有は不可能であるものの、サービス分野においても 外資投資の制限が緩やかであり、メコン圏の中でも外資による投資が容易であるとさ れる。ただし、「改正投資法施行に関する政令No.11」の付属文書 1 において、特 定の分野につき、企業の国籍問わず投資が禁止されている。最低出資金は法令では 400 万リエル(約 1,000 ドル)とされる。ただし、商業省は 5,000 ドル以上を推奨してお り、法律と運用の乖離に注意が必要。

図表 5-19:投資が禁止されている分野

出所:カンボジア開発評議会ウェブサイトより大和総研作成

http://www.cambodiainvestment.gov.kh/ja/investment-scheme/prohibited-fields-of-investment.html

(2017 年 2 月閲覧)

(2) 投資優遇策

カンボジア政府は外資誘致のため優遇政策を実施している。主な政策に①適格投資 プロジェクトへの優遇措置と、②SEZ 入居企業への優遇措置、③Best Traders Incentive がある。

① 適格投資プロジェクト(Qualified Investment Project:QIP)

投資許可は投資家や投資企業に対して発給されるのではなく、投資プロジェクトに 対して発給される。投資許可を得たプロジェクトは適格投資プロジェクトと呼ばれ、

優遇措置が自動的に付与される。

QIP の根拠法は『「改正投資法」第 5 章の QIP に対する投資優遇措置の規定』であ る。根拠法によって QIP の対象となるプロジェクトが定義されているが、特定の産業 を対象に追加的な投資優遇措置が省令や他の規定の形で導入されている。

・ 向精神剤及び非合法薬の製造・加工

・ 国際規約または世界保健機関によって禁止され、公衆の健康や環境に影響を及ぼす、毒性を 有する化学品、農業用除虫剤・殺虫剤、その他の化学品を使用する薬物の製造・加工

・ 外国から輸入する廃棄物を使った電力の加工及び生産

・ 森林法により禁止されている森林開拓事業 外資規制は緩やか

適格投資プロジェク ト(QIP)には優遇措 置が付与される 根拠法の他、政令や規 定により対象プロジ ェクトが規定される

図表 5-20:QIPの要件

出所:カンボジア開発評議会ウェブサイトより大和総研作成

http://www.cambodiainvestment.gov.kh/ja/investment-scheme/investment-incentives.html

(2017 年 2 月閲覧)

QIP に認定されたプロジェクトには法人税や輸入関税、付加価値税が免除される。

カンボジアの法人税率は 30%であるが、QIP に認定されると最大 9 年間が免税とな る。免税期間は「始動期間+3 年間+優先期間」の合計で決定される。始動期間とは、

「最終登録証発行日から最初に利益を計上する年度の前年度末」または「最初に売上 を計上した年度から起算して 3 年間」のいずれか早期に到来した年度のことを指す。

優先期間は始動期間に 3 年を加えた年数が経った後に適用される期間で、事業形態や 投資額によって適用期間が異なる。

農業や農産加工分野での QIP では、最長となる 3 年間の優先期間(Priority Period)

が認められている。

投資分野 投資条件

輸出産業に全て(100%)の製品を供給する裾野産業 10万米ドル以上

動物の餌の製造 20万米ドル以上

皮革製品及び関連製品の製造 金属製品製造

電気・電子器具と事務用品の製造 玩具・スポーツ用品の製造

自動2輪車及びその部品・アクセサリーの製造 陶磁器の製造

30万米ドル以上

食品・飲料の生産

繊維産業のための製品製造 衣類縫製、繊維、履物、帽子の製造 木を使用しない家具・備品の製造 紙及び紙製品の製造

ゴム製品及びプラスチック製品の製造 上水道の供給

伝統薬の製造

輸出向け水産物の冷凍及び加工 輸出向け穀類、作物の加工

50万米ドル以上

化学品、セメント、農業用肥料、石油化学製品の製

造。現代薬の製造。 100万米ドル以上

近代的なマーケットや貿易センターの建設

200万米ドル以上 1万ヘクタール以上 十分な駐車場用地 工業、農業、観光、インフラ、環境、工学、科学その

他の産業向けに用いられる技能開発、技術向上のた めの訓練を実施する訓練・教育機関

400万米ドル以上 国際貿易展示センターと会議ホール 800万米ドル以上

QIPには免税措置がと られる

図表 5-21:法人税免税における優先期間(Priority Period)

出所:JICA「カンボジア投資環境」、カンボジア開発評議会ウェブサイトより大和総研作成

輸入関税5F6の免税が適用される範囲は、当該プロジェクトがどの QIP のタイプに適用 されるかにより異なる。QIP のタイプは、「輸出加工型 QIP」、「国内志向型 QIP」、

「裾野産業 QIP」がある。

図表 5-22:タイプ別免税範囲

注:裾野産業 QIP が製品を 100%輸出企業に提供しなかった場合や直接輸出しなかった場合においては、

その部分について輸入関税及びその他の税金を支払うことを要する。

出所:カンボジア開発評議会ウェブサイトより大和総研作成、

http://www.cambodiainvestment.gov.kh/ja/investment-scheme/investment-incentives.html

(2017 年 2 月閲覧)

付加価値税(VAT)免税6F7は種、繁殖種、残渣、トラクター等の農業用機器など、農 業用原材料・機器を対象に導入されている。原則還付方式が適用され、国内調達に係 る VAT については、取引時には VAT を支払い、後に還付手続きをとる。

② 経済特区(SEZ)

カンボジアにおける SEZ の設置は、「経済特別区の設置及び管理に関する政令 148」

により根拠づけられ、21 の SEZ が認可されている。そのうち、日本企業が入居してい る主な SEZ は 9 ヵ所ある。同法令に定義されている条件を満たしたものが、SEZ として

6 通常の課税率は、0%、7%、15%、35%。

7 通常の課税率は 10%。

事業形態 投資額 優先期間

500万ドル未満 なし

500万ドル~2,000万ドル 1年

2,000万ドル以上 2年

5,000万ドル未満 2年

5,000万ドル以上 3年

1,000万ドル未満 なし

1,000万ドル以上 1年

短周期農業 長周期農業

1,000万ドル未満 1年

1,000万ドル~3,000万ドル 2年

3,000万ドル以上 3年

基幹産業

3年 軽工業

重工業 観光業 農業・農産業

QIPのタイプ 免税範囲

輸出加工型QIP 生産設備、建設資材及び輸出品生産のための生産投入材 国内志向型QIP 生産設備、建設資材、原材料、中間財、副資材

裾野産業型QIP 生産設備、建設資材、原材料、中間財、生産投入用副資材 輸入関税の免税適用

範囲はQIPのタイプに より異なる

日本企業が入居する 主なSEZは9ヵ所ある

認定される。

SEZ では QIP と同様の関税、法人税、償却に関する優遇措置に加え、製品が国内市 場に供給されない場合は付加価値税率が 0%となる。また、SEZ への投資家、SEZ 内で 勤務する従業員は SEZ におけるすべての投資収益や受領する資産の非国有化、自由価 格の保証が付与されている。

図表 5-23:主要な SEZ

注:シャンドンサンシェル経済特区で稼働しているのは中国系の 1 社のみ。ただし、製品の仕向け地はす べて日本である。

出所:JICA カンボジア、

1

2

3 4

5

6

タイ ラオス

ベトナム

経済特区 設立年 ロケーション 日系企業数

サンコーポイペト経済特区 2013年 ポイペト国境から3km 1社

ニャンコク コッコン経済特区 2006年 シアヌークビル港から230km 2社

シアヌークビル港経済特区 2013年 シアヌークビル港隣接 3社

シアヌークビル経済特区 2008年 シアヌークビル港から12km 1社

プノンペン経済特区 2006年 プノンペン市内から18km 42社 シャンドンサンシェル経済特区 2013年 バベットから19km 0社※

ドラゴンキング経済特区 2012年 バベットから12km 2社

タイセン経済特区 2006年 バベットから6km 4社

マンハッタン(スヴァイリェン)経済特区 2005年 バベットから6km 1社

⑥ SEZ入居企業には、免 税措置や様々な補償 が付与される

第6章 ミャンマーにおける流通環境