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音質に関心深まり,抵抗拡大器使用さる

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(1926〜1927年)

DXに興味が集まる一方,世間では音質に対 してもようやく関心が深まってきた。「無線と 実験」1927年(昭和2年)3月号は「クリヤト ン」特集号となっている。クリヤトン,すなわ ち今日でいうハイファイ1)である。同号には

「抵抗拡大器の作り方」という記事が掲載されている。筆者名は衆立無線研究所 試験室となっている。

抵抗拡大器の作り方

…(前略)…之を将来に

つい

就て考ふるも,近く大電力放送設備成り遥かなる津々 浦々まで強力なウェーヴが達する時,誰か遠距離受信を

うんぬん

云々し,音量の小な るをかこたんや,その時こそは一にも音色,二にも音色で,受信機選択の標 準が音色の良否で定められるであらうこと,欧米現在の傾向と同じ行き方で あらう。されば吾人は,将来の実用受信機は,先づ音色を第一標準に置くも のと考定し,以下,

如何にしてヂストウション〔歪〕の無きクリーヤトンの 拡大器を得んかについて少しく記述しやう。

◇ 可聴周波の拡大器

高周波拡大・即ち遠距離受信については,今後余り重大視する必要もない と思ふから,

ここ

茲には省略し,又再生受信機等に作る検波球のヂストウション も,調整の

い か ん

如何によって殆んどクリーヤトンを出し得るから,

此処では主と して低周波(可聴周波)拡大の方法に就いてのみ考へを進めて行く。

検波球又は鉱石検波器で検波した可聴周波の電流を大きくラウドスピー カーに出すために,従来用ひられてゐる方法は三つある。

それは

一,トランス拡大法(低周波トランス使用)

二,インピーダンス拡大法(低周波チョークコイルを使用)

1)〔編者註〕High Fidelity(高忠実度)の略。だいたい50c/sから18,000ないし20,000c/sまでを再生できるオーディオ 機器に対して言われた。

三,レヂスタンス拡大法(無誘導の高抵抗を用ひる)

である。そして,第一の方法は,拡大率が大きいから音量は十分過ぎる程出 るが,低音(バスやドラムの音調)の拡大が弱くなり,ヂストウションを起 し

やす

易い。第二の方法は第一に比較すると,割合に高低各音の拡大が均等に出 来るがまだ完全ではない。第三の方法は,拡大の各定数が真空管の内部抵抗 とか,抵抗拡大に用ゆる外部抵抗,真空管の増幅率等によって定まるのであ るから,高低各音調の周波に対して殆んど一様に拡大し得るので,従って決 してヂストウションが起きない。只,此拡大法の欠点は拡大率が他の方式に 比較して非常に小さいので,従来余り我国では歓迎されなかつたのであるが,

大電力実施の暁は必ずや大流行を来すべく,本式の研究は是非只今から始め て行かねばならぬものと思ふのである。

◇ 理論は何うでもよいといふ人々よ!

「僕は放送開始前から無線を

73図 

実地にやつてゐるので,理論は 少しも分らぬが,実地だけは日 本一だ」と自慢してゐる人があ つた。抵抗拡大法の配線図によ り一機を手際よく組立てたまで は良かつたが,日本一の実地先 生,どうしても思ふ様にクリヤ

トン拡声装置が働かず,否,真のクリーヤで,寂として少しも声が無い,

いわゆる

所謂 無声装置が出来上つてしまつた。その友人が見兼ねて予の試験室を訪れたの は,

りょうあん

諒 闇1)の春まだ寒き正月の半頃であつた。以下はその時の対話の大要 である。

○「私は友人の無線大家に依頼して『無線と実験』の附録の配線図にある レヂスタンスアンプリファイヤーを一台造つて

もら

貰つたのですが,どうも成績 が思はしくないのです。あの配線図又はデータが間違ってゐないでせうか」

△「左様ですナ,ハハア第九のこれですね。〔第73図〕R1が十万オーム,

R2が二十五万オーム,球が二〇一Aだから,是れでよいでせう。コンデン サーが〇・〇五と,まアこんなものでせうな」

1)著者注。大正天皇の崩御〔1926年(大正15年)1225日〕のこと。

○「配線図が違つてはゐないでせうか」

△「左様……別に違つてはゐませんな」

○「実はニウトロダインの再生検波に,このレヂスタンスアンプリファイ アーを附けて

もら

貰つて六球にしたのですが,二〇一A六個も使つて,今迄使つ ていた一九九の四球よりも悪いのです」

△「成程,どの様に悪いのですか」

○「どうといつて,殆んど聞こえないのです」

△「それはどうも,球は何です」

○「球は○○○○です」

△「一番終の球は」

○「それも○○○○の二〇一Aを使ひました」

△「抵抗値はどうしましたか」

○「ブリッチで測つて

もら

貰つて,配線図のデータ通りのものを買つて来たの です」

△「そうですか。いや分りました。それでは聞こえぬのが当然でせう」

◇ 抵抗拡大のデータ

トランス拡大の場合には,指定以外の真空管を使つたからと云つて一々ト ランスを変へる程のことも無いが,抵抗拡大では,抵抗と球の内部抵抗との 関係は重大な意味を持つている。一体,抵抗拡大には抵抗拡大用として専用 のヴァルブがあるので,それは特に内部抵抗が少く,増幅率を非常に高く設 計してあるものである。此の様な特殊な球,

たと

例へばマルコニーのDE5Bだと か,フツトのLE351の

ごと

如きを用ひた場合は,B電圧を相当に用ひれば,

かえ

却つ てトランス拡大よりも優秀な拡大率が得られるものである。

しか

然し,普通の二

〇一A型を抵抗拡大に用ひた場合は,どうしてもトランス拡大の二球に対 し,三球は必要であるが第一の欠点である。

扨て,それでは二〇一A又は其 他の球に対し,R1や,R2,又C2,R3

如何様に設定すれば良いのであらう か。固苦しい数式を抜きにて要点のみを述べて見ると,

一,R1の決定,抵抗拡大に於いて,その拡大率を用ふる球の拡大率(増幅

µ)に等しくするためには,R1は球の内部抵抗rに比し出来るだけ大であ

らねばならぬ。

若しR1rより少であるならば,R1の両端に於ける電圧効 果はずつと落ちるのである。故にR1を大とするか,或はrを少とすること

が必要である。それではと云つてR1をあまり過大に設計すると,B電圧を それに応じて高くして行かねば,能率はずつと下る。所が真空管の内郎抵抗 rと云ふものは,ブレート電圧が高くなると次第に減じて来るので,抵抗拡 大に於いて,B電圧を高くするといふことは非常に有意義なこととなるので ある。

○「ああ,そうですか。よく分りました。実はB電池は九十ボルトを使つ たので……」

△「成程,九十ボルトしか使はなかつたのですか,それでは球が働きたく てさぞムズムズしてゐたことでせうが,

つい

遂に働くにも働けなかったのでせう」

普通の真空管を用ひる場合,R1は通例rの四倍か五倍を用ひる。普通の 二〇一Aは内部抵抗(r =プレートインピーダンス)が一万

乃至万オーム程 度であるから,R1は五万

な い し

乃至十万オームの程度でよいが,和製のものには 一万オーム以下のが多いから,その場合はもつと低い値でよい。

二,R2の決定 R2はグリッド抵抗である。是は通常R1の五倍以上を用 ひるので,二〇一Aの場合は二十五万オーム

な い し

乃至五十万程度のものがよいの である。但しC電池を用ひぬ場合は十倍位が適当である。

三,C2の決定 此のコンデンサーは拡大する可聴周波の最低の振動数の 通過に際しても,なるべく低い抵抗しか与へぬやう,なるべく容量の大なる ものがよいのであるが,そのインピーダンスは少く共R2の十分の一以下で あらねばならぬ。即ちC2が少であると低音の通過に際しヂストウションの 原因となり

やす

易いのである。一般には〇・〇五

な い し

乃至〇・五マイクロファラド位 のものを用ひてゐる。

四,R3は何故低値にしたか。これは最終の球に一一二を使ったからで,UX 一一二のrは五,六千オーム程度のものであるから,図のR3は五万オーム でも

なお

尚多過ぎる観がある位なのである。

◇ 真空管は何がよいか

前記のDE5BやLE351等は抵抗拡大用として誠に理想的の球であるが,抵 抗拡大にはトランス拡大の場合よりも球が多く必要であるのに,更にこんな 高価な球を使はねばならぬといふのは,誠に国家経済の上より見ても面白く ない。所が,幸なるかな,和製の球の多くは,プレート抵抗rが低いのである。

故に和製の球の中よりなるべく拡大率の多い球を選んで抵抗拡大用とすれば,

真空管がハードである限りは,完全に抵抗拡大用として良結果を与へるので ある。当所ではNVV6Bを用ひて非常な良成績を得てゐる。…(後略)…

74図 

アマチュアやプロが暗中模索 していた当時の状況が,この記 事からよくわかると思う。

一方,既製品の抵抗拡大器も市 場に現われた。第74図は当時の 新聞紙上の広告である。

抵抗拡大には10〜500kΩの抵 抗が必要なことは今日でも同じ であるが,当時はなかなか入手 困難であった。MΩ単位のもの

はグリッドリークとして多用されたから容易に入手できた,

つぎに示すのは原田三夫氏著「誰にも出来る高級受信機の作り方」(誠文堂1926 年4月版)の中の一節である。

鉛筆を用ひる抵抗増幅器の造り方

抵抗増幅器に用ひる抵抗は,〇・一メガ1)と四分の一メガとが用ひてある。

しか

然るにかういふ抵抗は,わが国ではまだ売られていない。随分ラヂオ商を尋 ねまはつたがない、これは恐らく実験家が少ないためとラヂオ商に知識がな いからであらう。

私は止むを得ず鉛筆を用ひてやつて

75図 

見たが,可なりうまく行つた。その方 法を次に述べやう。

この増幅器は,前に述べた再生式受 信器につけるもので,右に述べたもの に一個のトランスを用ひたもので,そ れを用ひないに比して少し高価である が,それだけ増幅率が大きい。

もっと

尤 も そんなのを作る

くら

位ひなら,トランスの

1)著者注。0.1MΩのこと。

ドキュメント内 2 (ページ 85-94)