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音更川における護岸・高水敷の被災事例

第 1 章 序 論

5.2 音更川における護岸・高水敷の被災事例

2016 年出水は,約2 週間の間に3 波の洪水の来襲の後にピーク流量が既往を大きく上回る規模

の4波目の洪水が発生した。十勝川水系では,幾つもの支川において流路の蛇行化に伴う被害が確 認され(図5-2),音更川上流区間(第3章および第4章似て検討)および中流区間(第2章にて概

説した音和橋上流)においては,低水路護岸が設置されていたにも拘わらず,侵食が堤防ラインま でに及び多数の堤防決壊が発生したことは,前に述べたとおりである。

(1) 低水護岸および高水敷の流失後に堤防決壊に至る被災状況

図5-3に,音更川中下流(国管理区間である音和橋上流,KP20.9付近)における堤防決壊の時間 変化の画像を示す。本画像は,2016年出水の際に北海道開発局が設置しているビデオカメラにて継 続的に撮影されたものであり,越流による堤防決壊とは全く異なる形態で堤防決壊が進行する様子 が鮮明に捉えられている極めて貴重なものである(動画データは添付のCDに掲載,動画-3)。

図5-3によると,音更川では堤防防護の観点から必要な高水敷幅を80mと設定し,低水路には護 岸が設置されていたが,出水途中にそれらが流失し,河岸を保護する機能が失われていたことが分

かる(図5-3①)。さらに,高水敷の侵食が発達して堤防防まで到達して後,わずか40分程度の短

時間のうちに堤防侵食が進行し,堤防天端が失われていく様子が記録されている(図5-3②~図 5-3⑥)。今後の将来洪水を想定した場合,既存の低水護岸背後の高水敷における侵食プロセスを把握

図5-2 2016年月出水での十勝川水系における護岸および河岸侵食箇所(開発局提供)

し,堤防まで被害が及ぶプロセスを把握しておくことは重要と考えられる。

(2) 低水護岸および高水敷の被災状況

低水護岸の被災は音更川直轄区間だけでも20 箇所以上で確認され(図5-2),その多くが護岸背 後の高水敷の侵食を伴うものであった。図5-4に被災例を示す。図5-4に示す河床変動量コンター 図は,2013年と2016年出水後のLP測量(帯広開発建設部)の地盤データの差分値である。LP 測 量では水面下の計測はできないが,測量時には水位が低いことや急流河川で水深が小さいことを考

図5-3 2016年月出水での音更川(音和橋付近)の堤防侵食進行状況(北海道開発局撮影)

えると,この差分値は2016 年出水前後の主な変化量としてとらえられる。コンター図と写真より,

低水護岸が設置されているにも関わらず,高水敷が堤防付近まで侵食されている箇所が確認できる。

このような高水敷侵食が多数生じた要因は,次のように,高水敷上の掃流力が増大しやすいとい う音更川の河道特性にある。図 5-5に2011 年出水の痕跡水位から試算した無次元掃流力と洗掘深

(LP 差分値)との関係を示す。図は高水敷を縦断方向に約30 m,横断方向に約20 mで分割したメ ッシュ毎に評価した値を示している(高水敷上の無次元掃流力を試算する際の粒径に河道内の河床 材料の代表粒径を代用している点に留意)。図より無次元掃流力を確認すると,表面侵食の恐れがあ るとされる τ > 0.07 7) を示すメッシュが多く存在している。これは,音更川の河床材料が比較的 小さいことや水位が高水敷高以上に上昇した時の低水路が受け持つ河積が比較的小さいことが要因 として考えられる。実際,2016年出水時,音更川では河岸侵食で発生した土砂が低水路部に堆積す

図5-4音更川低水護岸被災例 KP13~KP14

る傾向5が確認されており,音更川の河道内でみられたこのような土砂収支の特性は,大出水時に 低水路の受け持つ河積が減少して高水敷上の掃流力が増大する要因になり得る。実際,図5-5 を見 ると,音更川では洗掘深と高水敷上の掃流力自体にほとんど相関が無いことが分かる。

図5-6に,2016年出水後の音更川中流域の破堤区間の画像を示す。図より,低水路内には砂州 状の堆積がみられ,砂州による主流路の湾曲が高水敷の侵食に影響している可能性が推察される。

しかし,低水路の流路と高水敷侵食の関連性は不明である。そこで5.3節では,定性的ではあるが 水理模型実験にて,音更川のように低水路内の主流が砂州によって湾曲するような状況下におい て,その水衝部付近で生じる低水護岸背後の侵食過程を観察し,砂州による低水路内流路と護岸背 後の侵食の関連性を考察する。