第 1 章 序 論
3.3 数値解析による非定常流量下における蛇行流路の発達
3.3.3 計算結果と考察
(1)水位と河道の平面形状の再現性
図3-13に,計算終了時の河床変動量コンター図(河川周辺の衛星写真に重ね合わせ)を示す。計 算結果の平面形状と現地データとを比較すると,堤防決壊箇所の位置に若干の違いはあるものの,
流路の蛇行化に伴い左右岸連続での破堤が再現できていること,川幅の拡幅距離が約200m 程度と 現地データを再現できていること,蛇行の波長に大きな変化が生じていないことなどが再現できて いる。
図3-13 計算終了時の河床変動量コンター図(A,B,Cは図3-18の測線を示す)
上) 被災後の航空写真(開発局提供)
下) 河床変動量コンター図(計算)
図3-14 右岸堤防における痕跡水位と計算水位を重ねた図
図3-14に当該区間の右岸堤防における痕跡水位と計算水位を重ねた図を示す。図3-14より,計 算水位は現地データと同じく堤防高を超えておらず,堤防は計算流量ピーク時に存在し,その後の 流量低下時に決壊に至ることが再現できていると分かる。これらの結果から,当該数値解析モデル は本研究における流路変動特性の考察に十分な精度があるものと判断した。
(2)非定常流量下における流路の蛇行化のプロセス
図3-15から図3-17に数値解析による水深,流速,河床変動量の時間変化をコンター図で示す。
図3-15より水深の時間変化を比較すると,水深は時系列aや時系列b(ピーク時)付近にて最も大 きく,出水ピークを過ぎると時間と共に値が小さくなる様子が見てとれる。同様に,図3-16より流 速の時間変化についても,合成流速は時系列 a や時系列b(ピーク時)付近にて最も高速な流れの 範囲が広いことが分かる。一方,図3-17より河床変動量の時間変化を比較すると,当該区間の流路 の蛇行化は出水ピーク後に次第に明瞭化する様子が示された。つまり,出水後半より出水前半から 出水ピークにかけての方が河道内の流速や掃流力が大きい条件であったにも関わらず,音更川当該 区間では流量低下時に流路が側方移動し,蛇行化に伴う堤防決壊が進むことが分かる。
続いて,図3-18に数値解析による堤防決壊箇所測線(A - A’,B- B’,C - C’断面)の横断形 状の時間変化を示す。堤防決壊箇所の河床高の横断形状を確認すると,流路の側方移動に伴う堤防 の決壊は,流量低減期である時系列d付近(図3-12)で生じていることが分かる(図3-18)。各断 面では低水路に土砂が堆積しながら流路の側方移動が生じており,土砂の堆積が流れの偏向をもた らしたものと推察される。そこで,図3-19にA-A’断面における掃流砂量と累積流砂量を示す。
図3-15 数値解析による水深(m)の時間変化コンター図(画像背景:Google Earth 2016/9)
図中のa~eは図3-12に示す時系列記号に該当する
図3-16 数値解析による流速(m/sec)の時間変化コンター図(画像背景:Google Earth 2016/9)
図中のa~eは図3-12に示す時系列記号に該当する
図3-17 数値解析による河床変動量(m)の時間変化コンター図(画像背景:Google Earth 2016/9)
図中のa~eは図3-12に示す時系列記号に該当する
(一部の動画データを添付のCDに掲載 動画-2)
図3-19によると,掃流砂量は流量ピーク時点までは増え続けているが,流量減水期になると急激に 減少している。つまり,流量ピークを過ぎた時点において,それまで移動していた多量の土砂が急 激に停止し始めたと分かる。
図3-20に,図3-13に示す測線A―A’と測線B―B’付近の時系列b,d,gにおける河床変動量 コンター図に掃流砂ベクトルを重ねたものを示す。図 3-20 より流量変化と流路変動特性との関係 に着目すると,流量低下時,低水路内の水深は次第に浅くなる反面,流路内の河床高は次第に上昇 する傾向が認められる。これは,それまで移動していた土砂が停止することで河道内への土砂の堆 積が進行し,砂州が発達するためである。このことから,掃流砂ベクトルから分かるように,低水 路内にて流れが偏向しやすく,流路の蛇行化や分岐といった,活発な流路変動が生じやすい状況が 形成されると推察される。
図3-18 数値解析による堤防決壊箇所測線の横断形状の時間変化
(A - A’,B- B’ ,C - C’断面,測線位置は図3-13参照)
図3-19 A - A’断面における掃流砂量と積算流量(計算)
藤田ら 23)によると,側岸侵食が始まると砂州の前進が停止することで砂州の波高が成長すると 指摘されている。したがって,流量低下時に流路が側方に移動し,堤防や河岸まで到達した場合,
側岸侵食により土砂が河道内に供給されることが更なる流路の側方移動が促す可能性も考えられる。
以上のことから,前述したように中上流部の急勾配区間における河川整備に際しては,流量流下能 力を確保するのみでは想定以上の大規模出水が生じ多量の土砂が移動するような場合,河岸侵食リ スクを充分に抑制できない可能性が示された。たとえ流量ピーク時に外水氾濫しなかったとしても,
流量低下時に流路の大規模な側方移動が生じ,堤防破堤に至る可能性があることに留意する必要が ある。
なお,本計算では侵食による樹木流失を考慮することで実河川での事例を再現した。本区間にお いて,樹木が蛇行に及ぼした影響に関しては久加・山口らによる研究7)を参照されたい。
図3-20
数値解析による四十号橋付近における河床変動量コンター図に掃流砂ベクトルを重ねた図