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第 1 章 序 論

5.3 水理模型実験

5.3.2 実験結果と考察

無次元掃流力0.065 で生じる流砂量は,現地の限界無次元掃流力が0.05だとして換算すると,現地

ではτ= 0.081で生じる流砂量に相当する(流砂量はMPM式8で試算)条件である。

実験中の計測として,各ケースにおいて最大流量時にトレーサー(発泡スチロール粒)を撒いて 流況を水路上空から動画で撮影した。実験終了後には,通水後に河床形状を3D スキャナで計測し た。

図5-12 にRun3の実験結果を示す。Run2と同様,護岸背後において水衝部の上流側(最大洗掘

深約2.7 cm)と下流側(同約1.3 cm)の2箇所で洗掘が生じた(図5-12下図の赤丸箇所)。図5-13

に示したのは,Run3の最大流量時(通水開始後3 時間45分)にトレーサーを流した時の流況の画 像である。かなり定性的ではあるが,撮影した動画でみられた代表的なトレーサーの動きを実線(低 水路の主流)と点線(高水敷上の流れ)の黄矢印で示す。図5-13の赤丸は図5-12中の赤丸と同箇 所を示す。図5-13より,水衝部の直上流で高水敷に乗り上がった流れは,水衝部の直下流で低水路 へ戻っているのがわかる。この流況と侵食・堆積状況より護岸背後の洗掘過程は次のように考察さ れる。

水衝部近傍で砂が動き始めると,砂が動く範囲の上流部では洗掘が進行し,その下流側では堆積 が進行する。洗掘により護岸背後で河床が低下した箇所では,流れの集中によって流速が増大する

図5-12 Run 3の実験結果

上)通水後の河床形状コンター(点線: 主流位置,凡例は図5-7と同じ)

下)護岸模型周辺の河床変動量

図5-13 最大流量時の流況(Run 3)

(赤丸は図5-11と同じ個所を示す)

効果で低水路の流れが高水敷に乗り上がりやすくなる。また,高水敷上の流れが下流側の堆積域を 乗り越える際に低水路へ向かい,このとき高水敷上の堆積域から低水路へ落ち込むような流れにな るため,この堆積域の下流側で砂の動きが活発になり洗掘が進行する。このような過程で水衝部の 上流側と下流側の2箇所に洗掘域が現れる。

続いて,図5-14にRun4の実験結果を示す。護岸背後の洗掘量は最大で3.7 cmとなり,特に,水 衝部より上流側(図5-14下図の赤丸位置)において流量規模の増大に伴い洗掘量が増大した。図

5-15にRun4 の最大流量時(通水開始後3 時間45分)の流況の画像を示す。図より,水衝部より上

流側の洗掘が大きい位置(図5-14 と図5-15の赤丸)で低水路から高水敷へ乗り上がって側壁方向 へ向かう明確な流れが確認された。これは,洗掘域と下流側の堆積域との比高差が大きくなり,図 5-14に赤点線矢印で示すように,堆積域を避けて流れが側壁へ向かったと考えられる。この流れに

図5-14 Run 4の実験結果

上)通水後の河床形状コンター(点線: 主流位置,凡例は図5-6と同じ)

下)護岸模型周辺の河床変動量

図5-15 最大流量時の流況(Run 4)

(赤丸は図5-14と同じ個所を示す)

よって,図 5-14 に見られるように護岸背後から側壁付近まで横断方向に侵食域が進行した。この ように,護岸の直背後の洗掘はその後の侵食域拡大に寄与していることが示唆される。

図5-14では高水敷上に砂州の形態が確認できる。図5-15の赤丸位置では,高水敷の砂州の前縁 線から低水路に向かう流れも見られ,高水敷から低水路へ落ち込む流れと低水路から高水敷に乗り 上がる流れの双方の影響によって,この箇所で洗掘が大きく進行したと考える。本実験では護岸の 損傷を再現していないが,仮に図5-13や図5-15の写真の赤丸の洗掘域で護岸の天端が低下すれば,

低水路の流れがより高水敷に乗り上がりやすくなり,実線で示した湾曲した主流路は遠心力の影響 も受けて点線で示される高水敷上の流れに容易に移行する可能性がある。実際,Run3ではx = 4~

15mの範囲で低水路が平均で9mm上昇し,高水敷水深 / 低水路水深比は0.37 であったのに対し,

Run4では低水路が平均で12mm上昇し,同比は 0.49であった。つまり,流量規模が大きいほど低 水路の堆積量が増加し,低水路の河積減少が生じ,より高水敷の水深と掃流力が増大することにな る。