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韓国の旅行業界における日本向け商品の造成と流通」 (中尾勝典)

ドキュメント内 JGR1894_10987.pdf (ページ 129-164)

−ランドオペレーターを中心に−

中 尾 勝 典

Ⅰ. 本稿の目的

韓国では、2004年上半期に海外に出国した韓国人のうち、半分以上が観光目的で出国しており、

海外観光客の比率は史上最高を記録している。韓国のアウトバウンド旅行業界の特徴を検証するに 相応しい商品は主にレデイメイドのパッケージツアー(Package Tour)であり、これこそが韓国に おけるアウトバウンドの「一般的な観光形態」であって、旅行業界の基幹商品である。またそれこ そが、1989年に海外旅行を自由化して以来の、韓国における海外旅行者数の増加を導いたのである。

このような韓国人の海外旅行需要の増大を背景に、旅行者ニーズは、多様化し、次第に成熟段階へ とさしかかってもいる。すなわち、旅行形態は団体から小グループ化へ、家族、 SIT(Special

 

Interest Tour)、FIT(Free Independent Tour)へと変わり、パッケージツアーが従来の団体旅 行を主とするものから個人旅行のスタイルへと変化しているのである。

本稿は、以上のような動向を踏まえつつ、韓国のアウトバウンド旅行業界において、日本向け旅 行商品がどのように造成され、流通しているのかを分析して、インバウンド(日本サイド)の観光 振興策を考えていくことを目的とする。とりわけ、韓国のランドオペレーター(ランド社)が商品 企画・造成において重要な役割を担っていることから、そこに焦点を合わせ考察することとする。

まず、韓国における旅行業の現況を概観するため、観光振興法によって定められる韓国の旅行業 界はどのような営業形態になっているのか、その法的規制や条件について解説する。次に韓国アウ トバウンドの旅行者数の推移とその増加率について述べる。韓国における国際観光政策は、これま で一貫して外国人のインバウンド政策を促進してきたが海外旅行自由化を契機に海外旅行者数は激 増している。その理由はなぜなのか。また旅行目的がどのような構成割合となっているのかを報告 する。

続いて、アウトバウンド業界において商品がどのように造成され流通過程を経るかを考察するた め、韓国旅行業者の3つの機能(リテーラー、ホールセーラー、メーカー(ランドオペレーター)

を分類別に見ていき、流通構造の特徴を明らかにし、そこでのランドオペレーターの果たしている 役割を確認する。次に、ランドオペレーターのシステムについて詳細に分析する。はじめに、ラン ドオペレーターとは何か、いつから出現し、どの程度存在しているのか、どのような業務をおこなっ ているのか、について検証する。そして、日本と韓国、ソウルと釜山を比較し、ランドオペレーター の地域的差異と特徴を明らかにし、それをもとに経営戦略を分析する。そして、旅行者の増加に伴っ てのニーズの多様化に対応して、専門的知識を有するランドオペレーターが他の旅行業社とその販 売戦略を含め、どのような関係にあるのか、についても検証し、これらの機能からランドオペレー ターの実力について検証する。

最後に、韓国からのインバウンドの展望を述べ、外客誘致の課題について検討し、関門地域の振 興策について若干の提言をする。

Ⅱ. 韓国における旅行業の現況

1. 韓国の旅行業界

韓国における旅行業の営業形態は、韓国観光振興法施行令第2条(観光事業の種類)によって、

次のように区分されている。

旅行業の種類は国内または国外を旅行する韓国人及び外国人を対象とする一般旅行業(旅券及び 査証の取得手続きを代行する行為を含む)、国外を旅行する韓国人を対象とする国外旅行業 (旅券 及び査証の取得手続きを代行する行為を含む)、国内を旅行する韓国人を対象とする国内旅行業の 3つである(図表1)。

一般旅行業は、いわゆるインバウンド (海外からの旅行客受入れ)とアウトバウンド(海外へ旅 行客送り出し)の両方を取り扱うことの出来る旅行業者であり、国外旅行業はアウトバウンドのみ を対象とする業者である。そして、国内旅行業は、韓国人の国内旅行と外国人の韓国旅行、いわゆ るインバウンドを取り扱う業者である。これら旅行業者数の推移は、韓国の旅行需要の増大にとも なって高くなっている。

ところで、図表1で示すように、一般旅行業者は他の旅行業者に比べて極端に数が少ない。そこ で、これら旅行業を運営する上で、どのような制限や基準の違いがあるのか比較してみよう。

図表2 旅行業登録基準

形 態 別 一般旅行業 国外旅行業 国内旅行業

資 本 金 3億5千万ウォン以上 1億ウォン以上 5千万ウォン以上 営業対象 国内外を旅行する韓国人

韓国を旅行する外国人 外国を旅行する韓国人 国内を旅行する韓国人 出所:ソウル特別市(2002) 市民生活百貨」pp.519。

出所:韓国観光公社(2002) 韓国観光統計」より作成。

図表1 営業形態別の観光旅行業者数の推移

図表2は、韓国の旅行業者の3つの営業形態を比較している。これを見ると国内旅行業を営むの に資本金が5千万ウォン以上必要となっている。因みに韓国の商法では、株式会社の最低資本金額 は5千万ウォンであるから、一般旅行業開業には国内・国外旅行業に比べ多額の資本金が必要とな る。

なお、運営にかかる最低資本金の他にも、観光振興法第14条および同法施行規則第20条によれば、

旅行業を登録した事業者は、その事業を開始する前に旅行共済会に加入しなければならなく、加入 業種は契約期間満了前に再加入しなければならないことになっている。また、旅行業者は消費者保 護の観点等から、旅行商品を主催するまでに旅行保険に加入しなければならないなどの制約がある。

ところで、3つの営業形態の旅行業者のうち、その業者の数は過去3年で一般旅行業、次いで国 外旅行業と伸び率が高くなっている。これは、海外旅行市場が伸びているということも一つ理由と して挙げられよう。若しそうだとすると、海外旅行市場はどのように伸びてきたのか。そこで海外 旅行者数と旅行目的をみることにしよう。

2. 海外旅行者数と旅行目的

韓国における国際観光政策は、これまで一貫して外国人のインバウンド政策を促進してきたが 1989年の海外旅行自由化を契機に海外旅行者数は激増し、一昨年においては、日本への観光客数は 韓国入国者より出国者の方が多く韓国の観光収支は赤字に転じている。

次の図表3は韓国の海外旅行者数の推移とその増加率を示している。この図表で示されるように、

韓国人の海外旅行者数は年々上昇しているが、その理由の一つは、韓国政府が海外旅行者に対して 段階的に年齢制限を緩和させたためである。そして、1989年1月1月には年齢制限を全廃したこと で、この年の前年対比の増加率は65.8%となり、過去20年間のうちで最も高くなっている。その後、

1989年以降の伸びについても、韓国国民の所得増加 などの要因により海外旅行者数は増加したの である。

出所:文化観光部(2003) 観光動向に関する年次報告書」をもとに作成。

図表3 韓国人の海外旅行者数の推移とその増加率

次いで、1999年が41.4%と高くなっているが、これは、アジア通貨危機の影響により最も低かっ た1998年の△32.4%の反動によるものである。ただ、2002年の1年間では712万人が海外旅行してお り、韓国の人口4,600万人でみると、6.4人に1人が海外旅行をしたことになる。そして、その旅行 者を目的別に見たものが次の図表4である。

旅行目的のうち、最も多いのは「観光」の46%であるが、これに「訪問(一般的に親戚・知人含 む)」を合わせると62%になり、「観光性」は大きく、今後ますます増加すると考えられる。よって、

日本側においては、観光性ツアーの整備をする必要がある。

3. 旅行業者の機能と流通構造

韓国旅行業者は機能別に見て、次の3つに分かれる。リテーラーとホールセーラー、そしてツアー オペレーターと呼ばれるメーカーである。リテーラーは、ホールセーラーなどの旅行商品を一般消 費者に販売し販売手数料を受けている。通常、代理店 と呼ばれている。ホールセーラーは、自社で 商品を造成し代理店を通じ、消費者に販売している製造卸売りの旅行業者である。しかし、ホール セーラーの中 にはランドオペレーターが企画・造成した旅行製品または UNIT を仕入れて、直接消 費者に販売する旅行業者もある。そしてツアーオペレーターは、自社で造成した旅行商品を、代理 店経由で販売したり、直接消費者に販売することもある。

ツアーオペレーターは、ランドオペレーターともいうが、一般的に旅行業の免許を取得しているか 否かで呼び方を区別している。旅行業免許のないランドオペレーターは、直接消費者へは旅行商品 を販売しない。

先に述べたように、ホールセーラーやツアーオペレーターは、旅行商品を造成し、代理店に卸し、

また、直接消費者にも販売している。したがって、それらは機能的にエージェント(代理店)と何 ら変わらないのである。むしろ、旅行業免許をもつツアーオペレーターやランドオペレーターおよ びホールセーラーは、エージェント以上の機能を有しているのである。

このように韓国における流通構造は旅行業界をはじめとし、他の業界においても卸小売の区別は 混在しているのである (図表5)。

出所:文化観光部(2003) 観光動向に関する年次報告書」をもとに作成。

図表4 韓国人の日本旅行目的別内訳

ドキュメント内 JGR1894_10987.pdf (ページ 129-164)