−ゆうとぴあ号利用中国人観光客アンケート調査結果から−
宗 近 孝 憲
Ⅰ ゆうとぴあ号」利用日本観光団の初来日について
2004年10月2日、下関市に「ゆうとぴあ号」を利用した中国人の日本観光旅行団、総勢130名が到 着した。この旅行は中国・青島市の旅行会社が企画したものであり、観光客はすべて青島市民。「ゆ うとぴあ号」(下関市−青島市間の国際フェリー)を利用して中国から団体観光客がやってくるのは、
これが初めてのことだった。これは、同年9月より山東省でも日本への団体観光ができるようになっ た(訪日団体観光ビザ発給解禁)ことを受けて、国慶節の時期に実現したものだった。
今回の団体観光の旅程は以下の通りである。
旅 程 主な観光スポット 宿泊地
9月30日 「ゆうとぴあ号」で青島発 ゆうとぴあ号船内
10月 1日 「ゆうとぴあ号」移動中 ゆうとぴあ号船内
10月 2日 下関到着
貸切バスで移動、ハウステンボスへ ハウステンボス ハウステンボス 10月 3日 貸切バスで長崎観光
北九州へ移動し、阪九フェリーで大阪へ
長崎市街、中華街
長崎平和公園 阪九フェリー船内 10月 4日 大阪到着
貸し切りバスで京都、大阪観光
嵐山、金閣寺、平安神宮 心斎橋でショッピング 大阪
10月 5日
貸し切りバスで奈良、大阪観光 阪九フェリーで再び北九州へ
東大寺、春日大社 大阪城
梅田でショッピング
阪九フェリー船内
10月 6日
北九州着
下関へ移動し、午前中下関観光(ショッ ピング)の後、「ゆうとぴあ号」で下関発
海響館(下関水族館)
シーモール下関でショッ ピング
ゆうとぴあ号船内
10月 7日 青島着
すなわち、全行程8日間、うち日本での滞在は5日間の旅であった。中国・青島−日本間の移動 は飛行機を使わず往復とも下関港基点の船(すなわち、「ゆうとぴあ号」)を用い、また日本国内で の移動も、貸し切りバスと船(新門司−大阪を結ぶ阪九フェリー)での移動となっており、全行程 7泊のうち、実に5泊が船中泊である。このようなことから、旅行価格は5,880元(約7.6万円…1 元=13円で換算。以下同。)と、日本旅行にしては 安い ことを売りにしている。
このような「ゆうとぴあ号」利用の中国人観光客が今後ともしばしば来訪するようになるために はどうしたらいいのか。今回、この記念すべき第1弾の「ゆうとぴあ号」利用中国人観光客に対し て、観光に関するアンケート調査を試み、その結果から今後の「ゆうとぴあ号」利用による(すな わち下関をゲートウェイとした)中国人観光客誘致活発化の方途をさぐってみた。
Ⅱ アンケート結果
1 属性
今回の団体観光客130人のうち、82人から有効回答が寄せられた(回収率63%)。回答者の属性(性 別、年齢構成)は、下図の通りであった。
年齢別に見ると、中高年齢層がやや多いようだ。また、家族連れなどのケースがあるので、10代 の子供もある程度混じっている。
なお、回答者の住所は、全員が青島市(周辺市を含む大青島市)であった。
2 過去の海外旅行経験と今後の希望など
⑴ 過去の海外旅行回数
過去の海外旅行経験をたずねると、未経験(すなわち今回が初めての海外旅行)が全体の6割
(59.5%)を占め、1〜3回までが3割(29.1%)を占めている。
また、日本を訪問した経験では、初来日が95.1%とほとんどであった。
これを年代別に見ると、45才以下では海外旅行したことのない者が7割近く(67.5%)を占め、
海外旅行した者も大部分が旅行回数3回以下である。一方46才以上では、5割の者が海外旅行経験 があり、また4回以上海外旅行した者が2割近く(18.4%)いる。
来日回数においては、いずれの年代でも、初来日が95%前後とほとんとであることに変わりはな かった。
⑵ 過去の海外旅行訪問国
過去に海外旅行経験のある者に対し、その海外旅行訪問国をたずねたところ(複数回答)、下図の ようになった。最も多いのは韓国で、海外旅行経験者の半数が訪れている。続いて、シンガポール・
タイ・マレーシアの東南アジア3国への訪問者が多かった。ちなみに、この3カ国については、中 国国内における海外旅行商品として、当該3カ国を同時に歴訪するパッケージツアーがよく組まれ ているようである。また、今回のアンケートで韓国が一歩抜け出ているのは、青島市という土地柄
(韓国とは地理的に至近距離であり、また経済的結びつきも浅くない)によるところも大きいので はないかと思われる。
年代層ごとの海外旅行経験者の訪問国をみると、46才以上の海外旅行経験者では75%が韓国を訪 れており、韓国旅行が突出しているが、45才以下の海外旅行経験者にはそのような傾向はみられな い。
⑶ 今後の希望海外旅行国
過去の海外旅行経験のあるなしにかかわらず、全員に、今後海外旅行をしたい国はどこかをたず ねたところ、下図のようになった。前述のように、今回の回答者は、海外旅行した者における訪問 国は韓国と東南アジアが中心だったが、今後行ってみたい国はそういったアジアの国々ではなく、
アメリカであり、ヨーロッパである。世代の老若を問わず、今の中国人は、本当は、欧米諸国に行っ てみたいのだ。ちなみに、こと「観光目的」旅行としては、中国では国内の規定により今もってア メリカを訪れることはできない。そしてヨーロッパについては、旧来からドイツなどへの観光訪問 は可能だったが、ヨーロッパ各国に行くとなるとドイツ経由する必要があるなど制約が少なくな かった。しかし04年からは、かなり自由にヨーロッパ各国を観光旅行できるようになってきたとこ ろである。
どうやら、中国からのインバウンド観光地として今後日本と競合するのは、当面はヨーロッパと いうことのようである。
⑷ 望ましい海外旅行の期間と料金
望ましいと思う海外旅行の期間と料金をたずねたところ、期間(希望海外旅行日数)では、7日 以下(1週間以下)が3割(32%)を占め、10日以下だと7割近く(68%)となる。また望ましい 海外旅行費用としては、1万元(約13万円)未満が3割(31%)を占め、2万元(約26万円)未満 だと8割近く(78%)となる。
なお、これらの平均値をとると(質問は実数で答えてもらっている)、日数で11.1日、費用で15,386 元(約20万円)となった。
これらの回答を今回の団体観光旅行のケース(海外旅行日数8日、旅行会社に払うパック料金 5,880元)と比べると、今回の日数はほぼ標準、旅行費用はかなり安いということになる。このこと は、今回の観光客の気持ちとしては、満足できる内容の観光旅行であれば今回のものより高い費用 の旅行でも(例えば日中間を飛行機で移動する観光商品であっても)違和感はなかったと思ってい るのかもしれない。
3 今回の旅行実態
⑴ 同行者
今回の旅行の同行者は、右図の通りだった。「会 社・仕事関係の人と」が4割(41.8%)と最も多 く、家族連れが3割強(32.9%)だった。家族連 れでは子供帯同形態が多く、子供帯同の家族連れ 単独でも全体の2割強(22.8%)を占めている。
⑵ 今回の旅行の情報源
今回の旅行内容の情報をどこから得たのか、その最も主なものをたずねた(複数回答でなく択一 質問)ところ、下図のようであった。旅行社の店頭、および、マスコミを媒体にした宣伝の2つが 双璧で、高年層だと、知人の勧めとの回答も目立った。
⑶ 旅行消費額
今回の旅行で、日本国内で使った土産代、娯楽費、飲食費をたずねたところ、下の図表のように なった。各費目とも、回答者によって国内消費の規模にかなりのばらつきがみられるが、全体に、
パックツアーであるため飲食費や娯楽費はそれほど使っていない(もちろん、交通費、宿泊費も発 生しない)。一方で、土産代は、平均すると1人当たり3,200元(約4万円)使っており、結局、土 産、飲食、娯楽の費目合計で3,558元(約4.6万円)使っている。昨年当研究会が実施したドルフィ ン号利用韓国人観光客に対するアンケート(『関門地域研究 vol.13』23ページ)では、日本国内で平 均4.2泊した韓国人観光客(うち、パックツアー客36%)の場合、日本国内で平均2.7万円しか使っ ていない。今回の中国人観光客(日本国内で4泊)は船旅中心の安いパックツアーの参加者である わけだが、それでも韓国人観光客の2倍近く日本でお金を使っているわけだ。中国人観光客の場合、
土産物がらみでの観光地での経済効果はかなりあると言えよう(ただし、各受け入れ観光地単位で みた場合、どこの観光地で土産物を買っているかが問題となるが)。
今回の旅行の日本での平均消費額
単位:元 土産代 娯楽費 飲食費 合計額 合計サンプル 3,204 65 289 3,558
45才以下 3,148 68 218 3,434 46才以上 3,180 62 348 3,590
⑷ 良かった観光地
今回の訪問地のうち、特に良かった場所をたずねたところ(自由記入方式)、下図のようになった。
日本第二の大都市である大阪がダントツに評価が高い。また、 ゆうとぴあ号」の寄港地下関の評 価も相対的に高かった。
一方、日本を代表する歴史的観光地の一つである奈良の評価は、下関や長崎と比べて特に評価が 高いわけではなかった。
なお、年代層別にみても、大阪の評価が群を抜いていることに変わりはなかった。