• 検索結果がありません。

非薬物的介入・対応を中心とする「身体的ケア」

ドキュメント内 Symptoms of Dementia (ページ 64-67)

第三章 認知症ケアにおける効果的アプローチの構造

第四節 考察

2 非薬物的介入・対応を中心とする「身体的ケア」

[健康面への介入・対応]11項目(n=216)は、主として「生物学的要因」への介入と解

釈することが出来る。「生物学的要因」への介入は医療的処置が中心であり、薬物療法が多 くなると予測されたが、今回の調査では、薬物療法については、記述されたデータ数が36 で介入・対応全体の3.6%、健康面への介入・対応の16.6%にとどまる結果となった。

1970年代には身体抑制や薬物による行動制限は、BPSDに関連する主要な対応策であ

り、本人を保護するという理由で抗精神病薬が多用されていた。しかし、高齢者への抗精 神病薬の投与は過鎮静や転倒、嚥下障害、肺炎などを生じやすいことが知られるようにな り、最近では、一般臨床医が使用するBPSDの診療マニュアルでも、「薬物療法は非薬物 療法を試みて改善が無かったときの最後の手段」と表記されるようになった。9

本調査の結果も、身体的・精神的健康面への介入においても非薬物的対応の割合が大き く、便秘・身体的不快・低栄養などへの介入・対応の内容を見ると、服薬や医療的処置よ りも生活の管理による対応が多かった。

例えば、「無気力症状」への介入・対応の項目には、15事例に17の記述データが書き込 まれたが、興味深いことには、抗うつ剤等の薬物による治療・介入は全く行われておらず、

本人の社会的役割と社会性をたかめる工夫が行われていた。17の記述データは「会話やレ クリエーションの工夫」「家事や買い物に参加」「デイサービスやリハビリテーションの利 用促進」に分類できた。(表9参照)無気力症状への介入・対応は、内容を吟味してみれば、

「他の人との出会いや交流の機会をつくった」というサブカテゴリーと近似しており、[健 康面への介入・対応]ではなく[環境面への介入・対応]のカテゴリーを構成すると考えるこ ともできる。

つまり、「身体的ケア」は「生物学的要因」へのアプローチと「心理社会的要因」へのア プローチを含むものであった。

老年精神科看護では、従来から、慢性疾患によるストレスと役割・自立の喪失が「抑う つ」と関係することが指摘され、「基礎的な身体疾患は抑うつ症状を減尐させるために、ま ず第1に治療する必要がある」と考えられている。10身体的疾患が真の原因である場合、

環境を変えることで「無気力」を改善しようとすれば、改善に結びつかない事例も多いは ずである。

実は、204事例の中で格段に認知症状が改善した事例が1つだけ存在した。それは、白 内障の手術を受けて視力が回復した事例であった。このような一般の高齢者が受けられる 医療を認知症であるために受けられず、BPSDを改善できない事例は存在していると思わ れた。

このように、調査結果からは、BPSD改善の現状は「生物学的要因」に対するアプロー チを「心理社会的要因」へのアプローチで代替している可能性も予見された。

ドキュメント内 Symptoms of Dementia (ページ 64-67)