第4章 キャパシタ容量算定法
4.2 非線形負荷時における検証
4.2.1
算定手法線形負荷時は,負荷条件が与えられ,補償電流の振幅最大値と電源電圧との 位相差さえ決定すれば,ベクトル図から補償に必要なキャパシタ電圧の下限値
V
minを導出することができた。しかしながら,負荷がコンデンサインプット型整 流負荷などの高調波の発生する非線形な負荷である場合は,単純に線形負荷時 と同様の手法は適用することができない。検証に用いる電力平準化システムを 図4.5
に示す。そこで,負荷電流に含まれる基本波成分及び各次高調波成分をそれぞれ独立 に扱うことを考える。基本波成分については,線形負荷時の算定に用いた図
4.3
の電圧ベクトル図を適用する。高調波成分については,電源電圧に高調波成分 は含まれていないものとして,電源は短絡とみなす。つまり,高調波成分に対 しては図4.3
の電圧ベクトル図において電源電圧の成分が存在しないため,次式 にように導出する。(nは次数)
2 2
2 2
max _ _ _
min_ c u n
f
n
I
V fL
(5.4)
最後に基本波成分及び各次高調波成分に対してそれぞれ導出した
V
min_n を足 し合わせ,その電圧をV
min として扱うこととする。なお,この検証においては 負荷電流に各次高調波成分がどの程度含まれているかは既知であるものとし,線形負荷時と同様に式(4.2)より W1を導出する。
また,この算定手法は負荷電流の各次高調波成分の振幅最大値に対して式(4.4) を適用しているため,各次高調波成分の振幅最大値が全て重なった場合の
V
minを導出している。しかしながら,実際はそのようなケースになることはまれで あるため,この手法はワーストケースで算定される。
第4章 キャパシタ容量算定法
i L
L
fController
Voltage
source i s
i c
L
L11L
sR
sPower smoothing system
L
L12C
L11C
L12R
L11R
L12Load6
C
EDLCv
EDLC図
4.5
電力平準化システム第4章 キャパシタ容量算定法
4.2.2
算定条件システムパラメータを表
4.2
に示す。負荷変動の周期T
は0.5s
とする。また,この条件下での負荷電流及び補償電流の波形及び
FFT
解析結果をそれぞれ図4.6,
4.7
に示す。表
4.2
システムパラメータ電源電圧
50[V],50[Hz]
線路インピーダンス:
R
s,Ls0.13[mΩ],0.23[mH]
フィルタリアクトル:
L
f5[mH]
EDLC (
単体)
静電容量
C
EDLC19.8[mF]
初期電圧
160[V]
Load6
AC
リアクトル:LL11(L
L12) 2[mH]
コンデンサインプット型整流回路
:RL11,CL11
(R
L12,CL12) 20[Ω]
,200[μF]
第4章 キャパシタ容量算定法
0 200 400 600 Frequency[Hz]
8.0
2.0 4.0
0
i
L_u[A ]
10.0
0 5.0
-5.0
-10.0
i
L_u[A ]
0 0.05 0.10 Time[s]
6.0
図
4.6
負荷電流波形及びFFT
解析結果(並列負荷接続時)0 200 400 600 Frequency[Hz]
8.0
2.0 4.0
0
i
c_u[A ]
10.0
0 5.0
-5.0
-10.0
i
c_u[A ]
0 0.05 0.10 Time[s]
6.0
図
4.7
補償電流波形及びFFT
解析結果(並列負荷接続時)第4章 キャパシタ容量算定法
4.2.3
算定結果算定手法に基づき,図
4.7
の補償電流のFFT
解析結果より基本波成分及び各 次高調波成分の補償電流を読み取り,補償に必要な直流電圧V
min_nを求めると,それぞれ以下のように算出される。
V
min_1=91.0V,V
min_5=19.5V,V
min_7=7.7V,V
min_11=5.1V,V
min_13=2.3V
これらを足し合わせてV
minを導出するとV
min=125.6V
となる。また,この条件 下で0.5s
の間にEDLC
から放出されるエネルギーW1は97.5[J]であることから,
C
EDLCを求めると,19.8mFと算定される。第4章 キャパシタ容量算定法
4.2.4
算定手法の評価算定手法の項で述べたように,この算定手法は実際に必要なキャパシタ容量 に余裕を持たせた形で算定される。そのため,実際に必要なキャパシタ容量と 比較してどの程度の余裕があるのか検証する必要がある。そこで,インバータ 直流リンク部のキャパシタを直流電圧源に変更し,同じ負荷条件のもと補償可 能な直流リンク電圧の下限値
V
min を明らかにする。補償可能であるかどうかの 判断は,インバータへの電圧指令値がキャリア比較に用いる三角波の振幅を超 えた段階で補償不能と判断することとする。今回の条件下において,算定手法により算定した
V
min,CEDLC及びキャパシタ を直流電圧源に変更して明らかにしたV
min,CEDLCを表4.2
に示す。ここで,直 流電圧源に変更して明らかにした値を真値と扱うこととする。また,参考とし て高調波成分が含まれず,基本波成分のみ補償すればよい場合におけるV
min,C
EDLCの値を示す。この結果から今回与えられた条件下においては,実際に補償 に必要なキャパシタ容量に対して算定値はおよそ1.3
倍となることがわかる。提案する算定手法により,各次高調波成分の振幅最大値がすべて重なったワ ーストケースでの必要なキャパシタ容量の算定が可能であると考えられる。し かしながら,補償すべき高調波成分の割合が大きくなる,つまり歪み率が大き くなればなるほど実際に必要なキャパシタ容量より大きな容量で算定されてし まうといった課題がある。
表
4.2 V
min,CEDLC歪み率
C
EDLC[mF] V
min[V]
0(基本波成分のみ)
算定値11.3 91.0
0.356
算定値
19.8 125.6
真値