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青銅短剣の展開と地域間関係

第二章 青銅短剣の展開と地域間関係

第4節 青銅短剣の展開と地域間関係

る(第 3-11 図)。この場合の南シベリアから長城地帯への影響は、前のD類発生時に おける長城地帯への影響とは異なることが考えられる。以上からわかるように、南シベリ アに固有であったC類は要素ではなくて直接に拡散する形で長城地帯へ広がっていった と考えられる。まず、分布域から考慮するなら、拡散したC類が長城地帯に固有であっ たD類と長城地帯において地域差は存在している。とりわけ、第Ⅱ期第2段階には、C 類は新疆を介した流入経路沿いに長城地帯の西部へ拡散したことが明らかとなった。また、

長城地帯の東部においても、青銅短剣は大部分の墓から一人の被葬者に1点ずつ出土して おり、C類がD類と一緒に検出されることは存在しない。なお、青銅短剣以外の墓葬構 造も配慮に入れると、内蒙古中南部と寧夏南部、甘粛東部との大きな差異を見出せる。す なわち、内蒙古中南部には竪穴土坑墓が分布しており、寧夏南部、甘粛東部にはおもに洞 室墓が分布している[許成・李進増 1993、宮本一夫 1999、2002]。それにより、第Ⅱ期第 1 段階以降において、南シベリアで発生したC類が長城地帯へ拡散したのとともに、長城 地帯の西部は燕国または中原地域の影響を漸く受容した長城地帯東部と並び立って存在 する東西差は存在するということがいえるだろう。

ところが、先行研究が既に指摘したように、アキナケス式短剣が草原地帯西部において も検出されたことも知られる[高浜秀 1982、八木聡 2014、Rawson 2017](第 3-11 図)。

古式アキナケス式短剣としたC類が南シベリアで発生したとすれば、ウラル山脈や黒海 北岸で検出するアキナケス式短剣についても、草原地帯東部において長城地帯へ拡散する ことよりも、南シベリアから草原地帯西部への拡散を含めたさらに広い展開様相で考える 必要がある。

本章では、鍔部の形態によって青銅短剣の分類を行い、系譜関係、編年、分布状況を整 理し、草原地帯東部における青銅短剣の展開と地域間交流を明らかにした。本章で得られ た結果をまとめると、第Ⅰ期においては、カラスク式短剣は形態的情報を共有し、地域的 な特徴が顕著になり、次第に衰えてなくなってしまう、第Ⅱ期においては、アキナケス式 短剣は南シベリアで成立した後、長城地帯へ拡散してき、それとともに長城地帯内部の東 西差が形成する、という2点が指摘できる。

第 3-10 図 カラスク式短剣の展開の模式図

第 3-11 図 アキナケス式短剣の展開の模式図