野辺山太陽電波観測所
宇宙電波関係の活動 1. 45m電波望遠鏡
⑴ 活動報告
1) 共同利用運用―第21期共同利用観測は、2002年11月 27日から開始し2003年6月8日まで実施された。前期応募 51件から16件(国内13╱国外3)、後期応募30件から18件(国 内14╱国外4)、長期共同利用観測2件、Short programは 第1回が応募17件中9件(国内4╱国外5)、第2回は応募 13件中6件(国内4╱国外2)を採択し実施した。この他、
レインボー観測にキャリブレーション時間を含め20日間を 割き、共同利用観測および所内観測を行った。また、NEAT 彗星に対するTO観測とガンマ線バーストのTO観測を それぞれ実施した。コリメータAzモータの不調により3 月17日に運用停止するトラブルが発生したが、この点を除 いて順調に共同利用運用を行った。なお、トラブル期間中 の観測は3月末にバックアップを行った。一方、BEARS、
NOBA、S115Qを用いて銀経・銀緯座標系で観測した場合 に、回転ステージの回転角が正しく与えられない天域が存 在することが見つかり、修正プログラムの開発など対応を 継続中である。
2) 開発―望遠鏡移動による観測時間の無駄を省略でき る観測モードであるOTF観測の開発を進めた。観測制御 ソフト・コスモスへの実装を終了し、データ解析ソフトの 開発を進めている。デジタル分光計へのデジタルフィル ター搭載を進め、32、16、8、4MHz帯域の分光モードを 実現出来るようになった。最後に老朽化に伴い暴走などの 不調を示しつつある制御系の更新に向けての議論を進め た。
3) 観測成果―BEARSを用いた星形成領域のプロジェ クト観測を精力的に行った。今シーズンの観測で、いくつ かの希薄な高銀緯分子雲の詳細な構造が明らかになりつつ ある。さらに、近傍の星形成領域(オリオン座分子雲領域、
へびつかい座分子雲領域、牡牛座分子雲領域)における高 密度コア探査がほぼ終了した。また、BEARSによる近傍渦 状銀河のCOマッピングサーベイ観測も進めた。今シーズ ンは、サンプルの中の棒渦巻銀河とおとめ座銀河団に属す る銀河の観測を中心に行い、M101とIC342の観測をほぼ
終了させた。また、おとめ座銀河団に属する銀河4個の観 測も終了した。
4) その他―2002年8月には、45m鏡を用いた電波観測 実習が行われ、8名の参加者が2つの班に分かれ、45m電 波望遠鏡を使って実際に自分たちの手で天体を観測、観測 所の研究者の助言を得つつ結果のデータ処理・解析を行 い、最終日には観測の成果を各班ごとに発表する形で行わ れた。
2. ミリ波干渉計(Rainbowを含む)
⑴ 活動報告
ミリ波干渉計共同利用観測が、2002年11月25日から2003 年5月12日まで、D配列(11/25‑1/7)・AB配列(1/7‑2/
18)・C配列(2/18‑4/8)・D配列(4/8‑5/12)の順で実施 された。この間、第16期一般共同利用22件(応募29件)と、
45m鏡とNMAを結合させた7素子ミリ波干渉計(レイン ボー干渉計)の第3期共同利用7件(応募15件)が所内観 測(計16件)とともに実行された。長期共同利用は応募が なく、実施されなかった。観測周波数帯は、一般共同利用 で100GHz帯は17件、150GHz帯が4件、230GHz帯が2件 であった(1件は100・150GHzの2周波観測)。また、レイ ンボー共同利用は、100GHz帯5件、150GHz帯2件であっ た。レインボー観測は一昨年度から共同利用観測を実施し、
今年度は2003年1月16日より2月4日までの20日間をレイ ンボー期間として、キャリブレーション観測の後、上述の 7件の共同利用観測と所内観測3件を実行した。今年度は、
昨年度のキャリブレーション観測の結果から、45mについ て北回りと南回りで別々の器差ファイルを作成すること で、45mのベースライン誤差を0.5mmまで押さえること ができた。偏波回転装置の制御を含むレインボー受信機シ ステムの自動チューニングシステムも2シーズン目とな り、順調に稼動した。230GHzの観測に関しては、12―1月 のD配列において、2件の共同利用観測と2件の所内観測 を実施した。観測は、干渉計方式によるポインティングの 後、電波シーイングモニタと気象データを基にダイナミッ ク・スケジューリングで観測を行った。
所内の100・150GHz観測については、星形成過程の研究 と系外銀河中心領域の物理過程の研究及び我々の銀河系中
心核の連続波モニター観測が行われている。星形成過程の 研究に関しては、分子雲コアからガスエンベロープ・原始 惑星系円盤と進化する過程の研究の中で、特に、低質量星 の初期段階の分子雲コアと後期段階の円盤に着目した観測 が精力的に行われている。分子雲コアの観測的研究では、
分子雲内の広い領域のデータを連結させる必要があり、複 数視野の観測・データ解析ツールの開発も同時に進行中で ある。また、中大質量星形成領域にも着目し、HII領域等が 付随するいくつかの大質量星形成領域に関するコアの分子 輝線観測も進められている。
系外銀河中心領域の研究としては、スターバースト銀 河・セイファート銀河・相互作用銀河・クエーサーも含め た、活動性を持つ銀河中心領域の複数分子輝線及び連続波 によるサーベイ的なプロジェクトが昨年度に引き続き行わ れ、主な銀河のグループについてその結果がまとめられつ つある。また、新たに、早期型銀河の一酸化炭素によるサー ベイプロジェクトを開始した。これは、早期型銀河の中心 領域でのガスダイナミクスや分子ガスの質量を(これまで 取得された)晩期型銀河のものと比較することで、銀河中 心領域での星形成活動の原因を明らかにしようというプロ ジェクトである。なお、昨年度に引き続き、遠方の電波銀 河の一酸化炭素輝線による観測を行い、高分解能マッピン グにも成功した。
所内観測に関しては、今後のミリ波干渉計の運用を鑑み、
星形成領域の分子雲コアの観測及びスターバースト銀河の 複数分子輝線観測の分野について、具体的に45mグループ との協力を開始し、関連して、45m単一鏡データとNMA データを高い精度で結合するための基礎実験を行なった。
また、今後のALMAによるサブミリ波観測に備える目的 で、ASTEとの協力・連携も視野に入れ、サブミリ波で強 度較正用天体として使用できる可能性のある小惑星のフ ラックス測定を実施した。また、観測シーズン中にTarget of Opportunity観 測 2 件(オ リ オ ン・フ レ ア 天 体、
GRB030329)を実行し、いずれも連続波を受信・モニター に成功した。
⑵ 機器整備・開発
アンテナ関連では、開発・製作後20年を経過し、空調機 や電源関係および部品入手に時間がかかりかつ全体への影 響の大きい制御・通信関係の回路について、順次、調査の 上更新する作業を開始した。特に、ここ数年来問題となっ ていたF号機制御系が突如動作停止となる問題について 調査が進み、観測プログラムと制御系との通信タイミング の設計に問題があることが明らかになった。そこで、今後 の保守・運用を考え、VERAアンテナの制御系と類似のも のを製作し、次期の保守期間中に交換することにした。
受信機関連では、下記の345GHz干渉実験や受信観測シ ステムの保守の効率化も視野に入れて、100‑150GHzを1 つのSIS素子でカバーする広帯域受信機の導入を継続し、
今期は、345GHz実験で使用する、B、D、F号機の他に、
新たにC号機にも100‑150GHz広帯域受信機を搭載した。
また、長年の使用に伴い、ラウンドトリップ系の1696MHz を発生する発信回路の純度が劣化して、相関振幅の低下を 引き起こしているのがわかった。そこで、内部回路の調整 及び使用している信号発生器を更新した。
また、昨シーズンより、トータルパワーのモニターデー タからIF系のレベル変動が指摘され、各アンテナについ て、常温アンプ・IF切り替えスイッチ・電気―光変換器の 調整や交換を行なっている。
天文台共同開発研究(代表 百瀬宗武氏・茨城大)とし て、183GHz差動ラジオメータによる位相補償実験が開始 された。今期は、NMAフラックス観測との同時データ取得
(ラジオメータ2台)、さらに2台のラジオメータのアンテ ナへの追加搭載と、実際のオリオンKL観測で取得された SiOメーザー位相との長時間比較が行なわれた。昨シーズ ンに得られたデータの解析も進め、NMAで十分明るい クェーサーを短い標本化時間で観測したデータを対象にビ ジビリティ位相とラジオメータの差動出力とを比較したと ころ、良い相関があるデータがいくつか見いだされた。ま た、大気位相揺らぎが小さいときにはラジオメータ出力の 短時間揺らぎも小さいといった興味深い結果が得られてい る。
特別推進研究(代表 川辺良平)の一環として、昨年度 に引き続き、B、D、F号機の他に新たにC号機に345GHz の受信機システムを搭載したが、トラブルのためD号機が 使用できず、3素子の干渉計システム(最小ベースライン 長25m―29kλ B―C号機>)としての立ち上げを行った。
2002年12月末から2003年1月初めの観測では、惑星でのフ リンジ検出とそれによるサブミリ波帯での位相安定性やサ ブミリ波受信機のside band ratioに関するデータを取得 するとともに、Ori-KL方向においてCO(J=3‑‑2)輝線の フリンジ検出に挑戦した。惑星を使ったフリンジ測定から、
⑴野辺山では、透過率の観点からは、345GHz帯の観測が実 行できる(opacity<0.6)時間の割合は少なくない(観測期 間中の345GHz帯透過率ベスト値は約0.4)ものの、位相安 定度の点では大変に厳しいこと、⑵一部の受信機でside band ratioが著しく偏っており、CO (3‑2)輝線の周波数で のシステム雑音温度を悪化させていること、⑶実験室での 受信機雑音温度とアンテナ搭載時にシステム雑音温度から 推定される受信機雑音温度の矛盾が大きく、ビーム伝送系 部分で損失が大きい可能性があること、がわかった。
3.VLBI
⑴ VSOP関係
サーベイ観測の運用を行なっている。VSOP2号機の検討 を宇宙科学研究所と協力して行なっている。高精度展開ア ンテナについて、7モジュール方式の部分モデル試作で精