1. 概 要
平成14年度もスーパーコンピュータシステム(平成13年 1月導入)は順調に運用された。スーパーコンピュータシ ステムは、それぞれの役割に特化した数個のサブシステム から成っており、大規模シミュレーションサブシステム、
一般共同利用ワークステーション(WS)群、光赤外データ 解析WS群、電波データ解析システムが計算機共同利用に 供されている。また、天文データセンターを担っているデー タベースサーバ群、および、国立天文台情報ネットワーク 関連機器群(平成14年1月稼働開始のスーパーSINETを 含む)が研究を支える基盤として運用されている。
天文学研究活動における計算機の役割はますます重要か つ多岐にわたるようになっており、本センターの業務や研 究開発もさらに活発かつ多彩になってきている。平成14年 度より、野辺山太陽電波観測所、太陽物理学研究系、宇宙 科学研究所PLAINセンターなどと協同で、太陽データ ベース の 構 築、お よ び、太 陽 データ の 解 析 環 境 の 整 備
(SODAプロジェクト)を開始した。
データ ベース 天 文 学 推 進 室 で はVirtual Observatory 計画を順調に推進し、プロトタイプの実装を通じて基礎技 術の確立ができた。
2. 人 事
平成14年4月1日付で野田祥代、今枝祐輔が天文台研究 員として着任した。平成14年6月1日付で白崎裕治が科学 研究員(丙)として着任した。平成14年9月1日付で田中 昌宏が天文台研究員(データベース天文学推進室)として 着任した。また、4月1日付で矢作日出樹が、5月1日付 で古荘玲子が教務補佐員として着任した。小山洋が平成15 年2月28日付で米国ノートルダム大学へ転出した。池田美 穂は平成15年3月31日付で天文台研究員を退職(任期満了)
した。大越克也は平成14年12月31日付で東京大学天文学教 育研究センター研究機関研究員に転出した。
また、平成14年4月1日付で野村裕子が、9月1日付で 佐藤麻衣子が、事務補佐員として着任した。平成14年6月 30日付で事務補佐員宮崎まどかが退職した。
増永良文(お茶の水女子大学理学部)が平成14年度客員 教授を勤めた。伊藤孝士は平成14年11月より米国アリゾナ 州立大学に文部科学省在外研究員として滞在している。
水本好彦(センター長:光学赤外線天文学・観測システ ム研究系教授)、近田義広(電波天文学研究系教授)、富阪 幸治(理論天文学研究系教授)、小笠原隆亮(ハワイ観測所 助教授)、千葉庫三(電波天文学研究系助教授)、立松健一
(電波天文学研究系助教授)、和田桂一(理論天文学研究系 助手)、小久保英一郎(理論天文学研究系助手)、八木雅文
(光学赤外線天文学・観測システム研究系助手)が併任とし て共同利用の運用や研究開発に関わった。
3. 共同利用
⑴ 大規模シミュレーションサブシステム
ベクトル並列型スーパーコンピュータVPP5000および 重力多体問題専用計算機 GRAPEシステム、可視化システ ム等から構成され、日本全国の天体物理学研究者の超大型 数値シミュレーション研究の中核を担っている。
GRAPEシステム(愛称MUV)は16台のGRAPE-5(無 衝突系用)と8台のGRAPE-6(衝突系用)から構成され、
全体でピーク演算性能約3Tflopsの世界最速の重力多体 問題計算システムである。
VPP5000、GRAPEとも審査制による利用時間枠の割当 て方式を採用しており、平成14年度の利用状況、申請・採 択状況は以下の通りであった。
1) VPP5000
年間総稼働時間 428,537時間(全PEの総和)
年間稼働率 89%
前期 カテゴリA 申請13件:採択12件、
カテゴリBで採択1件。
カテゴリB 申請24件:採択24件。
後期 カテゴリB 申請3件:採択2件、
不採択1件。
VPP5000では、CPU時間にキュー毎の重みをつけた「利 用ポイント」で制限が課されており、カテゴリAは1800ポ イント、Bは600ポイントとなっている。その他に随時応募 可能なカテゴリC(制限100ポイント)があり、平成14年度 の採択は16件であった。
2) GRAPEシステム
前期 カテゴリA 申請 9件:採択 9件。
カテゴリB 申請 6件:採択 6件。
後期 カテゴリA 申請 3件:採択 3件。
カテゴリB 申請 1件:採択 1件。
GRAPEシステムでは、複数ノード使用可能なカテゴリ Aと、単一ノード使用のカテゴリBに分けて募集している。
その他に随時応募可能なカテゴリCがあり、平成14年度の 採択は5件であった。
⑵ 一般共同利用ワークステーション群
ワークステーション等の一般共同利用では631名のユー ザーの利用があった。利用目的は多岐にわたっており、デー タ解析から電子メールによる研究連絡まで様々な利用形態 がみられた。また、スーパーコンピュータを必要としない 中規模のシミュレーション等のために一般共同利用計算 サーバが運用されており、平成14年度の利用者は26名で あった。さらに、障害発生時などに備えた待機マシン(性 能は高くない)を有効活用し、長時間プロセスを処理する ためのマシン群として運用に供した。
⑶ 光赤外データ解析ワークステーション群
光赤外データ解析WS群は、本センターと光学赤外線天 文学・観測システム研究系が協同で運用しているものであ り、その主要部分である各種サーバ群と利用者端末、周辺 機器は解析研究棟1階に設置されている。
本システムでは、すばる望遠鏡などの光学赤外線天文学 のデータ解析を行うために、IRAFやMIDASなどのデー タ解析ソフトウエア、および、国立天文台開発の解析シス テムであるDASH、すばる望遠鏡の観測者にデータを供給 するためのアーカイブシステムMASTARS(ハワイ観測 所のSTARSの三鷹版)を運用し利用者に供している。平 成14年度の登録利用者は160名であった。
平成14年度からすばる望遠鏡で撮られたデータを専用線 を経由して三鷹にも即時アーカイブし、露出終了から平均 10分以内でMASTARS/DASHから検索と取得を可能に する運用を開始した。本システムで14年度にMASTARS から検索されダウンロードされたすばる望遠鏡のデータ は、のべ17万ファイル、総計2TBであった。また、DASH ではのべ1100の解析処理が実行された。
⑷ 電波データ解析システム
ディスク関連の障害のために運用を定期保守以外に数日 間止める必要があったが、それ以外は順調であった。
平成13―14年度に開発したJava版の解析ソフト(Java NEWSTAR)の運用を開始した。本解析ソフトは野辺山宇 宙電波観測所にもインストールされ、電波天文研究に利用
されている。これにより電波解析ソフ ト で あ る NEW-STARは、UNIX系のマシンだけでなく、LinuxやMacで も利用可能となった。
JavaNEWSTARの ク ラ イ ア ン ト 部 分 に 限 れ ば Win-dowsでも利用できる。
⑸ 天文データセンター
天文カタログ(数値や文字の表形式データ)、文献データ ベース(ADSおよびApJ、AJ、PASP、A&A)、天文画像
(全天乾板のデジタイズ版であるDSS/DSS2など)、IUE データ アーカ イ ブ、HSTデータ アーカ イ ブ な ど の 天 文 データを収集・管理して公開し、国内外の天文学研究者な どの利用に供している。
また、岡山天体物理観測所、東京大学木曾観測所、すば る望遠鏡のアーカイブデータをSMOKAシステムで公開 している。平成14年度にSMOKAから利用者に供された データ量は567GBであったが、利用は次第に増えており、
平成14年度末における月毎請求データ量は約100GBに達 している。
さらに、宇宙科学研究所宇宙科学企画情報解析センター との協同開発・協同運用である多波長画像表示システム
(jMAISON)を公開している。これらのサービスは、全て 天 文 データ セ ン ターのWEBページ(http://dbc.nao.ac.
jp)からアクセスできる。
天文データセンターは、国立天文台外の多くの方々の参 加を得て運用されている。
⑹ 国立天文台ネットワーク(KTnet) 1) 三鷹キャンパス
高度環境試験棟の新設に伴い、ネットワークを敷設した。
ALMA、Solar-B、開発実験棟グループのサブネットが設 定され、KTnetと接続した。
2) 水沢観測所
平成15年3月 末 に 水 沢―三 鷹 間 の ネット ワーク を128 kbpsから2Mbps(NTT IP-VPN網ATM MDN)へ増 速した。また、水沢―三鷹間の内線電話3回線分をVoIP化 した。
その他の観測所には変更・更新はなかった。
⑺ スーパーSINET 1) 汎用接続
スーパーSINETとの接続に更新はなかった。
2) 天文分野独自ネットワーク(MPLS/VPN接続) 新規ノードとして以下の大学の天文関係の教室研究室が 追加接続された。
北海道大学 九州大学
東京大学宇宙線研(東京大学物性研経由)
東京工業大学 筑波大学
これにより、8VPNグループ、13天文教室と国立天文台 を結んだネットワークが構築された。
⑻ ユーザーズミーティング、講習会
第12回ユーザーズミーティングは天文学データ解析計算 センターと理論天文学懇談会との共催研究会「シミュレー ション天文学最前線2002」という形で12月24日〜26日に開 催された。参加者は160名、そのうち天文学データ解析計算 センターのユーザは半数の80名であった。
また、数値天体物理学に取り組む次世代の若手を育成す るための教育活動にも力を注ぎ、以下の講習会を開催した。
IDL講習会 (5月20〜21日)参加者16名
IRIS EXPLORER講習会 (5月21日)参加者9名 AVS講習会 (5月22〜24日)参加者6名 VPP並列プログラミング講習会
(5月27〜29日)参加者7名 AVS講習会 (12月11〜13日)参加者2名
IDL講習会 (12月16〜17日)参加者9名
VPP並列プログラミング講習会
(12月18〜20日)参加者1名 N体シミュレーション早春の学校
―GRAPEを用いた多体問題計算入門―
(2月26〜28日)参加者16名 4. 研究成果
⑴ データベース天文学推進室
国立天文台データベース天文学推進室は水本、大石、安 田を構成員として2002年4月に発足し、同6月及び9月に 研究員2名(白崎、田中)が参加して研究開発を進めてい る。
近年発展が著しい情報学の研究成果と大量観測データを 生み出す最新の望遠鏡技術の融合として構築を進めている Japanese Virtual Observatoryのプロトタイプ第1版が 2002年12月に完成し、これを用いた数々のテストを実行し た。プロトタイプではJVOを構成する連携データベース に 透 過 的 に ア ク セ ス す る た め に 新 規 に 開 発 し たJVO Query Language、仮想観測のワークフロー(プラン)を利 用できる計算機資源によってダイナミックに変更できる機 能などを組み込んだ。2002年度のプロトタイプ構築の目的 は、GRID技術を実際に用いこれまでに検討したデータ ベース連携などが可能であることを実証することにあっ た。プロトタイプ構築によって、GRID技術を活用すること によってこれまで困難であった観測データ連携等が容易に なることを実証できた。
またデータベースを連携する際に必須となる検索言語
(JVO Query Language)を新規に設計・実装した。言語は
データベースアクセスの標準言語であるSQLの上位互換 となることを目指し、理論的な検討の結果、上位互換とな ることを確認できた。上に述べたプロトタイプにJVOQL を実装すると共に、JVOQLを標準SQLに分解するツール も実装することによって先に述べた連携データベースへの アクセスを可能にできた。JVOQLはVOの国際連携のた めの組織である IVOA(International Virtual Observa-tory Alliance)において、VO連携のための標準規格の一 つとして採用されることとなった。
これらの研究成果は、GRID関連の複数の国際学会にお ける招待講演の結果非常に高い評価を受け、我が国の GRID関連活動を国際的に公表することができた。詳細は、
プロジェクトのWebページ(http://jvo.nao.ac.jp)をご覧 いただきたい。
⑵ センタープロジェクト 1) DB/DAプロジェクト
岡山天体物理観測所、東京大学木曾観測所、すばる望遠 鏡のアーカイブデータを公開しているSMOKAの開発を 引き続き進め、移動天体(小惑星など)の検索機能を付け 加えた。天文学研究を推進させるためのより高度な機能の 開発をさらに進めている。
また、宇宙科学研究所宇宙科学企画情報解析センターと 協同で多波長画像表示システム(jMAISON)の開発を引き 続き進めているとともに、宇宙科学研究所との間のスー パーSINET専用接続を活用した天文データベースの連携 運用などの実験研究を進めている。
本プロジェクトは、本センター外、および、国立天文台 外の多くの方々の参加を得て進められている。
2) 統合データベース
平成13―14年度に開発を行ったJava版の解析ソ フ ト
(Java NEWSTAR)が完成し、運用を開始した。これによ り電波解析ソフトであるNEWSTARは、UNIX系のマシ ン だ け で な く、LinuxやMacで も 利 用 可 能 と なった。
JavaNEWSTARのクライアント部分に限ればWindows でも利用できる。運用に先立って天文学会でデモンスト レーションを行い、システムソフトを入れたCDを配布し た。その結果、センターや野辺山以外においても30名以上 の研究者が新規開発のソフトウエアを利用することができ るようになった。
3) 専用計算機
天文学データ解析計算センターでは2001年1月から重力 多体問題専用計算機GRAPE(MUV)の共同利用を行なっ ている。このシステムの拡充、有効活用のために本プロジェ クトを進めている。本プロジェクトでは平成14年度は次の ような活動を行なった。
●GRAPE-6の本運用化
前年度に導入して試験運用を行なっていた衝突系用の重