国立天文台の推進する大型観測装置の優れた性能を十分 に引き出し、世界第一線級の研究成果をあげるためには、
先端的研究課題に即応した新しい観測装置の開発・製作が 不可欠である。当センターは、エレクトロニクス・オプ
ティックス・メカニクスなどの基盤技術全般にわたる、機 器開発環境を整備し、内外の研究者技術者と共同して最新 機器の開発を行うことを目的としている。
センターの設備・技術は天文学の広い分野での共通的基 盤的な部分を多くサポートしており、国立天文台における 観測装置開発の中核組織、さらには全国的な機器開発の基 盤組織となるべく、開発環境の整備を進め、先端的技術開 発を推進している。2002年3月には高度環境試験棟が竣工 した。
1. ワークショップおよび支援設備
天文機器開発のためのワークショップおよび支援設備を 整備運用し共同利用に供した。
マシン・デザイン・メカ・エレキ・オプトの5つのワー クショップと赤外線シミュレータ・卯酉儀・中型蒸着装置・
クリーンルーム・サブミリ波フーリエ分光器などの支援設 備の運用を行った。赤外シミュレータ・デザインショップ・
オプトショップの各設備については全国共同利用の公募を 行ない、赤外シミュレーターについては、理研、東大理よ り応募があり、実行に移された。その他、これらのショッ プは主に登録されたプロジェクトによって利用された。
⑴ デザインショップ
例年通り、高機能の機械・光学設計用CAD、そして電波 関係のCADを共同利用に供し、また出力装置の保守を継 続的に行った。なおCADを円滑に使用できるよう、既存の 計算機の整備、新計算機の導入等、計算機側の環境整備を 重点的に行った。
⑵ マシンショップの活動報告
マシニングセンター、NCフライス盤、NC旋盤、ワイ ヤー放電加工機等の数値制御機ならびに各種汎用工作機を 有し、高精度かつ複雑な製作依頼に対応した。さらにデザ インショップの三次元CADと数値制御機をリンクさせる ことにより、プログラム製作の円滑化をはかり幅広い機械 工作を実現している。超精密加工機の立ち上げが推められ た。非球面レンズの金型や軽量鏡の試作など試験的な運用 が行われた。超精密加工機はH15年度秋から公開して運用 する予定である。
平成14年度は各研究系等から105件の製作・修理委託を 受け、平成13年度の繰越し8件を含め、計113件中、109件 を消化し、平成15年度へ4件繰り越した。
マシンショップ製作・修理受託件数
平成13年度より繰越し 8(1) 天文機器開発実験センター 16(2) 光学赤外線天文学・観測システム研究系 3(1)
太陽物理学研究系 52
電波天文学研究系 11
位置天文・天体力学研究系 5
天文情報公開センター 2
東京大学・天文学教育センター 8
宇宙科学研究所 4
愛媛大学 1
京都大学 1
帝京大学 1
北海道大学 1
平成14年度合計 113
平成15年度へ繰越し 4
( )内は15年度への繰越し数。
⑶ メカショップ
メカショップでは、真空冷却関連の機器整備、共通実験 用品など整備に努めた。一時的に使わなくなった物品を保 管・管理しているが、開発実験センターと高度環境試験棟 で行われているプロジェクトの開発研究での関連資材の保 管・管理の要望が多く増設したコンテナーの保管スペース が手狭になってきた。
⑷ オプトショップ
通常通りの測定機器の運用と管理を行う一方、高度環境 試験棟の建設に伴って測定室を新たに新設、旧来のオプト ショップから測定器を移動した。これに伴い、測定作業や 光学定盤を使用した実験作業の環境が大きく改善された。
⑸ 中型真空蒸着
今年度は天文機器開発実験センターに設置されている赤 外シミュレータ主鏡ついて、再蒸着を行った。新たに直径 50センチの小型真空蒸着装置を作成し、タングステンフィ ラメントにアルミニュウムをプリウエットが出来るように した。岡山天体物理観測所及び天文機器開発実験センター 内で望遠鏡主鏡等の再蒸着をするほか、各種の実験が出来 るよう設計した。
2. プロジェクト支援
開発実験センター共通実験室やワークショップを利用し て、複数の開発プロジェクトが行われ、天文機器開発実験 センターではこれを支援した。次ページ表に登録された開 発プロジェクトを示す。
3. 開発・研究
天文機器開発センター職員が主体となる開発研究を推進 し、同時に新技術の獲得、基盤設備の整備運用を行った。
⑴ 軽量鏡の開発
太陽物理系と共同で炭素繊維炭素複合材料を用いた軽量 鏡の研究を推進した。炭素繊維炭素複合材料は軽量であり ながら剛性が高いが、多孔質であり、従来は鏡材とは考え られていなかった材料である。そこで我々はカニゼンメッ キを行って鏡面加工、5cmの平面鏡の試作に成功した。更
14年度 登録プロジェクト一覧
登録番号 プロジェクト名 代表者名 所属
2002‑001 軽量鏡・低次モード補正可動鏡の開発 大 坪 政 司 開発センター 2002‑002 mm波sub-mm波フォトミキサマウントの開発 上 田 暁 俊 宇宙電波 2002‑003 フォトニックローカルの開発 上 田 暁 俊 宇宙電波 2002‑007 MAGNUMプロジェクト 小 林 行 泰 開発センター 2002‑008 線スペクトル偏光分光装置(LIPS)の開発 秋田谷 洋 東北大理 2002‑009 SMILES(Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder) 入 交 芳 久 通総研 2002‑010 ALMA受信機の開発 関 本 裕太郎 宇宙電波 2002‑011 地上太陽光学観測データの実時間処理システムの開発 花 岡 庸一郎 太陽電波
2002‑012 京都三次元分光器 菅 井 肇 京大理
2002‑015 ASTRO-F/FIS 松 浦 周 二 宇宙研 2002‑016 FMOS用光学素子の製作 舞 原 俊 憲 京大理 2002‑017 グリズムおよびImmersion Gratingの開発 海老塚 昇 理研 2002‑018 航空機搭載用紫外線分光リモートセンサの開発 奥 村 真一郎 開発事業団 2002‑019 光赤外干渉計開発実験 鳥 居 泰 男 光赤外 2002‑020 VERA受信機用チョークフランジの検討 氏 原 秀 樹 地球回転 2002‑021 フィルムレンズアンテナ試験 氏 原 秀 樹 地球回転 2002‑022 月面天測望遠鏡の開発 花 田 英 夫 地球回転 2002‑023 テラヘルツ光検出器の開発 諸 橋 信 一 山口大工
2002‑025 TAMA-VIST 高 橋 竜太郎 宇宙計量
2002‑026 サブミリ波カメラの開発 松 尾 宏 開発センター
2002‑027 KAGAMI 大 橋 正 健 宇宙線研
2002‑029 ASTRO-F/FIS光学系 松 尾 宏 開発センター
2002‑030 CANGAROO 森 正 樹 宇宙線研
2002‑032 VSOP2光学系の検討 氏 原 秀 樹 地球回転 2002‑034 ASTE、ALMA用ミリ波受信機の開発 小 川 英 夫 大阪府大 2002‑035 Solar-B搭載可視光望遠鏡の光学設計Ⅳ 末 松 芳 法 太陽 2002‑037 フォトダイオードを用いた測光器による5色光電測光 大 金 要次郎 帝京大薬 2002‑038 電波望遠鏡の高精度鏡面測定 齋 藤 正 雄 宇宙電波 2002‑040 Solar-B姿勢センサー評価 清 水 敏 文 太陽 2002‑041 北大11m望遠鏡の22GHz帯化 徂 徠 和 夫 北大理 2002‑042 X線CCDカメラの開発 原 弘 久 太陽 2002‑043 遠赤外光検出システムの開発 太 田 剛 振興事業団
2002‑044 野辺山サブミリ波干渉計実験のための光学系設計 河 野 孝太郎 東大理・天文センター 2002‑045 完全空乏型CCDの開発 宮 崎 聡 ハワイ
2002‑046 ミラーコロナグラフの開発Ⅲ 一 本 潔 太陽 2002‑051 Solar-B可視光望遠鏡光学素子の開発・試験 一 本 潔 太陽 2002‑052 Superconducting gap frequency measurement using sub-mm FTS 松 永 昭 彦 宇宙電波 2002‑053 STJを用いた検出器の開発 志 岐 成 友 理研 2002‑054 MOIRCSの検出器試験 勝 野 由 夏 東北大理
2002‑055 サイト調査用シーイングモニターの製作 土 居 守 東大理・天文センター
2002‑056 FOCAS 柏 川 伸 成 光赤外
2002‑058 テラヘルツ帯超伝導ミクサの開発 前 澤 裕 之 宇宙電波
2002‑063 補償光学 高 見 英 樹 ハワイ
2002‑065 SPICA望遠鏡のための軽量鏡素材の評価 中 川 貴 雄 宇宙研
2002‑066 WFGS2の開発 長 嶋 千 恵 光赤外
2002‑068 レーザ高度計の開発 坪 川 恒 也 地球回転
2002‑069 ハーシェル望遠鏡用金属鏡の研磨 大 金 要次郎 帝京大薬 2002‑072 ASTRO-F/IRC光学および構造系の開発 松 原 英 雄 宇宙研 2002‑073 PIAA(phase-induced amplitude apodization) Olivier Guyon ハワイ
2002‑074 ASHRA 佐々木 真 人 宇宙線研
に真空チャンバーを用いて熱変化についての評価を行い、
変形量も赤外であれば既に実用レベルにあることを実証し た。現在、熱変形の改善や球面化、大型化、表面鏡面化法 の改良などを進めており、数年以内に実用化レベルに達す る予定である。
⑵ MAGNUMプロジェクトの推進
活動銀河核の多波長モニター観測による距離決定プロ ジェクト(MAGNUM)を東京大学と共同して推進した。
継続して観測を行うことができるようになった。質の高い データが取得されつつあり、多数の活動銀河核で予想され た可視赤外遅延が鮮明にとらえられるようになって来た。
全自動の観測システムがほぼ実現されつつあるが、世界 的に見ても2mクラスの望遠鏡で自動システムが実現さ れたのは初めてである。
⑶ JASMINE(赤外線位置天文衛星)のための基礎開発 新しいモードに対応した赤外線アレイ検出器の開発やス ペース軽量鏡の開発などJASMINEプロジェクト実現に 必要な開発を位置天文グループと共同で始めた。
⑷ その他
ASTE望遠鏡搭載のためのサブミリ波カメラの開発な どが行われた。