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電気感受率,誘電率,比誘電率(4.4.1 Susceptibility, Permittivity, Dielectric Con-

第 2 章 物質中の電場(Chapter 4 Electric Fields in Matter) 35

2.4 線形誘電体(4.4 Linear Dielectrics)

2.4.1 電気感受率,誘電率,比誘電率(4.4.1 Susceptibility, Permittivity, Dielectric Con-

前節で,電気変位Dを導入することによって物質中のGuassの法則を自由電荷のみを用いて書くことがで きた.これにより,系が対称性を持つ場合については真空中で電場を求めるときと同様にGaussの法則を用

いて電気変位を求めることができる.しかし,物質中の電場を求めるためには分極を知る必要がある.電場 によって誘電体にどのような分極が生じるかは,物質によって異なる.多くの物質では電場が弱ければ分極 は電場に比例する.そのような場合,Pを

P=#0χeE (2.82)

と書くことにする.ここで比例定数χeは媒質の電気感受率(electric susceptibility)と呼ばれる.χeは 無次元の量であり,その大きさは問題となる物質のミクロな構造や温度等に依存する.分極が(2.82)式に従 う物質を線形誘電体(linear dielectrics)とよぶ.

(2.82)式に現れる電場Eは自由電荷からの寄与と分極からの寄与の両方を含んでいる.例えば誘電体を外

部電場E0の中に置いたとしよう.分極Pを(2.82)式から直接計算することはできない.外部電場E0は物 質に分極Pを引き起こし,分極がさらに電場を作る.分極による電場は全電場Eに寄与するので,それが分 極を変化させる.このような考え方を(原理的には無限に)繰り返すことによって分極を求めることは,常 に可能なわけではない.それよりも,自由電荷ρfから電気変位Dを求められる場合には,Dを先に求めて しまうのが最も簡単なやり方である.

線形誘電体では電気変位は

D=#0E+P=#0E+#0χeE=#0(1 +χe)E (2.83) となるので,DもEに比例する.そこで,比例係数を#として

D=#E (2.84)

と書く.ここで

#=#0(1 +χe) (2.85)

は物質の誘電率(permittivity)とよばれる.(真空中では分極する物質が無いのでχe= 0であり,したがっ て#=#0となる.このことから#0は真空誘電率と呼ばれる.)また,(2.85)を#0で割った無次元の量

#r= 1 +χe= #

#0

(2.86) は比誘電率(relative permittivity)または誘電定数(dielectric constant)と呼ばれる.いくつかの代表 的な物質について誘電定数を表に示す.

Material Dielectric Constant Material Dielectric Constant

Vacuum 1 Benzene 2.28

Helium 1.000065 Diamond 5.7

Neon 1.00013 Salt 5.9

Hydrogen 1.00025 Silicon 11.8

Argon 1.00052 Methanol 33.0

Air (dry) 1.00054 Water 80.1

Nitrogen 1.00055 Ice (−30C) 99

Water vapor (1100C) 1.00587 KTaNbO3(0C) 34,000 表2.2 誘電定数(指定が無ければ1気圧20Cのときの値)

出典:Handbook of Chemistry and Physics, 79th ed.

(Boca Raton: CRC Press, Inc., 1997)

例題(Example 4.5): 図2.23のように,半径aの導体球に電荷Qが帯電している.導体球は半径b,誘 電率#の線形誘電体で覆われている.このとき誘電体内外における電場を求め,導体球の中心におけるポテ ンシャル(無限遠方をポテンシャルの基準とする)を求めよ.また,誘電体に誘起される拘束電荷密度を求 めよ.

図2.23:

解答:Gaussの法則(2.61)を用いて電気変位Dを求めると導体球外部では D= Q

4πr2ˆr (r > a) (2.87)

を得る.導体球内部ではE=P=D= 0である.(2.84)より電場Eは

E=







 Q

4π#r2ˆr, fora < r < b Q

4π#0r2ˆr, forr > b

(2.88)

したがって中心におけるポテンシャルは V =−

! 0

E·dl=−

! b

&

Q 4π#0r2

' dr−

! a b

&

Q 4π#r2

' dr−

! 0 a

(0)dr

= Q 4π

& 1

#0b+ 1

#a− 1

#b '

(2.89) 電場Eから分極と拘束電荷を求めることができる.分極は誘電体内部で

P=#0χeE=#0χeQ

4π#r2ˆr (2.90)

となる.よって体積拘束電荷は

ρb=−∇·P= 0 (2.91)

となる.表面拘束電荷は

σb=P·nˆ =









#0χeQ

4π#b2 = χeQ

4π(1 +χe)b2 外側の表面

−#0χeQ

4π#0a2 =− χeQ

4π(1 +χe)a2 内側の表面

(2.92)

となる.内側の表面電荷が負になるのは,導体球表面の正電荷が負電荷を引きつけるためである.この負電 荷のために誘電体内部の電場が1/4π#0(Q/r2)から1/4π#(Q/r2)に減少する.この観点からは誘電体は不完 全な導体のようにもとらえることができる.なぜなら,もしもa < r < bの領域が完全な導体であれば誘起

電荷はa < r < bの領域における電場を打ち消すように生じるはずであるが,誘電体の場合は電場は部分的

にしか打ち消されないからである.

Q8<o\&- ±¹

^q8<o\&-外側の表面 内側の表面

w w w w w

w w

w v

v v

v v

v v

v v v v v

v

v v v

v v v v

v v

v v

v v v

v v v v v

v

v v v

v v v v

v v v v

図2.24:

誘電体の外側表面の拘束電荷の総和は

Qb= χe

1 +χe

Q (2.93)

となる.一方,誘電体の内側表面の拘束電荷の総和は−Qbである.したがって,導体表面の電荷Qも合わ せると,この系は半径a,電荷Q−Qb = 1/(1 +χe)Q= (#0/#)Qの帯電球殻と半径b,電荷Qbの帯電球 殻からなる系と見なすことができる(図2.24).これら二つの球殻から作られる電場は容易に求めること ができて,r > bでは原点に点電荷Qが置かれたときの電場と等しくなり,a < r < bでは原点に点電荷 Q−Qb= (#0/#)Qが置かれたときの電場と等しくなる.これは(2.88)式と一致する.

線形誘電体の場合であっても2.3.2節で議論したEとDの相違は残ることに注意されたい.DとEが比 例することから∇ ×D= 0が成り立つと思われがちであるが,これは,誘電率が空間的に変化する場合には 成り立たない.なぜなら,

∇ ×D=∇ ×#(r)E=#(r)(∇ ×E) +∇#(r)×E=∇#(r)×E (2.94) となるからである.誘電体が空間の一部を占める場合や,誘電率が異なる物質が接続されている場合がその 例である.例えば,図2.20で示した,分極した誘電体と真空の境界で∇ ×D&= 0となる状況は,誘電体が 線形誘電体であったとしても変わらない.

図2.25: 誘電体中の点電荷.

もしも全空間が一様な線形誘電体で埋め尽くされていて,#が空間のどこ でも一定であれば

∇ ×D=#(∇ ×E) = 0 (2.95) となる.これとGuassの法則の微分形

∇·D=#∇·E=ρf (2.96)

より,電場は真空中に自由電荷ρfのみが存在する場合と同様に求めること ができる.誘電体が存在しない場合に自由電荷のみが作る電場をEvacとす ると誘電体が存在する場合の電場はEvacにおいて#0を#に置き換えたもの になる.したがって

E=#0

#Evac= 1

#r

Evac (2.97)

となる.結局,全空間が一様な誘電体で埋め尽くされている場合,電場は単に比誘電率の因子だけ減少する ことになる.(実際には全空間に誘電体を埋め尽くす必要は無く,電場がゼロである領域には誘電体が存在し なくても良い.なぜなら電場がゼロであれば分極もゼロになるので,誘電体があっても無くても関係ないか らである.)

例えば,大きな誘電体の中に自由電荷qが置かれているときに作られる電場は E= 1

4π#

q

r2ˆr (2.98)

となり,電場は真空中に比べて減少する.これは,誘電体媒質の分極によって自由電荷の周りに逆符号の拘 束電荷が生じ,電荷を部分的に遮蔽するためである(図2.25).

例題(Example 4.6):平行版コンデンサーの両極板間が比誘電率#rの誘電体で充たされている.このと き静電容量はどうなるだろうか?

図2.26: 誘電体で充たされた平行板コンデンサー.

解答:電場は両極版間の領域にのみ存在するので,誘電体の存在によって電場は1/#rの因子だけ小さくなる.

同様に極板間のポテンシャルV も1/#rの因子だけ小さくなる.したがって,電気容量C =Q/V は比誘電 率の因子だけ増大する.

C=#rCvac (2.99)

実際にコンデンサーの電気容量を増大させるのにこの方法が用いられる.

ところで,結晶のように方向性を持つ物質では分極しやすい方向としにくい方向があり,電場の向きと分 極の向きは必ずしも一致しない.その場合,電場と分極の関係は(2.82)式ではなく,より般化された関係式

Px=#0exxExexyEyexzEz) Py =#0eyxExeyyEyeyzEz) Pz =#0ezxExezyEyezzEz)

(2.100)

によって表される.ここでχexxexy,· · · は感受率テンソル(susceptibility tensor)と呼ばれる.一方,

(2.82)で表されるのは液体やガラスなどの方向性を持たない物質である.方向性を持たない誘電体のことを

等方的な(isotropic)誘電体という.特に断りが無ければ「線形誘電体」と言った場合は「等方的な誘電体」

を意味すると考えてよいだろう.

2.4.2 誘電体系での境界値問題( 4.4.2 Boundary Value Problems with Linear