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誘電体系での境界値問題(4.4.2 Boundary Value Problems with Linear Dielectrics) 55

第 2 章 物質中の電場(Chapter 4 Electric Fields in Matter) 35

2.4 線形誘電体(4.4 Linear Dielectrics)

2.4.2 誘電体系での境界値問題(4.4.2 Boundary Value Problems with Linear Dielectrics) 55

2.4.2 誘電体系での境界値問題( 4.4.2 Boundary Value Problems with Linear

という形で与えられる.一方,球体外部では,境界条件(iii)を満たすような一般解の形は Vout(r,θ) =−E0rcosθ+

1 l=0

Bl

rl+1Pl(cosθ) (2.107)

で与えられる.境界条件(i)よりAlとBlには以下の関係が要求される3. 1

l=0

AlRlPl(cosθ) =−E0Rcosθ+ 1

l=0

Bl

Rl+1Pl(cosθ) (2.108) よって

AlRl= Bl

Rl+1, forl&= 1 A1=−E0R+B1

R2







(2.109)

となる.一方で,境界条件(ii)より

#rlAlRl1=−(l+ 1)Bl

Rl+2 , forl&= 1

#rA1=−E0−2B1

R3







(2.110)

これより以下を得る.

Al=Bl= 0, forl&= 1, A1=− 3

#r+ 2E0, B1=−#r−1

#r+ 2R3E0



 (2.111)

以上により球体内部のポテンシャルが

Vin(r,θ) =− 3E0

#r+ 2rcosθ=− 3E0

#r+ 2z (2.112)

と求まる.これより内部の電場は

E= 3

#r+ 2E0 (2.113)

となり,一様電場であることがわかる.

例題(Example 4.8):図2.28のように,xy平面の下側(z <0)の領域が誘電率#=#0(1 +χe)の一様 な線形誘電体で満たされている.誘電体の上方で原点から距離dの場所(0,0, d)に点電荷qが置かれてい る.このときの電場を求めよ.

図 2.28: 誘電体平面の近くに置かれた点電荷.

解答:点電荷が作る電場によって誘電体が分極し,誘電体 表面(xy平面)に点電荷と逆符号の表面拘束電荷が生じる.

また,誘電体内部には自由電荷が無いので,体積拘束電荷 密度はゼロである.誘電体内部の電場Eが求まったとする と,これによって表面拘束電荷密度σb

σb(x, y) =P·nˆ =Pz=#0χeEz(x, y,0) (2.114) と計算できる.ここでEz(x, y,0)は誘電体内部のz= 0で の電場のz成分である(0は負の無限小の値を意味する).

この電場は点電荷qによって作られる電場と表面拘束電荷

3この要請は,P1(cosθ) = cosθであることと,それぞれのlについてLegendre多項式の係数がVinVoutで等しくなることか ら導かれる.

によって作られる電場の和で与えられる.Coulombの法則 によれば,点電荷qが誘電体表面(x, y,0)に作る電場のz成分は

E点電荷(x, y) =− 1 4π#0

qd

(x2+y2+d2)3/2 (2.115) である.一方で,表面拘束電荷が作る電場のz成分は

E拘束電荷(x, y) =−σb(x, y) 2#0

(2.116) である.以上より

E(x, y,0) =E点電荷(x, y) +E拘束電荷(x, y) =− 1 4π#0

qd

(x2+y2+d2)3/2 −σb(x, y) 2#0

(2.117) となる.これを(2.114)式に代入すると

σb=#0χe

$

− 1 4π#0

qd

(x2+y2+d2)3/2 − σb

2#0

%

(2.118) となる.これをσbについて解き直すと

σb(x, y) =− 1 2π

& χe

χe+ 2

' qd

(x2+y2+d2)3/2 (2.119) を得る.

あとは,点電荷qと表面電荷σbによって作られる電場をCoulumbの法則によって計算すればよい.しか しながら,実際にはσbを用いなくても仮想電荷を考えることによって簡単に電場を求めることができる.導 体平面の問題を鏡像法で解いたときとの類推により,拘束電荷がz >0の領域に作る電場は(0,0,−d)に置か れた仮想電荷qb=−(χee+ 2)qが作る電場に等しい(図2.29(b)).一方,同じ表面拘束電場が誘電体内部

(z <0)に作る電場は,対称性により(0,0, d)におかれた仮想電荷qbによる電場と同じになる(図2.29(c)).

(a) (b)

(c)

図2.29: (a)点電荷と誘電体表面の拘束電荷から作られるポテンシャルを求める.(b)z >0におけるポテンシャ ルを求めるために(0,0,−d)に仮想電荷qbを置く.(c)z < 0におけるポテンシャルを求めるために(0,0, d) に仮想電荷qbを置く.

点電荷と仮想電荷によって作られるポテンシャルは Vabove(x, y, z) = 1

4π#0

( q

#x2+y2+ (z−d)2 + qb

#x2+y2+ (z+d)2 )

(z >0) (2.120)

Vbelow(x, y, z) = 1 4π#0

( q+qb

#x2+y2+ (z−d)2 )

(z <0) (2.121)

で与えられる.このポテンシャルが,誘電体表面(z= 0)における接続条件 (i)Vabove(x, y,0) =Vbelow(x, y,0) (ii)#0

∂Vabove

∂z

**

**

z=0

=# ∂Vbelow

∂z

**

**

z=0

(2.122)

を満たしていることを確かめよう.まず,条件(i)が満たされていることはすぐにわかる.次に条件(ii)を考 えると

∂Vabove

∂z

**

**z=0= −1 4π#0

+ q(z−d)

[x2+y2+ (z−d)2]3/2 + qb(z+d) [x2+y2+ (z+d)2]3/2

,****z=0= d 4π#0

(q−qb) (x2+y2+d2)3/2

(2.123)

∂Vbelow

∂z

**

**z=0= −1 4π#0

+ (q+qb)(z−d) [x2+y2+ (z−d)2]3/2

,****z=0= d 4π#0

(q+qb)

(x2+y2+d2)3/2 (2.124) である.ここで

#(q+qb) =#

&

1− χe

χe+ 2 '

q=#

& 2 χe+ 2

'

(2.125)

#0(q−qb) =#0

&

1 + χe

χe+ 2 '

q= 2#0

χe+ 1

χe+ 2q=# 2

χe+ 2q (2.126)

よって(ii)も満たされていることがわかる.

ポテンシャルより誘電体表面の拘束電荷密度を計算すると σb =−#0

&∂Vabove

∂z

**

**

z=0

− ∂Vbelow

∂z

**

**

z=0

'

=− d 4π#0

[q−qb−(q+qb)]

(x2+y2+d2)3/2 = qbd 2π#0

1

(x2+y2+d2)3/2 (2.127) となり,先に求めた結果と一致する.また,拘束電荷の総和を求めると

!

dxdyσ(x, y) =−qb (2.128)

となる.

導体は誘電体においてχe→ ∞としたものと考えることができる.この極限ではχe/(χe+ 2)→1となる ので導体系のときの結果を再現する.

2.4.3 誘電体の静電エネルギー( 4.4.3 Energy in Dielectric Systems )

真空中の電荷系の静電エネルギーは

W = #0

2

!

E2dτ (2.129)

で与えられる.この表式は,誘電体を含む系のエネルギーの記述にそのまま用いることは出来ない.この節 では誘電体を含む電荷系の静電エネルギーを表す式を導出する.

コンデンサーに蓄えられているエネルギー

)2-2*3 #%'.1(3

)2-2*3 #%'.1(3"

$!"

! + Q

− Q

V

4/,2+01 $!'.1(3&

$

図 2.30: 誘電率#の誘電体で充たされた平行版コ

ンデンサー.

極板間に誘電体が充たされているコンデンサーを考え

る(図2.30).電気容量Cのコンデンサーに電荷Qが

蓄えられているときの静電エネルギーは W =1

2CV2 (2.130)

となる.この表式は誘電体があっても無くても変わらな い.なぜなら電気容量の定義により極板間のポテンシャ ル差はV =Q/Cであり,従って

W =

! Q 0

Cq C

Ddq= 1 2

Q2 C = 1

2CV2 (2.131)

となるからである.ところで,一様な誘電体が満たされたコンデンサーの電気容量は,誘電体が無いときの 電気容量と比較してC=#rCvacであったから,静電エネルギーは

W = 1

2#rCvacV2 (2.132)

となる.したがって,ポテンシャル差がV であるときのエネルギーを誘電体が無いときと比較すると

W =#rWvac (2.133)

#rの因子だけ増大する.極板間のポテンシャル差が同じであれば極板間に生じる電場も同じであるから,こ の結果は誘電体系のエネルギーが

W =#0

2

!

#rE2dτ =1 2

!

D·Edτ (2.134)

となることを示唆する.以下では,実際に(2.134)式が誘電体系の静電エネルギーを表すことを導こう.

静電場のエネルギー

r†”[‚V©&™µ¤´˜˜©Lƒ~?±³iT†j¸|¹

¥B¤@eV¨†j€g¸'Pœ´ª©6n¨¸I¯´

5+ªiT†j¸|¹¥B´˜¦©±¢¤iT†j)0.©#”

v˜¢Ÿ¦œ´

!

ρ q

˜ª¦•iT†j©¨™µ´«

)

˜˜¥iT†j)0¸†H¸¢¤mœ¦

2.31: 誘電体系に自由電荷を運んでくる仕事を求める.

誘電体系の静電エネルギーを求めるために,物質が空間的に固定されているとして,ここに自由電荷を運 んで来るための仕事を考える(図2.31).今,自由電荷密度がρfであるとする.ここに微少量の自由電荷を 運んで来たことによって自由電荷密度がρf+∆ρf に変化したとしよう.この変化に伴って物質の分極が変 化して,拘束電荷の分布にも変化が生じる.しかし我々が興味を持っているのは自由電荷になされる仕事で ある.これは

∆W =

!

(∆ρf)V dτ (2.135)

で与えられる.ここで∇·D=ρf, ∆ρf =∇·(∆D)を用いると(∆Dは自由電荷分布の変化に伴うDの 変化)

∆W =

!

[∇·(∆D)]V dτ (2.136)

となる.この式に

∇·[(∆D)V] = [∇·(∆D)]V + [(∆D)]·∇V (2.137) を用いると

∆W =

!

{∇·[(∆D)V]−[(∆D)]·∇V}dτ=

!

{∇·[(∆D)V] + [(∆D)]·E}dτ (2.138) となる.ここで第一項目は発散定理より

!

{∇·[(∆D)V]dτ=

"

(∆DV)·da (2.139)

となるが,積分領域を全空間にとれば表面積分は消える.したがって,このような微小な変化を実現するた めになされる仕事は

∆W =

!

(∆D)·Edτ (2.140)

である.

物質が線形誘電体である場合を考えるとD=#Eであるから 1

2∆(D·E) =1

2∆(#E·E) =#(∆E)·E= (∆D)·E (2.141) である.よって微小仕事は

∆W =∆

&1 2

!

D·Edτ '

(2.142) となる.これより,自由電荷をゼロから最終的な配置まで運んで来るためになされる全仕事は

W = 1 2

!

D·Edτ (2.143)

となる.これが系の静電エネルギーである.先に述べたように,この表式は真空中の静電場のエネルギーの 表式(2.129)とは異なっている.

ここで,(2.129)式と(2.143)の物理的な意味の違いについて考察しよう.(2.129)式は全ての電荷を無限遠 から運んできて,最終的な電荷分布を形成するために必要な仕事を表している.このとき,全ての電荷とは 自由電荷も拘束電荷も両方含む.一方,(2.143)は分極していない物質が置かれているところに自由電荷を運 んで来る仕事を表している.この場合,自由電荷分布の変化に従って誘電体の分極も変化する.従って,こ の場合は電荷を運んで来るだけでなく誘電体を分極を作り出すためにも仕事がなされる.

ちなみに,(2.143)式は一見すると誘電率を含まないので一般的な物質に対して成り立つように見えるか も知れないが,実際にはこの式が成り立つのは物質が線形誘電体であるときだけであることに注意しよう.

(2.140)式までは一般的な物質に対して成り立つ式であるが,そこから(2.143)を導出する際には線形性を用

いた関係式(2.141)を使っているからである.