第 3 章 物質中の磁場( Chapter 6 Magnetic Fields in Matter ) 65
3.4 線形媒質,非線形媒質(6.4 Linear and Nonlinear Media)
と書くことにする.係数µは
µ≡µ0(1 +χm) (3.66)
で定義され,透磁率(permeability)と呼ばれる.真空中では磁化されるべき物質が存在しないのでχm= 0 であり,したがってµ=µ0である.このことからµ0は真空の透磁率(permeability of free space)と 呼ばれる.
例題(Example 6.3):図3.13(a)のように,単位長さあたりの巻き数nの無限に長いソレノイドの内部が 磁化率χmの物質で充たされている.このソレノイドに電流Iを流したときのソレノイド内部の磁場を求 めよ.
(a) (b)
図3.13: 内部が磁性体で充たされたソレノイド.
解答:閉曲線(Amp`erian loop)を図3.13(b)のよう にとって物質中のAmp`ereの法則B
H·dl = Ifenc
を使えば,ソレノイド内が真空であるときのBを求 めるのと同様にHを求めることができる(Griffiths
Example 5.9を参照せよ).ソレノイド内部では
H=nIˆz (3.67)
となる.したがって,
B=µ0(1 +χm)nIˆz (3.68) となる.もしも媒質が常磁性体(χm>0)であれば,
Bはソレノイド内が真空であった場合よりも大きく なる.逆に媒質が反磁性体(χm<0)ならBは小さ くなる.
図3.14: ソレノイド内部の磁性体に誘起される表面拘
束電流.
以上の結果は,磁化によって誘起される表面拘束 電流を考えるとより明確に理解できる.表面拘束電 流密度は
Kb =M×nˆ =χm(H×n) =ˆ χmnIφˆ (3.69) で与えられるが,媒質が常磁性体ならKbは電流Iと 同方向,反磁性体なら逆方向となる.従って,常磁性 体では拘束電流は磁場を強める方向に働き,反磁性 体では逆の方向に働く(図3.14).
3.4.2 真空中の磁場との相違点( 6.3.2 A Deceptive Parallel )
物質中のAmp`ereの法則は真空中のAmp`ereの法則において全電流Jを自由電流Jfに,Bをµ0Hに置き 換えただけで同じ形をしている.しかし,そのことはµ0Hが真空中でJfによって作られるBと同じになる ことを意味するわけではない.これを理解するには,静磁場の基礎方程式が以下の二式からなることを思い 出す必要がある.
1
µ0∇ ×B=J (3.70)
∇·B= 0 (3.71)
磁場Bを決定するためには,一般にはAmp`ereの法則(3.70)式だけでは不十分であり,(3.71)式も必要であ る.(Amp`ereの法則を使ってBを求めるときには,暗黙のうちに(3.71)式を満たす解を仮定している.)一 方,Hが従う方程式は
∇ ×H=Jf (3.72)
であるが,Hの発散は一般にはゼロにならない.
∇·H=∇·
& 1 µ0
B−M '
=−∇·M (3.73)
磁化ベクトルMの発散がゼロである場合にのみ,Bとµ0Hの類似は正しいのである.
例えば,短い棒磁石が軸と平行に一様な磁化Mを持っている場合を考えてみよう.(GriffithsのProb.6.9
とProb.6.14でこの状況を扱っている.)この場合,自由電流はどこにも存在しない.しかし,だからといっ
て即座に,いたるところでH = 0であると結論づけてはいけない.もしもそうであれば,磁石の外部では
B= 0,内部ではB=µ0Mということになる.しかし,現実には磁石の外部に磁場が発生しないというこ
とはないので,この答えは明らか誤りであることがわかる.(無限に長い棒磁石であれば正しくなる.)確かに 至る所で∇ ×H= 0は成り立っているが,∇·H= 0は必ずしも成り立っていない.(Mが一様なのだから
∇·M= 0であると思われがちだが,磁石の上辺と底辺ではMが不連続にゼロになるため,∇·Mはデルタ 関数的な振舞いを持つ.)
磁性体が存在する場合にBやHを求めるときは,まず系の対称性に着目する.もしも円柱対称,面対称 などの対称性があれば真空中の静磁場の問題と同様にしてAmp`ereの法則によりHを求めることができる.
(このような場合は∇·M = 0であり,自由電流のみからHを決めることができるのである.)もしも系が 特殊な対称性を持っていなければ,簡単にHを求めることはできない.特に,自由電流が存在しないからと いって即座にH= 0と結論付けてはいけない.
3.4.3 静磁場の境界条件( 6.3.3 Boundary Conditions )
B⊥above, Habove⊥
Bbelow⊥ , Hbelow⊥
K
図3.15:
B!above, H!above
B!below, Hbelow!
K
l
図3.16:
表面電流Kが存在する場合,磁場Bは不連続に変化する.GriffithsのSec.5.4.2で学んだように,Bの境 界条件は以下のように与えられる.(図3.15,3.16)
B⊥above−Bbelow⊥ = 0 (3.74)
B&above−B&below=µ0(K×n)ˆ (3.75)
これらを補助場Hで書き換えよう.
まず,(3.74)式より
Habove⊥ −Hbelow⊥ =
&
1 µ0
Babove⊥ −Mabove⊥ '
−
&
1 µ0
B⊥below−Mbelow⊥ '
(3.76)
= 1 µ0
(B⊥above−Bbelow⊥ )−(Mabove⊥ −Mbelow⊥ ) (3.77)
=−(Mabove⊥ −Mbelow⊥ ) (3.78)
よって
Habove⊥ −Hbelow⊥ =−(Mabove⊥ −Mbelow⊥ ) (3.79) となる.
次に,(3.75)式より
H&above−H&below= 1 µ0
(B&above−B&below)−(M&above−M&below) (3.80)
=K×nˆ−(M&above−M&below) (3.81)
ここで表面拘束電流が
Kb= (Mbelow−Mabove)×nˆ (3.82)
で与えられることを使うと,
Kb×nˆ=−:
(Mabove−Mbelow)×nˆ;
×nˆ (3.83)
ベクトル3重積の公式A×(B×C) =B(A·C)−C(A·B)より Kb×nˆ=−:
(Mabove−Mbelow)·nˆ; ˆ
n+ (Mabove−Mbelow)(ˆn·n)ˆ (3.84)
=−(Mabove⊥ −Mbelow⊥ )ˆn+ (Mabove−Mbelow) =M&above−M&below (3.85) これを(3.81)式に用いると,
H&above−H&below= (K−Kb)×nˆ (3.86)
ここでK=Kf+Kbであることを使うと,最終的に
H&above−H&below=Kf×nˆ (3.87)
を得る.