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電力工業における初期の改革(1979-1995 年)

第 2 章 「改革開放期」の電力工業の展開(1979-2001 年)

第 1 節 電力工業における初期の改革(1979-1995 年)

1.電力の管理体制における改革の進展

1978 年12月の中国共産党「第11期中央委員会第 3回全体会議」(三中全会)は、

「改革開放」政策、とりわけ国有企業の改革を推進することを決定した。この改革開 放政策の実施が目前に迫った1979年2 月15日、「第 5期全国人民代表大会常務委員 会第6回会議」は、水利電力部を廃止して、電力工業部と水利部に分割することを決 定した。同年5月、国務院は、電力工業部が上奏した「文書」を認可し、関係部局に 送付・公開し、「電力事業は、現代化の技術をベースとする大生産産業であり、高度に 集中された統一管理を実行しなければならない」と指示した1。翌 6月、「第 5期全国 人民代表大会第2回会議」において、国務院は、今後3年間、国民経済の「調整・改 革・整頓・向上」という「8字方針」に基づく工作の実行を提案した。

すでに第1章において論じたように、中国の電力工業は、行政と企業経営が一体化

(「政企合一」)した政府管理方式の垂直的一体化経営(発電・輸電・配電・販売の一 体化)を行ってきた。

こうした体制は、計画経済における戦略に基づいて資源を集中させ、電力工業の総 体的発展を実現させるのにその威力を発揮した。しかし、行政つまり政府と企業経営 との区分を明確にさせないという制度的欠点を有していたため、国家が経営を独占す るにつれて、採算を度外視することになり、政府資金の投入さえあれば、経営は成り 立つという状況を作り上げ、経営への積極性を削いでしまっていた。同時に、膨大な 工業体系を管理する機構がそれぞれ独立した権限を持つようになっていた。

中国の電力工業は、改革開放政策の進展を前にして、一般的には、次のような問題 解決に迫られていたといわれている2

(1)有効な市場メカニズムを欠いていること。

政府は依然として行政手段によって直接電力工業を管理しており、市場が発する情

1 「国務院が認可し、下達した電力工業部の『調整・改革・整頓・向上』方針を執行す

ることに関する実行方案」(≪国务院批转电力工业部关于贯彻执行“调整、改革、整顿、

提高”方针的实施方案≫国发[1979]184号,1979年5月29日)(≪中国电力规划≫编写

组≪中国电力规划・综合卷(下册)≫中国水利水电出版社,2007年,700-707页参照)。

2 刘世锦,冯飞主编≪中国电力改革与可持续发展≫经济管理出版社,2003年,总论,1

页参照。

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報を受け取ることができないため、コスト高や低効率を余儀なくされている。後述す るように、電力工業の改革の一つとして「国家電力公司」を成立させ、「政府と企業」

のそれぞれの機能を確定・分離しようとしたが、やはり国有国営の経営方式を踏襲し た「垂直一体化」(発電・輸電・配電・販売の一体化)の独占的企業の成立になってし まい、市場機能を導入することができなかった。たんなる「政企分離」では、市場の 重要な情報を受け入れることができず、コスト高や低効率を改革することはできない。

(2)電力市場は人為的に分離されていること。

省と省との間には大きな管理の障壁が存在して、中国の電力資源は電力消費地域と 遠く離れており、現行の省を跨ぐ電網は行政区分で分断されており、資源の効率的な 配分を妨げている。

(3)政府には有効な管理制度や管理手段が欠けていること。

伝統的な行政管理ではもはや増大する電力需要に対応できず、これが電力価格の管 理問題として突出している。有効な価格管理政策が機能しないと、市場の需給関係を 調節できず、混乱が生じてきている。

(4)相対的な電力の不足を補うには、電力投資を激励する必要があること。

以上のことは、長期的な投資回収メカニズムを設定して、電源と電網の「合一化」

を分離させ、資源配置の市場性を高めなければ、電力需給のバランスを維持すること ができない、ということを意味していた。

こうしたなか、すでに電力の統一管理の方針を決定していた電力工業部は、この問 題解決に乗り出すことになった。電力工業の他の国民経済に対する地位の意義を考慮 して、他の産業に先行して高度集中管理を実施することを決定した。まずは下級に委 譲された権限の回収をさらに推し進めて、前章においてすでに指摘した1975年の「省 を跨ぐ電網管理辦法」に基づく統一的管理を実現することにしたのである。

1979 年12月には、電網の統一的集中管理を強化するため、華北電業管理局(北京 電業管理局の管理範囲を拡大して、北京・天津・河北・山西等の電力工業を管轄)と 西北電業管理局(陝西・甘粛・青海・寧夏等の電力工業を管轄)を成立させ、それぞ れの地域の電力工業に対して統一的指導を行うことにした。この頃までには、電力建 設総局と水力発電建設総局の再建が果たされ、各地域の測量・設計院と水利水電を統 一的に管理・指導するようになった3。翌1980年5月には、武漢に華中電業管理局(河 南・湖北・湖南・江西等の電力工業を管轄)が設置され、1981年5月には、西南電業 管理局(雲南・貴州及び四川省北を除く電力工業を管轄)が設置され4、1982年1月に は、山東省電力工業局(省内の電力工業を管轄)が設置され、電力部の直接指導を受

3 中国电业史志编辑委员会≪中国电力工业志≫当代中国出版社,1998年,56页,746

页。

4 この西南電業管理局は1988年に廃止され、西南電網辦公室が成立した(国家电监会研

究室课题组≪我国电力管理体制的演变与分析≫,載≪电业政策研究≫,2008年第4期)。

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けるようになった。電力工業部の下に広域電網(省を跨ぐ電網系統)の電業管理局が 再度復活設置され、1982年までに、東北電業管理局を含む全国6個の電網管理を基礎 とする電業管理局が電力工業部の統一的管理の下に置かれた(図2-1参照)。

図2-1 電力工業部による管理体制(1979-1982年)

電力工業部 電力建設総局・水力発電建設総局・列車電業局 華北電業管理局―北京電業管理局・天津電力工業局・

河北省電力工業局・山西電力工業局 東北電業管理局―吉林省電力工業局・黒龍江省電力工業局 華東電業管理局―江蘇省電力工業局・浙江省電力工業局・

安徽省電力工業局

華中電業管理局―河南電力工業局・江西電力工業局・

湖南電力局・湖北電力局

西北電業管理局―陝西電力工業局・甘粛電力工業局・

寧夏電力工業局・青海電力工業局

西南電業管理局―四川電力工業局・雲南電力工業局・貴州電力工業局 山東電力工業局―省内電力工業

出所:前掲≪中国电力工业志≫,747-748页に基づいて、筆者作成。

こうして、全国の主要電網及び主要省区の電網は、基本的に中央において集中統合・

管理されることになったのである。しかし、この段階では福建・新疆・広西・広東・内 蒙古・西蔵の電業工業及び電網は依然として省・区の政府が管理する状態に止められた。

1981年春、李鵬(当時の電力工業部長)は、全国の電力工業における報告会議を聴 取した際、電網の集中統一管理・電力消費の節約・設備容量の増加・大容量発電機の 試作と輸入に関する課題を指示し、1958 年から「文化大革命」を挟んでの 10年間、

電力工業の管理権限が地方に委譲され、その後、権限の回収が行われたとはいえ、い まだ中央と地方の二重指導という管理体制が採られていたが、こうしたなか、管理体 制の弊害を改め、省を跨ぐ電網及び同一省内の電網について、電力工業部がこれを統 一的に管理し、電力供給は国家によって統一的に分配する方針を確認した。

1982年3月、「第5期全国人民代表大会第4回会議」は、水利部と電力部を再度合

併させ、水利電力部を設立することを決定したが、上述したように、これは電力工業 における管理体制の集中統合化を緩和させようとしたものではなく、いっそうその歩

省・区政府の管理:福建・新疆・広西・広東・内蒙古・西蔵(チベット)の電 業工業及び電網

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みを加速させるものであった。統一的管理が電網に集中していたのをさらに電源分野

(とりわけ水利関係に関わる水力発電の開発)にも広げようとする意図があったと思 われる。実際、中国の電源、とりわけ水力発電は、主として南部および西部に偏重し ていたことから、1983年1月、地方管理の状態に置かれていた福建省電力工業局を 水利電力部の管轄下に置き、新疆ウイグル自治区電力工業局も西北電業管理局の下に 置いて、統一的に管理することにした。1984年9月には、広西チワン族自治区電力 工業も水利電力部の管理を受けるものとされ、水利電力部と自治区の二重管理・指導 の下に置かれた。また、1984年12月には、華南電網辦公室(広州)が設立され、雲 南・貴州・広西・広東の電網を計画的に相互に接続させ、「西電東送」を実行し、南 方一帯の発電・電網の発展を期することにした。さらに、中央軍事委員会は、電力部 門から分離されていた基本建設工程兵水電部隊を水利電力部の管理と指導の下に戻し た。その他、各地域の水利系を管理するための委員会等の組織が設置され、また研究 所・学院等の施設も充実していった(図2-2参照)。

図2-2 水利電力部の管理体制(1987年頃)

電力工業部 水利水田建設総局・水力発電企画設計院・電力企画設計院 各地域の水系委員会・各種研究院・学院

華北電業管理局―北京市電力工業局・天津市電力工業局・

河北省電力工業局・山西省電力工業局 東北電業管理局―吉林省電力工業局・黒龍江省電力工業局 華東電業管理局―上海市電力工業局・江蘇省電力工業局・

浙江省電力工業局・安徽省電力工業局 華中電業管理局―河南省電力工業局・江西省電力工業局・

湖南省電力工業局・湖北省電力工業局

西南電業管理局―四川省電力工業局・雲南省電力工業局・貴州省電力工業局 西北電業管理局―陝西省電力工業局・甘粛省電力工業局・寧夏自治区電力工業局・

青海省電力工業局・新疆自治区電力工業局 山東省電力工業局―省内電力工業

広西自治区電力工業局 福建省電力工業局 華南電網辦公室

省・区の政府管理:広東・内蒙古・西蔵の電力工業及び電網5

5 この地方政府の指導と管理下に置かれた広東・内蒙古・西蔵の電力工業及び電網につい

ては、前掲≪中国电力工业志≫,752-753页を参照されたい。