第 3 章 事業計画書
3.1 事業計画
3.1.4 長期ビジョン
25年程度の長期間を見据えたインドにおける蓄電池システムの事業展開は、以下が前提となる。
① インドにおける規制改革
アンシラリー・サービスの導入
UIに代わる新たな規制の導入
② コスト低減
具体的な事業性評価については後述するが、本事業の成功にはコスト低減が鍵となる。
まず、現状の条件下では事業成立が難しいため、2020年を目安としてコスト低減につとめ、
事業性を高めてから事業を開始する必要がある。
③ アンシラリー・サービス価格許容性
④ 米国(PJM市場)での周波数制御サービス(FSAS)価格は、前述のとおり 30 $/MW*h 程度で あるが、インド国における公共料金事情を考慮し、PJM市場の2/3ないし1/2の価格レベルが市 場に受容されることが必要となる。
(2) アンシラリー・サービス 1) 市場の成長
インド国最大の電力取引所であるインド電力取引所(IEX)では、2009年以降の市場規模の成長を 示すものとして、参加企業数と取引を発表している(図 3.1.6)。本市場は、現時点において、エネル ギー・サービスの流通手段として利用可能であるとともに、将来的にはアンシラリー・サービスの市 場取引の主要市場と目される。
Day-Ahead Market(DAM)は2008 年に始まり、この市場では電力使用の前日に15分単位で電力
を売買する。Term-Ahead Market(TAM)は2009年に始まり、この市場では最大11日までの電力を
売買することが可能であると同時に、当日の電力を購入することも出来る。IEX は電力市場の 96%
シェアを誇り、1日平均80GWhの取引量を誇る(図 3.1.7)。
それぞれの市場における発電事業者は292社、697社(2014年11月時)であり、これらは将来ア ンシラリー・サービスを提供する可能性もあり、アンシラリー・サービス総需要をこれらの企業でシ ェアすることとなる。
◆ IEX会員及び顧客、■ オープンアクセスによる市場参加者
出所:“Indian Energy Exchange, The progressive growth of the Indian Power Market”, IEX 2013 図 3.1.7 IEXにおける参加企業数の推移
面グラフ:1日あたり取引量(左目盛)、線グラフ:1日あたり市場参加者(右目盛)
出所:“Indian Energy Exchange, The progressive growth of the Indian Power Market”, IEX 2013 図 3.1.8 IEXにおける参加企業数・取引量の推移
2) アンシラリー・サービス価格許容性
インド国の小売電力価格(電気料金)は、需要家のカテゴリによって異なるが、直近(2013 年)
平均では概ね80 $/MWh、産業用が100 $/MWh)、業務用が130 $/MWh)程度である。また、2009-13 年の平均電気料金の年平均上昇率(CAAGR)は、10%である(図 3.1.8)。
一方、2013年のピーク需要及び総電力需要量は、それぞれ136 GW及び1,002 TWhである26から、
平均電気料金(80 $/MWh)を前提にピーク需要の2%(1.4 GW)の周波数制御(FSAS)を導入する とすれば、FSAS導入後の電気料金の値上げ率は0.3%程度となる27。
したがって、電気料金のCAAGRが 10%であることを考えると、FSAS 導入のインパクト(3%)
は許容される可能性が大きい。
注)ドル換算値は1 USD = 60 INRに固定した参考値
出所:Annual Report (2013-14) on The State Power Utilities & Electricity Departments, PC/GOI
(2014年2月)に基づき三菱総合研究所作成
図 3.1.9 インド国における小売電力料金推移
26 Cf. 「インド国全体の電力需給ポジション」(P. 17)
業務用
産業用 平均
農業・灌漑用 家庭用
0 20 40 60 80 100 120 140
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000
2009 2010 2011 2012 2013
ドル換算値(USD/MWh)
電気料金(INR/MWh)
(3) 全体市場の成長
(1)及び(2)の前提等を考慮した、期待される市場(エネルギー市場及びアンシラリー・サービス市 場)についての長期ビジョンを図 3.1.9及び図 3.1.10に示す。
インドにおける蓄電池システムの事業展開は、インド政府による支援、日本政府による支援の下で、
事業者が事業化に向けた努力を実施するという形で進めることが望まれる。
インド政府による支援については、ピーカー関連の政策の導入、UI メカニズムに代わる規制の導 入、アンシラリー・サービスを推進する政策の導入等が期待されるところであり、日本政府による支 援については、スペシャルファイナンススキーム(低金利、長期間、据置期間付き融資)、事業者に よる努力の支援等が期待される。
その上で、コスト削減や生産の現地化 (Make in India)といった努力を事業者が進め、ESS事業の実 現に向けて連携することが必要である。
出所:三菱総合研究所
図 3.1.10 市場形成・発展に向けた取り組み
出所:三菱総合研究所
図 3.1.11 長期ビジョン 0
20 40 60 80 100
2015 2020 2025 2030 2035 2040
市場規模(
10
億$
)NaS電池を中心とする
エネルギー・サービス市場の獲得 LiBを中心とする
アンシラリー・サービス市場の獲得
UI適用
アンシラリー・サービス関連規制の導入
コスト逓減 価格目標
NaS: 400 $/kWh → 230 $/kWh (2020年)
LiB (15 min): 950 $/kW → 600 - 700 $/kW (2018年)