第1節 緒 言
近年、沖縄県や鹿児島県でマンゴーがハウス内で栽培されるようになってきた。
その代表的な品質である早生種 ア‑ウィン マンゴ一果実に関する諸性質、品質 および追熟・貯蔵に関する研究が幾つか報告されている3 1),49)。
最近、マンゴー果実の多様性が消費者から求められるようになり、 アーウィン' 以外に ケント'を初めとする各品種のマンゴーがハウス内で試験栽培されるよう
になってきている。しかし、それらの諸性質や品質に関する報告は皆無である。
金燥1号'は台湾で育成された品種であり、晩生で比較的大型の果実で、わが 国では主に沖縄県で栽培されている。成熟果は800"‑'1,000gに達する縦径約18"‑' 19 cm、横径約 9cmの長楕円形で炭そ病に対する抵抗性が大きく今後の生産拡大が期待 されるマンゴー品種の一つである。しかし アーウィン'のように成熟に伴う果皮 の着色化がほとんどみられず、外観的に採取適期の判断が困難とされている。さら に大型・長楕円形であるため、成熟度が果実の果梗部、赤道部、果頂部において異 なる可能性も挙げられる。現在まで、成熟および追熟に伴う諸性質の変化と採取時 期の判断に関する研究は着手されていない。そこで、本研究は 金煙 1号'の収穫 適期の判断と追熟・貯蔵の基礎的研究を目的として、収穫時期の違いおよび貯蔵が 果実中の物理・化学的性質の変化に及ぼす影響について検討した。
第
2
節 実 験 材 料 お よ び 方 法 1. 供試材料近畿大学付属農場湯浅農場内のプラスチックハウスに植栽されている定植後 7年 生の 金煙1号'に結実した果実を用いた。実験には満開期が1999年5月上旬の花 穂を選び、 8月5日、 18日および9月2日に採取した。そのうち出来る限り大きさ
の揃った果実を 4,,‑, 5個選び、以下に述べる諸性質の分析に供試した。
2. 果実の追熟
1999年9月2日に採取・選別した果実は防湿布(キムワイプ、十僚キンパリ一株式 会社製)で個装した後、 25"c、 58..‑....84%RHで12日間貯蔵した。
これらの貯蔵果と収穫直後の果実の諸性質を比較検討した。
主に果実の色調、果肉硬度、可溶性固形物含量、有機酸と糖類含量およびそれら の代謝に関連する酵素活性を調べた。本学農場における 金燈 1号'樹の栽培環境 条件をTable19に示した。
Table 19 Inside and outside temperatures of greenhouse and hours of sunshine in 1999.
Temperature (OC)
Sunshine inside outside
Month M似 * Min. * Soil ** Max. * Min. * Soil ** hours(h)
23.6 5.8 12.7 10.5 3.1 8.8
2 24.0 6.2 12.4 10.9 1.5 8.1 156.0 3 23.6 8.9 13.9 14.9 6.7 11.5 147.2 4 32.4 13.5 16.7 19.6 10.1 15.3 200.2 5 35.3 17.4 20.0 25.4 14.5 21.6 246.4 6 35.6 20.9 22.4 27.7 19.8 24.7 191.6 7 38.3 23.8 24.7 30.1 23.0 27.3 231.4 8 42.5 25.3 26.8 32.8 24.5 28.8 254.0 9 40.7 24.2 26.7 30.9 23.0 27.8 170.9 10 34.7 19.0 23.9 25.0 15.4 23.4 205.0 11 28.7 11.5 19.2 18.7 9.4 16.3 140.8 12 24.1 7.2 15.2 12.6 5.1 10.3 119.9 Temperatures were measured at a height of 1.5 m above ground* and at a soil
depth of 30 cm ** .
3. 方法
各採取果および追熟果は果梗部、赤道部、果頂部に3等分し、各部分について 下記の測定に供した。実験方法は既述の第2章、第2節に準じた。
( 1 ) 各種酵素活性
α‑および白幽アミラーゼ活性は既述の方法に準じた。ポリガラクツロナーゼ(ペ クチナーゼ)活性、ペクチンエステラーゼ活性、
0
・D‑ガラクトシダーゼ活性およ びα‑L‑アラビノフラノシダーゼ活性は次の方法によった。1 ) アセトンパウダーの調製
各果肉50gに‑200Cの冷アセトン約 500mlを加え、ホモジナイザーで磨砕後吸引 ろ過した。残澄は約 500mlの冷アセトンで洗浄、吸引ろ過後約 250mlのエチルエ ーテルで再度洗浄した。残澄は室温下で24時間減圧乾燥したものをアセトンパウダ ーとした。
2) 粗酵素液の調製
上記アセトンパウダ‑0.5gに0.1Mトリス塩酸緩衝液 (pH7.5) 15 mlを加え、
夜 40Cで撹枠・抽出した。 40Cで12
,
000中m、15分間遠心分離して得た上澄液を粗 酵素液とした。3) ポリガラクツロナーゼ(ペクチナーゼ)活性52)の測定
0.2Mリン酸二ナトリウム,クエン酸緩衝液 (pH5.0) 2.0 ml、1%ポリガラクツ口 ン酸(ペクチン酸)0.1 ml、粗酵素液0.1mlおよび、蒸留水0.1mlをよく混合し、 450C で15分間インキュベートした。 4% NaOH中和後Somogyi‑Nelson法で遊離したガラク ツロン酸量をmg数で示した。
4) ペクチンエステラーゼ活性53)の測定
400C保温した1%ペクチン(カンキツ)を0.05M酢酸緩衝液 (pH5.0)1Omlに10倍 希釈の上記粗酵素液lmlを加え、 30分間インキュベートした。反応液は沸騰水中で 10分間加熱・冷却後、 0.02N水酸化ナトリウム溶液を用いpH8.0まで滴定した。対 照には、同量の粗酵素液を沸騰水中で 10分間加熱したものを用いた。酵素活性は 上記条件で60分間当り生成するカルボキシル基のmmol数で示した。
5) β圃D‑ガラクトシダーゼおよびα‑L‑アラビノフラノシダーゼ 活性の測定
0
・ひガラクトシダーゼ活性は粗酵素液2.5ml に0.5mlのlOmMρ‑ニトロフェニル‑s・ひガラクトピラノシドを含む0.1Mクエン酸‑水酸化ナトリウム緩衝液 (pH4.5) を加え、 370C、15分間反応させた。反応液1.0mlに2.0mlのlN炭酸ナトリウムを 加え、遊離したρ‑ニトロフェノール濃度を400nmの吸光度で、求めた。酵素活性は、
1分間当り生成したρーニトロフェノール濃度で示した。 α‑L‑アラビノフラノシダ ーゼ活性の測定には、基質にρ‑ニトロフェニル‑α‑L‑アラビノフラノシドを用い、
0
・D‑ガラクトシダーゼ活性に準じて測定した。第 3節 結 果 お よ び 考 察
1 .
物理的性質( 1 )果重と果径
各採取果の果重と果径をTable20に示した。満開後 13週 (8月5日採取果)と17 週 (9月2日採取果)を比較すると果径はほとんど差がみられなかったが、平均果 重で約100gの増加がみられ、正常な生長を示唆している33),9)。
Size and weight of Chiin Hwang No.l' fruits sampled for analysis.
Table 20 mango
Weight (g) Transverse
diameter (minor axis) S包ε(cm)
Transverse diameter (major axis) Lengthwis巴
diameter Sampte
707.0士198.4 7.2:1: 0.3
8.4士0.9 16.9:1: 1.8
750.0土198.7 7.5土0.3
8.8土0.7 17.5:1: 1.9
日
860.0土219.4 8.0 :1:0.5
9.1:1:1.1 18.1土3.0
皿
Each value is the mean土SDof four ‑five samples.
Samples 1, IIand
m
were harvested approximately at 13, 15 and 17 weeks after full bloom.....
a・ ヨE
畠 ‑1‑ ̲
〆 . . ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑
e ,
.
‑
‑
( 2 )果実の色調 80
1 ) 果皮色
試料
I
、E
および皿の各部位の果皮のハンタ‑値をFig.9に 80 L
b 40
20
孟
i
a・・・・・・・・ー三
一 ‑
でー
r。
各採取果のL値と a値 はほぼ一定であったが、 b値は やや増加の傾向を示した。
ことは果皮色は果実の成熟度の 進行に伴ってほとんど変化しな いことを意味している。また各 採取果における部位別間の相違
山コ一四﹀﹄田一戸Eコ工
この
たし
一示
a
‑20
はほとんど認められなかった。
この結果は、 金短 1号'果実 と同環境下で栽培された
Ch町、geof Hunter L, a and b values of 'Chiln Hwang NO.1
・
mangofrult skin during maturation. ー・ー,Stalk ー ー Equator ・企・・, Ap8X Sampl個1.11刷 dlnW8re ha向811t・
dapproxlmat81y at 13, 15町、d17 W
・ ・
kllaft8r full bloom.UI 1
1 Samp 陶
9
‑40
Fig.
アー マンゴーでは成熟度の 進行に伴い、いずれの部位にお いてもハンタ‑値が高くなり各 部位においても明確な差が認め
ウィン'
られたことと極めて対照的であった。
一方、試料皿を250Cで追熟した場合 の果皮色の変化をFig.10に示した。
果梗部のL値は追熟8日目位までは 赤道部および果頂部よりやや高くなっ ていたが、両部位は10日目位から上 昇しはじめ12日目にはほとんど差が なくなった。また部位別にはほとん ど差がなかった a値は8日目までは ほぼ一定であったが、10日目位から 上昇し始めた。一方、b値は追熟期 間の経過とともにL、a値よりも顕 著は変動を示した。特に、追熟初期 では果頂部の値は他の 2つの部位よ りも低くなっていたが、日数の経過 に伴い漸増し、12日目では果梗部お よび赤道部よりも高値を示した。こ れらのハンタ‑値の変化は肉眼観察
目。
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a‑ ‑ t !ト凶]
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+ ・ 血 │
;回 l 争を?:~γ 土ム
ゐ~E
‑20
‑40 o 2 4 e 8 10 12
T1m
・
ofrlpenlng (day8)Fig. 10 Change 01 Hunter L, a and b values 01 'Chiin Hwang No.1' mango 1rult skln durlng rlpenlng at 25"C.
ー『・ーー ,Stalk ・ー・トー, Equalor ・噌・・.Apex
で、追熟初期の緑色果から、次第に黄色を増し、追熟後期には黄色果に変わっていっ た結果と一致した。
2) 果肉色
各採取果および追熟果 (250C、12日間)の 3つの部位における果肉のハンタ ー値をTable21に示した。各採取果の部位別のL値はほとんど同じであったが、 a
値と b値に関しては若干の差が認められた。試料 Iで果梗部および赤道部よりも低 値を示した果頂部の
a
、b値は、試料皿では他の2つの部位よりも高い値を示した。このことは果実の成熟度の進行に伴い、肉眼観察で果肉色が淡緑黄色から穏燈黄色 に変化した結果と一致した。追熟果では、各部位のL値は低下、
a
、b値はともに 上昇した。また、果頂部の両値は他の部位に比べて高い値であった。なお、肉眼観 察では燈黄色であった。以上の結果、成熟度の進行に伴う果肉色の変化は アーウィン'の場合と同傾向であることを明らかにした。
Table 21 Hunter L, a and b valu踊 of• Chlln Hwang No.1' mango flesh durfng maturatlon剖 drfpenlng.
Hunter∞lor Sample
L
日 皿 a
b
Ripened
m 日 Ripened
日 皿 Ripened
Stalk 78.6土1.2a
・
73.4:t 9.5a 79.1 +0.7a 61.7:t2.9b
‑6.9土l.2a
‑2.3:t6.7a
‑3.2土0.3a 1O.8:t 1.3b 36.3土2.4a 41.6土6.8,ba 45.5:t4.6b ω3土2.4C
Portion of台uit Equator 81.1:t 1.3a 74.4土9.6a 78.7:t2.4a 58.8土3.4b
‑6.4土0.8a
‑D.1土7.0b ー1.0土1.0,ba 13.8:t0.8C 33.6:t l.6a 44.0土9.9b,c 47.3:t0.3C ω2土6.9d Each value is the mean土5Dof four ‑five samples.
Apex 8O.2:t0.9a 75.6:t9.6a 78.0:t3.6a 61.7土4.3b
‑8.1 :t0.6a
‑2.4士9.7a ー1.3:t3.5 a 14.9i:3.4 b 31.7 i: 1.0a 43.1土1O.3b 53.5:t4.6C 65.1 i: 3.3d
Samples 1 ,[1 and illwere harvested appro足matelyat 13, 15 and 17 weeks after full bl∞m
Ripened indiωtes山E仕凶tripened at 25'C釦d58‑84% RH for 12 days.
.V山 esnot sharing a ∞rnrnon supersαipt letter are signi.ficantly different伊<0.01).
3) 果肉硬度
成熟度の進行および追熟に伴う果肉硬度の変化をTable22に示した。その結果3 試料果とも種子側の硬度は果皮側より低いこと、種子側では、果梗部の硬度は赤道 部および果頂部のそれよりも高いが、果皮側部位別間の硬度差は種子側より少ない
ことが判明した。
Table 22 Flesh firmness of
・
ChiinHwang NO.1' mango frults durlng maturation and ripening.Flesh flfDlness (kgf/cm2) Side of Sarnple Portion of fruil
口1easur巴menl
Slalk Equalor Apex Seed 22.80土3.77a 20.50土5.76a 18.94土3.60a
H 22.27土5.11a 17.39 i::3.17a 18.44土2.80a 皿 20.01 i:: 3.22a 16.35土3.00a 16.73土3.82a Ripened 0.78土0.20b 0.55土0.27b 0.56 i:: 0.38b Peri伺 巾 27.65::!::5.56a 26.20::!::6.47a 32.01土5.25a
H 27.55 i:: 6.68a 23.23 i:: 3.69a 30.13 i:: 4.69a 皿 24.56土6.24a 25.49土4.40a 26.20 i:: 4.20a Ripened 1.00 i:: 0.39b 0.66 i:: 0.24 b 0.82土0.41b
Each value is the mean土SDof four ‑five samples.
Samples 1, IIand III were harvest巴dapproximately at 13, 15 and 17 weeks after . full bloom.
Ripened indicates the fruil ripened at 25'C叩d58‑84% RH for 12 days.
*Values nol sharing a common superscripllelter are significant1y different伊く0.01).
また、成黙i度の進行に伴い、種子および果皮側3部位の硬度はほとんど低下しなかっ た。 ア‑ウィン'の場合には、成熟度の進行に比例して果肉硬度は明らかに低下 した様相と大きく異なった。しかし、 試料
E
の採取果をお OC12日間追熟した果実 では、果肉硬度は顕著に低下するとともに部位問の差もほとんどなくなった。2. 化 学 的 性 質 ( 1 ) 水分
全採取果および部位別において水分含量は約 81%であった。また追熟果の水分 は平均して78.64%であり、マンゴ‑果実のうちでは中程度の水分含量と考えられ る。
(2) pH
採取日および部位の違いはなく約 4.5であった。しかし追熟により5.5に上昇した。 各種マンゴー果実のなかでもかなり高い値であった。
( 3 ) 可溶性固形物含量
Fig. 11に各試料果の可溶性固形物含量を示した。試料
I
およびE
は3部位ともほ とんど同じ値であったが、試料固では3部位ともやや増加し、約10oBrixであった。25