第4章 国連平和維持要員による人権侵害への対処
1 国連平和維持要員による人権侵害
(1)国連平和維持要員による人権侵害の問題
国連は紛争地にPKOを派遣しているが、PKO要員による女性への暴力
(難民キャンプでの性暴力や、現地での買春などの行為)が大きな問題と なっている。こうした事態を受け、安全保障理事会は2000年に安保理決 議第1325号により、平和維持活動にジェンダーの視点を入れることや、
要員に対する研修、加害者の処罰を各国に求めたが、効果が十分でないた め、第3章で述べたとおり、決議第1820号、第1888号などの新たな決 議により、各国に対して人権侵害に対する取り組みの強化を求めている。
図 4-1 PKO要員が主体となる人権侵害の構図
出典:筆者作成
(2)実例
ア メディア等で公表されているもの (ア)コンゴの事例
2006年8月18日、コンゴ(旧ザイール)で活動する世界最大規模 の国連平和維持活動(PKO)部隊、コンゴ監視団(MONUClxxi、約
lxxi MONUC: Mission de l'Organisation des Nations Unies en République démocratique du Congo
PKO要員が加害者 となる事案が生起
主体
(加害者)
客体
(被害者)
人権侵害行為
要員教育
女性、児童等の権利
設問
・国連が問題視している国連平和維持要員による人権侵害行為とは何か。
2万人)の要員が組織的な少女買春に関与している疑いが浮上し、国 連が内部調査を行っている。MONUCでは2004年にも、兵士らが卵 や牛乳などと引き換えに難民の少女に性交渉を迫るなどしていたこと が判明している。MONUCの声明などによると、地元のあっせん業者 がコンゴ人少女に対し、MONUC部隊が駐留する南キブ州での売春行 為を勧誘。一部の少女らの証言から、組織的な少女買春網の存在が浮 かび上がった127。
(イ)ハイチの事例
2007年、国連は、ハイチに展開中のPKO「ハイチ安定化派遣団
(MINUSTAH)」に参加するスリランカ兵士による現地女性に対する
買春疑惑が浮上し、懲戒処分として100人以上を公表の翌日には送還 すると発表した。
また、同ハイチにおける2011年の部隊の例では、ウルグアイ軍の 兵士4人が地元の18歳の少年に性的暴行を加えたという疑いが持た れたもので、ウルグアイの兵士が笑いながら少年に性的暴行を加えて いる動画がインターネット上に公開されたという。4人は速やかに身 柄を拘束されていて、ウルグアイは現地司令官を更迭するとともに、
国防大臣がハイチ政府に謝罪した128。
イ 国連で調査中の規律違反の件数(2013年4月30日現在)
区 分 総 数 割 合 PKO の件数
PKOの
占める割合 金 銭 94 42% 21 19%
物品、資産 5 2% 4 4%
管 理 6 3% 3 3%
人 事 71 31% 49 44%
調 達 21 9% 10 9%
計 画 4 2% - 0%
SEA 25 11% 25 22%
セクハラ - 0% - 0%
合計 226 100% 112 100%
出典:OIOS月間記録資料を基に筆者作成
(3)平和維持要員による人権侵害の影響
ア 国連に対する信頼とイメージの失墜
違反行為、特に性的搾取・虐待や犯罪行為はミッションのイメージと 信頼を著しく損ない、マンデート遂行実施にマイナスの影響を与えかね ない。そして、ミッションの信頼性を損なうことにより、平和維持活動 の効果を減少させるとともに、活動の実施そのものが困難になる場合も ある。また、違反行為は、国際社会や受入国において、国連と要員派遣 国の評判にも悪影響を及ぼす。
設問
・平和維持要員が人権侵害行為を行った場合、どのような影響が生じるの か。
イ 不安全状態の生起
違反行為は、平和維持要員の安全を脅かすことがある。特に性的搾 取・虐待などは、被害者の人権を侵害するばかりでなく、被疑者、部隊 全体、ひいてはミッションが、家族や共同体からの暴力的報復を受ける ことにもなりかねない。