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児童の権利の保障

ドキュメント内 人権保障による平和構築 (ページ 115-132)

第2章 平和構築の過程における弱者の人権の保障

3 児童の権利の保障

(1)児童が抱える問題

ア 児童の権利の保障の必要性

図2-5 児童の抱える問題の概要

出典:筆者作成

児童とは、「18歳未満のすべての者」をいう(児童の権利条約1条 本文)。児童について条約等による保護が必要とされるのは、児童が精 神的・身体的に未成熟であり、社会的弱者の立場にあるからである。な ぜなら、児童は、その生活を完全に大人に依存し、肉体的、精神的にあ らゆる種類の影響を受けやすいことから、容易に操られてしまうからで ある88。また、精神的・身体的未成熟な特徴に加え、地球の人口のおよ そ50%を占めており、極めて困難な条件下で生活している児童が、世 界中に存在していることから、こうした児童の権利を保障する必要があ る。

児童の特徴:

精神的・身体的未成熟 極めて困難な条件下での生活

児童労働(性的搾取、子ども兵士等)

設問

・国際法上保護される「児童」とは、どういう条件を満たした者をいう か。

・国際平和協力活動を行う地域において、なぜ児童の権利を保障しなけれ ばならないのか。

・国際社会における主な児童の問題は何か。

イ 児童労働

特に、貧困を主因として問題となっているのが、児童労働である。世 帯所得の4 分の1程度を子どもたちが稼いでいるような貧しい家庭では、

収入の多くが食料に充てられており、働く子どもたちの収入が家族の生 存にとって非常に重要な位置づけを占める。そして、多くの国では基礎 教育が有料で、また教育サービスの普及程度も不十分なため、すべての 児童が学校に通える状況ではないことも多い。こうした背景から両親が 教育に価値を見出さない場合には、その家の子どもたちは学校に行かず に働かされることになる。また、使用者は、児童への労働対価が大人に 比べて安く、また抵抗をしないで命令に従順に従うことから、児童を雇 うことを好む傾向にある89。現在、ILOの統計によると、約2億4600 万人の児童(5-17歳)(世界中の児童の6人に1人)が児童労働に従 事しているといわれている90

表3-1 児童労働の実態

労働の形態 内訳 人数

児童労働をしている児童

全体 24600万人

15歳未満 18600万人

危険で有害な労働をしている児童

全体 17100万人

15歳未満 11100万人

無条件に最悪の労働をしている児童

全体 840万人

強制労働・債務労働 570万人 強制的な子ども兵 30万人 買春・ポルノ 180万人

不正な活動 60万人

出典:ILO駐日事務所HPの資料を基に筆者作成 ウ 性的搾取

児童労働の中でも、最悪の形態の児童労働として見なされて、大きな 問題となっているのが、児童買春、児童ポルノである。ILO の 2000 年

の児童労働世界統計は、世界中で買春やポルノグラフィで搾取される児 童数を 180 万人と推測している。ほとんどの国で 80~90%の被害者は 女子だが、男子が多数を占める場所もある91

エ 児童兵士

他の最悪の形態の児童労働のひとつとして、児童兵士がある。世界中 の 36 の武力紛争で、30 万人にものぼる 18 歳未満の児童が労働目的で 使用されている。これには、正規・非正規の武力軍やその他の武装集団 とかかわり、戦闘員やコック、ポーター、伝達役などとして働かされる 児童を含んでいる。また、小型で軽量な武器が大量に紛争地域に流れ込 むことによって、多くの児童が兵士として使用されるようになった。ア メリカ大陸やヨーロッパ、中東でも児童は労働力として使われているが、

アフリカとアジアではもっとも深刻な問題となっている92写真2-1

ⒸUNICEF/kent Page 提供:(公財)日本ユニセフ協会 リベリア和解・民主連合(LURD)の反政府軍、

リベリア民主運動の反政府軍として戦う児童兵士。

その大部分が戦争中の軍隊から無理やり兵士として 招集されている

(2)児童の権利を保障するための枠組み

図2-6 平和構築の過程における児童の権利を保障するための枠組み

:条約 出典:筆者作成

女性の権利の保障に関連する条約と比較して、児童の権利の保障に関す る条約は非常に多い。これは児童が精神的・身体的に未熟であり、児童を 保護する必要性について、国際的に合意を得られやすいことが理由である と考えられる。

ア 就業が認められるための最低年齢に関する条約(ILO138号条約)

「ILO138号条約」は、1973年6月26日国連総会で採択された、

ILOが1919年以降に採択された業種別、最低年齢条約を、改正・統合

就業が認められるための最低年齢に関する条約(ILO138号条約)(1973年)

児童の売買、児童買春および 児童ポルノに関する児童の 権利条約の選択議定書(2000年)

武力紛争への児童の関与 に関する児童の権利条約の

選択議定書(2000年)

国際刑事裁判所に関するローマ規程(1998年)

ジュネーヴ条約追加議定書(1977年)

ケープタウン原則(1997年)

安保理決議16122005年)

パリ原則(2009年)

児童労働(性的搾取、児童兵士)

武力紛争の被害からの児童の保護 性的搾取からの保護

児童労働からの保護

安保理決議18822009年)

安保理決議19982011年)

児童の権利に関する条約(1989年)

最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(ILO182号条約)(1999年)

設問

・児童の権利を保障するための枠組みはどうなっているのか。

した、最低就業年齢に関する条約である。

本条約は、児童労働の廃止と若年労働者の労働条件向上を目的に、就 業の最低年齢を義務教育修了年齢と定め、いかなる場合も15歳を下回 ってはならないことを規定している。ただし、開発途上国の場合は、当 面14歳とすることも認められている。

若年者の健康、安全、道徳を損なうおそれのある就業については、最 低年齢は18歳以上に引き上げられ、軽易労働については、一定の条件 の下に、13歳以上15歳未満の者の就業を認めることができる(途上国 の場合には12歳以上14歳未満)93

イ ジューネーヴ条約追加議定書

「ジュネーヴ条約追加議定書」は、武力紛争の形態が多様化・複雑化 したことを踏まえ、文民の保護、戦闘の手段及び方法の規制等の点で、

ジュネーヴ諸条約を始めとする従来の武力紛争に適用される国際人道法 を発展・拡充したものであり、1977年に採択された。

本議定書によって、国家及び国内の武装勢力による児童兵士の徴募や 戦闘参加の年齢制限が定められ、15歳未満の児童兵士の徴募・利用は 原則として禁止された。

ウ 児童の権利に関する条約liv

「児童の権利に関する条約」は、1989年11月20日に国連総会で採 択された児童の人権の尊重・保護の観点から必要となる締約国の義務を 規定した条約である。

本条約は、18歳未満のすべての者を「児童」と定義し、締約国は、

条約で保障された権利をいかなる種類の差別もなしに尊重・確保しなけ ればならない旨を規定した。また、児童の最善の利益が第一次的に考慮

liv 条約の名称に含まれるchildという語を「児童」と翻訳するか「子ども」と 翻訳するか国会審議で問題となった当時の政府・与党は、従来の条約の訳例 及び法令用語との整合から「児童」を用いるべきと主張し、「児童」という 名称を条約では用いている。ただし、広報にあたって、分かりやすくするた めに「子ども」も用いることが合意され、国会により承認された。

されなければならないという指導的原則が条約全体を貫いている。

本条約にはすべての国連加盟国が署名しているが、批准手続きをとっ ていない国は、米国とソマリアのみとなっている。したがって、この2 ヵ国を除く全ての締約国は、本条約の履行が国際法上義務づけられてい る。

エ ケープタウン原則

「ケープタウン原則」は、1997年、ユニセフが、南アフリカのケー プタウンで開催された国際シンポジウムで、児童の権利条約関連の NGOと共同で、武力紛争における児童の権利保護に関する国際的基準 をまとめたものである 94。 この原則では、敵対行為の参加だけでなく、

軍隊及び武装集団によるすべての形態の徴兵において、最低年齢を18 歳に引き上げるための提案が行われた。

オ 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条 約(ILO182号条約)

「ILO182号条約」は、1999年6月の総会において、ILOがILO条 約を補完するものとして採択した「最悪の形態の児童労働の禁止及び廃 絶のための即時行動に関する条約」である。本条約では、「最悪の形態 の児童労働」として、①あらゆる形態の奴隷制度またはそれに類似した 慣習、②売買春または児童ポルノ等における児童の使用等、③不法な活 動(とくに麻薬の製造・取引)における児童の使用等、④業務の性質ま たはそれが行われる状況により、児童の健康、安全または道徳を損なう おそれがある業務」の4つを挙げており、批准国は刑罰を含み、条約の 効果的な実施を確保するための措置を講じることが求められる。

カ 国際刑事裁判所に関するローマ規程

「国際刑事裁判所に関するローマ規程」は、国際的武力紛争において、

15歳未満の児童を軍隊や武装団体に徴募もしくは入隊させることまた は敵対行為に直接参加させることは、戦争犯罪になるとし(8条2項b xxvi)、さらに国際的でない武力紛争の場合でも、同様のことが禁止さ れると規定している(8条2項e vii)。本規程によって、国際法上はじ

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