第 2 章 壁面移動ロボットの軌道追従制御法 15
2.5 窓ガラス清掃ロボットを用いた軌道追従実験
2.5.3 重力とその他の動力学による非線形な影響を補償する効果の
t(s) 0
∆ (deg) 0
2 4 6 8 14
5 10 15 20 25 30
-5 -10 -15 -20 -25
-30 12
θ
10
Fig. 2.23Error of orientation detection
x y
ΣW
W W
θ=0 0.1m
Fig. 2.24Initial position and orientation with initial position error
1つ目の実験においては,ロボットが目標とする水平な直線を,水平方向の位置の 誤差が±0.17m以内,鉛直方向の位置の誤差が±0.02m以内,姿勢の誤差が±10◦以 内で追従できるなら,目標軌道での水平方向への直進が可能であるとしている.た だし,水平方向の目標位置xdと位置Wxの差は清掃には大きく影響しない.これら を考慮して,ロボットが目標とする水平な直線に収束していき,鉛直方向の位置の
誤差が±0.02m以内,姿勢の誤差が±10◦以内で追従するとき,ロボットが目標軌道
に収束して追従することが可能であるとする.
2.2節で提案して式(2.13)に示す,重力とその他の動力学による非線形な影響を補 償する制御入力トルクによる実験結果と,式(2.46)に示すそれらの影響を補償しな い制御入力トルクによる軌道を比較する.
τ =M J−1{p¨c+Kp( ˙pc−p) +˙ Ki(pc−p)} (2.46) 補償する場合は,補償しない場合よりも短い時間で,ロボットが目標軌道に収束し ていき,鉛直方向の位置の誤差が±0.02m以内,姿勢の誤差が±10◦以内で追従する ようになることを示す.これにより,重力とその他の動力学による非線形な影響を 逆動力学計算によって補償することによって,鉛直方向に初期位置誤差がある場合 でも,素早く目標軌道に収束して追従することが可能となることを確認する.
式(2.13)に示す重力とその他の動力学による非線形な影響を補償するときの軌道
追従制御入力トルクと,式(2.46)に示すそれらの影響を補償しないときの入力トル クを,それぞれ式(2.43)に代入する.得られる入力電圧vをモータに印加する.
試行錯誤により目標軌道に対する鉛直方向の位置の誤差と姿勢の誤差が小さくなる ように,軌道追従制御ゲインをkx = 0.1(1/s), ky = 200(rad/m2), kθ = 28.3(rad/m)
t(s) 0
W ith compensation of nonlinear effects W ithoutcompensation of nonlinear effects 0.0
2 4 6 8 14
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
-0.02 -0.04 -0.06 -0.08 -0.1 -0.12
12 10
Wy-yd (m)
Fig. 2.25Vertical position error of the robot with initial position error
と決定した.また,速度制御ゲインを,式(2.13)についてはkp = 1000(1/s), ki = 750(1/s2)と決定し,式(2.46)についてはkp = 1000(1/s),ki = 500(1/s2)と決定した.
重力とその他の動力学による非線形な影響を補償する場合の試行と,それらの影 響を補償しない場合の試行をそれぞれ5回ずつ行い,1つ目の実験と同様に,ポジ ションセンサ(浜松ホトニクス社製C5949)によって,ロボットの位置Wx, Wy,姿 勢θを測定した.時刻tにおける,ロボットの位置Wy,姿勢θと,ロボットの目標 位置yd,姿勢θdの差の平均値と標準偏差を,それぞれ図2.25, 2.26に示す.横軸は 時刻tを,縦軸はそれぞれ(Wy−yd), (θ−θd)を表す.赤色の実線が重力とその他の 動力学による非線形な影響を補償する場合の結果の平均値を,青色の破線がそれら の影響を補償しない場合の結果の平均値を示す.また,範囲を示すI 印がそれぞれ の標準偏差を示す.
重力とその他の動力学による非線形な影響を補償する場合もそれらの影響を補償 しない場合も,ロボットは目標軌道に収束して追従する.ここで,収束後にもロボッ トの姿勢がθ >0となっているのは,目標軌道で水平方向に直進するためにはオブ セット角が必要なためである.ロボットが目標軌道に収束していき,鉛直方向の位 置の誤差が±0.02m以内,姿勢の誤差が±10◦以内で追従するまでの時間を比較す
t(s) 0
W ith compensation of nonlinear effects W ithout compensation of nonlinear effects 0
2 4 6 8 14
5 10 15 20 25 30
-5 -10 -15 -20 -25
-30 10 12
- (deg)θ θ d
Fig. 2.26Orientation error of the robot with initial position error
る.図2.25, 2.26より,重力とその他の動力学による非線形な影響を補償する場合は
5.7sで収束して追従したのに対して,それらの影響を補償しない場合は収束するま でに7.4sかかった.したがって,重力とその他の動力学による非線形な影響を補償 することによって,目標軌道への収束性が向上することが分かる.これにより,水 平パラレル動作による目標軌道において,鉛直方向への直進時や方向転換時の制御 誤差によって重力方向に下がり,鉛直方向に初期位置誤差がある場合に目標とする 水平な直線への追従性能が向上する.