第 3 章 窓ガラスの汚れ検出 49
3.8 窓ガラスの汚れ検出についての結論
平方向の一列がもう汚れを落とせない状態であるかを検出できることが分かる.こ れにより,落とすことが可能な汚れを残して,その列の移動を終了することがなく なるため,窓ガラスを確実に清掃することができる.
第 4 章 おわりに
本研究では,作業者の落下により多くの死亡災害が発生している窓ガラス清掃作 業に注目し,その自動化を検討した.窓ガラス清掃作業の自動化の現状を踏まえ,小 型自走式ロボットによる確実な窓ガラス清掃を目的として,まず,ロボットに必要 な機能を検討した.次に,その検討を基に,鉛直なガラス面全体を確実に移動する 機能を実現するために窓ガラス清掃ロボットの軌道追従制御法を,ガラス面の汚れ を検出する機能を実現するために窓ガラス汚れ検出センサを提案した.また,窓ガ ラス汚れ検出センサを用いてロボットが窓ガラスを確実に清掃するための動作方法 の提案も行った.
第2章では,鉛直なガラス面上を移動する窓ガラス清掃ロボットは,壁面移動ロ ボットの1つであると考えて,重力とその他の動力学の影響を受ける壁面移動ロボッ トについて,それらの影響を逆動力学計算により補償する軌道追従制御法を提案し た.また,その漸近安定性をリアプノフ関数を用いて示した.さらに,実際に窓ガ ラス清掃ロボットを用いた実験により,提案手法によって,従来手法では困難な目 標軌道での水平方向への直進が可能となり,重力とその他の動力学の影響を補償す ることにより目標軌道への収束性が向上することを示した.これにより,窓ガラス 清掃ロボットは,窓ガラス清掃における理想的な軌道である水平パラレル動作軌道 を追従可能となった.したがって,ロボットが鉛直なガラス面全体を確実に移動す る機能を実現した.
第3章では,汚れの程度によって変化する窓ガラスからの反射光量を測定して,汚 れを検出するセンサを提案した.拭い取り法との比較を行い,提案したセンサによっ て窓ガラスの汚れを検出できることを示した.これによりロボットがガラス面の汚 れを検出する機能を実現した.さらに,提案したセンサを搭載したロボットが汚れ
を落とせなくなるまで移動を繰り返すことにより,落とすことができる汚れを確実 に落とすための動作方法を提案した.最後に実際にロボットを用いた実験によって,
提案する動作方法が実現可能であることを示した.
窓ガラス清掃ロボットに関する残された課題について以下で議論し,実用化のた めの将来展望を述べる.
まず,本研究では,ロボットが窓ガラスに吸着する方法として,移動機構が汚れ や水の影響を受けにくく安定した移動が可能な永久磁石による磁石吸着式を採用し ている.本手法では,永久磁石を用いて吸着力を発生しているので,電源が不要で ある.このため,ポンプを用いる負圧吸引式や電磁石による磁石吸着式とは異なり,
電源供給トラブルによって落下する危険性がないメリットがある.しかし,吸着力 の自由な設定が困難であり,現在は,窓ガラスの厚さに合わせてロボットに搭載す る永久磁石の個数を調整している.
磁石は,磁石間の距離が近いほど強い吸着力を生じる.そこで,ばねなどを用い て磁石間の距離を自動で調整する機構を開発することにより,異なる厚さの窓ガラ スに対しても容易に適用することが可能となると考えられる.
また,第2章で提案した壁面移動ロボットの軌道追従制御法を適用することによ り,ロボットは窓ガラス清掃における理想的な軌道である水平パラレル動作軌道を 追従可能となる.しかし,この水平パラレル動作軌道は窓ガラスの大きさによって 異なるため,現在は事前に人間が目標軌道を設定している.
そこで,ロボットに衝突検出センサを搭載し,窓枠との衝突を検出する.これに より,窓枠との衝突時の自己位置情報を基に,窓ガラスの大きさを推定可能となる.
ゆえに,ロボットが,動作開始に四方の窓枠と衝突するように移動して窓ガラスの 大きさを推定することで,その情報を基に自動で目標とする水平パラレル動作軌道 を設定し,それを追従することが可能になると考えられる.
最後に,第3章では,窓ガラスの汚れ検出方法を提案しているが,検出する汚れ は,指紋とほこりと砂がそれぞれ単体で存在する場合に限定している.しかし,実 際にはそれらの汚れが同時に存在する場合があり,そのような汚れも検出する必要 がある.3.2節の議論より,砂Aと砂Bが同時に存在する場合は,共に同じ砂であ
るので,砂の大きい粒子も含む砂Bと同じ状態とみなせると考えられる.したがっ て,ほこりや砂Bと同じように,汚れが多いほど受光量は増えると考えられる.ま た,砂とほこりが同時に存在する場合も,内部に多数の隙間があり,砂またはほこ りと空気の境界面が多数存在するため,ほこりや砂Bと同じように,汚れが多いほ ど受光量は増えると考えられる.一方,指紋を含む場合は,ほこりや砂の内部の隙 間を指紋が埋めるため,指紋と同じ状態とみなせると考えられる.結局,指紋や砂 Aと同じように,汚れが多いほど受光量は減ると考えられる.
謝 辞
本研究の計画から論文の製作に至るまで御指導頂きました九州大学大学院工学研 究院機械工学部門 山本元司教授に心より感謝いたします.また本論文をまとめる にあたり,有益な御助言を賜りました九州大学大学院工学研究院機械工学部門 雉 本信哉教授,九州大学大学院工学研究院航空宇宙工学部門 外本伸治教授に深く感 謝いたします.本研究を進めるにあたり九州大学大学院工学研究院機械工学部門 菊植亮准教授,池田毅助教には多大な御指導を頂きました.新屋幸喜技術職員には 実験機の製作に御協力頂きました.そして,秘書の立山みどりさんには様々なサポー トをして頂きました.ここに深く感謝いたします.
九州大学国際教育センター Svinin Mikhail教授,九州大学大学院工学研究院機 械工学部門 田原健二准教授,大阪大学大学院工学研究科 杉原知道准教授,佐賀 大学大学院工学系研究科 林喜章助教には様々な御助言を賜りました.ここに深く 感謝いたします.また,既に御卒業された方々も含めて,様々な面で御協力頂きま した研究室の先輩方,同輩,後輩の皆さんへ感謝いたします.
最後に経済的に支援して頂いた家族に心から感謝いたします.
平成24年3月 香月 良夫
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