第 3 章 窓ガラスの汚れ検出 49
3.6 窓ガラスの汚れ検出実験
本節では,3.3節で提案した汚れ検出センサによって,窓ガラスの汚れを検出でき ることを確認する.このため,汚れの定量評価として実績がある拭い取り法[35]と の比較を行う.拭い取り法の手順を以下に示す.
拭い取り法による窓ガラスの汚れ検出 1.拭き取り用紙の質量を計量する.
2.拭き取り用紙で窓ガラス表面の一定面積の汚れを拭き取る.
3.汚れを含んだ拭き取り用紙の質量を計量する.
4.汚れを拭き取る前後の拭き取り用紙の質量の差を計算する.
5.その差を拭き取った面積で割って,単位面積あたりの汚れの質量とする.
Photosensors
LED Photo-transistor
Incident
light Reflected light
Connection Photosensor
Fig. 3.21 Dirt detect sensor unit for a glass cleaning robot
拭き取る面積を50mm×50mmとし,拭い取り法による汚れの質量と図3.21に示す 汚れ検出センサユニットの出力電圧を比較する.
図3.21に示す汚れ検出センサユニットでは,発光部と受光部として近赤外線LED とフォトトランジスタをもつフォトセンサ(ROHM社製RPR-359F)を14(=Nphoto) 個使用している.本フォトセンサは,太陽光や蛍光灯からの近赤外線の影響を受け るため,3.3節で提案しているパルス駆動によりそれらの影響を除去している.LED の点滅の周波数は500Hz,HPFのカットオフ周波数は160Hzと試行錯誤により決定 した値を用いた.
また,実際の汚れの観察結果から本センサで検出する最小の汚れを,半径r = 1mm の円状で小さいが目立つ汚れとする.対象とする窓ガラスの厚さを3mm,センサ から窓ガラスまでの距離を2mmとすると,汚れから汚れ検出センサまでの高さは d= 5mmである.このとき式(3.7)のしきい値をα= 0.25として,汚れ検出センサ の検出領域を長さLsl = 66mm,幅Lsw = 4mmの矩形領域と実験的に決定する.
図3.22に示す指紋,粒子径が小さい砂A,粒子径が大きい砂B,ほこり,ベビー パウダーによる汚れについて検出実験を行う.汚れの程度を調整しやすさから,ベ ビーパウダーも本実験の対象としている.ベビーパウダーの主成分は滑石であり,無 色透明な結晶により構成さているため,ほこりと同様にベビーパウダーがある場合 は,汚れがない場合よりも受光部における受光量が増える.提案する汚れ検出セン サによって,他の汚れと同様にベビーパウダーも検出可能であることを実験により
Baby powder
Sand B Dust
Fingerprint Sand A
Fig. 3.22Glass windows with a different kind of dirt
確認する.そして,以降の実験では,汚れとして汚れの程度を調整しやすいベビー パウダーを用いる.
それぞれの汚れについて,図3.23のように汚れの程度が異なる4つの窓ガラスA,
B, C, Dを用意した.窓ガラスAは,人によってこれ以上きれいにできない状態ま
で清掃した後の窓ガラスである.窓ガラスDは,非常に汚れている窓ガラスである.
また,窓ガラスBおよびCは,窓ガラスDの状態から人の手である程度汚れを落と した状態である.窓ガラスBの状態を,本センサシステムで汚れているが最も汚れ が少ないと評価する状態とし,窓ガラスCの状態は,窓ガラスBとDの状態の中間 程度の状態である.ただし,指紋については他の汚れと比較して汚れの程度に差異 をつけるのが難しい.このため,窓ガラスCの状態を用意するのが困難なので,A, B, Dの3つの状態のみを用意した.
Glass A (Clean)
Glass B (Little dirty)
Glass C (Dirty)
Glass D (Much dirty) Fig. 3.23 Glass windows with different amount of dirt(Baby powder)
Table 3.1 Comparison between the dirt detect sensor and the estimation by mass of wiped dirt
A B C D
Fingerprint Density (g/m2) 0.0 0.04 - 0.6 Output voltage (mV) 2327 1873 - 1751 Sand A Density (g/m2) 0.0 1.2 1.5 1.6
Output voltage (mV) 2327 1882 1644 1621 Sand B Density (g/m2) 0.0 0.5 1.6 4.2
Output voltage (mV) 2327 2746 2833 3184
Dust Density (g/m2) 0.0 0.8 1.5 5.4
Output voltage (mV) 2327 2757 2920 3439 Baby powder Density (g/m2) 0.0 1.6 2.5 3.6
Output voltage (mV) 2327 2746 3183 3340
これらの窓ガラスについて,それぞれ5回ずつ汚れ検出センサによる評価を行っ た後に,拭い取り法による評価を行った.その結果を表3.1に示す.また,ベビーパ ウダーによる汚れについての結果のグラフを図3.24に示す.横軸は拭い取り法によ る単位面積あたりの汚れの質量,縦軸は汚れ検出センサの出力電圧である.丸い点 が5回の試行の平均値を表し,範囲を示すI印が標準偏差を表す.
表3.1より指紋と粒子径が小さい砂Aによる汚れについては,汚れの量が多くな
0.0 3600
4.0 2400
2600 2800
Density of dirt (g/m2) Output voltages of the dirt sensor (mV)
A
B
C
D
2200 3000 3200 3400
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
Fig. 3.24 Comparison between the dirt detect sensor and the estimation by mass of wiped dirt (baby powder)
るほど窓ガラスからの反射光量が減り,汚れ検出センサの出力電圧が低くなること が分かる.これに対して,粒子径が大きい砂B,ほこり,ベビーパウダーによる汚れ については,図3.24に示すように汚れの量が多くなるほど窓ガラスからの反射光量 が増え,汚れ検出センサの出力電圧が高くなることが分かる.これらの結果は,3.2 節で示した検出原理の議論と整合する.