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都市 雨水貯留施 設 の利 水 と水質改 善効 果

4.1概 説

雨水 貯 留 の 主 目的 は,治 水 ・利 水,お よび 雨水 の放 流 先 水 域 の水 質 保 全 で あ る。 加 え て,貯 留 池 に修 景機 能 や,親 水 ・レク リェー シ ョン機 能 を持 たせ る場 合,さ らに は, この よ うな施 設 に身 近 に接 す る こ とを通 じて,水 管 理 に対 す る興 味 と理 解 を深 め させ る とい う啓 蒙 的 な役 割 を 期 待 す る場 合 もあ る(補 遺4.D。 一 方 これ らの 目的 間 に は 貯 留 空 間の 利 用 形 態 に つ い て,強 い競 合 関係 が 存在 す る揚 合 が あ る(補 遺4.2)。

す で に第1章 で述 べ た が,我 が 国 の都 市 雨水 の貯 留 施 設 の 多 くは,治 水 を 主 目的 と す る も ので あ る が,北 米 や ヨー ロ ッパ で は水 質 保全 を 主 目的 とす る もの も多 い。 た と えば 大 規 模 地 下貝榴 で 有 名 な シ カ ゴのTARP(TunnelandReservoirPlan)の 第1 段 階 の 目的 は,シ カ ゴ の 上 水 源 で あ る ミシ ガ ン湖 の水 質保 全 で あ った こ とは よ く知 ら

れ て い る。 大 雨 時 に合 流 式 下 水 道 か ら溢 流 して ミシガ ン湖 に流 入 して い た 水 を一 旦貯 留 し,降 雨終 了 後 に,既 存 の処 理 施 設 に送 り,夜 間 の余 剰 処 理 能 力 等 を 利 用 して2次 処 理 した上 で,途 中 に湖 沼 等 の 閉 鎖性 水 域 を持 た な いイ リノイ 川 ・ミ シ シ ッ ピー川 に 放 流 す る こ とに よ り,溢 流 水 に よ って ミシガ ン湖 に流 入 してい た 汚 濁 負 荷 量 を激 減 さ せ た 。 全 面 的 な 分 流 化 に よ り同 一 の 効 果 を 得 る場 合 に 比 べ て,1/4の コス トで 済 ん だ と され て い る。 我 が 国 で も この 方 式 の 貯 留施 設(雨 水 滞 水 池)が 計 画 ・建 設 され 始 め て い る。

島喚 部 等 で は,古 くか ら貯 めた 雨 水 を利 水 目的 に使 う例 が多 く見 られ た が,最 近 で は都 市 部 で も雨 水 の雑 用 水 利 用 を 目的 と した貯 留施 設 が作 られ 始 め て い る。 この 場 合 上水 道 か らの 給 水 に 比 べ て コス ト高 とな るの で,治 水 を主 目的 と して 作 っ た 雨水 貯 留 施 設 の 兼 用 が 多 い。 た だ し啓 蒙 的 な効 果 等 を計 量す る こ とが で きれ ば,経 済 性 か ら見 て も意 味 が あ る こ と を示 す こ とが で き る か も しれ な い。

この よ うな雨 水 貯 留 施 設 の機能 の評 価 につ い て研 究 を続 け て き た。 基 本 方 針 と して 降 雨 量 時 系 列 に お け る偶 発 性 を評 価 過 程 の 中 に 組 み入 れ る こ と,で き る 限 り厳 密 に理 論解 析 す る こ と,か つ 結 果 と して実 用 に 耐 え得 る簡 便 な式 を導 く こ とを方 針 と した。

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治 水 目的 に対 して は,与 え られ た 治水 安 全 度(こ の 場 合 氾 濫 頻 度 を指 標 と して い る) を確 保 す る の に必 要 な,貯 留 施 設規 模 と下 流 の排 水 施 設 規 模(疎 通 能,ポ ンプ 容 量 な

ど)の 関 係 が極 め て 簡 単 な 表 現 で表 され る こ とを示 した 。 これ を等 危 険 度 線 の式 と よ ぶ こ とに した(補 遺4.3)。 ま た これ を実 用 化 す る た め に,式 中 の パ ラ メ ー タ を, 降 雨 の 確 率 特性,流 域 の 土 地 利 用 条 件 を代 表 す る流 出率 と到 達 時 聞,貯 留 施 設 の 水 理構 造 を 代表 す る貯 留 施 設 の貯 留 関数 の 指 数,等 か ら簡 便 に推 定 す る方 法 を提 案 した

(第3章)。

水 質 保 全 を 目的 とす る 場 合(雨 水 滞 水 池)に つ い て は,貯 留 容 量 が 非 常 に大 き い, あ る い は 小 さい な どの 特 別 の条 件 下 で,流 域 か らの汚 濁 負 荷 の流 出特 性,降 雨 流 出 の 確 率 特 性 等 が 与 え られ た とき の,貯 留 施 設 容 量 お よび 水 処理 施 設 の能 力 に 対す る,放 流 水 域 へ の 流 入 負 荷 量 の 削 減 率 の 関係 を表 す 式 が 理 論 解 析 に よ り導 か れ て い る4)5)。

本 章 で は,雨 水 滞 水 池 に つ い て の理 論 解 析 の結 果 を総 合 し,さ らに これ ら を実 用 化 す る た め に行 っ た 一 連 の研 究 成 果 を と りま とめ た。

まず これ ま で の 理 論 解 析 で設 定 した条 件 と,そ の各 々 に 対 して得 られ た負 荷 削 減 率 の式 に つ いて 簡 単 に紹 介 す る。 次 に これ らの式 を総 合 し,実 流 域 に 対 す る シ ミュ レー シ ョン結 果 等 を参 考 に して修 正 す る こ とに よ り最 終 的 に 得 られ た 実 用 的 な 式 を示 す。

ま た 後 述 の放 流 負 荷 削 減 率 の 式 中の洗 浄 係 数 を0(無 限 小)と し,除 去 率 を1に す る と,こ の式 は利 水 を 目的 と した 貯 留施 設 の 雨水 利 用 率 の式 とな る こ と を示 す(4.2)。

式 中 に は 降 雨 の確 率 変 動 特 性 を代表 す るパ ラメ ー タが 入 っ て い る。 ア メ ダス の 降 雨 資料 を用 い て 日本 全 土 に対 して これ らの パ ラメ ー タの 値 を推 定 し,等 値 線 を 日本 地 図 上 に プ ロ ッ トす る(4.3)。

最 後 に実 際 の 計 算 例 に よ り,4.2の 結 果 と4.3の 地 図 を用 い て,利 水 効 果(雨 水 利 用 率)を 簡 便 に評 価 す る こ とが で き る こ とを示 す と と もに,そ の 場 合 の 注 意 す べ き

点 等 を 指 摘 す る(4.4)。

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4.2効 率 の 式

4.2.1導 出 過 程 の 要 約

以 下 は 参考 文 献4)〜6)の 要約 で あ る(補 遺4.4)。

貯 留 ・処理 シス テ ム か ら放 流 水 域 に放 流 され る負 荷 量 は,貯 留 施 設 か ら溢 流 す る も の と,処 理施 設 か ら放 流 され る もの の 和 で あ る。 前者 は大 雨 時 に貯 留 施 設 が 満 水 とな って未 処 理 の ま ま溢 流 水 と と もに流 出す る負 荷 量 で あ り,後 者 は 貯 留 施 設 で の沈 澱 お よび処 理 施設 で の水 処 理 に よ り除去 され た 後,処 理 水 中に 残 った 負 荷 が 放 流 され る分 で あ る。 こ こで は溢 流 水 と放 流 水 を合 せ て放 流 水(ま た は負 荷 量)と よぶ こ とにす る。

評 価 指 標 と して は2種 類 考 え られ る。 一 つ は 年 を通 じて の放 流 負 荷 の 総 量 の 削 減 効 果 を問題 とす る場 合 で あ り,他 の一 つ は一 雨 ご との放 流負 荷 量 の 変 動 に 着 目 し,ピ ー ク値 が あ る基 準 値 を超 え る確 率 を,あ る水 準 以 下 に押 え る とい う場 合 で あ る。 本 論 文 で は前 者 を評 価 指 標 と して い る。 す な わ ち計 画 対 象 の 貯 留 ・処 理 シ ス テ ム が 存 在 す る 場 合 の 年 間 を 通 じて の 総 流 出負 荷 量 と,無 い 場 合 の それ の 比 を 「放 流 負 荷 削 減 率 」

(あ るい は簡 単 に 「削減 率 」)と よん で評 価 指標 εとす る。

削減 率 を,貯 留 施 設 容 量z。,単 位 時 間 当 りの処 理 水 量dの 関数 で 表 す 。 これ らの 施 設 容 量 は,次 の よ うに無 次 元 化 してお く。

Zo=zo/vD=d・tR/V

C4.1)

こ こにvは 平 均 一 雨 流 出 量,tRは 平 均 流 出 時 間 間 隔。

す な わ ちZ。 は,平 均 的 に み て一 雨 で 流 出す る総 流 量vの 何倍 の 貯 留 施 設 を 持 っ て い る か,Dは 一 雨 と次 の 一 雨 の 間 に 処理 で き る水 量d・tRが,一 雨 流 出 量vの 何 倍 で あ る か を示 して い る。

理論 式 の導 出 に は多 くの仮 定 を必 要 とす るが そ の うち 主 な もの は 次 の三 つ で あ る4)。

① 降 雨流 出 量 時 系 列 は複 合 ボ ア ソ ン過 程 に従 うとす る。 す な わ ち一 雨 と一 雨 の 時 間 間 隔tRは 指 数 分 布 に従 い,ま た 一 雨 ご との総 流 出量Vも ま た 確 率 分 布 す る と す る。vの 分 布 も指 数 分 布 と した。

② 汚 濁物 質 の流 出 強 度(単 位 時 間 当 りの 流 出量)は,流 域 に 残 存 して い る負 荷 量

s

と降 雨 の 流 出 強 度 に 比 例 す る。 比 例 定数 を洗 浄 係 数k。 とよぶ こ とに す る。 ま た 各 流 出現 象 発 生 時 の 初 期 流域 残 存負 荷 量 は一 定 で あ る とす る(補 遺4.5)。

③ 貯 留 施 設 にお け る沈 澱 と水 処 理 に よ り除 去 され る負 荷 の,流 入 総 負 荷 量 に対 す る割 合(除 去 率kr)は,貯 留 水 量 等 に よ らず 一 定 で あ る。

他 の研 究 者 に よ る現 地 観 測 に よ り,初 期 残 存 負 荷 量 が先 行 無 降 雨 日数 と と もに増 加 す る こ と,除 去 率 は 貯 留 水 濃 度 や 滞 留 時 間 の 関数 とな る こ と,流 出 汚 濁負 荷 量 と降 雨 強 度 の 関数 関係 は 汚 濁 負 荷 の種 類 に よ り異 な る こ と,な どが 明 らか に な っ て い る。 し

か し個 々 の 流 出事 象 にお い て,上 記 の仮 定 を採 用 した こ とに よ る上 下 の バ ラ ツ キ は, 年 間 平 均 の削 減 率 を 計 算 す る場 合 は 平均 化 され るの で,大 き な誤 差 要 因 に な る とは 考 え られ な い。 本 研 究 で は,こ れ らの 仮 定 に よ り,基 本 的 な シ ス テ ム 特 性 に つ い て解 析 的 な検 討 が可 能 に な る とい う利 点 の方 を優 先 して い る。

残 念 な が ら,こ の よ うな 仮 定 を採 用 して も一般 的 な 条 件 下 で 厳密 に 陽解 を導 く こ と は極 めて 困難 で あ る(補 遺4.6)。 よっ て次 の手 順 で 実 用 的 な 近 似 式 が 導 かれ た。

① 貯 留施 設 容 量 が 無 限 小,無 限大 等 の条 件4》,あ る い は 貯 留 施 設 へ の 平均 流 入 量 と処 理 容 量 が 等 しい 場 合,な どの特 殊 な条件 下 で 陽解 を導 く5)。

② これ らの解 を総 合 し,か つ,実 際 の 降雨 流 出量 時 系 列 は ポ イ ン ト ・プ ロセ ス で は な く,あ る程 度 降 雨 流 出 が継 続 す る こ とな ど,理 論 解 析 で は無 視 した 要 素 も考 慮 して,一 般 的 な 条 件 に 対 して使 え る近 似 式 の式 形 を想 定 す る。 式 中 の係 数 値 に っ い て は未 知 量 と し,代 表 的 な ケ ー ス に対 す るシ ミコ.レー シ ョン結 果 と近 似 式 か

ら計 算 され た εの誤 差 の2乗 和 が 最 小 とな る よ うに係 数 値 の組 を定 め る6)。

最 終 的 に得 られ た 式 は 次 の とお りで あ る。

ε=kt(1十K。)C{1‑exp←Zo/C)} (4.2)

こ こ に,

Zo=・Zo‑c。dZ急 十D・Tr

Za=Zo‑2・log,{2‐exp(‑Zo/2)}

CニD/(1十K。D),c、d=V5

C=1/(1十K。),c、d=1/〜

(D≦1の と き) (D>1の と き)

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Zo=zo/v,D=d・tR'/v,T。=

マ=f'r'A,Kc=vk,

t,'/tRr

こ こ に,tr,tR1,f',r',T,は,初 期 損 失f・ を 差 し 引 い た 後 の 一 雨 降 雨 に っ い て の,平 均 降 雨 継 続 時 間,平 均 降 雨 時 間 間 隔,流 出 率,平 均 一 雨 降 雨 量,無 次 元 平 均 降 雨 継 続 時 間 で あ る 。Aは 流 域 面 積 で あ る 。

k、=1,Kc=1に 対 す る モ ン テ ・カ ル ロ ・ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 と 式(4.2)の 比 較 例 を 図4.1に 示 し て い る 。 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン と し て は,こ の よ う な 理 論 模 型 と 本 質 的 に 同 等 な も の の 他 に,実 際 に 雨 水 滞 水 池 が 作 られ た 流 域 で の,現 実 に 近 い 状 態 に 対 す る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン も 行 い,式(4.2)と 比 較 し た 。 モ ン テ ・カ ル ロ シ ミ ュ レ ー シ ョ

ン に 対 す る 式(4。2)の 相 対 誤 差 は 平 均 約3%で あ る6)。

1.0 ε0

.8 0.fi O.4 0.z O.0"Zo

O.01.02.03.04.05.0

図4.1式(4.2)の 精 度(k、t=1,Kc=1の 場 合)

実 線:式(4.2),点:シ ミ ュ レ ー シ ョ ン

(下 図 は 上 図 のD=一 定 に 対 す る 断 面 図)

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4.2.2流 出 量 時 系 列 と降雨 量 時 系 列

流 出 量 時 系 列 を,降 雨 量 時 系列 特 性 と流 域 の土 地 条 件 に分 離 して 表 現 で きれ ば便 利 で あ る。 以 下 で は都 市 流 域 を想 定 す る。

た と え ば流 出 時 間 間 隔 は本 質 的 に は 降 雨時 間間 隔 と同様 の概 念 で あ るが,弱 い 雨 に 対 して は 流 出 は 生 じな い の で,降 雨 時 間 間 隔 よ り流 出時 間 間 隔 の 方 が 大 き くな る。 都 市流 域 で は,不 浸 透 域 で は た か だ か数mm以 下 の 初 期 損 失f・ が あ る の み で,そ れ 以 上 の 雨 に 対 して は必 ず 流 出 が起 こ る。 ま た特 に大 き な降 雨 で ない か ぎ り,初 期 損 失 を 除 く雨 量 に対 す る 流 出 率f'は,不 浸 透 面積 率 と ほ ぼ等 しい 。 よ っ て各 一 雨 降 雨 か ら 初 期 損 失 分 を差 し引 き,0㎜ 以 上 の 降 雨群 を新 た に一 雨 降 雨群 とみ な し,そ の 平均 時 間 間 隔tR'を 求 め れ ば,実 用 的 に は,こ れ が 流 出時 間 間 隔 にほ ぼ等 しい と考 え られ

る。

ま た,初 期 損 失 を 差 し引 い た 一 雨 降雨 群 の 平 均 一 雨 雨 量r'を 求 め,こ れ に,流 域 面 積Aと 不 浸 透 面 積 率(流 出率f')を 乗 ず れ ば,一 雨 流 出 量vが 求 め られ る と考 え

られ る。

一 方,平 均 流 出継 続 時 間 に つ い て は,都 市 域 の 直接 流 出 に お い て は,初 期 損 失 後 の 平 均 降 雨継 続 時 間trrに 集 中 時 間t。 を加 え た もの に ほ ぼ 等 しい と考 え られ る。 た だ し,都 市 域 で は お お む ねtri>t。 で あ り,ま た 無 次 元 降 雨継 続 時 間T.に 対 す る,式 (4.2)の 削 減 率 εの感 度 は小 さい の で,(tr+t。)をt,'で 近 似 して も εに 対 して は 大 き な誤 差 は 生 じな い。

以 上 よ り,流 出 時 系 列 の 特性 値 を,流 域 特 性 に関 す る もの,す な わ ち,

① 流 域 面積A,② 初 期 損 失f。,③ 不 浸透 面 積 率f', お よび,初 期 損 失 を 考 慮 した 降 雨量 時 系列 の特 性値,す な わ ち,

④ 平 均 一 雨 雨 量r',⑤ 平均 降雨 時 間 間 隔tR',⑥ 平 均 降 雨継 続 時 間tr, の6個 のパ ラ メ ー タ で 代 表 し,推 定 す る こ とが で き る。

4.2.3利 水 効 果 の 評 価 へ の適 用 例

洗浄 係数k。 が無 限小 の とき,流 域か ら洗浄 され て流 出す る負荷 量 も無 限小 とな る

sa

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