3.1概 説
治 水 計 画 の 基 本 とな る安 全 度 の評 価 は,ピ ー ク流 量 あ るい は総 雨 量(総 流 量)の 確 率評 価 に 基 づ い て な され る。 従 前 は ピー ク流 量 の確 率評 価 に基 づ い て安 全 度 が 評 価 さ れ る場 合 が 多 か っ た が,現 行 の建 設 省 河 川砂 防 技 術 基 準(案)計 画 編 で は1),基 本 的 に は(総)雨 量 の確 率 評 価 に基 づ い て 安 全 度 を評 価 す る こ とに な って い る。 この よ うな 変 遷 の経 緯,評 価 手 法 の 持 つ 矛 盾 点 な どにつ い て は河川 砂 防 技術 基 準(案)計 画 編 にお
い て も述 べ られ て い る。
河 川 砂 防技 術 基 準(案)計 画 編 か ら引用 す る こ とに よ って,そ の あ た りの 事 情 を簡 単 に説 明す る。 「洪 水 防御 計 画 にお い て,河 道 に よる洪 水 の 流 下 の み を考 慮 す れ ば よ い 場 合 に は洪 水 の ピー ク流 量 のみ を対 象 と して 計 画 を策 定す れ ば十 分 で あ るが,近 年 多 くの例 を み る よ うに ダ ム 等 に よ る洪 水 調 節 が 採 用 され る場 合 に は,洪 水 の ハ イ ドロ グ ラ フ を設 定す る必 要 が あ る。 な お,計 画 上洪 水 の ピー ク流 量 の設 定 を も って 足 りる場 合 に あ っ て は,基 本 高水 は この ピー ク流 量 で 表 す もの と し,特 に洪 水 のハ イ ドロ グ ラ フ の設 定 を行 う必 要 は な い 。 」(p.9),「 計 画 の規 模 は一 般 に は計 画 降 雨 の 降 雨 量 の年 超 過 確 率 で評 価 す る」(p.11)も の と され て い る。
極 端 な例 を考 え る と,あ る流 域 で河 道,ポ ン プ等 の排 水 施 設 が全 く な く,貯 留 施 設 のみ に よ っ て洪 水 を制 御 す る場 合 を考 えれ ば,総 流 量 をす べ て貯 め 込 む だ け の 貯 留施 設 が ない か ぎ り必 ず 洪 水 災 害 が 発 生 す る の で,ピ ー ク値 で は な く総 量 を確 率評 価 す る
こ とに よ って 治 水 計 画 の安 全 度 を評 価 しな けれ ば な らな い。 「こ の よ うに して 評 価 さ れ た 計 画 降 雨 の規 模 は,計 画 降 雨 の 降 雨量 につ い て平 均 して何 年 に1度 の割 合 で そ の 値 を超 過 す る か とい うこ と を示 して い る。 それ ゆえ,こ れ はそ の 降 雨 に 起 因 す る洪 水 の ピー ク流 量 の年 超 過 確 率 とは 必 ず し も1対1の 対 応 を しない 。 しか し,洪 水 防御 計 画 に お い ては,基 本 高 水 の ピー ク流 量 の 年 超 過 確 率 が重 要 な意 味 を持 つ の で,年 超 過 確 率 に お い て 両 者 の 間 に著 しい 差 異 が 生 ず る恐 れ が あ る場 合 には,こ れ らの 関係 を 明 確 に し,『 他 の 手 法 に よ っ て 』 計 画 の 規 模 を 定 め る こ とを 検 討 す る 必 要 が あ る。 」
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(p.11,『 』 は著 者 が 挿 入)
総 流 量 で は な く総 雨 量 を用 い る こ との理 由 に つ い て は別 途 説 明 が な され て い るが, ピー ク値 を用 い るか 総 量 を用 い る か とい う点 に 限 っ て話 を整 理 す れ ば,ピ ー ク値 を用 い た 安 全 度 評 価 で は貯 留 施 設 計 画 に対 応 す る こ とが で き ない,逆 に総 量 の確 率 評 価 に 基 づ く計 画 で は,ピ ー ク値 の確 率評 価 に基 づ い て 計 画 す る こ とが基 本 とな る河 道 等 の 排 水 施 設 計 画 に 対 応 で き な い,と い う点 が問題 点 とな るわ け で あ る。
実務 的 に この 問題 に 対 処 す るた め に河 川 砂 防技 術 基 準(案)計 画 編 で は,ダ ム の 計 画 高 水 流 量 の決 定 にお い て は 「高水 の ピー ク流 量 が 最 大 とな る 高水,お よ び洪 水 調 節 容 量 が 最 大 とな る高 水 」(p。26)の 両 方 を用 い て ダ ム に よ る 高 水 調 節 計 画 を 検 討 す る こ とに して い る。 ダ ム計 画 に お い て は,で き るだ け安 全 側 の 計画 を採 用 す る必 要 が あ る の で,こ の よ うな 方 式 で貯 留 施 設 規 模 を決 定す る こ とは合 理 的 で あ る もの と考 え ら れ る。 しか しそ の結 果,流 域 全 体 あ る い は評価 基 準 点 にお け る治 水 安 全 度 が どの程 度 に な る の か に っ い て は,何 の情 報 も与 え られ な い。
上 述 の議 論 よ り明 らか な よ うに,貯 留 施 設 と排 水 施 設 を併 用 した 治 水 計 画 にお い て は,そ の 治水 計 画 の 安 全 度 評 価 は洪 水 ハ イ ドロ グ ラ フ(ハ イ エ トグ ラ フ)の,「 ピー ク値 お よび 総 量 の 結 合 確 率 分 布 」 に基 づ い て評価 す る必 要 が あ る。 上 記 の,河 川 砂 防 技 術 基 準(案)計 画編 中 の 『他 の 手 法』 とは,ま さに こ の よ うな 手 法 で な けれ ば な らな い 。 周 知 の よ うに,古 くか ら,こ の 問題 は重 要 な問 題 と して認 識 され て き た に もか か わ らず,い ま だ に 未 解 決 の 問題 で あ る。 少 な く と も,明 快 な 理 論 付 け を 有 し,実 用 上 簡 便 な 手 法 の 開発 とい う点 に 関 して は未 だ に解 決 され て い な い。
治 水 計 画 に お い て 最 終 的 に知 りた い こ とは,こ れ か ら築 造 しよ うとす る治 水 施 設 の 規 模 と,流 域 の 治 水 安 全 度 との 関係 で あ る。 河 道 ・ポ ン プ等 の排 水 型 治 水 施 設 の み に よ っ て 治水 を行 う場 合 に は,所 与 の 治水 安全 度 に対 応 す る ピー ク流 量 を 求 めれ ば,こ れ が そ の まま 必 要 な治 水 容 量(疎 通能)と な る。 ダ ム ・遊 水 池 の よ うな 貯 留 施 設 を併 用 す る 場合 に は,治 水 安 全 度 と,排 水容 量及 び 貯 留 容 量 の3者 の 関係 を 知 る必 要 が あ る。 この 場 合 は 降 雨 パ ター ン に よ って得 られ る結 果 が変 わ るの で,よ り面倒 な検 討 が 必 要 とな る。 こ の た め の標 準 的 な方 法 を図3.1に 示 す 。 す な わ ち降 雨 波 形 を 固 定 し, 施 設 規 模 を種 々 変 え て流 出 シ ミュ レー シ ョンを行 い,得 られ るハ イ ドロ グ ラ フ を比 較 す る こ と に よ り,施 設 規 模 と治 水 効果 の 関係 を総 合 的 に把 握 す る。 しか し この方 法 に
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は 次 の よ うな 問 題 点 が あ る。
(1)降 雨 波形 と して は,ピ ー ク は そ れ ほ ど大 き くな い が継 続 時 間 の長 い も の,逆 に短 時 間 に集 中 して 降 る強 い 雨 な ど,無 数 の波 形 が 考 え られ る。 した が っ て,ど の よ うな 降 雨 波 形 を仮 定 して も,降 雨 波 形 を 固定 す る限 り,常 に そ の 仮 定 の 妥 当性 が 問 われ る こ とに な る。
(2)各 流域,治 水 施 設 に 対 して,個 々 に,か な り面
倒 な シ ミュ レー シ ョン を繰 り返 して初 め て施 設規 図3.1 模 と治水 安 全 度 の 関係 を知 る こ とが で き る。 これ
通常 の治水 施設規模 と 治水安全 度 の評 価法 らの 関係 を も っ と簡 単 か つ 一 般 的 に形 に して お く こ とは で き な い の か。 これ が 可 能 で あ る と,詳 細 な シ ミュ レー シ ョン を行 う前 に,各 施 設 の治 水 効 果 の概 要 を容 易 に 把 握 す る こ とが で き る。
この よ うな 問 題 点 を解 決 す る た め の 最 も 自然 な方法 は,次 の よ うな方 法 で あ る。 ま ず 降 雨 波形 に は さま ざま な パ ター ン が あ る こ とを素直 に認 め る。 当然 途 中 の解 析 は複 雑 に な るが,最 終 的 に必 要 に な る貯 留 容 量 ・排 水容 量 ・治水 安全 度 の 関係 に っ い て は 一般 的 で あ り
,さ らに す っ き り した形 に ま とめて表 示 す る。
江藤 ・室 田2)3)は,以 上 の よ うな方 針 に よ り,で き る だ け厳 密 な 理 論 解 析 を行 い, 与 え られ た治 水 安全 度 を確 保 す るた め に必 要 な貯 留容 量 と排 水 容 量 の 関係 を表 わ す 方 程 式 を導 い た 。 これ を等 危 険度 線 の 式 とよん で い る。
等危 険 度線 の 理 論 を 実 際 の都 市 河 川 の 治 水 計 画 に適 用 し,そ の有 効 性 を示 す と同 時 に,実 用 上 の 問 題 点 とそ の解 決 策,よ り有 効 に利 用す るた め の い くつ か の 工 夫 等 を 示 す。 この 章 で は,こ れ ら等 危 険 度 線 の 理 論,お よび そ の 実用 化 に 関 して 示 す 。 実 務 面 に お い て,特 に都 市 河 川 にお い て は,各 治 水施 設 の計 画 の都 度,あ る い は 防御 地 点 毎 に等危 険度 線 を描 く こ とは面 倒 な場 合 が あ る。 この た め,時 間 雨 量 資 料 を用 い た 「標 準等 危 険度 線 」 に よ る方 法 を提 示 し,そ の 実用 性 を示 す 。
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3.2等 危 険 度 線 の 理 論
3.2.1ピ...̲ク ・ カ ッ ト 方 式 に 対 す る 等 危 険 度 線
江藤 ・室 田2}は ピー ク 流 量 と洪 水継 続 時 間(総 流 量)の 結 合 確 率 分 布 を 考慮 した理 論 解 析 に よ り,所 与 の 治 水 安 全 度 を確 保 す るた め に必 要 な,排 水 施 設 の容 量 と貯 留 施 設 の 容 量(以 後 排 水 容 量,貯 留 容 量 とよぶ)の 関係 を表 す 方 程 式 を導 い た。 これ を等 危 険 度 線 の 方 程 式 と よん で い る。
都 市 河 川 の流 出抑 制 手 段 と して 種 々 の貯 留施 設 が候 補 に あ げ られ て い る。 これ らの 多 くは 小 規 模 で,人 為 的 な放 流 操 作 の た めの設 備 を整 え て い な い。 よっ て 河 道 か ら横 越 流 に よ っ て ピー ク付 近 の 流 量 を カ ッ トし,河 道 外 の 遊 水 池 に貯 留 す る よ うな場 合 を 除 い て,一 定 量 放 流 の よ うな効 率 的 な方 式 で は な く,図3.2(b)に 示 す よ うな 自然 な貯 留 調 節 機 構 に よ っ て 流 出 を 抑 制す る。
本 項 で は,図3.2(a)に 示 す よ うな一 定 量 放 流 方 式(ピ ー ク ・カ ッ ト方 式)を 用 い た 場 合 にお け る等 危 険 度 線 の 理 論 よ り最 終 的 に導 か れ た結 果 を 以 下 に示 す。
横 軸 に排 水 容 量yo,縦 軸 に貯 留 容 量z。 を と る。 安 全 度 κ。を一 定 とす る。 こ の と きの 等 危 険 度 線 の 方 程 式 は,次 式 とな る。
Zo/ZuO={(yuO‑yo)/yo}s (3.1)
こ こ に 通 常,s=2〜3の 値 を と る 。sニ2が 安 全 側 で あ る 。
zo=FZ‑'(Yo)
yuO==Fジ1(κo)
(3.2) (3.3)
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F。 は 総 流 量(総 雨量)の 確 率 分 布 関数,F,は ピー ク流 量(ピ.̲.̲ク 雨 量)の 確 率 分布 関数 で あ る。yuQは 貯 留施 設 が ま っ た く な く,排 水施 設 のみ に よ っ て 治 水 を 行 う とす る とき に,所 与 の安 全 度 κ・を保 つ た めに 必 要 な排水 施 設 の容 量 を意 味 す る。Zoは 逆 に排 水 施 設 が 全 くな く,洪 水 をす べ て 溜 め込 む と考 え る場 合 に,所 与 の安 全 度 κoを 保 つ た め に必 要 な貯 留施 設 の容 量 を意 味 す る。
yuOは ピー ク流 量 の 確 率 分 布 関 数,あ る い は 実 測 ピー ク流 量 を確 率 紙 に プ ロ ッ ト した もの か ら非 超 過 確 率 κ。に 対 応 す る値 と して簡 単 に 推 定 す る こ とが で き る。 同様 にZoは,総 雨量(総 流 量)の 確 率 分布 関数 あ るい は確 率 紙 か ら κ・に 対 応 す る値 と
して容 易 に推 定す る こ とが で き る。 す な わ ち,yuO,Zoの 評 価 にお い て は ピー ク値 と 総 量 の結 合 確 率 分布 に 関す る情 報 は全 く必 要 な い とい うこ とが 非 常 に重 要 な ポ イ ン ト で あ る。 あ とはyo,Zoを 結 ぶ 等 危 険 度 線 の形 状 が どの よ うに な る か と い う問 題 が の
こ る。 これ に つ い て は,結 合 確 率 分 布 関数 に 基 づ く理 論 的 な検 討 に よ っ て2〜3次 の 放 物 線 で近 似 で き る こ とが 証 明 され る。 した が って,等 危 険 度線 を実 際 に描 く手 順 は, 以 下 に示 す よ うに極 め て簡 単 で あ る。
① κ。を与 え る。
② ピー ク値 の確 率 評 価 に よ り κ・に 対応 す るZaを 求 め る。
③ 総 量 の 確 率評 価 に よ り κ。に対 応 す るZoを 求 め る。
④(yuO,0),(0,Zo)を2次 の 放 物 線 で結 ぶ(安 全側 を と る)。
以 下 κ。を 変 え て種 々 の 安 全 度 に 対 して 等 危 険度 線 を 描 け ば,図3.3に 示 す よ うな 等 高線 状 の図 が得 られ る。
s=2(2次 放 物 線)が 安 全 側 で あ る こ とは,す で に理 論 的 に示 され て い る の で, 計 画 上 は この 方 法 を 用 い れ ば よ い。 しか し,
実 際 の ハ イ ドロ グ ラ フ を用 い てsを 評 価 す る と,sの 値 は2〜3の ま わ りに分 布 す る。s の値 が2よ りも著 し く小 さい場 合 に は放 物 線
はか な り安 全 側 を示 す こ とに な る。 した が っ て,よ り精 密 な確 率 評 価 をす る場 合 に は,実 際 のデ ー タ を用 い てsを 正確 に評 価 す る必 要
が あ る。
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貯 留 施 設 に よ り一 定 量 放 流 を行 っ た場 合,貯 留施 設 の 上 流 と下 流 とで は ハ イ ドロ グ ラ フは 図3.4に 示 して い る よ うに変 化 す る。 す な わ ち,貯 留 施 設 よ り下 流 の排 水 施 設 の容 量(疎 通 能,ポ ン プ 容 量等)yoま で は 下流 に流 し,そ して そ れ よ り大 き い 部 分 の 流 量(Z)に つ い て は 貯 留施 設 に溜 め込 む 。y。 を 固定 して 考 え る な ら,z'が 貯 留 容 量z。 を越 え た とき に洪 水 被 害 が 起 こる。 した が っ て,y。 以 上 の総 流 量z'に っ い て確 率 評 価 を 行 い,κ 。に 対応 す るz。 を求 め れ ば よ い。y。 を 変 化 させ,そ れ ぞ れ に対 応 す るz。 を 求 め る。 これ に よ り(y・,z・)の 組 が い くつ か得 られ る。 式(3.1) の対 数 を とれ ば,
lOg(zo/zo}=S・IOg{C3TO‑‑yo)/yo} (3.4}
と な り,sは109‑109座 標 上 で 勾 配 を 表 し て い る こ と が わ か る 。 得 ら れ た 数 組 の (y・,z。)を 式(3.4)に 代 入 す る こ と に よ っ てsの 値 が 推 定 で き る 。 最 小 自 乗 法 を 用 い て も よ い 。
等 危 険 度 線 の 式 は,3個 の パ ラ メ ー タ(yuO,Zo,s)を 含 む 。yuO,Zoは 所 与 の 治 水 安 全 度 に 対 応 す る 確 率 ピ ー ク 流 量,総 流 量 で,通 常 の1変 数 統 計 解 析 に よ り,容 易 に 求 め る こ と が で き る 。
3.2.2自 然 調 節 型 貯 留 施 設 に対 す る 等危 険 度 線
都 市 河 川 の流 出 抑 制 手 段 と して,種 々 の貯 留 施 設 が候 補 に あ げ られ て い る。 これ ら の多 くは 小 規 模 で,人 為 的 な 放 流操 作 の た め の設 備 を整 え て い な い。 した が っ て,河 道 か ら横 越 流 に よ っ て ピー ク付 近 の流 量 を カ ッ トし,河 道 外 の 遊 水 池 に貯 留 す る よ う
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