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- 35 - Table 7 喫煙率と社会経済的要因データとの重回帰分析(変数減少法)

6. 運動時間と社会経済的要因

運動時間と社会経済的要因に関する単回帰分析の結果を Table10 に示した。

男女ともに運動時間と住宅面積で正の統計的に有意な相関関係を認めた。これ に加えて,男性では完全失業率と正の,女性では都市公園面積と負の統計的に 有意な相関関係を認められた。

次に,運動時間と社会経済要因との重回帰分析の結果を Table11 に示した。

男性において選択された項目は,富裕度 (正の相関),居住室数 (負の相関),

完全失業率 (正の相関),刑法犯認知件数 (負の相関),ボランティア活動 (正 の 相 関 ) で , R2=0.418 で あ っ た . F 値 は 居 住 室 数 が 最 も 高 値 を 示 し た (F=13.489)。

女性では,選択された項目は,居住室数 (負の相関),都市公園面積 (負の相 関),刑法犯認知件数 (負の相関),ボランティア活動 (正の相関) であり,R

2=0.328 であった.F値は,都市公園面積が最も高値を示した (F=9.262)。

富裕度 -0.391 -0.590 7.580 0.009

最終学歴大学・院

県民所得*1 0.353 0.561 5.963 0.019

居住室数*2 0.491 0.682 13.336 <0.001

都市公園面積*3 住宅面積*4

完全失業率 0.408 0.683 8.365 0.006

刑法犯認知件数 ボランティア活動*5 ジニ係数

例数47 分散分析p値 <0.001 F値 6.310

決定係数R2 0.375

*1 東京を100とした1人当たり

*2 一専用住宅 当たり

*3 

全国を100として1人当たり

*4 

一専用住宅 当たり

*5 年間行動者 率

標準回帰係数  F値  p値

変数 偏相関係数

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Table 10 運動時間と社会経済的要因データとの単回帰分析

標準回帰係数 p値 標準回帰係数 p値

富裕度 -0.079 0.600 0.031 0.837

最終学歴大学・院 -0.023 0.876 0.150 0.315

県民所得*1 -0.167 0.261 0.068 0.650

居住室数*2 -0.263 0.074 -0.215 0.148 都市公園面積*3 -0.101 0.499 -0.349 0.016

住宅面積*4 0.322 0.027 0.305 0.037

完全失業率 0.305 0.037 0.032 0.830

刑法犯認知件数 -0.126 0.398 -0.035 0.815

ボランティア活動*5 0.089 0.551 0.136 0.361

ジニ係数 0.211 0.154 0.029 0.845

*1 東京を100とした1人当たり

*2 一専用住宅 当たり

*3  全国を100として1人当たり

*4 

一専用住宅 当たり

*5 年間行動者 率

男性 女性

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Table11 運動時間と社会経済的要因データとの重回帰分析(変数減少法)

変数 偏相関係数 標準回帰係数 F値 p値 偏相関係数 標準回帰係数 F値 p値

富裕度 0.382 0.447 6.991 0.012

最終学歴大学・院 県民所得*1

居住室数*2 -0.498 -0.749 13.489 <0.001 -0.416 -0.547 8.768 0.005

都市公園面積*3 -0.425 -0.430 9.262 0.004

住宅面積*4

完全失業率 0.351 0.429 5.758 0.021

刑法犯認知件数 -0.407 -0.644 8.136 0.007 -0.320 -0.411 4.788 0.034

ボランティア活動*5 0.394 0.498 7.556 0.009 0.307 0.338 4.366 0.043

ジニ係数

例数47 分散分析p値 <0.001 F値 5.899 分散分析p値 0.002 F値 5.126

決定係数R2 0.418 決定係数R2 0.328

*1 東京を100とした1人当たり

*2 一専用住宅当たり

*3 

全国を100として1人当たり

*4  一専用住宅当たり

*5 年間行動者率

男性 女性

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Ⅳ.考察および小括

本研究で選択した肥満割合,喫煙率,飲酒率,健康診断受診率および運動時 間などの健康・栄養指標は,個人の健康状態を大きく左右する生活習慣であり,

生活習慣病予防の観点からも重要な評価指標である。

これまでの「生物・医学モデル」に基づく栄養指導においても,これらの生 活習慣は介入の対象とされ,行動変容が促されてきた。しかし,この生物・医 学モデルによる行動変容に限界があることは周知されている。そこで,健康行 動に影響を与える要因について,生物・心理・社会モデルの観点から健康行動 阻害要因を明らかにすることを目的に,健康・栄養指標と社会経済的要因との 関連性について,相関分析により解析した。

その結果,健康行動を示す指標である肥満割合,喫煙率,女性の飲酒率は,

強く社会経済的要因の影響を受けていることが示唆された。中でも,完全失業 率,刑法犯認知件数,富裕度,教育歴は健康行動に強く影響を与えていた。

今回の結果から,雇用状態不安定で,預貯金や給与水準が低く,加えて治安 が悪化するほど肥満割合が高いといえ,喫煙率においては,男女で異なる傾向 が見られたが,治安が悪化するほど喫煙率が高いといえる。女性の喫煙率では 県民所得で正の相関,富裕度で負の相関が認められたことから,生産に対する 労働対価の不均衡といった労働条件の不備が喫煙率を高めていることが考えら れる。

雇用状態と健康の関係については,健康状態があまり良くないこと自体が失 業の危険を高めると主張する直接的な選別仮説と,各個人の性格のような要因 が,原因と結果の両方に影響する交絡因子であるとする間接的な選別仮説があ る5。従来の報告では,失業と健康行動との間に一貫した結論は示されていない が,これまでに失業の予測が,健康に影響がでることが報告されている。雇用 不安と失業の脅威は,結果として医療費増加53,54だけでなく,精神障害や生理的 変化55を増加させることが認められている。

また,飲酒率と社会経済的要因の解析結果から,最終学歴が高く,住環境が よいほど女性の飲酒率が高くなることが認められた。女性では,喫煙率におい ても最終学歴と正の相関が認められたことから,社会進出が高いほど,喫煙率

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や飲酒率が高くなることが考えられる。

欧米においては社会経済状況の違いによる健康行動の格差が多数報告されて いる。Lantz ら 56は,7.5 年におよぶ経時的調査より,学歴,所得をそれぞれ 3 群に分けて比較したところ,教育歴,所得が低い群は,高い群に比べ肥満割合,

喫煙率,飲酒率が統計的に有意に高く,運動強度が低いことを報告している。

イギリス保健調査 52おいても,貧しい人は裕福な人に比べて質の良い食事をあ まりせず,運動不足,肥満であり,習慣的に飲酒する傾向にあるといった報告 がある。このように社会経済的要因が健康行動に影響していることが示されて いる。また,国内においては所得について Fukuda ら57の国民生活基礎調査を用 いた横断研究より,所得が高い群は低い群に比べ,統計的に有意に喫煙率が高 く,身体活動,健診受診率が低いなど所得と健康行動の関連性が報告されてい る。

本研究においても,これらの先行研究と同様の結果を示すものであり,複数 の社会経済的要因について総合的に分析したことで社会経済的要因の健康行動 への影響の程度が示された。女性の喫煙率や飲酒率については欧米と異なる結 果が示されたが,この理由として雇用状態や女性の喫煙率の低さなど文化的背 景の違いが考えられる。

健康状態については今回解析に用いた社会経済的要因以外にも個人の社会性,

自己効力感,首尾一貫感覚など心理的要因も大きいとされる58。本研究は,都道 府県を単位とした全国レベルの研究のため,心理的要因を含めた検討には至っ ていない。社会経済的要因と心理的要因の双方を踏まえた検討が今後必要であ ると考える。

肥満,喫煙,飲酒をはじめとする健康行動に対する行動変容については,さ まざまな施策による取り組みや指導が行われるが,社会経済的要因を含めたア プローチは尐ない。世界保健機関は行動変容の 3 原則として,①日常生活の条 件の改善,②権限,資金,資源,③測定,評価,知識拡大を提唱している。日 常生活の条件が健康行動に影響していることが示されたことからも,この原則 を踏まえ,労働状態や家計状況,社会環境,教育レベルなどを含めた社会全体 からの総合的なアプローチが不可欠であると考える。

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第2章 住民基本健康診査を活用した小地域の健康格差に関する疫