1.3 地域別の社会資本整備動向~近畿ブロック~
1.3.1 近畿ブロックの現状および課題
(1) 統計指標から見たブロックの現状
近畿ブロックは、本州中西部に位置し、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府4県で構成 される。北部には日本海と中国山地からつづく丹波高地が広がり、南部には太平洋と紀伊山地の 山々が連なっている。また、瀬戸内海や大阪湾を有し、大阪平野から中央の低地地帯には盆地が広 がっている。滋賀県には日本で最大の面積と貯水量を持つ琵琶湖があり、湖水は淀川流域の上水道 として利用されている。近畿ブロックの歴史は古く、太古の昔から日本の中心とされ、飛鳥から平 安京まで日本の首都として都がおかれていた場所でもあった。日本最大の商業都市としても栄え、
長い年月をかけて多様な文化を創造・継承・蓄積してきたことから、国宝や重要文化財の約5割を 有するなど、歴史的文化財が多いのが特徴的である。
近畿ブロックは、大阪市、神戸市と京都市の政令指定都市のほか、大津市(34 万人)、奈良市
(36万人)、和歌山市(36万人)と人口30万人から100万人規模の都市が各県に位置しており、
我が国第2位の経済圏である近畿ブロックは、産業等の諸機能が西日本で最も進んだ圏域である。
全国における近畿ブロックのシェアは、図表1-3-1が示すとおり、人口で16.3%、面積で7.2%、
事業所数で16.4%、県内総生産で15.6%となっている。
県内総生産の産業別構成比をみると、1次産業が0.4%、2次産業が23.2%、3次産業が75.5%
となっており、3次産業の構成比が全国(1次産業1.1%、2次産業23.5%、3次産業74.9%)と 比較して高くなっている。
2 次産業では、高度経済成長期に堺などで重化学工業が発展し、大阪湾周辺で阪神工業地帯を 形成。また、現在では、播磨灘や内陸部の琵琶湖東岸などに工業地帯が広がっており、2 次産業 は全国シェアで15.3%を占めている。3次産業では、特に大阪では江戸時代から「天下の台所」
と言われるほど商業が盛んで、大阪市、神戸市、京都市の大都市を中心に商業やサービス業が発 達しており、全国シェアは15.7%となっている。
近畿ブロックはアジアと歴史的・経済的に結びつきが強く、大阪、神戸を中心としてアジアと 交流を展開してきた。近年は大型クルーズ船を利用した外国人観光客が大幅に増加しており、東 京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、ゴールデンルート1を利用した外国 人観光客が見込める。世界をリードするグローバル都市の実現を目指し、近畿ブロック全体とし て、さらなる国際的な発信力を高める各界の取り組みが期待される。
1 日本のゴールデンルートの1つに、成田空港から入国し、東京周辺の観光スポットを巡り、箱根、富士山、
名古屋等を経由し関西を観光した後、関西国際空港から帰国するルートがある。
図表1-3-1 近畿ブロックの各種指標
(出典)総務省「国勢調査(2010年)」、「経済センサス(2012年)」、国土地理院「全国都道府県地区町村別面積 調(2014年)」、内閣府「県民経済計算(2012年)」、経済産業省「工業統計調査(2014年)」農林水産 省「生産農業所得統計(2013年)」「漁業生産額(2013年)」
( 注 )全国シェア欄の産業別構成比については、全国の構成比を表している。
(2) 近畿ブロックの抱える課題
国土交通省の関西広域地方計画(近畿圏広域地方計画)や各自治体の長期総合計画によると、近 畿ブロックの抱える課題として、本格的な人口減少社会の到来と急激な高齢化の進展、関西の相 対的地位の低下と東京一極集中からの脱却、外国人旅行者の急激な増加、ポテンシャルを活かし 切れていない京阪神大都市圏、地方都市の活力低下と農山漁村の集落機能の低下、関西を脅かす 自然災害リスク、社会資本の老朽化などが挙げられている。
滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 近畿合計 全国シェア
1,411 2,636 8,865 5,588 1,401 1,002 20,903 16.3%
4,017 4,612 1,905 8,401 3,691 4,725 27,351 7.2%
55 118 409 219 47 49 897 16.4%
11.6% 7.8% 6.6% 8.2% 8.3% 9.5% 7.7% -
591 1,118 4,335 2,174 428 377 9,022 16.2%
5.7% 5.1% 5.5% 5.5% 5.3% 7.6% 5.6% -
57,695 98,470 368,430 182,732 34,992 35,727 778,046 15.6%
1次産業 0.8% 0.4% 0.1% 0.6% 0.7% 2.0% 0.4% 6.1%
2次産業 40.9% 25.7% 17.7% 25.9% 19.8% 33.4% 23.2% 15.3%
(うち建設業) 4.3% 4.5% 3.8% 4.3% 4.5% 6.9% 4.2% 13.3%
3次産業 57.7% 73.1% 80.9% 73.0% 78.7% 64.0% 75.5% 15.7%
67,814 48,024 163,255 147,763 18,897 29,944 475,697 15.7%
618 696 331 1,476 432 993 4,546 5.3%
- 36 31 383 - 119 570 4.2%
漁業生産額(億円)
従業員数(千人)
人口(千人)
面積(km2)
事業所数(千箇所)
建設業割合
建設業割合
県内総生産額(億円)
産 業 別 構 成 比
製造品出荷額(億円)
農業産出額(億円)
①本格的な人口減少社会の到来と急激な高齢化の進展
近畿ブロックの総人口は、2010年には約2,100万人であったが、2015年には2,071万人とな り、2040年には約340万人減の1,750万人まで減少すると見込まれている。全国と同様に2010 年頃が近畿ブロックの人口のピークであり、2015年以降は減少傾向が続く見通しである。また、
2010年では約480万人であった65歳以上人口は、2020年には110万人増の約590万人、2030 年には約600万人に、2040年には約630万人に増加すると見込まれている。2010年に高齢者層
(65 歳以上)の割合が 20%を超えた近畿ブロックは、2025 年には 30%を超えてその後も上昇 を続ける見通しである。当分の間、人口減少は続くことから、地域を持続させるためには、いか に一定の都市機能をコンパクトに維持していくかが重要な課題となる。
図表1-3-2 人口と高齢者割合の推移
(出典)総務省「国勢調査(2010年)」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2013年3月)」
②関西の相対的地位の低下と東京一極集中からの脱却
国内第2の経済圏域である関西が発展し、経済を牽引していかなければならない状況において、
近畿圏広域地方計画によると1980年から2010年までの大阪圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良 県)における域内総生産の伸びが1.48であるのに対し、東京圏は1.97と、成長力においても、
経済規模においても差が拡大している。また、ブロック別に人口に関する社会増減を見てみると、
近畿ブロックは、南関東ブロック(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)と同様に15歳~24歳 の年齢層では転入超過が見られるが、南関東ブロックが 20 歳代後半の層でも転入超過なのに対 して、近畿ブロックでは一転して転出超過となっている(図表1-3-3)。アジアを中心とした都市 間競争が激化する中で、関西の競争力の強化が必要であるが、域内総生産の伸びや人口の社会増 などにおいて、東京との格差は拡大しており、深刻な状況が続いている。
100.0%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
120%
140%
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040
65歳以上の割合(近畿) 65歳以上の割合(全国)
人口推移(全国)1975年=100 人口推移(近畿)1975年=100
(年)
インフラ整備では、高速道路網で2010年に第二京阪道路、2014年には舞鶴若狭道、2015年 には京都縦貫自動車道が全線開通している。しかし、環状道路の未事業化区間など多くのミッシ ングリンクが残っており、広域の道路網ネットワークの整備が遅れている状況である。
鉄道においては、リニア中央新幹線が2027年の東京・名古屋間の開業に向けて整備が進めら れているが、東海旅客鉄道株式会社の長期試算見通しによると、大阪までの開業には2045年ま での期間を要するとされている。
近畿ブロックでは様々なインフラ整備が着実に進めていくために、国、地方公共団体等におい て必要な連携・協力を行い、アジアのゲートウェイ機能を担うとともに、近畿ブロックの有する ポテンシャルを最大限に活かし、インバウンドによる観光消費の拡大を地域の雇用を支える地域 消費型産業の活性化につなげ、関西の暮らしやすさを発現することで、東京一極集中是正の受け 皿となることが重要となっている。
図表1-3-3 ブロック別年代別転入超過量の比較
(出典)総務省「住民基本台帳人口移動報告」
③外国人旅行者の急激な増加
近年の訪日外国人旅行者は年々急増しており、外国人旅行者の約4割が関西へ訪れるほど人気 観光地となっている。その背景には、安価で渡航できるLCCの就航機会の増加があり、関西国 際空港には我が国の国際線LCCの約半数が発着している。また、我が国を訪れるクルーズ船の 寄港回数も増加しており、2010年では338回だったが、2015年は965回と最近5年間で約3倍 となっている。近畿ブロックでは、神戸港への寄港回数が2015年に年間42回で全国の港の中で 第6位となっており、今後も更なる増加が見込まれる。そのような状況下において、観光客がも たらす経済効果を広範囲に行き渡らせるためには、交通網等のインフラ整備が不可欠となり、長 時間の滞在を可能とし、観光消費額を増加させることも重要となってくる。そのためには、観光 産業におけるプロモーションの強化、入国体制や宿泊施設などの受入環境の整備、地域の魅力の 創出について戦略的に取り組むことが重要である。
‐10,000 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000
15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳
南関東ブロック 中部ブロック 近畿ブロック
(人)
図表1-3-4 外国人旅行者の推移(近畿ブロック)
(出典)国土交通省近畿地方整備局資料を基に当研究所にて作成
図表1-3-5 訪日外国人の府県別訪問率(近畿ブロック)
(出典)国土交通省近畿地方整備局資料を基に当研究所にて作成
④近畿を脅かす自然災害リスク
近年は、全国一円で集中豪雨に伴う土砂災害、台風災害や活火山の噴火等、大規模自然災害が 相次いで発生している。近畿ブロックにおいても、2004年の台風23号による豪雨で兵庫県を流 れる円山川及び出石川、京都府を流れる由良川等が氾濫して大規模な浸水被害が発生した。また、
1944年の東南海地震、1946年の南海地震、1995年の阪神・淡路大震災と近畿ブロックでは過去 に地震による甚大な被害が発生している。更に、今後30年以内に70%程度の確率で南海トラフ 地震の発生が予測されており、かつて経験したことのない大規模な被害が発生することが想定さ れている。このようなことから、府県或いは圏域を超えた広域的な防災体制や民間物流事業者と 連携した緊急物資輸送体制等の確保など、ハード面とソフト面が一体となった総合的な防災・減 災対策が必要である。また、地籍調査は2013年度末で全国平均51%の進捗であるのに対し、近
422 429
332
555
393
608
796
1088
0 200 400 600 800 1000 1200
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(年)
0.6% 0.5% 0.6% 0.7%
16.8% 16.5% 18.6% 22.0%
24.6% 22.7% 23.9%
28.9%
5.9% 5.3%
5.8%
6.1%
3.3% 3.3%
4.3%
4.8%
1.1% 1.0%
1.3%
1.2%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
2011年 2012年 2013年 2014年
滋賀県 京都府 大阪府
兵庫県 奈良県 和歌山県