1.3 地域別の社会資本整備動向~近畿ブロック~
1.3.3 近畿ブロックにおける建設投資の将来展望
我が国の建設投資は、1992年度の約84.0兆円をピークに、長らく減少傾向が続き、2010年度 には約41.9兆円まで減少した。しかし、東日本大震災の復旧および復興事業が本格化したことを 受けて、2011年度以降は増加に転じている。今後も、復興需要や2020年東京オリンピック・パ ラリンピックに係る事業などが、ある程度建設投資を下支えする見込みである。
以下、近畿ブロックにおける建設投資について、分野別に現状および今後の展望について述べ る。
(1) 建設投資全体の動向
図表 1-3-60 は、近畿ブロックにおける名目建設投資額の推移を示したものである。長期的な
動向を捉えると、直近のピークである1996年度(約13兆円)から減少傾向が続いており、全国 と比較するとほぼ同様の推移を示している。
図表1-3-60 近畿ブロックにおける名目建設投資の推移
(出典)2014年度までは国土交通省「平成27年度建設投資見通し」、2015年・2016年度は当研究所「建設 経済モデルによる建設投資の見通し(2016年1月推計)による
図表 1-3-61 は全国および近畿ブロックにおける名目建設投資に占める種類別割合を示したも
のである。政府建設投資の割合は、全国の 41%に対して近畿ブロックは 35%と低く、一方で民 間建設投資の割合は、全国の 59%と比較して近畿ブロックは 65%と高率となっている。これは 建設投資全体が民間建設投資動向に影響されやすいことを表している。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
120%
140%
0 2 4 6 8 10 12 14
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
名目政府土木投資 名目政府建築投資 名目民間土木投資
名目民間建築投資 近畿(1990年度=100) 全国(1990年度=100)
(兆円)
(年度)
見込み← →見通し
図表1-3-61 全国および近畿ブロックにおける名目建設投資に占める種類別比較
(出典)国土交通省「平成27年度建設投資見通し」
(2) 政府建設投資
図表 1-3-62 は、近畿ブロックの政府建設投資推移を示したものである。公共工事の削減とと
もに長期にわたる減少傾向が続いた近畿ブロックの政府建設投資は、2008 年度にはピーク時の 1995年度(4.6兆円)の4割弱の約1.7兆円となった。2008年度以降は増加傾向が続いている。
図表1-3-62 近畿ブロックにおける政府建設投資の推移
(出典)2014年度までは国土交通省「平成27年度建設投資見通し」、2015年・2016年度は当研究所「建設経済 モデルによる建設投資の見通し(2016年1月推計)による
政府土木 28%
政府建築 7%
民間土木 10%
民間建築 55%
近畿
政府土木 35%
政府建築 6%
民間土木 10%
民間建築 49%
全国
0%
30%
60%
90%
120%
150%
0 1 2 3 4 5
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 名目政府土木投資 名目政府建築投資 近畿(1990年度=100) 全国(1990年度=100)
(兆円)
(年度)
見込み← →見通し
図表1-3-63は、近畿ブロックの2府4県における普通建設事業費の推移を示したものである。
歳出全体に占める普通建設事業費の割合は、全国平均を下回っている。また過去5年間の割合は 20~25%で安定的に推移している。
近畿ブロックは、大阪万博などの高度経済成長期に他のブロックよりも比較的早く社会資本整 備が進んだことから、老朽化に伴い更新時期を早く迎え、そのストック量も膨大である。よって、
今後の老朽インフラ更新などが政府建設投資の大きな柱になると考えられる。
図表1-3-63 近畿ブロックにおける普通建設事業費の推移
(出典)総務省「地方財政統計年報」
( 注 )全国とは47都道府県の合計
(3) 民間住宅建設投資
図表1-3-64は、近畿ブロックにおける住宅着工戸数の推移を示したものであり、過去10年に
おいては全国とほぼ同様の動きで推移している。2008年のリーマンショックの影響により、大き く落ち込んだ近畿ブロックの住宅着工戸数は、2009年度に底を打ち回復傾向にある。
今後の見通しとしては、人口減少が続く中で長期的にみると民間住宅建設投資は減少するもの と考えられるが、京都縦貫自動車道の開通や京奈和自動車道の整備など高規格道路のネットワー クの充実により通勤圏の拡大が見込め、また、都心部から地方移住への関心が高まっていること などから、民間住宅投資の増加は十分期待できる。
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
滋賀県 京都府 大阪府
兵庫県 奈良県 和歌山県
歳出に占める割合(近畿) 歳出に占める割合(全国)
(億円)
図表1-3-64 近畿ブロックにおける住宅着工戸数の推移
(出典)国土交通省「建築着工統計調査報告」を基に当研究所にて作成
図表1-3-65 近畿ブロックにおける住宅着工戸数の利用形態内訳
(出典)国土交通省「建築着工統計調査報告」
( 注 )2007~2014年度の実績にて算出
図表1-3-66 近畿ブロックにおける住宅着工に係る参考指標
(出典)総務省「平成25年住宅・土地統計調査」、「平成22年国勢調査」、「家計調査(2014年)」
( 注 )世帯所得は各県の県庁所在市の二人以上の世帯のうち勤労者世帯の数値
0%
30%
60%
90%
120%
150%
0 5 10 15 20 25 30 35 40
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
滋 賀 京 都 大 阪 兵 庫
奈 良 和 歌 山 近畿(1990年度=100%) 全国(1990年度=100%)
(万戸)
マンション 戸建
全国
34.0% 38.8% 0.9% 26.3% 13.4% 12.9%
近畿
27.4% 35.3% 1.1% 36.2% 18.0% 18.3%
持家 貸家 給与 分譲
※( )は全国における順位
滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 全国
72.6% 60.8% 54.2% 63.6% 73.8% 74.8%
(11) (39) (44) (37) (8) (6)
2.69人 2.31人 2.28人 2.44人 2.63人 2.50人
(10) (42) (44) (33) (17) (28)
46.2% 42.5% 36.8% 39.0% 35.5% 42.3%
(23) (36) (46) (44) (47) (37)
538千円 570千円 490千円 412千円 579千円 565千円
(22) (11) (32) (45) (7) (13)
世帯所得
(月額実収入) 520千円
持ち家住宅率 61.7%
1世帯当たりの
人員 2.42人
共働き率 43.5%
(4) 民間非住宅建設投資
図表1-3-67 は、近畿ブロックにおける民間非住宅建設投資の推移を示したものであるが、全国
とほぼ同様の推移となっている。1992年度から減少傾向が続き、2003年度には1992年度(約5.0 兆円)の4割弱である約1.8兆円に落ち込み、2008年度には6割弱の約2.9兆円に回復するが、
その後は減少傾向が続いている。
今後の見通しとしては、四環状道路の整備に伴う物流拠点の建設や工場立地件数、敷地面積とも に増加傾向にあることから、近畿ブロックの民間非住宅建設投資の増加が今後期待される。
図表1-3-67 近畿ブロックにおける民間非住宅建設投資の推移
(出典)2014年度までは国土交通省「平成27年度建設投資見通し」、2015年・2016年度は当研究所「建設経済 モデルによる建設投資の見通し(2016年1月推計)による
0%
20%
40%
60%
80%
100%
120%
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 名目民間土木投資 名目民間非住宅建築投資 近畿(1990年度=100) 全国(1990年度=100)
(億円)
(年度)
見込み← →見通し
図表1-3-68 近畿ブロックにおける非住宅建築着工床面積の推移
(出典)国土交通省「建築着工統計調査報告」
(注)非住宅着工床面積は公共・民間の合計
図表1-3-69 近畿ブロックにおける非住宅建築着工床面積の使途別内訳
(出典)国土交通省「建築着工統計調査報告」
( 注 )2007~2014年度の非住宅建築着工床面積(公共・民間計)にて算出
図表1-3-70 近畿ブロックにおける工場立地件数
(出典)経済産業省「工場立地動向調査」
0 200 400 600 800 1,000 1,200
07 08 09 10 11 12 13 14
事務所 店舗 工場・作業場 倉庫 学校の校舎 病院・診療所 その他
(万㎡)
(年度)
12.6%
11.7%
14.6%
15.0%
16.5%
18.8%
12.4%
12.5%
8.1%
8.5%
6.3%
6.5%
29.4%
27.0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
全 国 近 畿
事務所 店舗 工場・作業場 倉庫 学校の校舎 病院・診療所 その他
年 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 全国 1,123 844 1,052 1,302 1,544 1,782 1,791 1,630 867 786 869 1,227 1,873
滋賀県 15 14 25 32 35 44 47 47 22 23 27 30 45 53 (18) 京都府 17 11 36 36 33 30 34 24 10 11 23 22 33 39 (27) 大阪府 24 19 29 47 45 41 26 46 28 12 13 20 1 15 (41) 兵庫県 46 49 52 68 80 115 96 102 54 44 56 68 12 59 (14) 奈良県 3 2 11 8 11 21 26 26 21 27 21 22 45 34 (31) 和歌山県 3 10 6 3 6 6 13 14 8 8 8 19 33 15 (41)
※( )内は全国における順位 14 2,471
おわりに
近畿ブロックにおける社会資本整備の動向とその期待される効果について見てきたが、地域が抱 える様々な課題の解決や改善に対し、社会資本整備が果たす役割は大きく、地域活性化の大きなき っかけとなることが確認できた。
日本3大都市圏の1つでもある近畿ブロックは国内第2の経済圏を有しているため、日本国内に おける経済に与える影響は極めて大きい。近年のアジア諸国等の経済成長に伴い、日本の港湾の相 対的地位が低下していることから、国際コンテナ戦略港湾である阪神港では、国、港湾管理者等が 連携した整備等を実施しており、国際競争力の強化に取り組んでいる。また、高規格幹線道路網等 の整備においては産業・経済の物流拠点が集積する大阪湾周辺地域を中心に慢性的な渋滞の緩和や 沿道環境を改善し、近い将来に発生すると予測されている南海トラフ地震における大規模災害時の 緊急輸送路としての役割など広域的なリダンダンシーを確保し、災害に強い基幹交通ネットワーク の構築を図る必要があり、ミッシングリンクの早期解消が期待されている。
近畿ブロックは大阪万博前後から社会資本整備が進められてきた地域であり、社会資本ストック の老朽化問題に対しても早急な対応が迫られている。近畿地方整備局管内の直轄国道においては建 設後50年を経過する橋梁が2015年で約35%、2035年には約70%、阪神高速道路においても同 様に2023年には供用から40年以上経過している区間が約50%になる見通しとなっており、喫緊 の課題として大規模更新・修繕事業等が実施されている。
国では「インフラ長寿命化基本計画」に基づく「公共施設等総合管理計画」の策定を地方自治体 に求めているが、全国的な課題である今後人口減少・少子高齢化が進む我が国にとって、将来的な 公共施設の適正な維持更新等が求められている。また、人口減少・少子高齢社会においても一定の 圏域人口で活力ある社会経済を維持する取り組みとして京都府北部地域連携都市圏を紹介した。京 都縦貫自動車道の全線開通や日本海側の拠点港である舞鶴港を中心に圏域でインフラ整備等を実 施して京都府北部7市町の公共サービスや都市機能を確保して地域づくりを進めている。
このように、地域全体での経済発展・活性化には既存の社会資本の効果が最大限に発揮される社 会資本整備およびその社会資本の有効な活用など、ハード、ソフト一体となった効率的で着実な取 り組みが求められている。