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建設技能労働者の就業構造のあり方

ドキュメント内 Microsoft Word - ②66号「はじめに」.docx (ページ 186-200)

2.3 主要建設会社決算分析( 2015 年度第 2 四半期)

2.1.3 建設技能労働者の就業構造のあり方

~社会保険等未加入対策を契機として~

建設業は、河川堤防・道路などの土木構造物や住宅・オフィスビル・店舗・工場などの建 築物の新設・改修等を担い、国民生活と経済活動の基盤づくりに貢献している。現在、我が 国の生産年齢人口の減少を背景として、建設業の人材確保、特に、建設現場において実際の 施工を担う建設技能労働者の確保が大きな課題となっている。生産年齢人口減少下において 建設業が建設技能労働者を持続的に確保し、将来にわたってその役割を果たしていくために

は、就業希望者によって選ばれるような働き方(及び、就業した建設技能労働者が定着する ような働き方)を提示することのできるようなものとなっていることが重要である。

現在、建設技能労働者等の社会保険等未加入対策が進められている10。これは、建設技能 労働者等の担い手確保の取り組みの一環として、法律上求められている処遇を確保するため になされているものである。しかしながら、その効果は建設技能労働者の処遇の確保にとど まるものではなく、生産年齢人口減少下における建設技能労働者の就業構造に影響を及ぼす 可能性を有していると考えられる。

本項では、生産年齢人口減少下における社会保険等未加入対策を契機とした、建設技能労 働者の就業構造の転換の方向性と、転換に向けた方策について考察する。

本項の構成は以下のとおりである。

第一に、建設技能労働者の就業構造について、労働力を調達する側の視点と就業する側の 視点の双方から考察し、生産年齢人口減少という社会的な状況変化の中で、建設技能労働者 を確保していくための前提条件は、社会保険等加入を含む他産業並みの就業条件であること、

また、生産年齢人口減少下での社会保険等未加入問題の解決は、他産業並みの就業条件を確 保するために最低限必要な条件となるのみならず、建設技能労働者の就業構造の転換を促す 契機となり得ることを述べる。((1))

第二に、社会保険等未加入対策の推進について考察する。建設経済レポート№65で提示し た、社会保険等未加入対策を進める上での4つの課題を改めて示す。その上で、当研究所が 実施した大規模なゼネコン及び社会保険労務士へのインタビューの結果をもとに、現在、大 規模なゼネコンで進められている取り組み等について紹介するとともに、課題解決に向けた 今後の方向性について展望する。((2))

第三に、建設技能労働者の就業構造に関連する課題について考察する。インタビューから は、建設技能労働者の就業構造に関連する課題として、重層下請構造、繁閑調整・仕事量の 安定的な確保、建設技能労働者の処遇改善等についても多くのことがうかがえた。これらは いずれも本項の範囲で論じ尽くすことのできないような重大な問題であるが、インタビュー 結果を紹介するとともに、そこから得られた建設技能労働者の就業構造に関する示唆等につ いて述べる。((3))

第四に、これまで述べてきたことをふまえながら、生産年齢人口減少下における社会保険 等未加入対策を契機とした、就業希望者によって選ばれるような働き方を提示できる就業構 造の実現に向けた方策の方向性を関係主体別に示す。((4))

最後に、本項全体の考察をまとめる。(まとめ)

10 本項では、「社会保険等」として、医療保険、年金保険、雇用保険を対象とする。

(1) 建設技能労働者の就業構造

建設経済レポート№63において、建設業の生産体制と建設技能労働者の就業構造に関して、

以下の趣旨のことが述べられている。

建設業の産業特性、すなわち①単品受注の分業生産、②総合組立加工生産、③労働集約生 産、④移動生産、⑤屋外生産(気候・地形に左右される)、⑥雇用の場と作業の場の隔絶など により、下請構造が発達し分業化、専門化が進んだ。不安定な受注環境の中、建設技能労働 者の安定的な雇用形態、社会保険等加入を含む就業条件については、不十分な状況が続いて きた。

このような状況の中、バブル経済後の「失われた 20 年」の時代に建設投資が労働者の減 少を上回る勢いで減り続けたことから、ほぼ一貫して「労働力過剰」の状態が近年まで続き、

「元請企業の安値受注」→「下請の請負金額の低下」→「労働者の賃金、労働条件の低下」

→「建設技能労働者の減少と高齢化」を招いた。また、仕事量が減少する中で、専門工事業 では直用の建設技能労働者を下請企業に移したり、一人親方として独立させたりするなどの 対策をとらざるを得なくなり、重層下請構造が拡大するとともに、就業条件が一層不安定に なった。

また、建設技能労働者について、労働力を調達する主体と就業する主体との間の法律上の 関係として典型的なものは「雇用」と「請負」(個人事業主としての請負)であるが、このよ うな重層下請構造の中で、雇用関係や労働条件が不明確である、あるいは、形式的には請負 であっても実態が雇用であるといったように、建設技能労働者の就業に係る法律関係が不明 確なまま就業しているという実態があるとされている11。このような中で、社会保険等にも 未加入という状況があると考えられる。

以上から、重層下請構造の中での「社会保険等の保障のない不明確な就業関係が相当程度 みられるような就業構造」が、最近までの建設技能労働者の就業構造であったと考えられる12

11 たとえば、厚生労働省の「建設雇用改善計画(第八次)」(2011年)のⅢの1の(1)では、「・・・依 然として重層的下請構造が存在し、雇用関係や労働条件が不明確である等の問題が指摘されていること から、雇用関係の明確化に向けた取組を更に強力に進める必要がある。このため、建設労働者の雇入れ の主体及び雇用契約の内容等を明確にするため、雇入通知書の交付等による労働条件の明示につい て、・・・適切に指導及び監督並びに周知を行う。」との記述があり、また、「いわゆる一人親方につ いては、競争の激化に伴い、事業主が労務関係諸経費の削減を意図して、これまで雇用関係にあった労 働者を対象に個人請負労働者として請負契約を結ぶことにより、いわゆる一人親方となる働き方が生じ ているとの指摘もある。これを踏まえ、現状把握を行った上で、形式的に個人事業主であっても実態が 雇用労働者である場合には、労働関係法令の適用があることについて、引き続き周知・啓発を行い、・・・

現状把握に基づいた効果的な対応を図る。」との記述がある。「建設雇用改善計画(第九次)(案)」

(2016210日 第48回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員 会資料)のⅢの2の(1)においてもほぼ同旨の記述がある。

12 就業構造とは、就業者の存在形態であり、産業別就業構造(第一次産業別・第二次産業別・第三次産業

上述のように、建設技能労働者の就業構造は、重層下請構造の中で労働力が調達されてき たことに特徴づけられる。このような建設技能労働者の就業構造について、労働力を調達す る側及び就業する側の視点で整理する。まず、受注産業である建設業において労働力を調達 する側である元請企業や上位下請企業からみると、仕事の繁閑や景気変動に機動的に対応す るため、必要な労働力を必要な時期に確保することが可能となるような就業構造が、望まし い就業構造であると考えられる。なぜならば、労働力の調達費用を固定費にせず、変動費に できることなどにメリットを見いだせるからである。他方、就業する側からみると、少なく とも他産業と比較して遜色のないメリットがあるような就業構造が、望ましい就業構造であ ると考えられる。そして、重層下請構造において、例えば一人親方という働き方についてい えば、個人請負の契約の相手方を固定することなく、また、熟練した技能を有する場合には 自分の能力で働けば働くだけ稼ぐことができることなどにメリットが見出せると考えること もできる。これまでの就業構造の背景には、このような両者の利害の一致もあったものと考 えられる。

しかし、建設投資が激減すると、就業条件の低下が進み、就業する側のメリットが失われ、

新規の入職者が減少した。そして、生産年齢人口が減少する中で、労働力を必要な時に確保 できない恐れが出てくることになった。このことは、労働力を調達する側のメリットも失わ れることを意味する。

建設投資は、2010 年度の約 42 兆円を底にして、上向きに転じている。また、2011 年 3 月に発生した東日本大震災からの復旧・復興需要、2020年に開催される東京オリンピック・

パラリンピック関連需要などがある。労働力の豊富な時代であれば、建設投資増に伴い労働 力への需要が大きくなっても労働力を調達することは可能であった。しかしながら、生産年 齢人口が減少するという状況においては、労働力を調達する側にとっても、より安定的に労 働力を調達できるような働き方を提示する必要が生じてくると考えられる。このことは、従 来機能してきた建設技能労働者の就業構造が限界を迎えつつあり、その転換が必要となって いることを示唆していると考えられる。

それでは、建設業が安定的に建設技能労働者を確保していくためにはなにが必要であろう か。少なくとも他産業並みの就業条件を整えることが前提条件となるであろう。そのような 観点からは、まず社会保険等への加入が挙げられる。

法律により就業者の働き方の実態に即した保険に加入することが義務付けられているにも 関わらず、建設技能労働者については、本来加入すべき保険に加入していない事例も多いと されている。このような実態を改善し、法律で定められた社会保険等に加入して他産業並み の就業条件を整えることが、労働人口減少時代において安定的に建設技能労働者を確保して いくために最低限必要な条件となる。

別、農林・非農林別など)、従業員の地位別就業構造(自営業主・家族従業者・雇用者別)、地域別就業構 造などさまざまな角度から分析可能である。

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