ー 74 −
第4−4表 協菜経営橡類別1体当り平均規模
(昭和40年5月1日現在)
207】631】1・049l
ー75−・
第4−5表 協業経営種類別出資割合 資 本 内 訳 協業の秤類
現金出資l現物出資l補助金】借入金l総 額
酪 ぷ豊 養 豚 養 親 肥 育 牛
ブ ロ イ ラ ー 果 樹
才E 丼
5 00 9 2 9 3 0 4 3 ︵0
1 6 0 9 4 7 2 6 4 5 6 5 5 5 5 4 7 3 8 2
5 6 9一7 6 5 6 3 4
5 9 3 2 5 7 4 0 3 1 5 5 1 6 8 7 7 3 8 一
6 9 7 4 3 9 0 2 2 1 1 1 1 2
9 0 4 1 7 ︵0 7 0 4 5
7 3 7 6 5 3 3 1 0 7
1 1 1 1 2 2 2
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 部 門 協 業 経 営
全面 協 共 経常 接 合 協 業 経営 そ の 他 注)香川県「前掲資料」
第4−6表 協業経常堰類別構成員1人当り資本額
往)香川鬼「前掲質料」
う.そのため最小出資能力の成員の出資額によって他の成員の出資も規制され,したがって全体の自己資本も過少 とならざるをえない.その極端な一例をあげると,埼玉県の鶴ヶ島共同酪農経常では3名申,1名が出資能力がな いため全員が現金出資を行わず,資金ほ全額を借入金に依存している 73).このように共同経常における出資は,大 経営の危険性および共同成員相互間の信頼度による制限と,均等.■h資制による制限が投合して成員の出資総額を過 少にすると考えられる.
このような出資の制限の触果,発生する自己資本の過少現象は共同経営にいかなる影莞野を及ぼすであろうか.第
1に収益性の低下と財務的不安定をあげなければならない.農業は劇般に資本利益率も低く,資本回転もおそい.
したがって資本桃成と資金討画は惧頚でなければならない.ところが,共同経営では借入金が過大であり,さら に過剰投資の傾向や生産・資金計画の粗雑さ等とあいまって,建設過渡期の弱体な経済的基礎巷膿・屑弱化させるの
である.その結果,経営成果は低収益または欠損となり,元木の返済と利子負担が加わって資金繰りが閑雅とな
−76・−・
る.そのために短期高利の借入金が増加し,資金面と収益面の悪循環が発生し解散する例も少なくない.
第2ほ規模への影響である.前述のように共同経常は全体的にみても,また1人当たりでみても平均規模は大き いとはいえない.したがって1人当たりの可能な分配額も限定されるために成員の共同経営活動に対する熱意も不 十分となり,他方個人経営部門も拡大する結果,共同経営との両.立が困難となる傾向がある.共同経営はたえず成 長発展することによって−,個人経営部門との競合や分配等の困難な問題を解消することが可能である.そのために は規模拡大が,したがって資金が必要である.ここで四国地区の共同経営において2年間(36年8月〜38年10月)
に何らかの投資をした経営は総数の約50.7%であるが,その投資内容は施設(39.1%),家畜(28.9%),土地,
機械(ともに9.4%)である.その資金の出所をみると第4−7表のように借入金が73.3%を占め,自己資金は9.5
%,収益金ほ14.7%にとどまっている.それゆえ,規模拡大は借入金を一層増加させ,そこに「危険漸増の原理」
が作用し,自己資本の損失の機会が増大するわけである74).共同経営の欠損額が出資金に匹敵ないし」二廻る事例も まれではない
第4一・7表 協菜体の投資資金の内訳
割 合 (%)
総
数 】 全 面 経 営 l 部 分 経 営
借 入 金 補 助 金 自 己 資 金 収 益 金
不 明
73.3
9.5 14.7 2.5
主な資金の出所
2昭和36年8月〜昭和38年10月の期間
節3に出資紅の大小は成員の結合および意識の変化に重要な影響を及ぼす.前述の2点は,大経営における自己 資本額の大小の意義であったが,ここでは共同経営が長の意味で1経営体として成立し,機能するか否かの問題で ある.目頭にのべたように共同経営は単なる要素や人の集合ではなく,統一意思によって統括されることによって 始めて経営体として成立し,槻能しうるといえる.ところで人的組織の本質をなす「協働意欲」ほきわめて個人差 があり,かつ断続的で変化しやすいものである75).したがって「公式組織による協働が成功するのは異例であり,
通筒のことではない76)」とさえいわれる.この不安定な「協働意欲」をもち,しかも平等原則に立つ成員の結合維 持ほ容易でないが,それには経済的基礎が必要である77).徳島県の1養鶏共同経営のリーダ−は,共同経常として 発展した基本的原因として成員の負担能力をこえるほどの最大限の出資をあげている7g).出資額は成員相互の信頼 の尺度であり,かつ多額の出資をするほど利害の共通性が高まり,成員結合の紐帯となる.同時に集合体意識から 統一・体意識へ意識が転換して共同経営と成員との−・体感が生じ,これが建設期の田野ミに堪えて経営を発展させる原 動力になるといわれている.さらに不可分の共有財産や共同の生産手段が形成されるほど−・体感と結合の維持が強
化されることば,新利根,神出等の開拓共同経営や共宥林を基礎に成立した果樹共同経営の事例が示すところであ
る.
もとより出資額が少なく,借入金が主であって発展した事例が存在することを否定するものではない.その場合 には借入金の返済が結合と一イ本感の主要な契槻となる場合である.しかし−・般的には出資額の少ないぼど共同経営
−77 一 に対する−・体感は乏しいといえよう.共同経営が欠損であり,負債が増加しても出役賃金を支払ったり,自己資本 が僅少で財務的に不安定であるのに一・様に減資する事例79)等は,共同経営と個人との完全な帝離を示すものであ
り,そこでは厳密な意味で経営体は成立していないし,かつ経常として機能もしえないといえるであろう.
借入金の導入,利用,返済は個人経営の場合には慎重であるのに対し,−・般に共同経営の場合には,なぜそれが 安易であり,また−・体感や統一意思へ転化する強い契機となりえないのであろうか.それは共同経営の設立,参加 の動機に融資,補助金の魅力が含まれている場合も多く,そして共同借入の場合にほ個人借入と異なり他の成員に 対し式任転嫁の可能性があるためといわれる.そして出資が少なく借入金で運営する場合には,初期の株式会社に おいて出資をしない単なる経営者の「怠慢と大まか」(アダム・スミス)80〉な性格と同一の性格をもつといえよう.
以上,共同経常における出資制限の理由と影響について論じた.共同経常における出資額ば大経営としての経済 的意義と同時に,共同経営に対する成員の意識の変化に重要な忠義をもつことが強調されねばならない.ところ が,共同経営には出資制限の多くの要因があり,平等原則による均等出資はその一つであるが,−・般に相当大きな 制限要因となっていると思われる.もっとも,均等原則が逆に拇資を強制する場合もないわけでほないが,一腰的 には少数であろう.
第4節 平等の経営権
共同経営は部門,全面を問わず成員が平等の経営権をもち,合議制によって経営方針が決定される.この経営管 更別こおける平等原則ほ共同経常における合理的運営を規制する点が少なくない什
1 計画
経営が大規模化するほど経営方法の良否の差が著しい8リ.そして,それほ経営計画の良否に基づくところも大き いのでほあるが,家族経常よりも共同経営においては計画がはるかに複雑になる.共同経営では設備討画,生産計 画,資金計画,収支計画,労働討画等が必要となるが,一般に計画は安易かつ不備であり,諸計画間の調整も不十 分である点に問題があるといえよう.ところで共同経営では平等の成員の合議によって決定されるわけであるが,
成員数が多く,多様化するほど統一意思形成は困難となり,合理的計画は修正または放棄を余儀なくさせられやす い.1例をあげると番Jl=県のK 農場ほ7戸の全面共同経営として発足したのであるが,成立後に豚の導入計画に 対し1婦人が反対したために,その後は婦人を除外して計画,決定がなされるようになり,婦人層の協力忠志が低 下したといわれる.共同経常,とくに全面共同経営でほ成員が全人格的存在として経営管矧こ参加し,個人的な感 情で合啓柑勺な計画と運営を歪める場合もあるわけである.この場合には豚の導入計画は達成したが,婦人の協力意
志の低下によって1年後に4戸の脱退者のでる−・因となったのである.一・般に平等の経営梼を前提とした合議制は 成員の性格,個人の経営や家計状態等が多様化するはど統一意思の形成と機動性に欠陥が現われやすい.
2 分業
ここでは経営管坪労働の分光についてみよう.大経営の有利性の一つは分菜の可能性にあり,とくに経営り・−ダ
・−などの枯神活動が肉体労働から解放され独自の機能を遂行する点にも求められよう.共同経営においても,リ・−
ダ・−の能力と活動に依存するところが大きいが,リ・−ダ・一同有の業務に専念できない場合が少なくない.これは−・
つには成員数が少なく十分な業務分担が困難であることによるが,そのほかにリーダーの業務や会計等の事務労働 に対する認識が不十う)な面も多いために,その業務担当省のオ・−バ・−ワークになるか,分拒業務が十分に達成され にくいことが多い.香川県のM牧場は乳鼻の低下による経営の不振のために個人分担制に切替えたが,その−・つ の原因はリーダ・−の提供する自給飼料がとくに少なく,給与量が管理者の交替制によって著しく変化したことによ