• 検索結果がありません。

農業共同経営における平等原則の検討

一収益原則との対立を中心として−−  

第1節 はしがき   

農栄典同経営は複数成員の提供する土地,資本,労働が統一忠恕によって統括された経営体である.それは客観   的にほ物的技術的結合体軋基礎養おく経済的結合体である.さらに主体蘭をみると成員の人l】勺結合体であり,かつ  

それほ出資者(土地提供者を含め),経営者,労働者の資格の未分化な人格的結合体である.   

さて共同経営の経営経済的目棟は純収益(出資配当,地代,成員労賃)であり,そこでほ収益原則が経済的結合   体を支配するはずである.そして成員の人的羞合体ほ経済的結合休を支配し,純収益の分配によって珪計維持をほ   かり,経営行為を継凝するものである.ところで,この成員の人的結合の原理をなすものは平等・公平の原則であ   る.社会生活において平等・公平がヨ責本的原理となることほいうまでもない.ここで問題となるのは,共同経営に  

おいて成員の組合原理である平等原則が共同経営の構成,運営の基礎となっている事実である.すなわち,経済的   結合体としての収益原則と,成員の社会的結合体としての平等原則とが共同経営を支配する原則とみることができ   るのであるが,この両原則は矛屈するところが多く69),共周経営の不振またほ研散の主要原因はそこにあるのでほ  

ないかと思われる.この点の検討に本章の課題があるわけである.   

以下,算2節でほ平等原則の忠義と現状をみる.ついで第3節では均等出資が出資制限をもたらし,したがって   自己資本過少の−因となり,それが共同露営の収益性,塊根,成員の結合にいかなる作用をおよぼすかについてみ   る.第4節でほ,共同経営の運営に必要な計画,分菜,指拘ら 調整などの諸機能が平等の経営権と矛眉する点につ   いて検討する.第5節では均等出役例の1形態である交番管理が収益性を粗層する薗を考察する.  

第2節 共同経営における平等原則   

ここで統計によって共同経営における平等原則雀みよう.昭和38年10月の農林省の調査によれば四国地区では第   4一1褒のように306の共同経営のうち,全体として均等出資を行うものほ74‖5%,全面共同経営では41.4%,部   門共同経営でほ76.6%である.また分配については,分配を実施している90体LP,63.3%が均等分配である.そし   て均等分配以外のものについても何らかの形で公平性の維持に努力しているように思われる.また,出役について   は節4−3表のように,全戸参加が76.6%にのぽる.これは均等山役か否か明らかではないが,少くとも原則とし   ては均等出役が支配的であると考えてよいであろう.   

以上のように出資,出役,分配の各面について均等主義碇よるものが多い.ところで,平等の概念がしばしば多   義的に用いられることから,以下,平・等原則とは均等出費,均等山役,均等分配,平等の経営樅をさすことにしよ  

う.それでは,このような平等原則が支配的である理由ほ,何であろうか.   

(1)まず,平等原則によれは均等な山賀と出役が1セノトをなし,これに対応する分配方法が最も簡明かつ容   易である.これによって複雑かつ困難な分配の問題を回避しうることば大きな長所である.さらに収益申から投資   または借入金の返済を行う場合にも均等主義が技術的に問題が少ないし,収益分配を行えない期間においても均等   制の方が問題が少ないといえよう.   

−72 −  

第4−1表  成立時の出資方式別協業体数  

注)四国農試経営研究室「四国地域における協光経営の現状と動向に関する質料」昭和38年10月  

第4−2表  協業の成果と収益の分配方法別協業体数  

割   合 (%)  

総  数   全面経営   部分経営  

総  数l全面経営部分経営  

0  

9  該   当   数  

平 等 の み  

出資 比例 のみ   労働日数比例のみ   平等と出資比例   平等と労働月数比例   山賀と労働日数比例   そ   の   他  

不   明  

6 1  1 一   

﹁分配あり﹂の内訳︵分配方法別︶   7  2  7  1  

5  1  

該   当   数   出 資 が 平 等   出 二賢 が不平等  

0  4  6  

6  5  

﹁平等に分  

注)四国農試「前掲資料」  

ー73 −  

第4−・3表  現 場 作 業 者 の 節 囲  

総   数   全面共同経営   部門共同経営   全 戸  参  加  

−・   部  参  加   不   参   加  

不   明  

合   封  

76.6    15.7  

7.1   0.6    100.0   

94.1   5.9  

100.0   

75.6    16.3  

7.5   0.6    100.0   

昭 和 38 年  

注)四国農試「前掲資料」  

(2)均等の出資,出役,配当は平等の経営樅と発言力を保証する.このようなすべての面における平等は,平   等の人格を重んずる共同経営において,きわめて重要な意味をもつ.ある共同経常の成員によれば「出資が不均等   になれば多額の出資者が支配す−るようになる.そこでは配当主義になり,同じ条件で働いているものに差のつくの  

はまずい.出資が不均等で,その他の樅利,利益の平等は困難である.」そして,この平等の条件が「建設期特有   の精神的,肉体的,経済的苦労を平等に分担し,構成員の迦帯忠誠をたかめる70)」といえよう.   

このように平等の鹿則は経済的にも社会的にも最も民主的なあり方であり,多くの共同経営において採用される   のは当然であろう.このように主体が平等の出資者,経営者,労働者の未分化な人格的結合体であることほ,共同   経営の構成と運営にも密接な関係をもつものである.主体の結合原理は均等の資本,土地,労働等の諸要素の結合   原理として,つまり経営体の構成の原理として働らき,かつ収益が均等に分配される点で,分配原理としても現わ   れ,さらに平等の経営樅をもって運営される点で経営運営の原理として現われている.すなわち,大多数の共同経   営においては,成員組織と共同経営の構成,運営において均等・平等原則が良かれているのである.したがって,  

本来は成員の結合維持のための社会的平等原則が,成員聞の平等に.よる紙合をより完全にするために,経済的関係   にまで平等原則を適用したと考えることができよう.しかし,共同経営が経営行為を営む限り,そこでは収益原   則が毘き,それによって経営が支配されるべきはずである.したがって共同経営の収益原則は共同経営の組織,構   成,運営における平等原則によって,本来の収益追求の活動を制約されるといえるのではなかろうか.このような   傾向があるとすれば共同経営の解散事例の中に顕著に見山されるであろう.本章では便宜上,主として香川県下に   おける調査事例および,統計としては四国地区や香川県の統計を利用したが,これらの傾向ほ全国的に共通性尼も   つものであり,1地区に限定されるものではない.  

第3節 均等出資   

共同経営ほ大塊枚経営の形成をめざす ̄ものであり,多鶴の資本を必要とするが,叫舶に自己資本が過少である点   に一つの問題がある.罪4−4表をみると香川県の場合1経営当たりの総資本額は果樹,全面の両共同経営では1   千万Hをこえるが,その他は300〜500プ引】」台である.つぎに第4−5表をみると総蟄本に対する借入金の比率ほ投   合(84.3%),花井(72.0%)がとくに高いが,その他の部門共同経営は大体50%以上である.これから考えれば   比・性的自己資本が多いように考えられるが,それは補助金が含まれているからであり,現金および現物出資でみれ  

ば,全面共同経営や「その他」の共同経営の60%台は別として,多くは30%台以下であり,ことに酪農(12.4%),  

花井r8.2%)は少ない.現物出資は土地の共同経営へ岱付ける形態も少なくないと思われるので,現金出資のみ   

ー 74 −  

第4−4表  協菜経営橡類別1体当り平均規模  

(昭和40年5月1日現在)  

207】631】1・049l