3.3 性能確認のための要素実験
3.3.4 輪荷重走行試験
86
87 (3) 試験体
図-3.24に輪荷重走行試験の試験体を示す.試験体は床版接合部を含む実寸大の2方向リブ 付きUFC床版である.試験体の寸法は,橋軸方向に4.3m(2.49m,1.81mで接合部を挟む),
橋軸直角方向に2.8mとした.床版間接合は試験体全体の中央から340mm ずらした位置に設け た.これは床版接合部曲げ試験の結果から,床版の接合部は一般部より弱部とは想定されず,
破壊に至る変状は,床版一般部から進展すると判断したためである.
試験体の床版一般部に相当するPC鋼材は,2方向に設けているリブ内部に配置した.一般部 ならびに接合部の橋軸方向のPC鋼材は,ポストテンション方式でプレストレス力を導入した.
また,橋軸直角方向の PC 鋼材は,試設計ではプレテンション方式での導入を考えているが,
試験体製作における端部の定着ロスを考慮すると,試験体に設計と同等のプレストレスを導入 することが困難であると判断したため,ポストテンション方式を代用した.このようにして,
試験体の輪荷重走行付近に設計同等のプレストレス作用応力状態を再現した.
図-3.24 試験体
88
PC 鋼材として,橋軸方向の PC 鋼棒は,試験体の一般部ならびに接合部ともに B 種 1 号
(SBPR930/1080)でφ23を,橋軸直角方向には,一般部の中間リブには1S15.2BL(SWPR7B),
接合面に隣接する端部リブには PC鋼より線1S17.8BL(SWPR19)を使用した.端部リブは試 設計においては,PC鋼より線1S15.2BL(SWPR7B)を6本配置するが,ポストテンション方式に 変更していることによりPC鋼材の配置スペースを確保できないため,1S17.8BL(SWPR19)を 4本配置で代用している.なお,接合部のPC鋼棒にはグラウトを充填しない状態とした.床版 ブロック,PC鋼材,PCグラウトの材料特性を表-3.15に示す.
表-3.15 材料特性
(ⅰ)セメント系材料 圧縮強度
(N/mm2)
引張強度
(N/mm2)
割裂引張強度
(N/mm2)
弾性係数
(kN/mm2) 床版ブロック(UFC) 215 15.3 11.7 52.1
PC鋼棒グラウト 63.9 - - -
(ⅱ)鋼材 降伏点
(N/mm2)
引張強さ
(N/mm2) PC鋼棒(φ23) 1,027 1,145 PC鋼より線(φ15.2) 1,795 1,946
89 (4) 試験方法
輪荷重走行試験機を図-3.25に示す.試験機の仕様は,駆動方式にクランク式,車輪(鉄輪)
に直径750mm×幅320mm,走行範囲を±1.5m,載荷速度を 20rpm(40回/分)である.
本試験の載荷方法は図-3.26に示すように初期荷重を157.0kN(16tf)とし,走行回数4万回 毎に荷重を19.6kN(2tf)ずつ増加する階段状漸増載荷[16]とした.
試験体は架台に備え付けのボルト・ナットにより固定し,試験体の橋軸方向の支持はピン支 承により中心方向へのたわみを許容する構造とした.載荷においては,試験体上面(輪荷重走 行面)の凹凸による偏心載荷を避け,試験機および試験体の安定性を確保するため,試験体の 上面にゴム材を内在した鉄板を敷設した.その上に載荷ブロックを載せ,最上層には加圧用鋼 板を敷設しボルトにてこれらを固定した.
図-3.25 輪荷重走行試験機
図-3.26 載荷荷重と走行回数
90
輪荷重走行試験では,所定の載荷荷重,載荷回数の繰返し終了後に静的載荷試験を実施した.
静的載荷試験の実施時期は,図-3.26に示した通りである.
計測項目は,載荷荷重,支間中央の橋軸方向ならびに橋軸直角方向の鉛直変位,2 方向なら びに接合部の PC 鋼材のひずみ,接合部の目開き,2 方向のリブ下面の表面ひずみとした.な お,試験体の鉛直変位は変位計,PC鋼材のひずみは表面ひずみゲージ,接合部の目開きはπゲ ージを用いて計測した.
試験体の計測機器を図-3.27に示す.橋軸方向に7点(DX1~7),橋軸直角方向に 4点(DY1
~4)の変位計を設けた.また,床版接合部には目開き 2点(CP1,2)および接合用PC鋼棒の ひずみ 4点(PC1~4)を計測した.
図-3.27 計測項目
91 (5) 試験結果と考察
ひび割れの進展
試験体のひび割れ状態は,以下の通りであった.
①載荷回数8万回(荷重176.4kNf終了時)に,橋軸直角方向のリブ2箇所でひび割れの発 生を目視で確認した.
②その後,輪荷重走行直下の橋軸方向および直角方向のリブでひび割れの進展した.特に,
変位計DX3の周辺およびDX2~DX3間の橋軸方向リブの損傷が顕著であった.
③載荷回数44.75万回(荷重372.8kN時)に,DX3が変位制限値(走行時15mmに設定)
に達したため載荷を停止した.
④試験体下面および走行軌道を撤去して試験体上面を観察したところ,押抜きせん断破壊 が生じていることを確認した.
載荷終了後の試験体上面,下面および切断面のひび割れ発生状況を図-3.28に示す.なお,
試験体下面のひび割れに対しては発生時期を記載したが,床版上面は載荷板下面付近であった こと,切断面は試験終了後の観察であることから発生の詳細時期は不明である.
試験体上面は左端から約850mmの位置を中心に,径700mm程度の範囲がわずかに陥没しひ び割れが生じていた.下面は左側の中間リブを中心に,複数本のリブを含めたスラブにひび割 れが生じていた.また,試験体を切断し断面内部の状況を確認した.床版厚40mmの部分に水 平に近いひび割れが複数観測された.
92
44 43 40 36 32 28 24 20 168
30
破壊時 載荷回数(万回)
CL
横梁-1 横梁-2 横梁-3 横梁-4 横梁-5 横梁-6 横梁-7
B
B
C
C
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 1'
2' 3' 4' 5' 6' 7' 8' 9' 10' 11' 12' 13' 14' 15' 16' 17' 18' 19' 20' 21'
A A
縦梁-I
縦梁-H
縦梁-G
縦梁-F
縦梁-E
縦梁-D
縦梁-C
縦梁-B
縦梁-A mlkjihfedcbaa'b'c'd'e'f'g'h'i'j'k'l'm'
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 1'
2' 3' 4' 5' 6' 7' 8' 9' 10' 11' 12' 13' 14' 15' 16' 17' 18' 19' 20' 21'
mlkjihgfedcbaa'b'c'd'e'f'g'h'i'j'k'l'm'
(切断面A-A)
CL
縦梁-I
縦梁-H
縦梁-G
縦梁-F
縦梁-E
縦梁-D
縦梁-C
縦梁-B
縦梁-A
B
B
C
C
A A
横梁-1 横梁-2 横梁-3 横梁-4 横梁-5 横梁-6 横梁-7
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 1'
2' 3' 4' 5' 6' 7' 8' 9' 10' 11' 12' 13' 14' 15' 16' 17' 18' 19' 20' 21'
CL CL mlkjihgfedcbaa'b'c'd'e'f'g'h'i'j'k'l'm'
CL
(切断面B-B) (切断面C-C)
mlkjihgfedcbaa'b'c'd'e'f'g'h'i'j'k'l'm'
(1)UFC床版 下面
(2)UFC床版 上面ならびに切断面
図-3.28 ひび割れ発生状況
93 鉛直変位の推移
走行回数2万回毎に静的載荷試験を実施した.床版中央断面の橋軸方向および橋軸直角方向 の変位分布について,8万回ごとの推移を図-3.29に示す.
橋軸方向の鉛直変位分布は走行回数 40万回まではほぼ左右対称に分布している.DX5の変 位がやや小さくなっているが,床版接合部であり一般部に比べ剛性が高いこと等による.また,
破壊に至った44.75万回時点では,試験体中央での載荷にもかかわらず,DX2の変位量が急激 に大きくなっており試験体中央のDX4の変位量とほぼ等しくなっている.この変位分布からも 左側の中間リブ(DX2付近)を中心とした破壊であることが分かる.なお,橋軸直角方向の変 位分布は最後まで対称形を保持していた.
(i) 橋軸直角方向の鉛直変位分布
(ⅱ) 橋軸方向の鉛直変位分布
図-3.29 鉛直変位分布図(静的載荷試験)
-2 0 2 4 6 8 10
0 1400 2800
変位(mm)
橋軸直角方向距離(mm)
8 16 24 32 40 44.75
(×万回)
DY1 DY2 DX4 DY3 DY4
DX7
-2 0 2 4 6 8 10
0 2150 4300
変位(mm)
橋軸方向距離(mm)
8 16 24 32 40 44.75
(×万回)
DX1 DX2 DX3 DX4 DX5 DX6 DX7
94 接合部の状況の推移
床版接合部の目開き量を図-3.30に,接合用のPC鋼棒ひずみの推移を図-3.31に示す.載 荷時の目開き量は,輪荷重の増大とともに若干の増加はあったが,破壊時(輪荷重 38tf)でも
0.02mm程度とわずかであった.また,除荷時には,ほぼ元に戻っていることがわかる.
接合用の PC 鋼棒のひずみは,全ての荷重段階の載荷ならびに除荷時において,大きな変化 は見られなかった.したがって,接合部付近では,若干のひび割れは生じたが,最後までプレ ストレスが効果的に作用しており,床版間接合としての機能は健全であった.
図-3.30 接合部目開き量
図-3.31 接合部PC鋼棒のひずみ
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
-0.04 0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.2
0 10 20 30 40 50
載荷荷重(kN)
目開き量(mm)
走行回数(万回) CP1_載荷時
CP1_除荷時 CP2_載荷時 CP2_除荷時 載荷荷重
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000
0 10 20 30 40 50
載荷荷重(kN)
接合用PC鋼棒ひずみ(μ)
走行回数(万回)
PC1_載荷時 PC1_除荷時 PC2_載荷時 PC2_除荷時 PC3_載荷時 PC3_除荷時 PC4_載荷時 PC4_除荷時 載荷荷重
95 床版のたわみ量の進展に対する考察
階段状漸増載荷により行われた平成 8年版道路橋示方書に準拠した RC床版(以下,RC8)
は,走行回数25.56万回,荷重274.7kN時に押抜きせん断により破壊に至ったことが報告され ている[16].
試験体の中央変位をRC8と併せて図-3.32に示す.試験体中央部分で初期静的載荷時(載荷
荷重157kN)における鉛直たわみ量は1.1mmであった.その後の漸増載荷に伴いたわみ量も増
加し,疲労劣化が進展していることが分かる.しかしながら,たわみ量の増加勾配がRC8より UFC床版の方が緩やかに推移しており,床版全体構造として,UFC床版の方がRC8より疲労 に対する劣化の進行状況が緩やかで,疲労抵抗性が高いものと推定できる.
図-3.32 RC床版との比較
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
-2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
載荷荷重(kN)
変位(mm)
走行回数(×万回)
RC8_載荷 RC8_除荷 UFC床版_載荷 UFC床版_除荷 載荷荷重
96 破壊に至る等価繰返し換算回数
破壊時の走行回数からUFC床版とRC8の耐疲労性を比較検討する.なお,基本輪荷重 98kN に換算した等価繰返し回数(Neq-ac)を次式により算出した[14].
Neq-ac=Σ(Pex-i/ Pac-o) m・Nex-i
ここに,
Pex-i :階段状漸増載荷での各載荷荷重(kN)
Nex-i :階段状漸増載荷での各載荷荷重で作用させた繰返し回数 Pac-o :基本輪荷重(kN) 〔=98〕
m :設計疲労曲線の傾きの逆数の絶対値
(RC 床版の実験結果[14]から 12.76 を使用)
表-3.16に上式により求めた輪荷重走行試験の走行回数と基本輪荷重に換算した等価繰返し 回数の関係を示す.この表から,RC8の等価繰返し回数は 202 億回,UFC 床版の等価繰返し 回数は 11,389 億回となり,疲労試験であることから試験のばらつきは想定されるものの,本 UFC 床版が RC8 に対し概ね 50~60 倍の耐疲労性を有すると判断できる.
表-3.16 走行回数と基本輪荷重による等価回数の関係 輪荷重走行試験 基本輪荷重98(kN)による
等価繰返し回数(億回) 載荷荷重
(kN)
走行回数(万回)
各荷重 累計 各荷重 累計
156.96 4 4 0.16 0.2
176.58 4 8 0.73 0.9
196.2 4 12 2.81 3.7
215.82 4 16 9.48 13.2
235.44 4 20 28.79 42
255.06 4 24 79.94 122
↓ ↓
RC8 274.68 1.56 25.56 80.26 202
↓ ↓
274.68 4 30 205.80 408
294.3 4 34 496.34 904
313.92 4 38 1,130.90 2,035
333.54 4 42 2,451.22 4,486
353.16 4 46 5,083.14 9,570
↓ ↓
UFC床版 372.78 0.75 44.75 1,899.99 11,389
↓ ↓
372.78 4 48 10,133.29 19,623
392.4 4 52 19,498.32 39,121