(1) 新しい鉄筋継手の基本的な考え方
新しい継手構造は,“現場での接合作業が簡単で手間が掛からない,かつ,安定した品質を 確保できる”ことを目標とした.そこで,新継手の構造および施工手順を次のように考えた.
まず,プレキャスト部材の製作段階で,施工時に接合部の両側に配置されるプレキャスト部 材の両妻面から鉄筋を突出させておき,かつ,それらの鉄筋先端に,部材据付時にお互いが嵌 合(かん合)可能な特殊な先端治具を結合しておく.なお,これらの先端冶具は,プレキャス ト床版の製作に起因する製作誤差および現場据付時の施工誤差等を想定し,所定のクリアラン スを有した状態で適切に嵌合できる構造としている.
次に,製作したプレキャスト床版を現場搬入後,所定の位置に,先端治具を嵌合させた状態 で据え付ける.さらに,先端治具の周囲との接合部(間詰部)全体を高性能な間詰め材を使用 して一括で打込み,養生するのみで,鉄筋継手の完了と同時に床版間の接合作業を完了する.
なお,新鉄筋継手は,嵌合時の先端治具同士のクリアランスが小さいため,間詰め材はコン クリートではなく,無収縮モルタルを適用するものとし,補強繊維の混入を基本とした.しか しながら,そのような狭隘な先端治具間のクリアランスであっても,間詰め材の繊維補強モル タルの練り混ぜや打込み自体に特殊技能を必要とせずに安定した品質とできること,現場での 打込み時の充填に関しても上面からの目視確認がしやすいこと等により継手構造に安定した品 質を提供することができると考えられる.
このような考え方に基づいて,2 タイプの新鉄筋継手を考案し性能評価を進めた.これらの 2種類を継手構造Aおよび継手構造Bとして以降に記載した.
104 (2) 提案する継手構造
1) プレート-プレート 嵌合タイプ(継手構造 A)
継手構造 Aの構造概要を図-4.1に示す.先端冶具は,最もシンプルな形状のプレート部材
(以下,P型治具と記載)を採用する継手とした.P型治具という板部材を介して鉄筋を接合す るため,対向する鉄筋同士は同一直線状で配置できないため,対向する鉄筋同士は偏心した配 置となる.そのため,P型治具の対向する鉄筋が通過する部分は,図-4.1のように切り欠きを 設けた.
図-4.1 継手構造Aの冶具概要
なお,本構造では, 図-4.2のように,プレキャスト部材を左右に移動することによりお互 いの先端治具を嵌合させられる構造とした.
図-4.2 継手構造Aにおける嵌合方法
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2) プレート-抱込み鋼材 嵌合タイプ(継手構造 B)
継手構造Bの構造概要を図-4.3に示す.継手構造Bは,片方の鉄筋先端に取付けた矩形プ レート(以下,T型治具と記載)と,他方の鉄筋に取付けた,T型冶具を包み込むような形状の 冶具(以下,C型冶具と記載)を採用した継手とした.本構造は,これらの2種類の先端冶具 自体が嵌合する形状となっており,各々の冶具に接合される(対向する)鉄筋同士は偏心配置 ではなく,一直線上に配置される.
図-4.3 継手構造Bの冶具概要
なお,本構造では, 図-4.4のように,プレキャスト部材の上下への移動によりお互いの治 具を嵌合させることができる.
図-4.4 継手構造Bにおける嵌合方法
106 (3) 要求性能と評価事項
新継手を道路橋床版の床版間接合に採用するため構成要素である間詰め材や先端治具の仕様 選定,継手単体や版部材等への適用に向けた構造性能を評価するための要素実験を行った.各 部位への要求性能と評価事項の概要を 表-4.1に示す.
表-4.1 各要素実験による性能評価事項 構成要素
部位 要求性能 要素実験
の名称 評価事項の概要 備考
■継手単体の基本性能の評価 4.3
に記載
間詰め材
・流動性がよい
・高強度,高靭 性
・無収縮である
・耐久性が高い
間詰め材 選定試験
新鉄筋継手において,先端治具同士 の嵌合時のクリアランスが小さいこ と,継手構造の構成部材の一部であ ることから,フレッシュ性状ならび に発現強度を基に補強繊維の仕様選 定する.
4.3.1 に記載
継手単体
・間詰め材
・先端治具
・引張力に対し て十分な伝達 性能を有する
継手単体の 引張試験
床版間接合への採用を目指した鉄筋 継手を考えているため,引張力の伝 達性能が必要である.鉄筋の規格引 張強度以上の引張耐力を有するよう に,先端治具の仕様と間詰め材の仕 様の組合せを選定する.
4.3.2 に記載
■床版接合部としての静的耐力の評価 4.4
に記載
版部材
・一般部と同程度 以上の曲げ耐力 を有する
・目地部での目開 きが小さい
床版接合部 曲げ試験
道路橋床版は,鋼桁に支持された版 部材であり,輪荷重等による曲げモ ーメントの作用が支配的な部材であ る.そこで,版部材の接合部への適 用性を確認するため,静的曲げ載荷 試験により曲げ耐力や目地部での目 開きを評価した.
4.4.1 に記載
・一般部と同程度 以上のせん断耐 力を有する
・目地部での段差 が小さい
床版接合部 せん断試験
輪荷重による作用せん断力に対して 十分なせん断耐荷力を有することを 静的せん断載荷試験によりせん断耐 力と目地部でのずれ量(段差)を評 価した.
4.4.2 に記載
■道路橋床版としての耐疲労性の評価
版部材
(道路橋床版)
・道路橋床版とし ての耐疲労性を 有すること
輪荷重走行 試験
道路橋床版は,輪荷重の繰返し作用 や輪荷重の移動による疲労劣化が顕 著に現れる部材である.そのため,
輪荷重走行試験機を用いて,新継手 の耐疲労性の評価を行った.
付属 資料 に記載
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