第 4 章 一括最適化制御の展開と応用
4.4 車両感知器の低減
4.4.1 序 言
交 通 管 制 シ ス テ ム は ,車 両 感 知 器 の 情 報 を 通 じ て 交 通 状 況 を 把 握 し ,そ の 状 況 に 応 じ て 情 報 提 供 や 信 号 制 御 を 実 施 す る も の で あ り ,車 両 感 知 器 で 計 測 さ れ る 情 報 は 交 通 管 理 機 能 の 全 て の 基 礎 と な っ て い る[1].特 に ,主 要 機 能 の 一 つ で あ る 信 号 制 御 は ,交 差 点 流 入 部 等 に 設 置 さ れ た 車 両 感 知 器 か ら 交 通 需 要 を 把 握 す る こ と で ,適 切 な 信 号 制 御 パ ラ メ ー タ を 算 出 し て い る .信 号 制 御 方 式 は ,交 通 管 制 シ ス テ ム の 発 展 と と も に 高 度 化 さ れ て お り ,そ れ に 伴 っ て 必 要 と な る 入 力 情 報 が 空 間 的 か つ 時 間 的 に 高 分 解 能 な も の と な る 傾 向 が あ る .こ れ は ,対 象 と な る 交 差 点 ネ ッ ト ワ ー ク に お い て 車 両 感 知 器 の 設 置 密 度 が 高 く な る こ と を 意 味 す る .現 在 ,厳 し い 予 算 状 況 に あ る た め ,潤 沢 な 車 両 感 知 器 の 整 備 は 難 し い だ け で な く ,こ れ ま で 整 備 さ れ た 膨 大 な 車 両 感 知 器 の 運 用 維 持 と い う 課 題 も 深 刻 と な り つ つ あ る .こ の よ う な 情 勢 の も と ,少 な い 車 両 感 知 器 で も 現 行 と 同 等 か そ れ 以 上 の 効 果 を 発 揮 で き る 信 号 制 御 方 式 の 実 現 が 求 め ら れ て い る .
こ こ で は ,こ の よ う な 背 景 の も と ,運 用 実 績 の あ る 複 数 の 信 号 制 御 方 式 お よ び 一 括 最 適 化 制 御 に 対 し て ,そ の 特 性 か ら 効 果 的 な 運 用 に 最 低 限 必 要 な 車 両 感 知 器 の 配 置 基 準 を 策 定 す る .こ の 配 置 基 準 を も と に 仮 想 的 な 信 号 交 差 点 ネ ッ ト ワ ー ク に 対 し て ,基 準 に 則 っ た 車 両 感 知 器 数 を 導 出 し ,方 式 間 で の 比 較 を 通 じ て 一 括 最 適 化 制 御 の 適 時 性 を 示 す .さ ら に ,実 際 の 信 号 交 差 点 ネ ッ ト ワ ー ク に 対 し て ,そ れ ぞ れ の 方 式 に つ い て 必 要 最 低 限 の 車 両 感 知 器 で 適 用 し た 場 合 を 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に て 評 価 す る .シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 よ り 車 両 感 知 器 整 備 低 減 と 実 現 で き る 制 御 レ ベ ル の 両 面 で の 一 括 最 適 化 制 御 の 有 効 性 に つ い て 明 ら か に す る[51], [52].
4.4.2 必 要 な 車 両 感 知 器 数
第 2 章 で 示 し た 一 般 的 な 信 号 制 御 方 式 お よ び 一 括 最 適 化 制 御 に つ い て ,制 御 方 式 の 特 性 か ら 効 果 的 な 運 用 が で き る 最 低 限 必 要 な 車 両 感 知 器 の 配 置 基 準 を 規 定 す る .さ ら に , 図 4.33に 示 す よ う な 仮 想 的 な 信 号 交 差 点 ネ ッ ト ワ ー ク に 対 し て 車 両 感 知 器 を 配 置 し ,必 要 な 車 両 感 知 器 整 備 数 と い う 観 点 で 方 式 間 の 比 較 評 価 を 行 う .な お ,交 差 点 間 リ ン ク 長 を 400m ,左 右 方 向 を 幹 線 と し , サ ブ エ リ ア の サ イ ク ル 長 , ス プ リ ッ ト を 決 定 す る 重 要 交 差 点 を 1箇 所 ず つ 設 定 し た .
図 4.33 車 両 感 知 器 数 評 価 用 ネ ッ ト ワ ー ク サブエリア 重要交差点
(1) パ タ ー ン 制 御 方 式
パ タ ー ン 制 御 方 式 は ,重 要 交 差 点 に お け る 全 流 入 路 の 交 通 状 況 ,お よ び 幹 線 の 上 り 下 り と い っ た 系 統 状 況 を 車 両 感 知 器 で 把 握 す る こ と で 制 御 パ ラ メ ー タ を 選 択 す る[58]. こ の 特 長 か ら , 感 知 器 配 置 基 準 を 表 4.3に 規 定 し た .
表 4.3 パ タ ー ン 制 御 方 式 の 車 両 感 知 器 配 置 基 準
用 途 基 準
サ イ ク ル ・ ス プ リ ッ ト 選 択 重 要 交 差 点 流 入 路 そ れ ぞ れ に 停 止 線 よ り 150m上 流 に 設 置
オ フ セ ッ ト 選 択 重 要 交 差 点 の 幹 線 側 下 流 部 に 設 置
こ の 基 準 を 図 4.33の ネ ッ ト ワ ー ク に 適 用 す る と 図 4.34に 示 す よ う な 配 置 と な り ,16基 の 感 知 器 が 必 要 で あ る こ と が わ か る .
図 4.34 パ タ ー ン 制 御 方 式 に お け る 車 両 感 知 器 配 置
(2) MODERATO制 御
MODERATO 制 御 で は 車 両 感 知 器 で 計 測 さ れ た 交 通 量 だ け で な く 占 有 率 等 か ら 待 ち 行 列 台
数 を 推 計 し て 交 通 需 要 を 把 握 す る こ と が 必 要 と な る[58]. こ の よ う な 観 点 か ら ,MODERATO 制 御 に お け る 感 知 器 配 置 基 準 を 表 4.4に 規 定 し た .
表 4.4 MODERATO制 御 の 車 両 感 知 器 配 置 基 準
用 途 基 準
サ イ ク ル ・ ス プ リ ッ ト 算 出
重 要 交 差 点 流 入 路 の 幹 線 側 に 停 止 線 よ り 150mお よ び 300m上 流 , 交 差 側 で は 停 止 線 よ り150m 上 流 に 設 置
ま た , 重 要 交 差 点 の 全 流 出 部 直 近 に も 配 置 オ フ セ ッ ト 選 択 重 要 交 差 点 の 幹 線 側 下 流 部 に 設 置
車両感知器
図 4.35 MODERATO制 御 に お け る 車 両 感 知 器 配 置
図 4.33 の ネ ッ ト ワ ー ク に 対 し て , こ の 基 準 を 適 用 す る と , 図 4.35 に 示 す よ う に 24 基 が 必 要 で あ る こ と が 分 か る .
(3) 一 括 最 適 化 制 御
本 方 式 は ,内 包 さ れ た 交 通 流 モ デ ル に よ り 遅 れ 時 間 や 停 止 回 数 を 推 計 す る こ と で 制 御 パ ラ メ ー タ を 最 適 化 し て い る .推 計 処 理 の 実 行 に は 制 御 対 象 ネ ッ ト ワ ー ク に 流 入 す る 交 通 需 要 を 正 確 に 把 握 す る 必 要 が あ る が ,ネ ッ ト ワ ー ク 内 部 に お け る 交 通 状 況 は 不 要 で あ る .こ の よ う な 性 質 か ら , 表 4.5に 示 す よ う な 配 置 基 準 を 規 定 し た .
表 4.5 一 括 最 適 化 制 御 の 車 両 感 知 器 配 置 基 準
用 途 基 準
交 通 需 要 計 測
対 象 ネ ッ ト ワ ー ク へ の 流 入 リ ン ク の 停 止 線 よ り 上 流 300mに 設 置
こ の 基 準 を 図 4.33 の ネ ッ ト ワ ー ク に 適 用 す る と , 図 4.36に 示 す よ う に 12 基 の 車 両 感 知 器 で 制 御 可 能 で あ る こ と が わ か る .
図 4.36 一 括 最 適 化 制 御 に お け る 車 両 感 知 器 配 置
(4) 制 御 方 式 間 の 比 較
仮 想 的 な 信 号 交 差 点 ネ ッ ト ワ ー ク に 対 し 方 式 ご と に 策 定 し た 配 置 基 準 を 適 用 す る こ と で ,必 要 な 感 知 器 数 を 導 出 し た .一 括 最 適 化 制 御 ,プ ロ グ ラ ム 選 択 方 式 ,MODERATO制 御 の 順 で 車
両 感 知 器 整 備 数 が 少 な く て 済 む こ と が 分 か っ た .一 括 最 適 化 制 御 は ,交 通 流 モ デ ル に よ り ネ ッ ト ワ ー ク 全 体 の 交 通 状 況 推 計 を 行 っ て い る .こ の 特 長 か ら 車 両 感 知 器 を ネ ッ ト ワ ー ク 内 部 に 設 置 す る 必 要 が な い た め , こ の よ う な 結 果 と な っ た と 考 え ら れ る .
4.4.3 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 実 験
実 際 の 信 号 交 差 点 ネ ッ ト ワ ー ク か ら 前 章 の 評 価 で 用 い た ネ ッ ト ワ ー ク に 近 い 構 成 の も の を 取 り 上 げ る . 図 4.37 に , 本 実 験 で 取 り 上 げ た 路 線 を 示 す . 神 奈 川 県 横 浜 市 港 北 ニ ュ ー タ ウ ン 地 域 の 路 線 で ,24 の 信 号 交 差 点 で 構 成 さ れ て い る . こ の ネ ッ ト ワ ー ク に 対 し て , 前 述 し た 制 御 方 式 ご と の 配 置 基 準 に 準 じ た 車 両 感 知 器 を 用 い て 制 御 し た 場 合 を 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に て 評 価 す る .
図 4.37 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 対 象 ネ ッ ト ワ ー ク
表 4.6は ,こ の 地 域 を 制 御 対 象 と し た 場 合 の 制 御 方 式 ご と に 必 要 な 車 両 感 知 器 数 を 示 し た も の で あ る .
表 4.6 必 要 な 感 知 器 数 制 御 方 式 車 両 感 知 器 数
プ ロ グ ラ ム 選 択 42
MODERATO制 御 75
一 括 最 適 化 制 御 24
(1) 交 通 状 況 再 現
平 日 の7:00か ら12時 間 の 交 通 状 況 を 調 査 し ,そ の 結 果 を 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン(AVENUE モ デ ル )に 入 力 し た[59].図 4.38に 示 す 地 点 に お い て 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン か ら 出 力 さ れ る 交 通 量 と フ ィ ー ル ド に て 計 測 さ れ た 交 通 量 を 比 較 し , 再 現 性 の 確 認 を 行 っ た .
図 4.38 再 現 性 検 証 地 点
図 4.39お よ び 図 4.40 が , そ の 比 較 結 果 で あ る が , 全 体 と し て 相 関 係 数 0.97お よ び 平 均 自 乗 誤 差 率 8.2%と い う 結 果 と な り , 制 御 実 験 を 行 う 上 で の 充 分 な 再 現 性 を 確 保 で き た と 考 え る .
図 4.39 再 現 性 検 証 結 果(1)
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p c u / h ]
計測 sim
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p c u / h ]
計測 sim
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p c u / h ]
計測 sim
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p cu / h ]
計測
sim
地 点 ① 地 点 ②地 点 ③
地 点 ④
②
③
④ ⑤
⑥
①
⑦
⑧
図 4.40再 現 性 検 証 結 果(2)
(2) 信 号 制 御 実 験
信 号 制 御 方 式 の 効 果 を 検 証 す る 際 ,制 御 パ ラ メ ー タ が 交 通 流 動 を 形 成 し ,そ の 交 通 流 動 が 制 御 パ ラ メ ー タ の 入 力 と な る 車 両 感 知 器 情 報 を 形 成 す る と い う フ ィ ー ド バ ッ ク ル ー プ を 実 現 す る こ と が 肝 要 で あ る .本 実 験 で 使 用 し た 交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン は ,実 際 の 車 両 感 知 器 や 信 号 制 御 機 の 動 作 を シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 内 部 で 再 現 す る こ と が 可 能 で あ り ,具 備 さ れ た 交 通 管 制 シ ス テ ム と の 接 続 イ ン タ ー フ ェ イ ス を 用 い る こ と で , 図 4.41 に 示 す 信 号 制 御 実 験 シ ス テ ム を 構 築 し た .
図 4.41 信 号 制 御 実 験 シ ス テ ム 交通流シミュレーション
交通管制システム 制御方式1 制御方式1 制御方式1
信号 交差点 感知器
感知器 情報
制御 パラメータ
交通流シミュレーション 交通管制システム
制御方式1 制御方式1 制御方式1制御方式1制御方式1 制御方式1
信号 交差点 感知器
信号 交差点
信号 交差点 感知器
感知器 感知器
情報
制御 パラメータ
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p c u /h ]
計測 sim
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p c u/ h ]
計測 sim
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p c u / h ]
計測 sim
0 500 1000 1500 2000
7:00 10:00 13:00 16:00
交 通 量 [p c u / h] 計測
sim
地 点 ⑤ 地 点 ⑥
地 点 ⑦ 地 点 ⑧
こ れ に よ り ,交 通 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 仮 想 社 会 と み な す こ と で 各 制 御 方 式 の フ ィ ー ル ド 適 用 時 の 制 御 効 果 が 比 較 評 価 可 能 と な る .な お ,い ず れ の 制 御 方 式 で も 制 御 パ ラ メ ー タ 更 新 の 周 期 は 5 分 と し た .
(3) 実 験 結 果
対 象 ネ ッ ト ワ ー ク 全 体 で の 遅 れ 時 間 ,停 止 回 数 ,CO2排 出 量 を 制 御 方 式 間 で 比 較 し た 結 果 を 図 4.42と 図 4.43に 示 す .
図 4.42 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果(1)
プ ロ グ ラ ム 選 択 方 式 と 比 較 し て ,MODERATO制 御 は 遅 れ 時 間 ,停 止 回 数 ,CO2排 出 量 の 低 減 効 果 は そ れ ぞ れ 13.8%,10.8%,4.4% で あ っ た .一 括 最 適 化 制 御 に 関 し て は ,同 じ 項 目 に 対 し て ,20.4%,13.7%,6.3% と い う 効 果 が 得 ら れ た .
図 4.43 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果(2)
一 括 最 適 化 制 御 は 必 要 な 車 両 感 知 器 数 が 最 も 少 な い に も 関 わ ら ず ,制 御 効 果 で は 最 も 効 率 的 で あ る こ と が 分 か る .こ れ は ,一 括 最 適 化 制 御 は 対 象 ネ ッ ト ワ ー ク へ 到 着 す る 交 通 需 要 さ え 把 握 で き れ ば 適 用 可 能 で あ る こ と ,お よ び ,制 御 パ ラ メ ー タ 決 定 に 際 し て サ イ ク ル 長 ,ス プ リ ッ ト , オ フ セ ッ ト 等 を 同 時 に 考 慮 し て 全 体 最 適 を 図 っ て い る こ と が 要 因 で あ る と 考 え ら れ る .
4.4.4 む す び
交 通 管 制 シ ス テ ム で 運 用 さ れ る 信 号 制 御 方 式 お よ び 一 括 最 適 化 制 御 そ れ ぞ れ に 対 し て ,車 両 感 知 器 配 置 基 準 を 規 定 す る こ と で 仮 想 的 な ネ ッ ト ワ ー ク に お け る 感 知 器 整 備 数 を 比 較 し た .さ
0 1000 2000 3000
プログラム選択 MODERATO 一括最適
遅れ時間[pcu・h]
0 100 200 300 400
プログラム選択 MODERATO 一括最適
停止回数[1000回]
20 30 40 50
プログラム選択 MODERATO 一括最適
CO2排出量[ton]