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超音速縦渦の構造

第 4 章 超音速縦渦による混合過程

4.2 超音速縦渦の構造

(c)では上から噴射なし,空気噴射,ヘリウム噴射の場合をそれぞれ示している.また,撮 影は上流側・下流側に分けて行い,図はこれらをつなぎ合わせて示している.ヘリウムは 空気に比べて密度が小さいため,ナイフエッジをどちらに設定した場合でも,他のケース に比べて明暗が鮮明になっている.ナイフエッジを水平に設置した場合には,下壁側から 高さ方向に明・暗・明のパターンが観察できる.境界層では密度は主流に向かって大きく なるため,下壁近傍の明るい領域は境界層を示す.渦は中心で密度が最小であり,外側に 向かって密度が増加する.そのため,境界層の上に位置する暗・明のパターンは縦渦が導 入されていることを示している.縦渦の導入に伴う変動は縦渦導入デバイス後縁からy方向 に広がり,x = 100 mm付近で流路高さの約3/4まで変動が導入され,x = 180 mm付近では高 さ方向のほぼ全域に変動が導入されていることがわかる.一方,噴射の条件による高さ方 向への成長にはほとんど差が無いことから,今回の条件では噴射は縦渦の高さ方向への発 達にあまり影響を及ぼさないと判断できる.

4.3x = 25mm,4.4x = 50 mm,4.5x = 100 mmにおけるyz断面のステレオ PIV計測結果である.図中の(a)は瞬間速度分布300枚から算出した平均速度分布で,図中の ベクトルはyz断面内速度,背景色はx方向速度を表す.(b)は(a)に示した平均速度場の断面 内速度から,斜め方向を考慮したx方向の渦度xを2次中心差分式34)

      

z

v v

v v v

v

y

w w

w w w

w z v y w

j i j i j i j i j i j i

j i j i j i j i j

i j i x

8 ) (

2 8

) (

2

1 , 1 1 , 1 , 1 , 1 1 , 1 1 , 1

1 , 1 1 , 1 1 , 1 , 1 , 1 1 , 1

 

 



 

(4.1)

により算出した平均渦度分布である.ここで,yおよびzは各方向の速度算出格子点間隔 である.渦度は時計回りを正とした.図(a),(b)には噴射なし,空気噴射,ヘリウム噴射の 場合をそれぞれ示している.なお,流れ場はy軸に対称であるため,図には0 mm ≤ z ≤ 6 mm の速度分布のみを示している.対称性を考慮すると図4.3 ~ 4.5より,互いに逆方向に回転 する一対の縦渦対が導入されていることがわかる.また,瞬間シュリーレン画像の結果と 同様に,縦渦の高さ方向への広がりは噴射の条件によってほとんど変化しない.

4.2.2 縦渦を取り巻く渦輪状構造

4.2(b)に示したナイフエッジを垂直に設定したシュリーレン画像では,流れ方向に規則

的な明暗の縞が確認できる.渦は渦中心の密度が低く,縦渦自身も密度勾配を有するが,

布に相当)には縦渦そのものはシュリーレン法では観察できないはずである.そのため,

この規則的な明暗の縞は流れ方向に周期的な密度勾配を有する縦渦以外の流体構造を示し ている.

4.6は主流に平均粒子径1 mのトレーサ粒子を導入し,y = 4 mmxz断面をレーザシ ートにより可視化した画像で,図中の(a)は噴射なし,(b)は空気噴射の場合である.なお,

噴射の影響を見やすくするために空気噴射の運動量流束比は 2.9としている.図4.6 より,

空気噴射では見えにくいが,縦渦対の両側にほぼ同じ位相・周期で発生する凹凸の構造が 観察される.この凹凸の構造の波長と図4.2(b)の周期的な明暗の縞の波長はほぼ同程度であ り,同一の構造を捉えたものであると考えられる.流れ方向に周期的な密度勾配を持ち,

縦渦対の周囲に同じ位相で発生することから,この凹凸の構造は縦渦対を取り巻くように 形成された渦輪状の横渦構造であると考えられる.図4.2 ~ 4.5xz断面速度分布から,縦 渦導入デバイス後流には低速の領域が形成されており,この渦輪状構造は主流と低速領域 との剪断により生成されたものと考えられる.

4.7は瞬間シュリーレン画像(平均密度勾配と密度勾配変動の和)から,400枚の瞬間 シュリーレン画像より算出した平均画像(平均密度勾配のみ)を減算することで密度勾配 の変動成分のみを抽出したものである.図4.7より,渦輪状構造がより鮮明になっているこ とがわかる.このような画像で,ある高さにおける輝度の流れ方向の分布にFFT を施せば 波長に対するスペクトル分布が得られる.そこで,x = 25 mm ~ 75 mmおよび 105 mm ~ 180 mm (5 mm刻み), y = 1 mm ~ 20 mm (1 mm刻み)で,各点を中心とした256 pixelの輝度の流れ 方向分布にFFT を施し,渦輪状構造の波長の流れ方向変化を調べた.その一例として,図 4.8x = 50 mm, y = 2 mm ~ 12 mm (2 mm刻み)の解析結果を示す.図4.8より渦輪状構造の

存在するy ≤ 10 mmでパワースペクトルが特に大きな波長があり,シュリーレン画像で捉え

た渦輪状構造の波長とほぼ一致する.図 4.9はこのパワースペクトルが最大となる波長を 流れ方向にプロットしたものであり,渦輪状構造の波長の流れ方向変化を表す.空間分解

能が約0.1 mm/pixelの画像で256 pixelの輝度の流れ方向分布にFFTを施しているため,ス

ペクトル解析が可能な波長は25.6/n mm (n = 1, 2, 3, …, 128)となる.そのため,図4.9はこ のパワースペクトルが最大となる波長は飛び飛びの値を持っているが,実際は滑らかに変 化すると考えられる.また,図4.10はこの渦輪状構造の波長でパワースペクトルが最大と なる高さymaxの流れ方向変化を表す.図4.9より渦輪状構造は流下に伴って拡大し,図4.10 よりパワースペクトルが最大となる高さymaxも変動領域の拡大に伴ってy方向に移動してい くことがわかる.空気噴射とヘリウム噴射では,空気噴射の方が若干波長の短い構造にな っているが,x = 140 mmより下流ではヘリウム噴射の場合には波長の増加が小さくなり,

空気噴射の場合の方が波長が大きくなっている.一方,噴射の有無で比較すると,噴射な しの場合には波長が大きいが,パワースペクトルが最大となる高さは低い.図 4.11はパワ ースペクトルが最大となる高さymaxに渦輪状構造の波長の1/2を加えたもので,これによ り噴射の有無によらずほぼ同じ値をとり,その高さはシュリーレン画像で変動領域が存在

する上限の高さにほぼ一致する.そのため,渦輪状構造の中心はパワースペクトルが最大 値をとる高さ ymaxで,すなわち図4.10 は渦輪状構造の中心高さの流れ方向推移であるとい える.シュリーレン法で観察される密度勾配はスパン方向に積分されたものであるため,

渦輪状構造の頭頂部は積分される長さが大きく,鮮明に観察される.そのためx = 50 mmで は頭頂部のy = 8 mm付近で輝度の変動実効値が大きく,図4.8でもパワースペクトルが大 きくなったと考えられる.また,図4.6(b)の空気噴射の場合には凹凸の構造が見えにくいこ と,図4.8で空気噴射の場合にはパワースペクトルが小さいことから,噴射がある場合には,

渦輪状構造は噴射なしに比べて弱くなると考えられる.

4.2.3 縦渦の形成と成長過程

4.3 ~ 4.5に示すステレオPIV計測結果より,噴射の有無でx = 25 mmや50 mmにおけ る縦渦のスパン方向の広がりや断面形状に顕著な違いが見られる.すなわち,x = 25 mmで は,噴射なしの場合には縦渦の断面はy = 2.5 mm, z =1.5 mmを中心とする円形であるのに対 し,噴射ありの場合にはy = 2.5 mm, z = 2.5 mmを中心とする楕円形である.このように噴 射によって楕円形の縦渦がスパン方向に離れて形成される.一方,x = 50 mmでは噴射の有 無によらずほぼ円形の縦渦が形成されており,縦渦中心のスパン方向のズレも小さくなっ ている.このことから噴射と縦渦の干渉は縦渦の形成段階に影響を及ぼすが,その影響は 流下に伴って小さくなるといえる.

4.12 はオイルフロー法により下壁の流れを可視化したもので,図中の(a)は通風前の状 態,(b)は噴射なし,(c)は空気噴射,(d)はヘリウム噴射の場合である.ただし,噴射の影響 を見やすくするために空気・ヘリウム噴射の運動量流束比は2.9としている.噴射なしの場 合には縦渦デバイス後縁直後から圧縮ランプ背後に回り込む流れが確認される.これによ り縦渦が形成され,縦渦の旋回により中央へオイルが引きずられ,面描に見られる流れ方 向に伸びる二本の線(線状に溜まっているオイル)が形成される.しかし,噴射がある場 合には,膨張ランプを下ってきた流れは圧縮ランプ背面直後では回り込めず,x = 10 mm以 降でスパン中央へと回り込む流れが確認できる.これは噴流が不足膨張により圧縮ランプ 後縁で広がったため,膨張ランプを下ってきた流れがすぐには回り込めなかったものと考 えられる.そして,z = 0 mmを挟んだ両側の流れがスパン中央で出会うことで衝撃波が発 生している.衝撃波が境界層にあたると境界層は剥離し,オイルが溜まる.そのため,図

4.12(b), (c)でx = 20 mmスパン中央から斜め側方に伸びる線状のオイルの溜まっている領域

は衝撃波の入射を表す.その後は噴射なしと同様な二本の流れ方向に伸びる線が形成され ているが,噴射なしの場合と比較すると二本の線の間隔が広がっている.これは上述した

は,噴射した場合に見られる特徴的な衝撃波により流れが偏向したためであると考えられ る.

4.2.4 縦渦の崩壊過程

縦渦の循環を図4.3 ~ 4.5中の(c)に示した平均渦度分布の面積分

dA

Γ

x (4.2)

により評価した.図4.13 に縦渦の循環の流れ方向変化を示す.噴射により縦渦の循環が大 きくなっていることがわかる.これは図4.1のように縦渦の吹き上げ領域にあたる圧縮ラン プ背面から空気およびヘリウムを斜めに噴射することで,縦渦の旋回速度が増加したため と考えられる.また,図 4.13から循環の計測値は流下に伴って減少している.縦渦が速度 算出格子点間隔よりも小さい渦に崩壊すれば渦度が小さく評価されるため,計測される縦 渦の循環値は小さく見積もられる.すなわち,循環の計測値の減少は縦渦崩壊の指標とす ることができる.図4.13より噴射の有無で比較すると,噴射なしの方が循環の減少が早く,

x = 100 mmでは循環値はほとんど0である.すなわち,噴射なしの場合にはx = 100 mm

は縦渦は小スケールの渦へと崩壊していると考えられる.一方,噴射ありの場合は噴射に よる循環の増加もあり,x = 100 mmでも大きな循環を持った縦渦が存在している.

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