• 検索結果がありません。

流れの可視化

第 5 章 超音速縦渦による混合領域の拡大と 縦渦の崩壊

5.2 流れの可視化

5.1に示した各パラメータを変化させ,シュリーレン法により流れ場を可視化した.実 験結果を図5.2 ~ 5.21に示す.図中の(a)はナイフエッジを水平(下側遮蔽,∂/∂y分布に相

当)に,(b)は垂直(上流側遮蔽,∂/∂x分布に相当)に設置しており,(c)は(b)のような瞬間

シュリーレン画像400枚から算出した輝度の変動実効値分布である.なお,撮影は上流側,

下流側に分けて行い,各図はこれらをつなぎ合わせて示している.

どの条件でも,ナイフエッジを水平に設置した場合には,下壁側から高さ方向に明・暗・

明のパターンが見られる.これは4.2.1節で示したように下壁境界層を示す明るい輝度分布,

縦渦下側を示す暗い輝度分布,さらに縦渦上側を示す明るい輝度分布を表す.また,ナイ フエッジを垂直に設定した場合には4.2.2節と同様に流れ方向に明暗の縞が見られ,縦渦を 取り巻く渦輪状構造が形成されている.このように第 4 章で示した流れ場と同様に縦渦導 入デバイス後縁から縦渦が導入され,縦渦を取り巻くように渦輪状構造が形成されている ことがわかる.

ところで,各条件で縦渦の導入に伴う変動領域の高さ方向への拡大が異なることがわか る.例えば図5.2では,x = 150 mmにおいて変動領域はy = 12 mm程度までしか拡大してい ないが,図5.10では,x = 150 mmにおいて変動領域はy = 16 mm程度まで拡大している.

変動領域が広いことは,それだけ多くの主流流体が混合場に取り込まれていることを意味 しており,混合促進の点で非常に重要である.さらに,図5.2 ~ 5.21中の(c)に示したナイフ エッジを垂直に設定した場合の輝度の変動実効値分布から,条件が異なると変動実効値が

は明暗が鮮明になるため,当然変動実効値も大きくなる.しかし,ランプ角や主流マッハ 数などによっても変動実効値が大きく異なっていることがわかる.ナイフエッジを垂直に 設定したシュリーレン画像は流れ方向の密度勾配分布であるため,渦輪状構造が顕著に撮 影される.そのため,変動実効値から渦輪状構造の強弱を判断することができるといえる.

4.3節の混合評価結果より,噴射したヘリウムは縦渦や渦輪状構造に取り込まれ,混合が進 んでいくことを示した.そのため,渦輪状構造も主流流体を混合領域に取り込む役目を持 ち,混合促進の点で重要である.そこで,以下では各実験条件における縦渦導入による変 動領域の高さ方向の拡大と,渦輪状構造の強弱(輝度の変動実効値の大小)に注目する.

5.2.1 変動領域の高さ方向の拡大

5.2 ~ 5.21中の(c)の図で示すように,主流と変動領域の境界で変動実効値が大きくなっ

ている.これは 4.2.2 節で示したように縦渦を取り巻く渦輪状構造の頭頂部を示している.

5.22は図5.10(c)に示す噴射なしの条件における変動実効値が最大となる高さymaxx

向にプロットしたもので,ymaxは流れ方向に線形的に増加することがわかる.そこで,最小 二乗法で求めた直線の傾きを変動領域の拡大率(Expansion ratio)と定義した.なお,衝撃 波の入射による流れの偏向の影響を避けるため,拡大率の算出に使用したxの範囲は膨張ラ ンプ後縁で発生する衝撃波が上壁で反射し,再度変動領域に入射するまでの間とした.図

5.23は全実験条件における変動領域の拡大率をまとめたもので,(a)はM = 1.85, 粗度なし,

(b)はM = 1.85, 粗度あり(#180サンドペーパー), (c)はM = 2.4, 粗度なし, (d)はM = 2.4, 粗度ありの場合で,それぞれ横軸をランプ角,縦軸を拡大率で整理した.

ランプ角による拡大率の変化に注目すると,噴射や主流マッハ数,粗度の有無によらず,

 = 7°から拡大率はランプ角の増加により大きくなり,10° ~ 14°で拡大率は最大となり,さ

らにランプ角が大きくなると拡大率は減少する.またランプ角によらず,マッハ数の増加 や粗度の導入により全体的に拡大率が小さくなるが,主流マッハ数の影響の方が大きいこ とがわかる.噴射の条件に注目すると,噴射なしの場合が特に拡大率が大きく,次に空気 噴射,ヘリウム噴射という順番になっている.

5.2.2 渦輪状構造の強さ

上述のとおり,図5.2 ~ 5.21中の(c)に示したナイフエッジを垂直に設定したシュリーレン 画像の輝度の変動実効値から渦輪状構造の強弱を判断することができる.しかし,光学系

は何度か組み替えており,光学系のセッティングにより輝度が変化するため,条件毎にば らつきがあることに注意を要する.

ランプ角による変動実効値の変化に注目すると,噴射やマッハ数,粗度の有無によらず,

ランプ角の増加により変動実効値は大きくなる傾向にある.また,ランプ角によらず,マ ッハ数の増加により変動実効値は大きく減少し,粗度の導入により変動実効値は若干大き くなるか,同程度であることがわかる.噴射の種類に注目すると,ヘリウムは密度が空気 と大きく異なるため変動実効値の大小では渦輪の強弱は判断できないが,噴射なしと空気 噴射では,全ての実験条件で噴射なしの方が変動実効値が大きくなっている.

5.3 ステレオ PIV 計測結果

シュリーレン法ではyz 断面の情報は得られず,また流れの状態量の定量的評価が難しい ため,なぜ変動領域の拡大率や輝度の変動実効値が変化するのかを調べるには十分でない.

そこで流れ場をより詳細に調べるため,ステレオPIVによりyz断面内の速度3成分を計測 した.計測はM = 1.85, = 7°, 14°, 30°, 粗度なしとM = 1.85,  = 14°, 粗度あり,およびM

= 2.4,  = 14°, 粗度なしの計5種類の流れ場に対して,x = 25 mm, 50 mm, 100 mmの3断面に ついて計測した.拡大率が特に大きかったM = 1.85,  = 14°, 粗度なしの場合のみx = 35 mm,

75 mm, 150 mmの断面についても計測し,流下に伴う変化を詳細に調べた.なお噴射の条件

はいずれも噴射なし,空気噴射,ヘリウム噴射の3種類である.図5.24 ~ 5.41の図中で,(a) は瞬間速度分布300 ~ 600枚から算出した平均速度分布で,図中のベクトルはyz断面内速度,

背景色は x 方向速度を表し,(b)は(a)の平均速度分布から式(4.1)により算出した渦度分布を 示す.渦度は時計回りを正とした.なお,各図(a), (b)には左から断面の概略図,噴射なし,

空気噴射,ヘリウム噴射の結果を示している.さらに,各図(b)に示した渦度分布から式(4.2) により縦渦の循環を評価した結果を図5.42(a) ~ (e)に示す.各速度分布・渦度分布図,循環 の図と実験条件の対応を表5.2に示す.

表5.2 各図と実験条件の対応

速度・渦度分布 循環の推移 実験条件と計測断面

図5.24 ~ 5.26 図5.42(a) M = 1.85, = 7°, no-roughness, x = 25mm, 50 mm, 100mm

図5.27 ~ 5.32 図5.42(b) M = 1.85,  = 14°, no-roughness, x = 25mm, 35 mm, 50 mm, 75 mm, 100mm, 150 mm

図5.33 ~ 5.35 図5.42(c) M = 1.85, = 30°, no-roughness, x = 25mm, 50 mm, 100mm 図5.36 ~ 5.38 図5.42(d) M = 2.4,  = 14°, no-roughness, x = 25mm, 50 mm, 100mm

縦渦の循環は,粘性の影響によって減少することはあっても増加することはないはずで ある.しかし,図5.42より,いくつかの実験条件でx = 25 mmからx = 50 mmにかけて循環 が増加している.PIV計測では,気流中に導入したトレーサ粒子の移動量から速度ベクトル を算出するが,トレーサ粒子は気流の持つ加速度の大きさに比例して追随遅れが生じる55)

x = 25 mmでは縦渦は小さいため,循環が同じであっても渦の旋回速度が極めて大きくなる.

そのため,x = 25 mmのように回転運動による加速度の極めて大きな位置では粒子が追随し きれず渦度,循環が過小評価されたと考えられる.

5.24 ~ 5.41の図中の(a)に示した速度分布から,第4章で使用したデバイスの場合と同

様に,噴射により縦渦はスパン方向に離れて形成されるが,流下に伴って縦渦の中心位置 の違いは無くなっていくことがわかる.一方,= 7°, x = 25 mmの結果である図5.24(a)のヘ リウム噴射した場合は4 mm ≤ y ≤ 6 mm, 0 mm ≤ z ≤ 2 mmに高速な領域が存在する.ヘリウ ムは音速(約860 m/s)で噴射され,その流速は主流(約480 m/s)よりも高速であるため,

これはヘリウム噴流の一部であると考えられる.x = 50 mmの結果である図5.25(a)では,ヘ リウム流を示す高速の領域が縦渦の旋回により広範囲に広がり,下流の x = 100 mm(図 5.26(a))では,さらに広範囲に広がるとともに速度差が小さくなっていることから,ヘリウ ムが広範囲に拡散し混合が進んでいると考えられる.一方,= 14°の場合にはx = 25 mm(図

5.27(a))において= 7°よりもヘリウム流を示す高速領域が広範囲に広がっていることがわ

かる.これは図5.42(a), (b)より,= 14°の方が= 7°よりも縦渦の循環が大きいため,= 14°

の方がヘリウムをより広範囲に輸送し,拡散することができたためであると考えられる.

このように,循環が大きければより早く燃料を広範囲に輸送し,拡散することができると 考えられるため,混合促進の観点では縦渦の循環は大きい方がよいといえる.

関連したドキュメント