第 2 章 先行研究の分析
3.2 超音波顕微鏡による生体ヒト皮膚微細構造の可視化
3.2.1 超音波顕微鏡システム
超音波画像診断法は、非侵襲的かつ操作が簡便で患者への負担が少ないことか ら皮膚科領域でも有効な検査となっている。Y. Saijo らは中心周波数100 MHzを有 する高周波数超音波を用い、生体ヒト皮膚を非侵襲的かつ20 µm の高空間分解能 で観察することが可能であることを示した[3-1][3-2]。従来の超音波顕微鏡と異な り、組織を薄切することなく組織の内部構造を高分解能で観察できることが大き な特⾧であるが、生体ヒト皮膚の指紋や、表皮層と真皮層の境界の深さまでしか 可視化できていなかった。
今回新たに開発した超音波顕微鏡システムの外観を図3.1に示す。また、そのブ ロック図を図3.2に示す。ここで、パルス発生器、アンプ、スキャンコントローラ ー、超音波トランスデューサーは独自に開発したものである。電源から伝送され た電流を受け、パルス発生器内の高速スイッチング回路により電気インパルスが 発生する。パルス発生時間は400 ps以内で、パルス幅は2 ns、パルス電圧は40 V である。インパルスの周波数は最大500 MHzである。電気パルスは P(VDF‐TrFE)
(Polyvinylidenfluorid : ポリフッ化ビニリデン)製のトランスデューサーを励起す る。今回用いたトランスデューサーの焦点距離は3.2 mm、開口直径は 2.4 mmで、
深部真皮層可視化のため従来よりも焦点距離の⾧い凹面超音波振動子を用いた。
トランスデューサーの中心周波数は 120 MHz、-6 dB のバンド幅は 70 MHz~170
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MHzで、パルス繰り返し周波数は 10 kHzであった。超音波トランスデューサーと 対象組織の位置関係を示す模式図を図3.3に示す。対象組織からの反射波はトラン スデューサーで受信され、アンプで振幅が増幅される。その波形信号がシステム コントローラーであるPCに送られる。今回用いた PCは、Pentium D(Intel社)で、
3.0 GHz / 2 GBのRAMと、250 GB のHDDを搭載している。PCにはアナログデー
タをデジタルデータ化するための高速デジタイザカードが搭載してあり、2 GHz でサンプリングを行った。デジタイザカードは、Acqiris DP210(Acqiris社)を用 いた。S / N比を向上させるため、それぞれ Aライン1ラインにつき 8回の超音波 送受信から得た RF 信号を平均した。超音波トランスデューサーは X 軸スキャナ ーとY軸スキャナーに搭載され、PCのポート1 に接続されたスキャンコントロー ラーで制御されX Y方向に機械的にスキャンした。
スキャン領域と超音波送受信ポイントとしては、方位方向(X 方向)に 16 µm のスキャン後に超音波送受信を行い、これを 300 ポイント繰り返した。X 方向に 300ポイント繰り返した後、奥行方向(Y方向)に 32 µmのスキャンを行い、再度、
X方向に16 µm間隔で 300ポイントのスキャンと超音波送受信を行った。これを
Y 方向に 150 ステップ行った。ここで、X 方向、Y 方向へのスキャンサイズは以 下の式で計算され、ともに4.8 mmとなる。
ここでIntervalは距離間隔、Pointsは点数である。
デジタイザカードでのサンプリング周波数が 2 GHz、1 ライン当たりの点数が 2000点であることから、音速を1500 m/sとすると、次式より深さ方向 (Z方向) は
1.5 mmとなる。
ここでZはBモードの深さ (m)、fsはサンプリング周波数 (1/s)、Cは音速 (m/s) である。
以上から最終的なスキャンサイズとしては、X方向へは 4.8 mm、Y方向へは 4.8
mm、Z方向へは1.5 mmの三次元データセットを取得した。
(3.1) 𝑋 𝑠𝑖𝑧𝑒 = 𝐼𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙 (𝑋) × 𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡𝑠 (𝑋)
(3.2) 𝑌 𝑠𝑖𝑧𝑒 = 𝐼𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙 (𝑌) × 𝑃𝑜𝑖𝑛𝑡𝑠 (𝑌)
(3.3) 𝑍 𝑠𝑖𝑧𝑒 = 1
𝑓𝑠× 𝐶 × 2000
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被験部位を定めるため、計測前に3 mm四方程度の正方形の観察窓をくり抜いた ビニールテープを被験部位に貼り付けた。観察窓外側のテープ部分は、テープの 音響インピーダンスが高く超音波が反射するため、テープ下部の皮膚は画像化さ れず窓内の領域のみ観察される。超音波トランスデューサーと皮膚の音響インピ ーダンスの差を低減させるためのカプラとして、GE社のロジクリーン GE超音波 検査用ゲル ハードタイプを用いた(図 3.3)。
図3.1 超音波顕微鏡システムの外観.
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図3.2 超音波顕微鏡のシステムブロック図.
図3.3 トランスデューサーと被験部位の位置関係の模式図.
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