第 2 章 先行研究の分析
3.3 皮脂腺構造の定量的評価方法の確立
3.3.3 皮脂腺構造と皮脂分泌量との関連性の検討
ここで皮脂腺構造の評価指標に皮脂分泌量との関連が認められれば、in vivo か つ簡便にすでに確立している皮脂分泌量の計測により、皮脂腺構造を類推できる 可能性があると考えた。PE. Pochiらは、皮脂分泌量は新生児で高く幼児期で減り、
思春期に再度高まり30歳代で最大を迎えあとは減っていく一方、皮脂腺サイズは 加齢とともに大きくなり、皮脂分泌量と皮脂腺サイズに関連性はないと示してい る[3-11]。また C. C. Zouboulisらは、皮脂分泌は新生児で高く幼児期で減り、思春 期に再度高まり30歳代で最大を迎えあとは減っていく一方、皮脂腺密度は一生を 通して変わらず、皮脂分泌量と皮脂腺密度に関連性はないと示している[3-12]。こ れらの先行文献では皮脂腺構造と皮脂分泌量の関係を直接計測したものではなく、
それぞれの指標の年齢との関連性から推察されたにすぎない。そこで前項で妥当 性を確認した超音波顕微鏡による皮脂腺構造の定量指評価指標と、皮脂分泌量の 関連性を直接比較検討した。
3.3.3.1 方法
皮脂分泌量の計測には、第2 章で述べたSebumeter(ドイツ、Courage+Khazaka 社)を用いた。計測は、被験部位を洗浄後、皮膚が自然乾燥してから 1 度目の計 測を、さらにそこから1時間 30分経過後に2度目の計測を行い、両値の差を皮脂 分泌量として定義した。2度の計測の間の時間で、超音波顕微鏡による皮脂腺構造 の計測を行った。図 3.24 に Sebumeter による計測風景を示す。また、被験者は皮 膚に有意な疾患を認めない若年男性21例(23.3 ± 1.24歳)とし、被験部位は頬と 前腕とした。
図3.24 Sebumeterによる前腕の皮脂量の計測風景.
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3.3.3.2 皮脂腺構造と皮脂分泌量との関連性の検討結果
図 3.25 に超音波顕微鏡観察により評価された頬の皮脂腺密度と Sebumeter によ り計測された皮脂分泌量の相関図を示す。相関係数r = 0.424 であり弱い相関傾向 は認められたが、無相関の検定を実施したところp > 0.05で、統計的に有意とは認 められなかった。
次に、図 3.26 に頬の皮脂腺断面平均サイズと皮脂分泌量の相関図を示す。相関 係数r = -0.258であり、無相関の検定を実施したところp > 0.05 で、統計的に有意 な相関ではなかった。
図3.25 男性被験者における頬の皮脂腺密度と皮脂分泌量の相関図.
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図3.27に頬の皮脂腺占有率と皮脂分泌量の相関図を示す。相関係数 r = 0.188で あり、無相関の検定を実施したところp > 0.05で、統計的に有意な相関ではなかっ た。
図3.26 男性被験者における頬の皮脂腺断面平均サイズと皮脂分泌量の相関図.
図3.27 男性被験者における頬の皮脂腺占有率と皮脂分泌量の相関図.
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図 3.28 に超音波顕微鏡観察により評価された前腕の皮脂腺密度と Sebumeter に より計測された皮脂分泌量の相関図を示す。相関係数r = 0.175であり、無相関の 検定を実施したところp > 0.05で、頬と同様に前腕においても統計的に有意な相関 ではなかった。
次に、図 3.29 に前腕の皮脂腺断面平均サイズと皮脂分泌量の相関図を示す。相 関係数r = 0.170であり、無相関の検定を実施したところp > 0.05で、同様に統計 的に有意な相関ではなかった。
図3.28 男性被験者における前腕の皮脂腺密度と皮脂分泌量の相関図.
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図3.30に前腕の皮脂腺占有率と皮脂分泌量の関係を示す。相関係数 r = 0.347で あり、無相関の検定を実施したところp > 0.05で、同様に統計的に有意な相関では なかった。
図3.29 男性被験者における前腕の皮脂腺断面平均サイズと皮脂分泌量の相関
図.
図3.30 男性被験者における前腕の皮脂腺占有率と皮脂分泌量の相関図.
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3.3.3.3 皮脂腺構造と皮脂分泌量との関連性の検討に対する考察
超音波顕微鏡による頬と前腕の皮脂腺密度、皮脂腺断面平均サイズ、皮脂腺占 有率の計測値と、Sebumeterにより計測された皮脂分泌量には統計的に有意な関連 性は認められなかった。先行研究では、皮脂腺構造と年齢の関連性、皮脂分泌量 と年齢との関連性から三段論法として皮脂腺構造と皮脂分泌量の関係を考察して いた。本研究ではそれらの関係を直接的に評価し示すことに成功した。結果とし ては先行研究での類推結果と同様であり、皮脂腺構造と皮脂分泌量には関連性が 低い可能性が示唆された。つまり、皮膚表面洗浄後の1~2時間のうちに皮膚表面 へ分泌される皮脂分泌量は、それを蓄積している皮脂腺のサイズや密度に依存し ない可能性があることが示された。ここから、皮脂分泌量は皮脂腺構造自体に影 響を受けるよりも、ホルモンや自律神経などの内部要因と気温や湿度などの外部 要因による皮脂腺活性により優位に支配される可能性が高いことが考えられる。
本検討結果から、皮脂分泌量の計測により皮脂腺構造を類推することはできず、
in vivo での非侵襲的な皮脂腺構造の把握には超音波顕微鏡による皮脂腺構造の評 価がもっとも有用であるといえる。