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第 4 章 皮脂腺構造と皮膚粘弾性との関連性 ~被験部位の影響~

4.2 研究方法

4.2.2 皮膚粘弾性の評価方法

皮膚の硬さは角層、角層下の表皮細胞層、真皮の物性などの影響を受ける。皮 膚自体の粘弾性がもたらす皮膚機能については、第 2 章第 2 節ですでに述べた。

Cutometer(ドイツ、Courage+Khazaka 社)は、3 層構造を持つ皮膚の硬さを非侵

襲的に定量評価することができる装置である[4-1]。

測定原理は、皮膚の機械的吸引、復元による皮膚高さ変位を光学的に計測する 手法である。直径 2 mm の吸引口を持つプローブを皮膚表面に密着させ、30 kPa の陰圧をプローブ内部に印加することで 3 秒間皮膚を吸引する。その後、印加し た陰圧を解除することで皮膚が定常状態へ復元していく。この時の皮膚の高さ変 位を、プリズムを用いて0.01 mmの測定精度で、連続的に 0.01秒間隔で計測され る。測定誤差を抑制するため同一部位の計測を連続で 4 回行い、以下に示すパラ メータを平均した値を採用した。計測結果の一例を図4.1に示す。

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ここで、Uf は3秒吸引後の皮膚の最終的な高さ、Urは陰圧解除0.1秒後の皮膚 高さの復元量である。本研究では、皮膚粘弾性を示すパラメータとして現在まで 多くの先行研究で用いられているUr / Uf に着目した[4-2][4-3][4-4]。

皮膚は粘弾性体であり、バイオメカニクスの面から本パラメータの意味につい て確認する。まず、図4.2に粘弾性体の単純モデルであるフォークトモデルの構成 と応力一定時の応力 ひずみ特性について示す[4-5]。

図4.1 Cutometerによる測定結果例.

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皮膚を粘弾性体の単純モデルであるフォークトモデルと考えると、図4.1に示さ れる今回の計測結果曲線は図4.2 (b) に示される応力一定の場合のひずみ時間曲線 と対応すると考えられる。このモデルの応力とひずみの関係は以下の式 (4.1) で 示される。

ここで、εはひずみ、σは応力、Eは縦弾性率 (ヤング率) 、Dは粘性係数、λは

E / D、tは時間である。

一般に、式 (4.1) は時定数τ = (1 / λ) とするクリープを示し、すなわちフォーク トモデルで示される応力ひずみ特性はτ = (D / E) ; 縦弾性率に対する粘性係数の 比を時定数に持つひずみ応答で表現される[4-6]。ここで、陰圧を印加したことに よる皮膚の変位最大値が一定値となるとおけば、皮膚の粘弾性による遅延時間と して式 (4.1) で表す応答モデルの時定数 τを比較することで、皮膚の粘弾性特性を 評価することが可能となる。そこで、本研究で取得したCutometerによる計測デー タから、式 (4.1) で示される応答を仮定した場合の遅延時間を求めUr / Ufとの相 関を図4.3にプロットした。また式 (4.2) で示される遅延時間と0.1秒後の復元量 の理論式からUr / Ufに対応した値を算出し、理論曲線を図4.3に重ねた。

図4.2 フォークトモデル. (a) 構成. (b) 応力 ひずみ特性.

E e

t

) 1

(

  

(4.1)

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式 (4.2) においてtは図4.3でX軸にとった遅延時間である。

粘弾性体においては、遅延時間はその材料の弾性特性と粘性特性を含む粘弾性 特性を示す定量的指標として用いることができる。図4.3は実験的に得られた遅延 時間に対するUr / Ufの相関図であり、これらの値は負の強い相関を示すとともに、

理論式から求めた両指標の関連を示す曲線とも近似した傾向を示した。この結果

から、Ur / Ufは皮膚の粘弾性を表す時定数の増大に対し図4.3に示される単純減

少の S 字カーブの関係を持つ指標として、皮膚粘弾性の評価に用いることができ ることが示された。

また、本パラメータによる皮膚粘弾性評価の有用性を示す結果として、図 4.4 に著者らが検討した前腕におけるUr / Ufと年齢との関係の相関図を示す。

(4.2)

𝑈𝑟

𝑈𝑓 = 1 − 0.368

1/10𝑡

図4.3 遅延時間とUr / Ufの関係.

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皮膚粘弾性を示す指標として、先行研究と同様の結果が示されることが確認さ れた[4-3]。以上から、バイオメカニクス面から粘弾性評価パラメータの意味を確 認できため、本研究において同指標を用いることとした。