• 検索結果がありません。

第 6 章 皮脂腺構造と皮膚粘弾性との関連性 ~性別の影響~

6.3 結果

本節では男性被験者と女性被験者、各群の皮脂腺構造と皮膚粘弾性の評価結果 を示す。さらに、それぞれの計測値の関連性について統計解析し考察する。

6.3.1 皮脂腺構造の評価結果

表 6.2 に超音波顕微鏡観察により評価された男性群と女性群の頬の皮脂腺密度 の結果を示す。比較のため図6.1に男性群と女性群の平均値を棒グラフで示す。

表6.2 男性群と女性群における頬の皮脂腺密度の評価結果.

男性群 女性群

n 9 5

Mean 1.05 0.91

SD 0.39 0.06

男性群と女性群の皮脂腺密度の平均値の差が統計的に有意かを確かめるため、

有意水準5 %で両側のt検定を実施した。t (12) = 1.08, p > 0.05であり、統計的に有 意な差は認められなかった。

図6.1 男性群と女性群における頬の皮脂腺密度の平均値の比較.

- 97 -

次に、表 6.3に超音波顕微鏡観察により評価された男性群と女性群の頬の皮脂腺 断面平均サイズの結果を示す。同様に比較のため図6.2に棒グラフを示す。

表6.3 男性群と女性群における頬の皮脂腺断面平均サイズの評価結果.

男性群 女性群

n 9 5

Mean 0.37 0.54

SD 0.11 0.08

男性群と女性群の皮脂腺断面平均サイズの平均値の差が統計的に有意かを確か めるため、有意水準5 %で両側のt検定を実施した。t (12) = -3.56, p < 0.05であり、

統計的に有意な差が認められた。

図6.2 男性群と女性群における頬の皮脂腺断面平均サイズの平均値の比較.

- 98 -

最後に、表6.4に超音波顕微鏡観察により評価された男性群と女性群の頬の皮脂 腺占有率の結果を示す。同様に比較のため図6.3に棒グラフを示す。

表6.4 男性群と女性群における頬の皮脂腺占有率の評価結果.

男性群 女性群

n 9 5

Mean 0.36 0.49

SD 0.07 0.06

男性群と女性群の皮脂腺占有率の平均値の差が統計的に有意かを確かめるため、

有意水準5 %で両側の t検定を実施した。t (12) = -3.74, p < 0.05であり、統計的に

有意な差が認められた。

6.3.2 皮脂腺構造の評価結果に対する考察

図6.2、図 6.3より、女性群では男性群に比較して皮脂腺断面平均サイズと皮脂

腺占有率が統計的に有意に高値であった。一方、図6.1に示すように、皮脂腺密度 については統計的に有意な差が認められなかった。つまり、平均年齢に差がない 20 歳代の男性と女性の頬の比較では、女性の皮脂腺サイズと皮脂腺占有率が男性 よりも高い可能性がある。先行研究において、池田は 20 歳代前半の額の ex vivo 評価により、皮脂腺の最大断面積は、女性の方が男性より約1.5倍大きい結果を示 している[6-1][6-2]。本研究での被験部位は頬で、計測方法は超音波顕微鏡による

図6.3 男性群と女性群における頬の皮脂腺占有率の平均値の比較.

- 99 -

in vivo 評価である点は異なるが、性差による皮脂腺構造の差として同様の結果が

示された。

6.3.3 皮膚粘弾性の評価結果

表6.5にCutometerにより評価された男性群と女性群の頬の皮膚粘弾性の結果を

示す。同様に比較のため図6.4に棒グラフを示す。

表6.5 男性群と女性群における頬の皮膚粘弾性の評価結果.

男性群 女性群

n 9 5

Mean 0.44 0.57

SD 0.11 0.05

男性群と女性群の皮膚粘弾性の平均値の差が統計的に有意かを確かめるため、

有意水準5 %で両側の t検定を実施した。t (12) = -7.88, p < 0.05であり、統計的に

有意な差が認められた。

図6.4 男性群と女性群における頬の皮膚粘弾性の平均値の比較.

- 100 -

6.3.4 皮膚粘弾性の評価結果に対する考察

図6.4に示すように、男性群に比較して女性群の皮膚粘弾性は統計的に有意に高 値となった。本結果は先行研究の結果を支持する[6-3]。つまり、20 歳代の男性の 頬の皮膚は、粘弾性体としての遅延時間が同年代の女性に比べて⾧く、外部圧力 に対して復元が遅いといえる。

6.3.5 皮脂腺構造と皮膚粘弾性との関連性の検討

図6.5に年齢の平均値に差がない男性群と女性群において、超音波顕微鏡により 評価された頬の皮脂腺密度と Cutometer により計測された皮膚粘弾性の相関図を 示す。男性群では相関係数r = -0.578の負の相関傾向がみられたが、無相関の検定 を実施したところp > 0.05で、統計的に有意とは認められなかった。また女性群で も同様に相関係数r = -0.558の負の相関傾向が見られたが、無相関の検定を実施し

たところp > 0.05で、有意な相関とは認められなかった。

図6.5 男性群と女性群における頬の皮脂腺密度と皮膚粘弾性の相関図の比較.

- 101 -

図6.6に年齢の平均値に差がない男性群と女性群において、超音波顕微鏡により 評価された頬の皮脂腺断面平均サイズと Cutometer により計測された皮膚粘弾性 の相関図を示す。男性群では相関係数r = 0.805の強い正の相関がみられ、無相関 の検定を実施したところp < 0.05で、統計的に有意な相関を認めた。また女性群で は相関係数r = 0.626で正の相関傾向があったが、無相関の検定を実施したところ

p > 0.05で、統計的に有意な相関とは認められなかった。

図6.6 男性群と女性群における頬の皮脂腺断面平均サイズと皮膚粘弾性の相関 図の比較.

- 102 -

図6.7に年齢の平均値に差がない男性群と女性群において、超音波顕微鏡により 評価された頬の皮脂腺占有率と Cutometer により計測された皮膚粘弾性の相関図 を示す。男性群では相関係数r = 0.001であり相関がみられず、無相関の検定を実

施しても p > 0.05 で、統計的に有意ではなかった。また女性群でも相関係数 r =

0.413であり、無相関の検定を実施したところp > 0.05で、有意な相関を認めなか

った。

6.3.6 皮脂腺構造と皮膚粘弾性との関連性の検討に対する考察

これまで第4章では本章よりも若年側に年齢幅の広い21例の男性被験者のみの 頬の評価において、皮膚粘弾性に対して皮脂腺密度が統計的に有意な負の相関を 示すこと、第5章では本章よりも中年側に年齢幅の広い19例の女性被験者のみの 頬の評価において、皮膚粘弾性に対して皮脂腺密度が統計的に有意な正の相関を 示すことを述べた。これらの結果の違いは皮膚構造が急激に変化する「初期老化」

をまたがる年齢の被験者における結果であるため年齢の影響を除いて評価する必 要があった。

本章において平均年齢に差がない男性被験者群と女性被験者群の比較において、

皮膚粘弾性に対して皮脂腺密度は負の相関傾向を示したが両被験者群ともに統計 図6.7 男性群と女性群における頬の皮脂腺占有率と皮膚粘弾性の相関図の比

較.

- 103 -

的に有意ではなかった。本章の被験者群では被験者の年齢分散が少ないことにく わえ被験者数も少ないことから、統計的に有意でない結果となったと考えられる。

両被験者群ともに統計的に有意とは言えなかったが、少なくとも男女で逆の相関 を示すことはなく、性差の影響は限定的な可能性が示唆された。結論を示すため には被験者の増加による更なる検討が必要である。

また、これまで第4 章では本章よりも若年側に年齢幅の広い21例の男性被験者 のみの頬の評価において、皮膚粘弾性に対して皮脂腺断面平均サイズが統計的に 有意な正の相関を示すこと、第5章では本章よりも中年側に年齢幅の広い19例の 女性被験者のみの頬の評価において、皮膚粘弾性に対して皮脂腺断面平均サイズ が統計的に有意ではない弱い正の相関傾向を示すことを述べた。

本章においては、皮膚粘弾性に対して皮脂腺断面平均サイズは男性被験者群で は統計的に有意な強い正の相関を示した一方、女性被験者群では正の相関傾向を 示したが統計的に有意ではなかった。第 5 章の女性被験者は第 4 章の男性被験者 に比較して被験者の年齢の分散が大きく、加齢にともなう変化に狭い年代の特徴 が埋もれてしまった可能性が考えられる。本章では、男性被験者に比較して女性 被験者の被験者数が少なかったことが統計的に有意な結果を示さなかった原因で あると考察する。女性被験者群では統計的に有意ではなかったが、男性被験者群 と同様な相関傾向はみられたことから、皮脂腺密度同様に、男性被験者群と女性 被験者群では性差による影響は少ない可能性が示唆された。

そして、これまで第4章では本章よりも若年側に年齢幅の広い21例の男性被験 者のみの頬の評価において、皮膚粘弾性に対して皮脂腺占有率が統計的に有意で ない正の相関傾向を示すこと、第5章では本章よりも中年側に年齢幅の広い19例 の女性被験者のみの頬の評価において皮膚粘弾性に対して皮脂腺占有率が統計的 に有意な正の相関を示すことを述べた。

本章では皮膚粘弾性に対して皮脂腺占有率は男性被験者群、女性被験者群とも に正の相関傾向を示したが統計的に有意ではなかった。皮脂腺密度、皮脂腺断面 平均サイズと同様に皮脂腺占有率においても、男性と女性の両被験群とも統計的 な有意差が示されたわけではないが、皮膚粘弾性に対して男性と女性で同様の相 関傾向はみられた。