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質的特性としての信頼性の史的変遷の総括

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第4節 質的特性としての信頼性の史的変遷の総括

ここまで質的特性としての信頼性の史的変遷をアメリカ、イギリス、国際的な機関及び 我が国における財務会計の概念フレームワークからみてきたが、ここからは質的特性とし ての信頼性の史的変遷を総括していく。

そもそも、なぜ質的特性としての信頼性の史的変遷を明らかにしてきたのかをもう一度 説明する。なぜならば、本論文最終章において財務諸表監査が保証する財務諸表の信頼性 に関する仮説創設を実施していくが、質的特性としての信頼性の史的変遷は仮説創設の材 料として使用していくからである。

ここでは、質的特性としての信頼性の意味がその誕生時から現代に至るまで徐々に変化 し、質的特性としての信頼性に期待されていた意味がパラダイム転換していたという点を 明らかにしていく。ここで明らかにした点を本論文最終章の仮説創設で使用していく。

では、質的特性としての信頼性の史的変遷を総括していく。質的特性としての信頼性の 史的変遷をみてきたことによって、そもそも質的特性としての信頼性が誕生した際に質的 特性としての信頼性に期待された意味と現在における質的特性としての信頼性の意味との 対比が可能になった。

以下では、そもそも質的特性としての信頼性の誕生時に期待されていた意味と現在にお ける質的特性としての信頼性の意味の相違点を掲示していく。

まずは、誕生時と現在の質的特性としての信頼性の比較に使用していく概念フレームワ ークを掲げる。

質的特性としての信頼性の誕生時に質的特性としての信頼性に期待された意味を探るた

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めに、アメリカにおいて初めて信頼性(財務諸表の信頼性という概念)が登場した概念フレームワ ークである『ステートメント第4号』とイギリスで最初の概念フレームワークと捉えること ができる『コーポレートレポート』をみていく。どちらの概念フレームワークもアメリカ とイギリスにおいて最初に質的特性としての信頼性の前身である概念が登場した概念フレ ームワークといえよう。

現在における質的特性としての信頼性を探るためには、IASBが2010年まで採用していた

『IASC1989フレームワーク』、

FASBにおける『概念書第2号』、我が国『2006年討議資料』、

イギリスにおけるASBの『財務報告基準書』を掲げる。なぜ合同プロジェクト後のIASB及 びFASBの概念フレームワークを掲示しないのかと指摘されるかもしれないが、合同プロジ ェクト後のIASB及びFASBの概念フレームワークではそもそも会計情報の質的特性として の信頼性が消滅しているので、検討対象とすることができないのである。

では、質的特性としての信頼性の誕生時に期待されていた意味を検討していく。そもそ も質的特性としての信頼性には、中立性や完全性といったような現在質的特性としての信 頼性の意味を説明するために利用されている下位概念の意味が期待されていなかった。な ぜならば、『ステートメント第4号』では検証可能性(verifiability)、中立性(neutrality)が財務 諸表の信頼性(質的特性としての信頼性の前身)に含まれずに存在し、イギリスの『コーポレート レポート』では、後に信頼性(reliability)の下位概念となる完全性(completeness)が信頼性と並 列的に並べられていたからである。つまり、現在における質的特性としての信頼性の構成 概念とされている検証可能性51、中立性52や完全性53

それでは、質的特性としての信頼性の誕生時に質的特性としての信頼性に期待されてい た意味とは何なのだろうか。『ステートメント第4号』では信頼性に3つの意味を与えてい る。この3つの意味がそもそも質的特性としての信頼性に期待されていた意味となりうるが、

この3つの意味のうちの1つの意味が『コーポレートレポート』で掲げられた質的特性とし ての信頼性の意味と大方重複している。この『ステートメント第4号』と『コーポレートレ ポート』において掲げられた質的特性としての信頼性において重複している意味が質的特 性としての信頼性の誕生時に期待されていた意味であろう。

は質的特性としての信頼性には関係の ない概念だったといえる。

『ステートメント第4号』では、財務諸表の信頼性の3つの意味のうち1つの意味を「財務 諸表の利用者は、独立監査人の報告書に注意を払う必要がある。情報の適正性(presented fairly)

に関する意見を表明する独立した専門家によって財務諸表が監査されたことを確かめる必 要がある。」と説明している(AICPA[1970]41)。一方、『コーポレートレポート』によれば、

質的特性としての信頼性(reliable)を「提示された情報は、利用者が信頼性(degree of confidence)

51『概念書第2号』、『2006年討議資料財務会計の概念フレームワーク』の会計情報の質的特性としての信頼性に含まれ る。

52『概念書第2号』、『2006年討議資料財務会計の概念フレームワーク』、『IASC1989フレームワーク』の会計情報の質 的特性としての信頼性に含まれる。

53『IASC1989フレームワーク』、『財務報告基準書』の会計情報の質的特性としての信頼性に含まれる。

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を寄せることができると評価可能な程度に信頼(reliable)できるものでなければならない。検 証可能ではない企業が提供する有用な情報が特定の状況で独立して(independently)検証された

(verified)場合、コーポレートレポートに含まれる情報の信頼性(credibility)が向上する。」と 定義している(ASSC[1975]29)

上述した両者の定義をみればわかるが、1970年にアメリカで公表された『ステートメン ト第4号』とイギリスで1975年に公表された『コーポレートレポート』における信頼性に重 複している意味は、財務諸表に質的特性としての信頼性が備わるためには財務諸表監査が 必要だということである。つまり、この質的特性としての信頼性の誕生時の意味が歴史か らみた質的特性としての信頼性の本質的意味だといえるのである。

そして、アメリカで1973年に公表された『財務諸表の目的』における質的特性としての 信頼性は、信頼性が情報の性質によって異なること及び会計情報が信頼性できるというこ とと会計情報が100%正確であることは一致しないという説明がなされている。『財務諸表 の目的』では、財務諸表監査によって財務諸表の質的特性としての信頼性が生じると言及 されていないため、既に質的特性としての信頼性の意味が変化してきていることがわかる。

そして、イギリスで1989年に公表された『ソロモンズレポート』では財務諸表監査が質 的特性としての信頼性を保証しているという旨が言及されている。しかし、質的特性とし ての信頼性に下位概念が含まれるようになったため、質的特性としての信頼性の意味がそ の誕生時の意味と乖離し始めていることがわかる。

このような意味の変化を辿って、IASBが2010年まで採用していた『IASC1989フレームワ ーク』、アメリカのFASBが1980年に公表した『概念書第2号』、我が国『2006年討議資料』

及びイギリスのASBが1999年に公表した『財務報告基準書』における質的特性としての信頼 性の意味が中立性、検証可能性や完全性で説明されるようになり、財務諸表監査で説明さ れなくなったのである。

この歴史的事実から、質的特性としての信頼性の意味がその誕生時に期待されていた財 務諸表監査によって質的特性としての信頼性が発生するという意味から、誕生時に別概念 として扱われていた中立性、検証可能性や完全性といった意味にパラダイム転換したこと が判明した。

ところで、本論文は信頼性概念を財務会計領域の信頼性と監査領域の信頼性に分類して いる。

本章で明らかになった歴史的事実をみると、質的特性としての信頼性は、質的特性とい うことを理由に財務会計領域の信頼性だといえるとともに、そもそも財務諸表監査が必要 条件だったということを理由に監査領域の信頼性ともいえるのである。つまり、概念フレ ームワーク上、質的特性としての信頼性の誕生時において、財務会計領域の信頼性と監査 領域の信頼性は同様の意味のものだったのである。

そして、財務会計領域の信頼性は、財務会計の概念フレームワークにおける質的特性と しての信頼性が変化することによって、中立性等の下位概念を含む意味が異なる財務会計

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