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第 7節 質的デマタ分析 の結果 と分析 (6) 一 「社会人」が学ぶ意義 一
一旦社会に出たいわゆる社会人が再度、学び舎に戻り学生となり、社会人でもなく、現 役の学生でもない社会人学生として、また別の立ち位置で学ぶ意義について考えてみる。
社会人学生は率直なところ、看護学校入学後、想像以上の科目数 と過密なカリキ ュラム に驚き、看護学校での学生生活は、自身のそれまでの経験で想像 した以上の 【 意外な学校 生活】だと感想を得ている。
1彰大な知識を要求される看護の学習に関して、特にス トレー ト学生の記憶能力と比較して、知識の習得やそれまでの学習過程にはなかつた他者 との協 同学習であるグループワークについて 【 GWが 多い】と戸惑い 【 学習の不安】を抱く。当 初は自身の学習ペースで進められないことに強い不満や不安感を示すが、徐 々に、自身の 意見を入れながらグループの動きと自身の動きを同調させていく
(【ミックスさせる】
)。こ のように、自身と属する集団の動きのミックスについて、Aさ んは以下のように述 べてい る。
表 4‑8 【ミックスさせる】インタビュー内容
(Aさん
)あ ―一 、時 FH5が取 れ な い 、 自 分 も 時 間 が 取 れ な い つ て わ か ′て 'いる ん で 、こ こ ま で に は こ れ を して ほ し い な つ て 思 つ て い る と こ ろ も あ る ん で 、意 見 を い れ な が ら 、計 画 、グ ル す プ の 計 画 を や つ て い る と こ ろ も あ る と 思 い ま す 。
このように、社会人学生は積極的の周囲に環境に働きかけ、自身 と周囲を動か していく。
その うちに、不得手に感 じていた 【慣れてきた
GW】
と評す ることもでき、【良いGWと
悪 いGW】
とワークの結果 を省察 し、意見が活発にでない 【悪いGW】
を『LINE』
など ソーシャルネ ッ トワークサー ビ不のシステムを活用 したグループ間の情報交換ツールを利 用 し、いわば不足の時間をネ ッ ト上でのや り取 りで補完す る 【バーチャル会議】を行い、【良い
GW】
に転換 させてい く。一方で、特に介護職や医療事務などの医療に少なからず関わつてきた周辺的立場からの 学生か らは 【基礎 を学びたい】 と、すでに、医療、看護 0介護 の現場を知 つているからこ そ、学ぶ意義を見失わない者 もいる。
社会人学生の多 くは配偶者や小 さな子 どもを抱えての学生生活であ り、学校を一旦離れ ると、家庭でのい くつ もの役割 をこな している。 しか し、そのよ うな家庭 と学校生活、双 方の役割 を限 られた時間の中で配分 し、こなしてい く 【家庭 と学校のバ ランス】が保たれ た時、その均衡が取れた時に、【両方知つていて得】とい う達成感が生まれ ると思われる。
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このよ うな多様な世界、多様 な役割があるか らこそ、多重課題 をこなす今の状態が 【充実 している】 と述べ るものもお り、現役の学生時代にはなかつた学びが広がつている。
社会人の学びには、独 自の 【社会人の学習スタイル】がある。それは、社会人学生それ ぞれめ年齢に呼応 した経験に根差 した学びである。それまでの社会人生活の中で構築 され てきたスキルが、」看護学生生活では全 く通用 しないことも多い。そのような挫折感 は社会 人学生にとつては、 自己のそれまでの人生の否定につなが り、アイデンテ ィテイの揺 らぎ につながつている。 しか し、そのような揺 らぎを経て、自身で迷いなが らの成功体験で得
られ る 【爽快感】はかな りの達成感 となつている。以下に Jさ んの言葉を引用する。
表 4‑9 【 爽快感】インタビュー内容
(Jさん
)迷 う…Ⅲ、す ご い 迷 い ま す 。な ん か 、 や っ て み た とす る じや な い で す か 、 は す ご い ん で す け ど …
O
そ の 中 か ら 、何 か 自 分 で 考 え て そ れ が 当 て は ま つ た 時 の 爽 快 感
また、
Cさ
んはそのよ うな 【爽快感】を 【腑に落ちる】 とも表現 してい る。「腑」 とは「お腹の臓腑0はらわた」を指 し、【爽ll■感】と評 される挫折か らの理解は心身の髄 を振わ せるような理解につながつている。
さらに、社会人学生の学びの特徴 として、ス トレー ト学生 より長い時間軸がある。社会 人学生はス トレー ト学生 と同 じ「今」を生きているのであるが、「今」に連なる過去 とい う 時間軸の長 さが違 う。そ して、その過去の時間軸上に多 く点在 している経験がある。その 経験は時に今の学びを阻害す るが、反対に学びをより深 く、豊かなものにもする。
そもそも、私たちは時間 とい うものを、列記 として存在 しているものとして捉えている。
その証拠に時計がある。時計の長針が
1つ
進んだ時、私たちはそ こに「1分
」 とい う時間 があ り、その1分
とい う時間が過 ぎ去つた、消えてなくなつた、す なわち、あつた ことを 前提 として語る。 しか し、時間 とはあくまでも時間感覚 として、私たちの内部で形成 され るものである。私たちは文明の発達 とともに、私たちの生活 をよ り便利にす るために、時 間 とい うものの時の流れを作 り出 し、時間 とい うものを刻 んだに過 ぎない。真木8)は「時 間感覚は、最終結果のみに意味がある」と述べ、「<未
来が現在の意味である>とい う感覚 (instrumentalismlで ある。存在の意味が、常にそのあとか らくる時間に向かつて外在化 されているとき、ひ とは次々 とより遠い未来の視座か ら現在を見ることになる」 と続けて いる。社会人学生はインタビューの中で、 自身の過去経験 を振 り返 り、今の知識や経験 と 過去の経験を重ね合わせている。そ して、今の学びで過去の学びを再構築 している (【学び なが ら、過去を知 る】)。 今の学びを過去に振 り返 り再考 したB君
の言葉は以下のようであ る。77
表 4‑10 【 学びながら、過去を知る】インタビュー内容 (B君
)悪 い 奴 を 作 つ て ま した 。シ ヨー トニ ン グ を は つ は つ は 。
(笑 )学
び なが ら 悪 い こ とを して い て い た か な つ て 。
1ま
つ は つ は(笑 )栄
養 学 を 。イ ンタ ビュー を行 つたのは
1年
次のカ リキュラムがすべて終了 した時点で ある。社会人 学生たちは、学業 を振 り返 り、過酷 な1年
を乗 り切れた こ とを成功体験 として、その中の 失敗 は、結果か ら見れ ば些細 な こととして処理 して、 自身 の成功 を1年
間の努力の結果 として承認 している。その よ うな成功 として位置づ け られた経験が、 さらに未来への展望 と して開ける。 さらに、社会人学生の学びは、 さらに今 とい う現時点か ら、未来へ と延びる こととなる (【今 を生 きつつ、未来の先 を生きてい る】)。 この よ うな視点は前述 した社会人 学生の特徴 で もある未来 を見越す視点 【段取 り、仕切 り上手】につ なが る。
さて、人間は言葉 の持つ シンボル化能力 によつて、過去 と未来 を創造す ることがで きる。
今 ここにない ものを、時空 を超 え、眼前 に登場 させ ることができる9)。 この ような社会人 学生の過去 と今 、未来 を結ぶ時間軸上の学びの視点は、【単品がある】か らこそ成立す ると、
シンボ リックに語 られ る。 ここで 「単品」 とは社会人学生がかつて現役 の学生であつた時 代 の学びのパーツを表す。 この言葉 は栄養 士を していた
Dさ
んが メタフアー として述べた 言葉であるが、前述 した洗剤 の会社 に勤務 していた経験 を持つMさ
んが重い社会人 の汚れ を中和す るス ト`レー ト学生の形容 を 「ミセル(=分
子内に親水性部分 と親 油性(疎
水性)部 分 とをあわせ もつ物質)」 と呼んだ時 と同 じく、自身のかつての経験 か らの抽象度の高い概 念 を 自身の経験知 に重ね、表現 した ものである。Dさ
んはかつての学びは 「単品で覚えて い る…」 と表現 してお り、 この時の学習は暗記 のための暗記 であ り、暗記 した知識の活用 が現時点ではできていない よ うに語 つてい るが、その直後 、「で も、まあ、単品があるのも、大 きいかなつて思います。」と自身の学び を再評価 してい る。さらに、同 じく栄養士の資格 を持つ
Gさ
んは次 の よ うに語 り、「単品」があることの重要性 を語 つてい る。表 4‑11 【 単品がある】インタビュー内容 (Gさ ん
)で も 嬉 し か つ た の は 、や つ ぱ リ ー 回 記 憶 し て い た こ と だ つ た ん で 、あ の 点 数 、や つ ぱ り 良 か つ た ん で す
(笑)。そ れ が 嬉 し か つ た で す 、な ん か 。な ん と な く分 か つ て き て 、 「 あ 、そ うだ Iこ や つ た こ や つ た 1」
み た い な の は 、あ り ま し た 。で 、心 の 中 で 、 「 あ 、で も 良 か つ た O受 け て て 」み た い な の は あ り ま し た (笑
)社会人学生は過去の 自身の経験か ら学びを今に重ね、再構成、再評価 を行つている。過 去の知識 と今の知識の組み換 えが可能になつた とき、過去か ら連 なる一本の直線 として、
学びがつながる瞬間があ り、この達成感が社会人の学びのモチベーシヨンにもなつていた。
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また、 この学びの再評価 は面接 とい う時間の流れの中で、ナ ラテ ィブに、つ ま り閉 じられ た もの として、帰着点 を無意識的に も求 め られて構成 され ていつた。
この よ うな社会人学生の学びの再構成 の場 として、【社会人の学びの支援 】 として必要 なことは、社会人学生 を何 も持たない弱わきもの として見 るのではな く、む しろ豊 かな経 験知 を持つ芳醇 な土壌 を持つ もの として、並列 な関係 として見 るべ きではないだろ うか。
そ こでは、た とえ、看護 とい う専門的知識 の習得課程 の途 上であって も、それまでの社会 人 としての経験 を否 定せず 、尊重 、承認 してい くことが大事 なのではないか と思われ る。
また、社会人学生 自身で も、【人 は簡単 に変わ らない】 と変容 のむずか しさを認識 して いる。その上で、社会人経験 を経 てい るか らこそ、多 くの世界 を知 り、多様 な価値 、文化 を知 ることが変容 を可能 にす る とも述べている (【別 の世界 を持つ こ とが大事 】)。
その上で、次節では、看護専門学校で多少の構成比の差異はあるが、ス トレー ト学生と 社会人学生 とい う集合体について述べていきたい。
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