第 6 章 質問票調査の分析対象であるファミリービジネスの特徴
3. 質問票調査の分析対象
質問票調査のサンプル対象とするファミリービジネスは、Babson CollegeのSTEP Project (Nordqvist & Zellweger, 2010)2)のケースサンプル基準に則って、以下のような条件を基準と した。
1 )家族親族で所有する株式が50%以上となるオーナー経営の企業であること
2) 従業員が最低10人以上いる企業(派遣社員を含む)
3) 過去に事業承継が行われている企業、もしくは創業者がいるが2代目が後継者として取 締役にすでに就任している企業
4) 創業、企業から30年以上が経過している企業である
この他に、質問票調査を依頼する段階で、自社をファミリービジネスとして認識し後継 者への継承が行われている企業を対象としている。その上で東京青年会議所、日本青年会 議所、ライオンズクラブ、銀座百店会、ファミリービジネスネットワーク、東都のれん会、
銀実会などに所属する、もしくは所属していたファミリービジネスを中心とし、業種業態、
地域を限定することなく、幅広くサンプルの収集を行っている。
経営活動や業績に関する質的および量的データは、質問票調査の他に、対象企業の企業概 要やホームページ、国内のデータベース(帝国データバンク、日経テレコン21、東京商工リ サーチなど)などから収集している。
以下では、質問票調査を行ったファミリービジネスの対象企業の概要と、ファミリービ ジネスの社内のアントレプレナーシップ活動の全体的な特徴および傾向を記述していく。
4 .質問票調査の分析対象企業の概要
質問票調査に協力したファミリービジネスの規模などの企業属性やファミリーの関与に 関する特徴など、対象企業の概要を以下に示してみる。ここでいう先代経営者とは、オー ナー経営者もしくは経営陣の一人であるが、取締役として経営に参画している後継経営者
がいる場合の経営者を指す。調査を依頼したファミリービジネスは 350 社、回収されたサ ンプルは114社、うち1社は企業規模が1500人を越えるグローバル企業であり、もう1社 はオーナー社長のみで経営されている個人経営の企業であったため、対象サンプルから省 くこととする。
対象サンプル数:112社
調査期間:2011年6月~2012年3月
調査方法:対象企業の経営者へ手渡しによる直接の依頼、もしくは郵送による依頼または 会員名簿から対象企業を選び郵送による依頼、回収は郵送かFAXにて返送。
確認および追加の質問項目については、後日、メールおよび電話にて回答を求める。
調査対象企業:経営者および主要経営陣に創業者一族が加わり、かつ最大株主(50%以上) である企業、少なくも 2 世代がファミリービジネスに関わり、従業員 が最低 10人以上いる企業。創業・起業から 30 年以上経過している企 業
調査対象者:対象企業のオーナー経営者もしくは取締役として経営に参画する後継 経営者112人、平均年齢53.1歳、男性110人、女性2人 経営に参画する先代経営者の平均年齢 72.6歳 経営に参画する後継経営者の平均年齢 46歳 調査票回収率:32%
表6.3 質問票調査対象企業:業種別 (N=112)
業種 会社数 業種 会社数 業種 会社数 業種 会社数
精密機器 5 その他製品 8 卸売業 6 建設 8 石油・石炭 2 不動産 14 化学 2 小売業 12 繊維製品 3 陸運 8 機械 5 サービス業 8 倉庫・運輸 1 医薬品 2 金属製品 5 飲食サービス 23
1 1 2 5
~
~ 1 サー
図6.1
売上 億円以下 億~2億円
2億円~5億
5億円~10億
~50億円以下
~100億円以
00億円以上
最小売上 平均売上 金 ービス業
7%
質問票調査
表6.4 調
上
円 億円
下 以下 上
0.9億 31.09億 精密機
4%
機械 4%
金属製 品 4%
建設 7%
小売業 11%
飲食サービ 21%
対象企業:業
査対象企業の
1 2 1 7 4 8 1 円 最大 円
機器
%
石油
設
% ビス
業種別分布
の売上
企業数
(1%)
20(18%)
8(16%)
7(6%)
47(42%)
8(7%)
1(10%)
大売上 油・石炭
2% 繊維
不動 13
陸運 7%
卸売業 5%
化学 2%
(%)
205億円 維製品
3% 倉庫・
1%
その他 7%
動産
%
運
医薬品 業 2%
運輸
% 他製品
%
表6.5 調査体調企業:従業員数(派遣・パートを含む)
従業員数 企業数(%)
10~19人 26(23%)
20~49人 35(31%)
50~99人 24(22%)
100~199人 11(10%)
200人以上 16(14%)
最小従業員数 10人 最大従業員数 730人 平均従業員数 97.7人
表6.6 調査対象企業;企業年数(質問票調査時)
企業年数 企業数(%)
30~50年 24(21%)
51~80年 45(40%)
81~100年 21(19%)
101~200年 15(13%)
201~300年 4(4%)
301年以上 3(3%)
最短企業年数 31年 最長企業年数321年 平均企業年数 82.12年
表6.7 調査対象企業:代表取締役の世代
代表取締役の世代(何世代目か) 企業数(%)
2世代目 24(22%)
3世代目 46(42%)
4世代目 15(14%)
5世代目 8(7%)
6世代目 5(4%)
7世代目 3(3%)
8世代目 5(4%)
9世代目 0(0%)
10世代目 2(2%)
11世代目 2(2%)
12世代目 1(1%)
13世代目 1(1%)
取締役の概要
企業の取締役数の平均値 4.4人
最多取締役数 17人 最少取締役数 3人
全取締役におけるファミリーメンバーの取締役数の平均値 2.5人 最多取締役数 6人 最小取締役数 1人
株主の概要
ファミリーメンバーの株主数の平均値 3.9人 最多株主数 20人 最小株主数 1人
この場合の株主は持株会社、姉妹会社、子会社等は含まず、個人の株主
所有と経営に関する概要
代表取締役が大株主でおり、所有と経営が一致している企業 92社(全体の82%)
112社のうち先代が存命中の企業 60社(全体の54%)
先代が存命中の60社のうち先代が代表取締役として経営に参画している企業 30社
先代が存命で代表取締役である30社のうち、先代が実質的な経営権を握る企業 14社 30社のうち後継経営者が実質的な経営権を握っている企業 16社 30社のうち先代経営者が実質的な経営権を握り最終意思決定も先代 4社 30社のうち先代が実質的な経営権を握り最終意思決定は後継経営者 7社 30社のうち先代が実質的な経営権を握り最終意思決定は取締役会 3社
30社のうち後継経営者が経営権を握り最終意思決定も後継者の企業 22社
30社のうち後継経営者が経営権を握るが最終意思決定は取締役会 8社 先代が存命の60社のうち先代が取締役として経営に参画している企業 14社 60社のうち先代が株主としてのみ事業に参加している企業 12社 60社のうち先代が引退している企業 6社
112社のうち先代が大株主の企業 30社(全体の13%)
112社のうち姉妹会社やファミリーの持株会社が大株主の企業 5社 (全体の5%) 112社のうち先代の妻(後継経営者の母)が大株主の企業 3社 (全体の3%) 112社のうち最終的な意思決定の役割を取締役会が担う企業 9社(全体の8%)
事業内容
創業時から主たる事業を変更した企業 20社(全体の18%)
創業時から主たる取扱商品を変更した企業 12社(全体の11%)
以上、質問票調査対象企業の概要を見ると、調査対象者であるオーナー経営者および後 継経営者の平均年齢は53.1歳と比較的高い。これは先代経営者が取締役として経営に参画 している企業が30社ほどあり、先代経営者の平均年齢が72.6歳と高齢の為である。日本の 中小企業の経営者の平均年齢は1985年が53.1歳、2004年では58.6歳であり1) 、本論文の サンプルの平均年齢は、現在の日本の中小企業の経営者の平均年齢よりもやや下回ってい るが、それほど離れていないことになる。
経営者の年齢と企業のパフォーマンスなどとの関係では、経営者が高齢になるほど、ま た経営者として就任期間が長いほど企業の成長率に負の影響を与えるという先行研究の発 見結果(宮島ら, 2002)や、経営者の年齢は従業員数の成長に負の影響を与えるという調査結 果 2)がある。また経営者を人的資源として資金調達との関係を分析した先行研究では、経 営者の年齢が高く就任期間が長いほど、資金調達には正の影響を与えるということが発見 されている(本庄, 2006)。ファミリービジネスにおけるコーポレート・アントレプレナーシ ップの取組みでは、企業の成長と同時に、企業の存続や発展のための資金調達も必要であ ることから、本論文では経営者の年齢によってコーポレート・アントレプレナーシップの 取組みが影響を受けるか否かについての分析は行わない。
経営者を性別にみると、男性が110人であり、女性はわずか2人しかいない。昨今では、
女性経営者も多くみられるようになってきたが、後継経営者として事業を承継するのは、
今でも男性が主であるといえる。
業種別では、倉科(2003)による日本の上場しているファミリー企業についての研究の調査 結果に示されている、業界別ファミリー企業業績一覧のオーナー経営者企業、創業者一族 が大株主の企業の業種別会社数の割合と、質問票調査を行ったファミリービジネスの業種 別の割合がほぼ同じであることから、本論文のサンプルが日本のファミリービジネスの業 種別割合の縮図としてみることは可能であろうと考える。
結果を業種別にみると、飲食サービスの比率が高く、和菓子の製造販売、日本食、鰹節、
海苔やお茶といった日本独自の食文化を伝統として伝え続けるファミリービジネスの存在 が多い。次いで不動産業の比率が高いが、これは21世紀に入ってから景気の後退や社会情 勢から、本業からの収益が減少したため、業種業態を変更したファミリービジネスが多い ためである。また銀座や日本橋など老舗の多い地域の再開発や、繁華街への外資企業の参 入により、街自体が変化してしまい、これまでとは違う顧客層に変化し顧客ニーズが変わ り、異なる文化や地域性が生じたことで、本業より貸しビル業などの不動産業に転業する ファミリービジネスも多い。
企業規模では中規模企業が多く、売上50億円以下、従業員が100人未満の企業が多いこ とがわかる。企業年数では創業から80年前後のファミリービジネスが多く、このような企 業は主に3代目が経営の中心を担っている。
ファミリービジネス内の取締役数の平均数は4.4人、うちファミリーメンバーは2.5人で あり、以前の会社法に則った株式会社の体裁を持つ企業がファミリービジネスに多いため、
このような人数になったと考えられる。
所有と経営の一致度をみると、大株主が代表取締役として就任しているファミリービジ ネスは92社で、全体の82%に上り、日本のファミリービジネスは主に、オーナー経営者に よってマネジメントされている企業形態であることがわかる。先代が存命であるファミリ ービジネスは半数であり、先代が経営に参画しているのは30社、そのうち、先代が実質的 な経営権を握る代表取締役として実際に経営権を握っているファミリービジネスは14社で ある。先代と後継経営者が共に代表権を持つファミリービジネスは 9 社、先代のみが代表 権を持つのは 5 社である。実質的な経営権を先代が持ち、最終的な意思決定も先代が行っ ているファミリービジネスは 4 社、実質的な経営権を先代が持ち、最終的な意思決定を後 継経営者が行っているファミリービジネスは 7 社である。ファミリービジネスの中でも先 代が代表権を持ちながら、実質的な経営はや意思決定は後継経営者に任されている企業や、
実質的な経営と最終的な意思決定が先代と後継経営者に分かれている企業があることがわ かる。また組織が比較的大きく後継経営者の年代が若い場合は、最終的な意思決定を取締 役会が担っているという企業も存在する。
創業時から変わらぬ事業を継続しているファミリービジネスは92社、事業やドメインを