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157. 財務方針は、キャッシュフロー/レバレッジの評価における標準的な想定から導出した結

論の域を超えた事業会社のリスクについての S&P の見解を精微化するものである(E 項参 照)。標準的な想定が常に、事業会社の財務方針から生じる短中期的なイベントリスクや、

より長期的なリスクを反映したり、完全に取り込んでいるとは限らない。これらのリスク要 因のうちの1つの動きについて、S&Pのフォワードルッキングな評価の枠内で確信を持って 予測することが不可能な限りにおいて、当該リスクをこの財務方針の評価で取り込む。キャ ッシュフロー/レバレッジの評価には通常、事業面とキャッシュフロー関連の指標の過去 2 年間の実績と、事業面の想定および予想可能な財務方針の要素(配当金支払額や経常的な買 収関連支出)に基づいて予想できる今後2年間のトレンドが織り込まれている。しかしなが ら、同予想期間中にも、そして、一般的にはより長い期間にわたり、経営陣か、該当する場 合には支配株主(付属資料E、段落254-257参照)の追加的なリスクの選好または逆にレバ レッジの削減計画などで示される、事業会社の財務方針がその財務プロフィールを変えるこ とがある。財務方針は、「1」「ポジティブ(positive)」、「2」「中立的(neutral)」、「3」

「ネガティブ(negative)」、ファイナンシャル・スポンサー所有――のいずれかに評価され る。ファイナンシャル・スポンサー所有の会社はさらに、「FS-4」、「FS-5」、「FS-6」、ま たは「FS-6(マイナス)」と識別される(H.2項参照)。

1. 財務方針の評価

158. まず、事業会社がファイナンシャル・スポンサーに所有されているかを判断する。固有の

特性とファイナンシャル・スポンサーの本質的な非保守性(すなわち、保有期間が短中期的 であり、有利子負債や準債務金融商品を用いて株主還元を最大化する)に鑑みて、ファイナ ンシャル・スポンサー所有の会社については、こうした戦略がレバレッジに及ぼす可能性の

格付け規準|事業会社|一般:事業会社の格付け手法|S&P Global Ratings 43 高い影響を反映させて財務プロフィールを評価し、経営陣の財務規律または財務方針の枠組 みを個別に分析しない。

159. 事業会社がファイナンシャル・スポンサーに支配されていなければ、経営陣の財務規律と

財務方針の枠組みを評価する。経営陣の財務規律では、追加的な財務リスクに対する許容度、

または逆に、現在の財務リスクの水準を維持する、あるいは、最近のキャッシュフロー/レ バレッジ指標および今後2年間のS&Pの予想値に比較して、引き下げようとする積極的な意 思を測定する。財務方針の枠組みでは、事業会社の財務方針の包括性、透明性、持続可能性 を評価する。ファイナンシャル・スポンサー所有の会社の場合、これらの要素を評価しない。

160. 財務規律の評価は、事業会社の全般的な財務方針の評価に、プラスの影響を及ぼす場合も

あれば、マイナスの影響を与えることもあり、正味の影響がない場合もある。一方、財務方 針の枠組みの評価は、全般的な財務方針の評価にプラスの影響を及ぼすことはない。全般的 な財務方針の評価を「中立的」を上限に制約する場合はある。

161. 事業会社の財務方針の枠組みと財務規律の個別の評価が、財務方針についての調整を決定

する。

162. 経営陣の財務規律の評価は、1)「ポジティブ(positive)」、2)「中立的(neutral)」、3)

「ネガティブ(negative)」――のいずれかである。本評価は、事業会社の拡大計画と株主還 元戦略の予測可能性を評価して決定する。通常、信用力指標における突発的で重大なマイナ スの変化に対する経営陣の許容度や、逆に、レバレッジを素早く削減し、信用力指標を予め 定めた範囲内に維持する計画も考慮に入れる。

163. 事業会社の財務方針の枠組みは、1)「サポーティブ(supportive)」、2)「ノン・サポー

ティブ(non-supportive)」――のいずれかに評価される。事業会社の財務方針の枠組みの包 括性や、財務目標が多数の利害関係者に明確に伝達され、明確に定義され、達成可能であり、

かつ持続可能であるかなどを評価して判断する。

表 23 財務方針の評価

評価 意味 指針

ポジティブ

(positive)

経営陣の財務方針の決定が、分析対象期間の信用力指標に対し て、通常ベースの事業やキャッシュフローの想定に基づいた S&P の予想に合理的に組み込める範囲を超えてプラスの影響を及ぼ すと S&P が予想していることを示唆する。一例として、信頼性の高 い経営陣がレバレッジを削減するために、短中期的に資産の売却 または増資を公約していることが挙げられる。財務プロフィールが

「1」と評価される事業会社は、「ポジティブ」と評価されない。

財務規律が「ポジティブ」、財務方針の枠組みが

「サポーティブ」と評価された場合。

中立的

(neutral)

将来の信用力指標が対象期間中に、事業会社の経営陣の財務方 針、最近の実績、事業運営の予測についての評価に基づいた S&P の予想を超えて、大幅に変動しないと S&P が考えていること を示唆する。財務方針の「中立的」の評価は事実上、「イベントリス ク」が発生する確率が低いとする S&P の見解を反映している。

財務規律が「ポジティブ」、財務方針の枠組みが

「ノン・サポーティブ」と評価された場合。

もしくは、財務方針の枠組みの評価にかかわら ず、財務規律が「中立的」と評価された場合。

ネガティブ

(negative)

経営陣の財務規律の実態からみて(または、経営陣の財務規律の 欠如を受けて)、S&P の予想に合理的に組み込める範囲を超えて 信用力指標の予測可能性が低いとする S&P の見解を反映してい る。同評価は、経営陣の財務方針の決定が、通常ベースの事業や キャッシュフローの想定に基づいて S&P がすでに予測に組み込ん

財務方針の枠組みの評価にかかわらず、財務規 律が「ネガティブ」と評価された場合。

格付け規準|事業会社|一般:事業会社の格付け手法|S&P Global Ratings 44

でいるものに照らして、対象期間中の信用力指標により重圧をか ける可能性のある高いイベントリスクを指し示す。

ファイナンシャル・ス ポンサー*

S&P では、ファイナンシャル・スポンサーを、有利子負債や準債務 証券を用いて株主還元を最大化する非保守的な財務戦略を貫く 事業体と定義している。こうしたスポンサーは通常、短期から中期 の期間に資産を売却する。したがって、ファイナンシャル・スポンサ ー支配の会社の財務プロフィールは通常、中期的に信用力がある 程度悪化するとの S&P の見込みを反映している。ファイナンシャ ル・スポンサーには、プライベートエクイティ会社も含まれるが、よ り長い投資期間を持つインフラファンドや資産運用ファンドは含ま れない。

S&P ではファイナンシャル・スポンサー所有の事 業会社を、1社以上のファイナンシャル・スポンサ ーが普通株式の 40%以上を所有しているか、ま たは議決権の過半数を保有し優先株を通じて支 配している非金融事業会社で、同スポンサーがそ の事業会社の支配権を単独あるいは共同で行使 していると S&P がみなす会社と定義する。

*「FS-4」、「FS-5」、「FS-6」、「FS-6(マイナス)」のいずれかに評価される。

2. ファイナンシャル・スポンサー所有の事業会社

164. S&Pでは、ファイナンシャル・スポンサーを、有利子負債や準債務証券を用いて株主還元

を最大化する非保守的な財務戦略を貫く事業体と定義している。こうしたスポンサーは通常、

短期から中期の期間に資産を売却する。ファイナンシャル・スポンサーには、プライベート エクイティ会社も含まれるが、より長期の投資期間を持つインフラファンドや資産運用ファ ンドは含まれない。

165. S&Pではファイナンシャル・スポンサー所有の事業会社を、1社以上のファイナンシャル・

スポンサーが普通株式の40%以上を所有しているか、または議決権の過半数を保有し優先株 を通じて支配している非金融事業会社で、同スポンサーがその事業会社の支配権を単独ある いは共同で行使しているとS&Pがみなす会社と定義する。「支配」とは、事業会社の戦略と キャッシュフローをスポンサーが決定できることを意味する。スポンサーの戦略目標は、ス ポンサーが共同で支配権を有していると S&Pがみなすように一致していなくてはならない。

166. ファイナンシャル・スポンサー所有の会社と、その他の支配株主の形態を持つ会社または

支配株主がいない会社とを区別するのは、プライベートエクイティ・スポンサーに存在する 短期保有には、大抵、非保守的な債務レバレッジを通じた、株主への速やかな利益還元の達 成を目指す財務方針が伴うことが多いとS&Pが考えるためである。

167. ファイナンシャル・スポンサーは、支配する会社のリスクの取り方、財務管理、ガバナン

スに関する方針を決定づけることが多い。そうした投資家は、有利子負債や準債務証券を用 いて、会社の財務リスクを高める方法で現金を引き出すというのが一般的なパターンである。

したがって、ファイナンシャル・スポンサー所有の事業会社の財務プロフィールは通常、中 期的に信用力がある程度悪化する、あるいはレバレッジが高止まりするとのS&Pの見込みを 反映している

168. ファイナンシャル・スポンサー所有による影響は、当該スポンサーがどの程度非保守的に

なるかとのS&Pの想定に基づいて「FS-4」、「FS-5」、「FS-6」、「FS-6(マイナス)」の いずれかに評価され、それに従って財務プロフィールが付与される(表24参照)。

169. 本格付け規準の下では、ファイナンシャル・スポンサー所有の会社の財務方針の評価は一

般に「FS-6」か「FS-6(マイナス)」となり、その財務プロフィールの評価は「6」となる。

「FS-6」の評価は、ファイナンシャル・スポンサーの財務方針と実績の分析に基づいて、予

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