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アンカー値:アンカー値は、事業会社の事業プロフィールの評価と財務プロフィールの評価 を組み合わせて導き出される。アンカー値は、最終的な格付けまたはスタンドアローン評価 を決定するために、追加的な格付け要因によって調整されることがある。

資産プロフィール:事業会社を構成する資産の種類と質を記述的に捉える方法(例えば、有 形資産と無形資産、大規模で継続的な維持保全、管理、あるいは再投資を必要とする資産な ど)。

事業プロフィール:事業会社が事業を展開する市場における潜在的なリスクとリターン、カ ントリーリスク、競争環境、事業会社が有する競争上の強みと弱みで構成される。本格付け 規準では、事業会社の産業別カントリーリスク評価(CICRA)と競合的地位の評価を組み合 わせて、事業プロフィールの評価を決める。

資本集約型の事業会社:売上高(販売額)に対する継続的な設備投資額、あるいは売上高(販 売額)に対する減価償却費の水準が高い事業会社。資本集約型の業界には、石油生産・精製、

通信、鉄道や航空などの運輸が挙げられる。

債務返済に利用可能な現金:債務返済に利用可能な現金の予想は、対象期間における、債務 の借り入れ・返済前のキャッシュフローの正味の変化である。これには、株式発行を差し引 いた正味の自社株買いとM&AについてのS&Pの予想に基づく調整を加えた配当支払い後フ リーキャッシュフロー(DCF)の予想が含まれる。DCFは、営業活動によるキャッシュフロ ーから設備投資額と配当金合計額を差し引いたものである。

格付け規準|事業会社|一般:事業会社の格付け手法|S&P Global Ratings 74 競合的地位:事業会社の、1)競争優位性、2)経営効率、3)事業の規模・範囲・分散、4) 収益性――についてのS&Pの評価である。

 競争優位性――事業会社の製品やサービスの戦略的ポジショニングと顧客に対する魅力、

ビジネスモデルの脆弱性または持続性。

 経営効率――事業会社の資産基盤の質と柔軟性、コスト管理とコスト構造。

 事業の規模・範囲・分散――事業活動の集中または分散。

 収益性――事業会社の収益性・収益の水準と、収益性・収益の変動性についてのS&Pの 評価。

競合的地位グループプロフィール(CPGP):競合的地位の収益性を除く3つの構成要素のウ エートを決めるために用いる。各業界は6つのグループプロフィールのいずれかに分類され るが、個々の事業会社や業界のサブセクターは固有の特性に基づいて業界と異なるグループ プロフィールに分類される場合がある。同様に、国特有の産業のリスク要因もウエート付け に影響を及ぼすことがある。6つのグループプロフィールは以下の通りである。

 サービス・製品中心型

 製品中心・規模牽引型

 資本または資産中心型

 汎用品中心・コスト牽引型

 汎用品中心・規模牽引型

 国特有の産業、公益企業

コングロマリット:それぞれがEBITDAまたはFOCFの10-50%に寄与する、少なくとも3 つの事業セグメントを有する事業会社。こうした事業会社は、多角化とポートフォリオ効果 の恩恵を享受することがある。

支配株主:必ずしも株式の過半数を所有しないものの、事業運営、レバレッジ、株主還元に 関する決定にさまざまな影響を及ぼしうる株主。

事業会社の産業別カントリーリスク評価(CICRA):事業会社のカントリーリスクの評価と 産業リスクの評価を組み合わせた結果。

債務の共同保険:収益源が完全な相関関係にない会社を2社以上まとめることで、会社がデ フォルトするリスクを低下させ(共同保険効果)、その会社の「債務負担の許容額」または

「資金調達力」を高めるとする概念。2007-2009年の世界金融危機時には、こうした代替の 資金調達手段の重要性が増した。

財務面の余裕(クッション):財務指標が既定のレンジや限界水準を超えるまでの許容され る偏差の大きさであり、通常はローンの財務制限条項にみられる(例えば、レバレッジを制 約する有利子負債/EBITDA で示されるように)。余裕部分が大きければ、より大きな偏差 を許容できる。

格付け規準|事業会社|一般:事業会社の格付け手法|S&P Global Ratings 75 財務プロフィール:経営陣が自社の事業プロフィールと財務リスクの許容度に照らして下す 決定によってもたらされる結果。これには、経営陣の資金調達の方法やバランスシートを維 持・構築する方法に関する意思決定が含まれる。また、事業会社が自社の事業プロフィール を踏まえて、実現できるキャッシュフローとその金融債務との関係性も反映している。本格 付け規準では、キャッシュフロー/レバレッジの分析を用いて、事業会社の財務プロフィー ルの評価を決定している。

ファイナンシャル・スポンサー:有利子負債や準債務金融商品を用いて株主還元を最大化す る非保守的な財務戦略を貫く事業体。ファイナンシャル・スポンサーは通常、短期から中期 の期間に資産を売却する。ファイナンシャル・スポンサーには、プライベートエクイティ会 社も含まれるが、より長い投資期間を持つインフラファンドや資産運用ファンドは含まれな い。

収益性指標:通常、投下資本利益率とEBITDAマージンを用いて測るが、業界固有の指標を 用いる場合もある。一般に、過去2事業年度のデータと、当年度およびそれに続く2年間の

S&Pの予想に基づく計5年間の平均で算出される。

株主還元方針:経営陣が明示した株主還元計画(例えば、自社株買いの額や配当額、あるい は目標とする配当性向)。

スタンドアローン評価:債務あるいは発行体の信用力についてのS&Pの意見であり、発行体 の親会社、関連会社、関連する政府、保険会社などの第三者による特別な介入や支援を考慮 しないベースの評価。

外国為替規制リスク評価(T&C評価):ソブリン以外の発行体が債務を返済するために必要 な外貨へのアクセスをソブリンが制限する蓋然性についてのS&Pの意見。

連結対象外の関連会社:発行体の投資先であるが、その財務諸表に連結化されていない会社。

したがって、事業会社が投資先から配当金を受け取っていない限り、同投資先が生み出す収 益とキャッシュフローはS&Pの主要な指標に含まれない。

上流事業/中流事業/下流事業:それぞれ天然資源と市況商品(金属、石油、ガスなど)の 探鉱・生産、輸送・貯蔵、精製・流通・販売を指す。

収益性・収益の変動性/SER:収益性・収益の変動性は事業会社の過去のEBITDAなどの回 帰の標準誤差(SER)に基づく。SER は、最適な趨勢線からの偏差を推定する、統計学上の 指標である。S&PはSERと収益性指標を合わせて、最終的な収益性の評価を判断する。S&P は、計算結果を確実に意味のあるものとするために、その会社の過去の年次データが少なく とも7年分ある場合に限って、SERを算出する。

運転資本集約型の事業会社:一般に、運転資本の季節的変動に対応するため、運転資本/売 上高(販売額)の比率が高い事業会社をいう。運転資本集約型の業界としては、小売り、自 動車製造、資本財が挙げられる。

格付け規準|事業会社|一般:事業会社の格付け手法|S&P Global Ratings 76

よくある質問(FAQ)

A. キャッシュフローの変動性

ある事業会社のキャッシュフロー指標の変動性が高い場合、S&P ではそれをキャッシュフローの変 動性の調整と財務方針の評価のどちらに織り込むのか。

いずれか適切な方の分析要因に織り込む。段落125にある通り、変動性の調整は、短期的 なベースケース予想や長期的な事業リスクの評価に織り込まれていない、現時点の財務パフ ォーマンスからの中期的な差異(クッション)を織り込むメカニズムである。この調整を以 下に基づいて施す。

 キャッシュフロー/レバレッジ指標の潜在的な変動の予想は、見込みであり、かつ現時 点の事業環境または経済状況に左右される。

 ストレスシナリオには、事業会社の産業リスクプロフィールと競合的地位の評価で通常 定義されるように、景気後退、技術の転換や競争の変化、主要な契約や顧客の喪失また はそれらに関わる再交渉、主要な製品価格または投入コストの変動が含まれるが、これ に限定されない。

 変動性の調整は、静的ではなく、会社固有のものである。すでに全般的な産業リスクま たは競争上のリスクのプロフィールに反映されている景気サイクルの底または事業環境 におけるストレス期では、指標が悪化する可能性は、景気サイクルや事業環境のピーク 期と比べて非常に低い。

 将来の指標変化の見通しは、景気、事業、製品サイクルを通じた当該事業会社または同 業他社の過去のパフォーマンスによって形成される。

 評価に加えうる調整幅を判断する際にどの変動性の分類を適用するかは、現時点の指標 が閾値にどの程度接近しているか(すなわち、現在の評価カテゴリーで「バッファー」

があるか)、そして各評価の閾値に対応するEBITDAの変動幅に基づいて決まる。

段落157にある通り、財務方針は、キャッシュフロー/レバレッジの評価における標準的 な想定から導出した結論の域を超えた事業会社のリスクについての S&P の見解を精微化す るものである。標準的な想定が常に、事業会社の財務方針から生じる短中期的なイベントリ スクや、より長期的なリスクを反映したり、完全に取り込んでいるとは限らない。これらの リスク要因のうちの1つの動きについて、S&Pのフォワードルッキングなキャッシュフロー

/レバレッジの評価の枠内で確信を持って予測することが不可能な限りにおいて、当該リス クを財務方針の評価で取り込む。

事業会社のキャッシュフロー/レバレッジを「変動性が高い」、もしくは「変動性が非常に高い」と評 価する場合のストレス期とは?

S&Pのグローバルなデフォルト・スタディーによって、デフォルトと事業サイクル上の弱

い時期や金融危機との高い相関が示されていることが指針となる。1991 年のデフォルト率

(デフォルトした企業の割合)のピークは、米国の緩やかな景気後退、英国の深刻ながら短 期間の景気後退、北欧の金融危機の後に発生した。先進国市場における「BB格以下」のデフ ォルト率のその他のピークは、米国の2001年(米国の景気後退)の10.6%、2009年(世界的 な金融危機と景気後退)の11.4%や、欧州の2002年(IT バブルの崩壊や電気通信分野の多 数の新興企業の破綻が一因)の12.3%である。〈出所:2013年3月18日付「2012 Annual Global Corporate Default Study」と 2009 年 6 月 3 日付「General Criteria: Understanding S&P Global

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