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諸外国における素形材関連産業への支援策

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2. 諸外国における素形材産業にかかる動向

2.1 諸外国における素形材関連産業への支援策

韓国、中国、米国、ドイツにおける素形材関連産業への国の支援策(中小企業支援も含 む)を時系列で整理したものを図表 194に示す。以下、国別に支援施策の概要を整理する。

(1)韓国

韓国では

1973

年の第三次五カ年計画において重化学工業化の推進政策がとられ、こ の後、金型をはじめとする素形材産業への本格的な支援が始まったとされる。韓国にお ける産業支援は当初、自動車や電機・電子産業等における財閥系企業への支援を主とし て行われて来たが、

1997

年のアジア通貨危機以降、国内の部品産業の発展の遅れを課題 としてとらえ、中小企業への産業支援に重心を移している。

2001

年には「部品・素材専門企業等の育成に関する特別措置法」を制定し、部品・素 材技術開発力の向上及び信頼性の確保、事業化への支援、国際協力への支援等を実施し ている。また、同年

7

月には、「部品・素材発展基本計画(MCT-2010)」を発表してお り、2010年までに部品・素材産業を 21 世紀の主力成長産業として育成するために、2 兆ウォンを投資して、国際レベルをもった部品・素材メーカー150社を育成することを 目標としている

8

その後も素形材産業への産業支援は継続して行われており、

2003

年に韓国産業資源部 は、鋳造分野を含む

6

大基盤生産技術の持続的な成長・発展、未来技術競争力の確保を 目的として「2010生産基盤産業技術革新戦略」を策定している。国家主力産業に核心部 品、加工技術を供給する鋳造産業などの生産基盤技術の戦略的開発及び基盤拡充、技術 革新を進めている

9

金融危機の影響で世界的な経済不況にあった

2009

年に韓国政府は「第

2

次部品素材 発展基本計画」を発表している

10

。同計画は

2009

年から

2012

年の間に総額約

1

3,000

億ウォン(約

960

億円)を投入し、2012年に部品素材世界

5

大強国入りし、部品素材 革新基礎基盤技術水準を対先進国比

90%にまで引き上げ、部品素材貿易黒字 900

億ドル 達成を大きな目標としている。これまでの部品素材開発戦略は、国内の企業、大学、研

8

(財)国際経済交流財団、「韓国の自動車・部品・素材産業の動向に関する調査研究報告書」、2011

3

9

金眠「日・韓生産基盤産業現況と協力法案-鋳造産業を中心に-」、アジ研、2007

3

10

(独)科学技術振興機構研究開発戦略センター、「科学技術・イノベーション政策動向韓国編

2010

年度 版」、2010

6

究機関の活用を進めるものであったが、2 次計画においては、日本を始めとする海外の 企業、大学、研究機関との連携に方向性を変更している(図表 191)。

図表 191 第

2

次部品素材発展基本計画における主要な政策課題

課題 具体的な内容

グリーン成長を推進する

100

融合部品素材中核技術を確保

 ‘09~‘12

年に総額約

8,900

ウォンを投入し、グリーン成長、

新成長動力関連の有望融合部品素材の技術開発を行う

 中核技術の自立化のため、日本等から輸入している技術を

短・中・長期に区分し、R&D支援の戦略性を強化

素材資源確保戦略と連携し、未 来先導素材技術

60

件を開発

 素材分野について、

実用化まで課題あたり毎年

20

億ウォン

の資金支援を行う

 国防分野と連携し、韓国内で開発した素材の市場形成を促

進し、素材資源確保、R&D、事業化までのトータルな支援 体制を構築

世界市場占有率

10%以上のグ

ローバル素材企業

100

社を育成

 部品素材企業のグローバル化促進のため、グローバル M&A、技術・資本提携、共同事業体設立等、海外進出戦略

策定を支援

ニーズを持つ大企業と下請け中 小企業間の共生・協力基盤を強

 大企業と部品素材企業間で R&D、信頼性向上のための協

力・共生プログラムを拡大

 大企業で一定期間以上勤めた課長級以上の人材の、協力部

品・素材業者への異動を支援する「中堅人材活用制度」を 拡大

部品素材専門人材

5

万人育成

 部品素材人材のニーズを分析し、業種別特性を踏まえた体

系的・総合的な教育訓練プログラムを策定

 素材基礎基盤技術確保のための優秀技術人材の海外研修拡

ニーズ連携型部品素材情報・統 計基盤の構築

 部品・素材情報を有機的にネットワーク連結した部品素材

ポータル情報地図を構築

 統計サービス範囲を応用・生産統計等に多様化し、高度な

統計支援サービスを強化

50

億ドルの外国人投資誘致によ る部品素材産業高度化

 韓国の輸入規模が大きい部品素材分野を優先的に選定し、

ニーズを持つ大企業と投資誘致機関間の共同投資誘致に取 り組み

 部品素材専用工業団地を 4-5

か所つくり、日本等の中核技

術保有企業の投資を促進

地域別に特化されたグローバル 供給基盤の構築により貿易黒字

900

億ドルを達成

 韓国内の部品素材企業の輸出拡大のため、

米国、日本のニー

ズを持つ大企業を選定し、R&D 段階から共同開発を支援 し、産業特性を考慮しつつ、進出地域別に特化した市場開 拓支援を実施

(資料)科学技術振興機構研究開発戦略センター、「科学技術・イノベーション政策動向韓国編

2010

年度 版」(2010

6

月)より作成

韓国政府は

2001

年「部品・素材専門企業等の育成に関する特別措置法」の制定から

10

年後の

2011

年にこれまでの部品素材産業育成政策の成果と限界を整理し、今後の方 向性について検討した「部品・素材産業育成

10

年、その光と影」を発表している

11

。 同報告書では、2000年から

2010

年にかけて総額

2

兆ウォンの資金を投入し、グローバ

11 Jetro、「特許庁委託事業 韓国知的財産政策レポート」(2012

月)

ル部品・素材供給基地として成長を遂げることに成功したとする一方、以下の点を影の 部分として指摘している。

部品・素材対日輸出依存度は低下するも、対日貿易赤字の絶対規模は拡大。特 にディスプレー、自動車等の韓国の主力輸出品に使用される核心部品・素材に 対する対日依存度が高まり、完成品輸出が増える程対日赤字が拡大している

汎用素材は世界水準の競争力を有する一方、核心素材は先進国に比べ

4~7

年 の格差が存在している

小数の需要企業とだけ取引きする従属的取引構造は改善されず

こうした課題をうけ、韓国知識経済部は、11月

1

日に今後

10

年間の戦略を「素材・

部品未来ビジョン

2020」として発表している。同ビジョンでは以下の 4

点に主眼がお かれており、これらの取り組みにより、

2020

年までに部品・素材の輸出を

6,500

億ドル とし、日本、台湾を抜き世界

4

位になるとしている。

先端素材の開発

融複合による部品の高付加価値化

素材・部品供給の健全化

グローバル供給ネットワークの提供

(2)中国

中国では中央政府の掲げる五カ年計画が全ての産業経済での基本となっている。中国 における素形材産業に対する支援は、

1978

年の改革・解放以降に本格的に推進されてい る。中国政府は第

7

次五カ年計画(1986年-1990年)において、金型産業を重点育成 産業として指定し、

1989

年には「当面の産業政策要点に関する中央政府の決定」におい て金型産業を重要な産業の一つとしている

12

10

次五ヵ年計画(2001 年~2005 年)において、科技部は「大型鋳造・鍛造物の マクロ発展戦略」を制定し、プレス金型、プラスチック金型、鍛造金型などの技術開発 テーマを設定している。続く第

11

次五ヵ年計画(2006年~2010 年)においても国家 科技サポート計画の重点プロジェクトとして「大型鋳造・鍛造物製造キーテクノロジー と設備研究開発」を実施、国の

10

年間に渡るサポート、10億元を超える研究資金を投 じている。

2011

年からの第

12

次五ヵ年計画においても素形材産業は重点産業としてとりあげら れている。中国金型工業会は、中国を「金型製造大国」から「金型製造強国」へ発展さ

12

瑞雪、行本 勢基「中国金型産業の発展と産業政策(後編)産業政策のソフトな側面の検証を中心に」、

富大経済論集、55巻第

3

号、p. 395-413、2010

3

せることを目指し、2010年に第

12

次五カ年計画期間中(2011年~2015年)の「金型 産業発展計画」を発表。以下の

8

項目を大目標としてあげている

13

① 金型製品の構造調整(高付加価値な金型、高品質の金型標準部品、高性能の 金型材料の発展)

② 金型企業を「大×強」、「小×専」の方向に発展(大手企業が発展するなか、

中小企業を専門性の高い、精密度が高い分野へ誘導)

③ 国内市場の開拓

④ 産学連携による情報化、数値化、精密化、自動化、標準化の加速化

⑤ 現代サービス業の発展(川上、川下産業のサプライチェーンの発展)

⑥ 産業発展モデルを「規模の拡大」から「技術レベルの向上」へ転換

⑦ 国家の重点発展産業に合わせた政府支援

⑧ 技能者の育成

図表 192 第

12

次五ヵ年計画期間中の金型産業発展計画における具体的な目標

発展内容 具体例

15

年までに販売額を

1,740

億元規模に 拡大

輸出は

40

億ドル規模(販売額全体の

15%程度)に

拡大

金型の自給率(国産化率)85%以上を 達成

中高級レベルの金型比率を

40%以上に拡大

CAD、CAE、CAM、PDM

技術の発展

重点企業が率先して実現

情報化管理レベルの向上

業界全体の

40%以上に拡大

大型、精密、複雑、多機能、高速生産

にも対応する金型製造技術を発展

航空宇宙、高速鉄道、電子、都市鉄道、船舶、新エ ネ等の分野におけるニーズに対応

C

級ランク(中級以下)の自動車ボディ 製造用金型を自主生産

中級ランク以下の自主ブランド車試作用の高速生 産にも対応する低コスト金型を自主生産

主要企業を

160

社程度、うち売上高

10

億元規模の企業を

10

社程度に再編

主要企業の研究開発費を営業収入の

5%程度に引き

上げ

金型の生産周期を短縮するとともに、

使用寿命と安定性を向上させる

生産周期は

20~30%程度短縮、耐久性は現在の 20

~30%程度向上 自主ブランド金型製造ソフトウェアの

開発

ソフト開発を通じて生産性を向上

熱流動解析技術、窒素ガススプリング などの技術発展

高品質金型標準部品を発展

現代製造サービス業の発展

 5

箇所程度の公共サービスセンター建設 総従業員数に占める技術人材の割合を

5

ポイント上昇

技術人材の割合を現在の

15%から 15

年には

20%に

拡大

主要企業の高技能人材は総従業員数の

30%程度に

拡大

5

年間で

25

万人の技術人材を育成

人材研修センターを現在の

72

箇所から

150

箇所に 拡大

(資料)「中国金型産業の現状と今後の日本企業の対中ビジネス」JETRO中国経済、2011

8

中国鋳造協会は同様に、第

12

次五カ年計画期間中における「鋳造産業発展計画」を 策定しており、鋳造業界の構造改革を進め、現在の

3

万社を

1

万社にし、生産規模を

1

社当たり

2,500 t

以上とすることを計画している。また、

5

大戦略として①品質向上、②

13

ドキュメント内 センタリング (ページ 142-150)