業界別にみた動向分析

ドキュメント内 センタリング (Page 30-63)

1. 我が国素材形産業の現状と課題

1.2 業界別にみた動向分析

1.2.1 鋳造

(1)鋳造工業の現状

世界の鋳造品の4割以上は中国で生産されており、日本のシェアは

5.5%に過ぎない。

しかし、日本は中国、インド、アメリカに次ぐ世界4位の鋳造品の生産量を誇り、また、

これにロシア、ドイツを加えた上位

6

カ国で、世界の鋳造品の約

8

割を生産している。

日本の鋳造品の生産推移をみると、89年のバブル経済期に生産重量、生産金額ともに ピークを迎え、バブル崩壊後は減少を続けてきたが、2000 年代前半からリーマンショッ ク発生直前までの景気回復の中で生産重量と金額ともに再び増加に転じ、2009 年はリー マンショックの影響で急減した。リーマンショック直前の好景気時の生産重量はバブル経 済崩壊後の水準であったが、生産額はバブル経済期に匹敵するほど伸ばしており、我が国 の鋳造品が付加価値の高い製品へとシフトしていることがうかがえる。

図表 26 鋳造生産量の国別割合(2009年)

中国 43.9%

インド 9.3%

アメリカ 9.2%

日本 5.5%

ロシア 5.2%

ドイツ 4.9%

その他 22.0%

2009年 8,034万t

(出所)財団法人素形材センター「素形材年鑑」

図表 27 鋳造生産量の国別割合(2009年)

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000

0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 8,000,000 9,000,000

(トン) (百万円)

重量 金額

(出所)財団法人素形材センター「素形材年鑑」

(2)世界における銑鉄鋳物の動向

銑鉄鋳物の生産量の推移をみると、1999年以降、中国が世界一の生産量を維持してお り、かつ、中国の生産量は右肩上がりで推移し、2009年時点で

2,570

万トンと、日本の

300

万トンの

8

倍以上の生産量に達している。アメリカ、ドイツ、日本といった先進国で の生産が減少に転じる中で、中国における生産拡大が顕著である。

図表 28 世界主要国の銑鉄鋳物生産量の推移

0 5,000,000 10,000,000 15,000,000 20,000,000 25,000,000 30,000,000

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(トン)

中国 日本 アメリカ ドイツ

(出所)財団法人素形材センター「素形材年鑑」

銑鉄鋳物はねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)とダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)に大別さ れる。ダクタイルは溶湯にマグネシウムやカルシウム、セリウムなどを添加して球状の黒 鉛を析出させることで、強く、靭性のある鋳物とすることができる。耐熱性や耐摩耗性な どに優れているため、自動車のエンジン部品など重要保安部品に使われることが多い。ね ずみ鋳鉄に比べて材料の配合や添加剤の塩梅などが難しく、また、自動車に代表されるよ うに強度が要求される用途向けに活用されることから、各国・地域の銑鉄鋳物に占めるダ クタイル鋳鉄の生産比率は工業化のバロメータとも言われる。

そこで、

2009

年時点の世界主要生産国のねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄の生産比率をみ てみると、ダクタイル比率が高いのはアメリカ(51.5%)、日本(45.2%)、ロシア(40.8%)、 ドイツ(39.7%)となっている。世界最大の銑鉄鋳物の生産国である中国のダクタイル比

率は

33.9%にとどまっており、インドに至っては 13.7%と極めて低い比率にとどまって

いる。日本では

1970

年代からダクタイルの比率が急増し、2000年代以降は

35%強で推

移している。

図表 29 世界主要国の銑鉄鋳物の生産内訳(重量ベース)(2009年)

54.8 66.1 62.7

86.3 48.5

72.2 60.3 59.2

45.2 33.9 37.3

13.7 51.5

27.8 39.7 40.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

日本 中国 韓国 インド アメリカ ブラジル ドイツ ロシア

ねずみ鋳物 球状黒鉛鋳鉄

(出所)財団法人素形材センター「素形材年鑑」

(原出所)

Modern Casting December 2010

図表 30 日本における銑鉄鋳物の生産内訳の推移(重量ベース)

0 5 10 15 20 25 30 35 40

0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000

ダクタイル鋳鉄

ねずみ鋳鉄

ダクタイル比率

(右軸)

トン

(出所)財団法人素形材センター「素形材年鑑」

(3)国内における銑鉄鋳物の動向

銑鉄鋳物の生産重量、生産金額ともに

2008

年のリーマンショック時に大きく落ち込ん だ。その後、徐々に生産を戻していたが、2011 年に東日本大震災の影響を受けて再び生 産を落としている。震災後の計画停電の影響を受けた企業も少なくないと思われる。その 後、再び生産を戻しているものの、生産重量は

2003

年の水準にまで達していない。一方、

生産金額は

2005

年水準に戻しており、重量あたりの単価は増えて、付加価値品に生産が シフトしている様子がうかがえる。

図表 31 銑鉄鋳物の生産重量の推移

1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 1,800,000 2,000,000 2,200,000 2,400,000トン

図表 32 銑鉄鋳物の生産金額の推移

200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 450,000 500,000

(百万円)

(出所)経済産業省「機械統計年報」

1 )ねずみ鋳鉄

銑鉄鋳物のうち、ねずみ鋳鉄品の生産金額の推移をみると、自動車用向けが最も多く

(直近で約

72%)

、次いで産業機械器具用向け(約

21%)

、金属工作・加工機械用向け

(約

7%)となっている。リーマンショック前は自動車用向けが大きく生産金額を伸ば

していただけに、リーマンショックによる生産落ち込みの影響も大きく、自動車用途向 けの生産を行っている企業への影響は大きかったと推察される。

生産重量も同様に推移しているが、自動車用は直近で生産重量は増加に転じているも のの、生産金額は減少に転じており、コストダウン圧力が高まっていると推察される。

図表 33 用途別にみたねずみ鋳鉄の生産金額の推移

0.00 20,000.00 40,000.00 60,000.00 80,000.00 100,000.00 120,000.00 140,000.00 160,000.00 180,000.00

産業機械器具用 生産(金額) 金属工作・加工機械用 生産(金額) 自動車用 生産(金額)

百万円

図表 34 用途別にみたねずみ鋳鉄の生産重量の推移

0.00 100,000.00 200,000.00 300,000.00 400,000.00 500,000.00 600,000.00 700,000.00 800,000.00 900,000.00 1,000,000.00

産業機械器具用 生産(重量) 金属工作・加工機械用 生産(重量) 自動車用 生産(重量)

トン

(出所)経済産業省「機械統計年報」

2 )ダクタイル鋳鉄

銑鉄鋳物のうち、ダクタイル鋳鉄品の生産金額の推移をみると、自動車用向けが最も 多く(直近で約

78%)

、次いで産業機械器具用向け(約

22%)で、金属工作・加工機械

用向けはごく僅かとなっている。自動車用向けはリーマンショックと東日本大震災によ る影響を受けているが、震災後は生産金額を大きく伸ばし、直近ではリーマンショック 前の水準に戻している。

生産重量もトレンドとしては生産金額と同様に推移しているが、直近では自動車用の 生産重量はリーマンショック前の水準には戻っていない。生産量は減少したものの、自 動車用ダクタイル鋳鉄の付加価値は高まっていると推察される。

図表 35 用途別にみたダクタイル鋳鉄の生産金額の推移

0.00 20,000.00 40,000.00 60,000.00 80,000.00 100,000.00 120,000.00

産業機械器具用 生産(金額) 金属工作・加工機械用 生産(金額) 自動車用 生産(金額)

百万円

図表 36 用途別にみたダクタイル鋳鉄の生産重量の推移

0.00 100,000.00 200,000.00 300,000.00 400,000.00 500,000.00 600,000.00

産業機械器具用 生産(重量) 金属工作・加工機械用 生産(重量) 自動車用 生産(重量)

トン

(出所)経済産業省「機械統計年報」

3 )銑鉄鋳物で働く従業者数

銑鉄鋳物で働く従業員数の推移をみると、

2004

年からリーマンショック前の

2007

年 の好況期において従業員数を増加させているが、リーマンショック後は急減し、2010

年度では

26,155

人となっている。リーマンショック直前までの好況期は、鋳物の主要

用途先である自動車産業が増産に伴う設備増強を行った時期でもあり、その影響で銑鉄 鋳物に従事する従業者数も増加したと考えられる。

図表 37 銑鉄鋳物製造業(鋳鉄管、可鍛鋳鉄を除く)従業者数の推移

25,305 25,409 27,502

27,946

28,600

27,398

25,148 26,155

23,000 24,000 25,000 26,000 27,000 28,000 29,000

2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 銑鉄鋳物製造業(鋳鉄管、可鍛鋳鉄を除く)

(出所)経済産業省「工業統計(産業編)

4)銑鉄鋳物の従業員規模別にみた工場数

銑鉄鋳物を営む企業は従業員規模の小さいところが多く、過半数の工場は従業員数

19

人以下の小規模企業に該当し、従業員数

100

人以上の工場は約

6%に過ぎない。

一方、従業員の分布状況をみると、従業員

19

人以下の小規模企業で働く従業員数は 全従業員数の約

16%に過ぎず、工場数では全体の 6%に過ぎない従業員数 100

人以上の 規模の工場で働く従業員数は約

37%に相当する。

また、従業員規模別に出荷額と付加価値額の分布状況をみると、従業員規模

100

人未 満の工場から出荷額の約半分が生み出されており、付加価値額はそれよりも多い

6

割弱 が生み出されている。小規模企業の方が出荷額より付加価値額の比率が高いという結果 になっている。

図表 38 銑鉄鋳物従業員規模別工場数と従業員数の構成比(2009年)

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30%

9人以下 10~19 20~29 30~49 50~99 100~199 200~299 300~499 500~999 1000人以上

工場数 従業員数

図表 39 銑鉄鋳物従業員規模別出荷額と付加価値額の構成比(2009年)

0% 5% 10% 15% 20% 25%

9人以下 10~19 20~29 30~49 50~99 100~199 200~299 300~499 500~999 1000人以上

付加価値額 出荷額

データ秘匿

(出所)財団法人素形材センター「素形材年鑑」

( 4 )銅合金鋳物

銅合金鋳物の最大の用途は一般機械であるが、近年は軽量化を進める自動車などの輸 送機械用途が占める割合が上昇している。

銅合金鋳物もリーマンショックで大きく生産重量・金額ともに落ち込んだが、その後 は順調に回復基調にある。特徴的なことは、

2006

年から

2008

年にかけて重量に比べて 生産金額を大きく伸ばしている点である。多少、原材料価格高騰の影響を受けている可 能性もあるが、同時期は輸送機械用途向けに需要を伸ばした時期とも重なり、付加価値 の高い自動車向けに生産することで重量単価が大きく上昇したことに起因すると考え られる。

図表 40 銅合金鋳物用用途別生産量(重量)の推移

0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

(トン)

一般機械用 輸送機械用 その他

図表 41 銅合金鋳物用用途別生産金額の推移

0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 (百万円)

一般機械用 輸送機械用 その他

(出所)経済産業省「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計年報」

ドキュメント内 センタリング (Page 30-63)